幻想殺しと電脳少女の幻想郷生活 作:軍曹(K-6)
第1話 神格『眼』の話
上条当麻は不幸な人間だった。道を歩けば何かで転び、バスを待てば無視をされ、乗った乗り物が事故を起こすこともあった。
だから上条は、大抵の事なら『不幸』の一言で片付ける。
だが、
「これは、酷いだろ・・・神様・・・」
今回の事の発端も、元を返せばただの不幸な事故だった。奇跡的に死者がゼロだったビル爆破事件。その中で公開ライブをしていた上条の妹、上条桃が重傷を負ってしまったのだ。
両目の視力を失い、さらに下半身不随の追い打ち付きで。
「いいんだよ、お兄ちゃん。私は見えないけど、泣いてるんだよね。私のために、ありがとう」
「ごめん・・・・・・ごめんな・・・モモ。・・・・・・ッ!」
気がつくと、上条は病室を飛び出していた。行く当ても特にないのに、外はどしゃ降りの雨なのに、構わず上条は走っていた。
なんとなくで足が向かったのは、近所の普段は猫の集会所になっているが、元旦になると人で賑わう、何の神様が祭られているのか分かる人が少ない。そんなどんな町にも一つじゃありそうな場所、だった。
「・・・・・・んだよチクショウ! アイツは・・・モモは関係ないだろ!!」
上条当麻のやり場の無い思いでぐちゃぐちゃになった気持ちが、ポロポロと口から零れていく。彼は、雨なのか涙なのか分からないほどびしゃびしゃになった目を鋭く細めて、雨の降り注ぐ空を見上げる。
「テメェら全員残酷だ! 俺以外のやつを俺の『不幸』に巻き込む必要ないだろ! テメェらが神様で本当に何でもできるって言うんなら、モモの怪我を治してくれ・・・・・・。俺はどうなってもいいから・・・・・・、神の力とやらで俺のこの願い叶えて見ろよ!!!」
上条の叫びはむなしくも虚空に消えていく。
「・・・・・・本当に・・・なんなんだ・・・」
『見届けるか、見届けないか――――――
――――――選ぶがよい』
「・・・!?」
その時だった。そいつは唐突に現れた。
「なんっ・・・なんだお前は・・・!」
『選べ。見届けるか、見届けないか』
異形の何かは、上条に半透明の目を差し出して言う。そしてその言葉は、
「交換条件だ。あんたが何者で、どこから来たのかとかこの際どうでもいい。その代わり、世界の命運でも地球の破滅でも何でも見届けてやっから、俺の妹の怪我を、モモの体を正常に戻してくれッ!!」
『―――面白い。よかろう。では見届けよ。その眼で・・・』
上条の眼が変わる。普通の眼球じゃない何かに。一瞬の内に移植手術でもされたのだろうか。
その直後。
「・・・・・・ぐっ。アッッ!!」
上条の眼がある窪みから神経全体に激痛が走った。それはまるで体が拒んでいるようだった。
上条の新しい眼を、その体が拒絶しているような。
「あぐっ・・・ガァッ」
その激痛に、上条は己の眼を抉り出そうとした。そして
「なん・・・なんだ・・・・・・?」
恐る恐る目を開く上条。そこから大量の情報が入ってきた。
「な・・・ばぁ!?」
完全記憶能力の持ち主である彼にとって、この情報量は死に近くなるかもしれない。
「・・・・・・面白い置き土産じゃねぇか。何ができんだよ、他には――――――」
上条はそこでふと思い出して。
回れ右をして全速力で駆けだした。すぐにでも最愛の妹に会いたかったからだ。
―――病院。
「上条桃君。なんともないかね?」
「はい。大丈夫です」
「・・・良かったな。モモ」
「うん。ありがとうお兄ちゃん」
「しかし・・・急に患部の状態が健康に戻るとは・・・まさに奇跡としか言いようがないね?」
「・・・そうですね」(奇跡・・・か)
この時、上条は奇跡の本当の意味を汲み取った気がした。
(奇跡ってのは、誰にも成し得無さそうな事を、誰かの努力で成し得た。その先にあるものなんだな・・・・・・。今回に限っては、あのインチキくさい奴らに感謝、だな)
―――この数年後。神の眼を持つ上条当麻と
蛇の眼を持つ少年少女の物語が始まる―――
上条さんは、神の肉体を手に入れた。
次回、エネちゃん登場します。多分