超次元機動戦士ネプテューヌ   作:歌舞伎役者

80 / 212
アノネデスが外道になってる気がする……。まあいいか。


逆転の切り札

アノネデスの笑い声がその空間に満ちていた。

そして壊れた蛇口から吹き出る水のように地面に落ちるミズキの血液。それが地面に当たって弾ける音だけだ。

 

「……………」

「まだ死んでないわよねぇ?これから死ぬまで痛めつけてあげるから、覚悟してねぇ?」

「……を………」

「なぁにぃ?はっきり言いなさいよぉ」

「…を……!この瞬間を……!待っていたん、だ……ぁっ……!」

 

ミズキが剣を握るプルルートの右手を掴んだ。

 

「君が、密着して……!この手に、触れられる瞬間を……っ!待ち侘びてたんだ……ぁ……!」

「はぁ?もっとはっきりーーッ⁉︎」

 

それはプルルートの見た幻影だったのだろうか。

右手から炎が吹き上がるなんて。その炎が自分の腕を伝って体中を包み込んで焼いていくなんて。

 

「決して、諦めない……!例え僕が、傷つき、倒れようとも……!とり、もど……!」

「っ、あっ………!」

 

プルルートの体から赤黒さが消えていった。まるで右手の炎が焼き払ってしまったようだ。

正気に戻ったプルルートは自分が今までやってきたことと今の光景に息を呑む。

 

「わ、私…………!」

「……………」

 

ニコリと血だらけの顔で微笑むミズキ。

きっと死ぬほど痛くて死ぬほど苦しいはずなのにそれでもミズキはプルルートを安心させるためだけに微笑んでくれる。

そしてそれと同時に、ミズキの体は剣から抜け落ちて地面へと落下していった。

 

「……………」

 

まるで現実味のない風景。

地面に落ちたミズキの腹の辺りに血で水溜りができる。

プルルートの手には血で汚れた剣がある。その血が今の風景が現実だということを教える。

 

プルルートはゆっくりとミズキに向かって降下していく。

しゃがみこんでその顔を見るがミズキの瞳は閉じていた。

 

「ミズ……キ………?」

 

プルルートの変身が解ける。

幼い姿のプルルートはミズキの上に四つん這いで跨った。

 

「ねえ〜……起きて〜……?起きな、起き……ない、と〜……!怒る、よ〜……⁉︎」

 

プルルートの瞳から涙が流れ落ちた。その涙はミズキの頬へと落ちていく。

 

「お願い〜……!起きてよ〜、っ、ミズキ君〜……っ!」

 

すると森の奥からエディンの軍隊が出てきた。

大群が2人を素早く囲んで銃口を向ける。

 

「投降しなさい?今なら、その子の命を助けてあげてもいいのよ〜?」

 

その間を割ってアノネデスが入ってきた。恩着せがましく言うアノネデスをプルルートはキッと涙がにじむ瞳で睨んだ。

 

「許さない〜……!絶対、許さないから〜……!」

「あら、そんな口聞いていいの?私達が応急手当すれば、その子まだ助かるかもしれないのに……」

 

ピカッとプルルートの体が光って変身した。

そして涙を拭い捨ててアノネデスの前に立ちはだかる。

 

「誰もアンタなんかの治療なんか望んでないわよぉ……!ミズキが何のために私を助けてくれたのか、わかんなくなるでしょ……!」

「じゃあ、アナタもその子も死ぬわね」

「殺させないわぁ……!今度は、私が……!」

「構え」

 

アノネデスが片手を挙げると全員がプルルートへと銃口を向けた。

プルルートは血だらけのミズキを抱き上げる。

 

「絶対、渡さないんだから!」

「撃って」

 

アノネデスが手を振り下げるのと同時にプルルートの体が光り輝いた。

全方位から逃げ場のない銃弾が2人を襲う。

だが銃声と同時にその場に響いたのは銃弾を全て弾き返す音だった。

 

「なに⁉︎」

 

 

ーーーー『スカルハート見参』

 

 

プルルートとミズキの体は真っ黒なマントで覆われていた。それをプルルートはまるでドラキュラ伯爵のように翻す。マントの内側は真紅だった。

プルルートの蝶のようなプロセッサユニットの4つの頂点には新たなブースターが装着されていた。握る剣には護拳がついていている。

 

「許さない、絶対に許さない!アナタ達全員、メチャクチャにしてあげる!」

 

ミズキの体を抱えたプルルートが上に大きく飛翔する。

 

「そおれっ!」

 

プルルートが唯一稼働する砲台へと剣先を伸ばす。中に通された糸により分解されていく剣の切っ先が砲台に高速で回転しながら突き刺さる。

そのリーチは今までの比ではない。

すぐに砲台は音を立てて爆発する。それと同時にプルルートは剣を伝って砲台へと近付いた。

 

「や、やめなさい!」

「うるさいのよっ!黙ってなさい!」

 

鞭を大きく振り上げるプルルート。それを思いっきり砲台に叩きつけた。撃たれた箇所が大きく凹んでしまう。

それも1度ではなく何度も何度も。苛立ちを全てぶつけるように、感情を全てぶつけるように。

 

「くっ、うっ!このっ、このっ、この!これで満足かしら⁉︎こんなの、全っ然楽しくないわよっ!」

 

息を荒げたプルルートが鞭の動きを止めたその頃には砲台と呼べるものの原型はなかった。

ただの鉄屑になっていたのだ。

 

「っ、トドメよ……!」

 

プルルートの剣の先に電撃の球体が作られた。だがそれは段々と巨大化して砲台をその中に収めてしまうほどの大きさになっていく。

 

「な、なによアレ⁉︎て、撤退よ撤退!なんで、こんな化物ばっかり……!」

 

アノネデスと軍隊が森の奥へと消えていく。

その時、プルルートの胸の中で蚊の鳴くような声が聞こえた。

 

「僕ら、は………」

「ミズキ!」

「僕らは、人間だ……。君も、1人の……女の子、でしょ……?」

 

プルルートの腕の中でミズキはぎこちなく笑った。

それを見たプルルートは先程までの荒ぶるような気持ちではなく、静かな気持ちで砲台を見つめた。

 

「……ごめんなさい、ミズキ」

「……クス、許して、あげる……」

 

プルルートが剣を砲台に向けると巨大な電撃の球体は砲台に向かってゆっくりと向かっていった。

その球体は砲台を飲み込み、地面までも飲み込み、大きなクレーターを島に残した。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

ネプテューヌの首を絞めるワイヤーがギリギリと音を立てる。

ネプテューヌはアンチクリスタルの結界による消耗ではなく、窒息で死を迎えようとしていたのだ。

 

「わぁ〜、苦しそ……。でも、ほら、キリスト様になれるんだからさ!」

「かはっ、うっ……!ぴー子を、返しなさいよぉ……っ!」

「ん〜、じゃあゲームね!お姉ちゃんが3秒耐える度に私は自分を傷つけるね!い〜ち!」

「やめ、なさい……!」

「はい3秒!ヒヒッ、痛い〜!」

 

ピーシェは自分の腕に爪で傷をつけた。ぷっくらと血が湧いて腕から耐えている。

 

「やめて……!ぴー子を、傷つけないでぇ……っ!」

「また3秒!早く死ねばこんなに私が痛い思いしなくて済むのにな〜!」

 

今度は反対の腕に傷をつけた。

 

「ん〜、次はどこにしようっか!首とか……どう?」

「っ!」

「ほら、ほら〜!」

「ぴー子を、傷つけないでっ……!」

「ん?そうそうもうちょっと頑張って?ほらほら、その分絶望に塗れるでしょ?」

「っ、ぴー子を!返してぇぇぇぇ……ッ!」

 

ネプテューヌが全身に力を込めるとワイヤーが引っ張られていく。ネプテューヌの体は紫に脈動し始めた。

 

「そう!計算通り!やっぱりそうなるよね!やっぱり私、勝てないのかも!」

「ぴー子ォォォォッ!」

 

ネプテューヌの体から紫色のプレッシャーが放たれた。

それはアンチクリスタルの結界にヒビを入れている。ワイヤーも千切れ始めていた。

 

「みんなが、いるのよっ!ミズキが、私と一緒にいるの!だったら、こんな結界くらい……ッ!」

「うん、最高だね!」

「ああああああッ!」

 

ネプテューヌの叫びでアンチクリスタルの結界が割れた。ワイヤーも千切れて結界からの脱出を果たす。

結界の頂点を担っていた爪は反射してピーシェの手元へと戻っていった。

 

「ヒヒヒヒッ!もっと、もっと見せて!どうせ負けるんだから、楽しまなきゃ!」

「ぴー子を、返してもらうのッ!ぴー子に謝らなきゃいけないの!その前に障害が立ち塞がるなら……ッ!」

 

ネプテューヌがビームマグナムを捨てて太刀を両手で持った。

 

「誰だって!何だって!突き破るんだからァッ!」

「いっけぇ!擬似ファンネル!」

 

ピーシェの爪が再び放たれた。音を立てながら反射してネプテューヌへと向かっていく。

だが、ネプテューヌも負けてはいなかった。

 

「ファンネルッ!」

 

ネプテューヌの手から放たれた太刀がネプテューヌの周りを円を描くように回った。

ネプテューヌへと向かっていった爪は全てその太刀に薙ぎ払われる。

 

「ヒヒッ、凄い凄い!」

「はあああっ!」

 

しかしいくら薙ぎ払おうと爪は砕けず、ピーシェの手元に戻ってまた射出される。

そして高度な演算により、ネプテューヌのファンネルは擬似ファンネルに当たりにくくなっていた。

 

「ほらほら!やっちゃえ!私の擬似ファンネルっ!」

「この程度でェッ!」

 

だがいくら軌道が複雑だろうと狙われる目標はネプテューヌただ1人。

ネプテューヌはユニコーンとニュータイプの力で得られた先読み能力と反射神経で擬似ファンネルを避け、また打ち落としていく。

 

「ヒヒッ!いいねいいね!リツイートしちゃうくらいだよ!」

「ぴー子には、帰って来てもらう!やっと会えたの、2度と離れないっ!」

「じゃあ、私を追い出さなきゃね!さあ、どうすればいいでしょうか!正解者には漏れなく、クーポンをプレゼントだよ!」

 

そう、いくら擬似ファンネルを防ごうとピーシェの体からピーシェを支配する誰かを追い出さなければ勝機はない。

そしてそれも早急にやらなければ、ピーシェの体が高度な演算に耐えきれずに崩壊してしまう。

 

「この子の体をいくら傷つけたって私は出て行かないよ?さあ、どうすべきかわかる⁉︎」

「そんなもの、わかりきってるわよ!」

 

ネプテューヌがファンネルで擬似ファンネルを払い除けた。

 

「今の私なら使える……!お願いみんな、力を貸して……!」

 

ネプテューヌが瞳を閉じると空中に魔法陣のようなものが出来て、そこからクリスタルで出来た剣が舞い降りてくる。

 

「32式、エクスブレイド!見えない力で、アナタを討つ!」

「それ……信仰が力になってるのね?考えた、考えたね!それなら確かに、私を切れるかも!」

 

爪がピーシェの体へと戻っていく。

未だ赤黒い瘴気を纏っているピーシェだが、さっきの結界は紛うことなき、アンチクリスタルの結界。

アンチクリスタルの結界は強いシェアで壊すことが出来る。あの時も、今回もそうだった。

ならば、恐らくピーシェの体を支配しているのはアンチクリスタルに関係する何か。それは、強いシェアで霧散させることが出来るはず。

なればこその、32式エクスブレイドだ。信仰の力を形にしたこの剣ならば、ピーシェの中に潜むモノだけを霧散させられるかもしれない。

 

「待ってて、ぴー子!今、私が助けに行くから!」




ネプテューヌ、ファンネル習得。シールドファンネルって言うくらいだし……ソードファンネル?
32式エクスブレイドは信仰の力が形になったものらしいじゃないですか。それを手持ちにしてもいいかなって。

さて、この章も終わりに近づき同時にアニメも終わりに近づきますがアニメが終わってもまだ終わらせる気はないです。とあるネプテューヌシリーズに繋げようかと。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。