幻想殺しと電脳少女の幻想郷生活 作:軍曹(K-6)
上条は後ろに下がった原因を、咲夜の時止めと理解していた。そして、こうまでして“お嬢様”を守る咲夜の姿に感心もしていた。だが、上条はあくまで目の前の人物の敵なのだ。説得は通じない。ならばする事は一つだろう。
「テメェの能力・・・・・・。封じさせてもらうぜ!!」
そう言って上条は右手の封印を取っ払った。そのまま咲夜に走り寄る。慌てずに時を止める動作をする咲夜だった。
が、時は確実に止まったのに上条の動きが止まらない。そのまま少年は突っ込んできた。
「くっ!」
慌てて横に飛んで避けた咲夜だったが上条も急ターンで向きを変えて追撃してくる。
(何故!? 何故この男は、私の時止めが作用しなくなった!!)
殴りとばされ、エントランスロビーに転がった咲夜は二階に立つ上条を見上げる。
「お前の疑問に答えてやるよ。俺には異質なチカラが宿ってる。その名は『幻想殺し』それが異能の力であるならば神様の奇跡だって打ち消せんだ。それは例えお前の時を止める能力だって例外じゃない諦めるんだな」
「な・・・・・・」
「そんじゃな~」
上条はそのまま奥へと駆け出した。咲夜はもう追う事はしなかった。静かに時間停止を解除した。
「・・・・・・この辺か?」
バカバカと手当たり次第に扉を開けていく上条。しかし、どこにも“レミィ”らしき姿はなく、上条は途方に暮れた。
「いや、どうするこの状況・・・・・・。仕方ない・・・か。眼を使おう」
上条はため息をついて、眼を『開く』。上条の瞳が黒色から金色に変わる。そのまま彼は周りを見渡す。その視界に、少女の反応が一つあった。
「屋上でもあんのか? この屋敷は」
上条は階段を探して走り出す。
―――屋上
「ふふ。太陽はすでに隠れて、もうこの地上に太陽の光が照らされる事はない!」
背中から大きな黒い蝙蝠のような翼が生えた一〇歳ぐらいの少女は、一人屋上で浮いていた。その少女は楽しそうにクスクスと笑うと、今一度紅い霧に隠された太陽を忌々しげに見つめる。
その時、
「パンツ丸見えだぞー? 降りてこいよ」
「だ、誰!?」
振り向いてスカートを抑え顔を赤らめる少女。
少女の元に現れた少年は、『お、ちょっと初々しい反応ゲット』などと言っている。
「誰なの? 博麗の巫女、じゃないわよね」
「俺は上条当麻。趣味で博麗の巫女の代理をしている者だ」
「へ? 趣味? 趣味ですって!?」
「ああ、そうだ。お前が“レミィ”か?」
「そうよ? 私がこの紅魔館の主レミリア=スカーレット」
「そうか」
納得した上条に、納得しないのかレミリアは。
「ちょっと待ちなさい。あなた今、趣味で博麗の巫女の代理をしているって言ったわよね」
「ああ」
「他に何か信念はないの? 誰かを助けたかったからとか、皆を守りたかったからとか」
「それは常に思ってる事だけど。でもそれなら別に博麗の巫女の代理じゃなくても良いだろ。博麗の巫女の代理は俺がやりたくてやってる。だから趣味だ」
「あ、そう」
「可愛いパンツ。見えてるぞ?」
「・・・・・・ッッ!! 見ないでッッ!!」
「降りてこいよ。上にいるから見えるんだよ。リボン付きが」
「見るな見るな! 詳しく見るな!!」
「いや、だったら早く降りてこいよ」
「わ、分かったわよ・・・・・・」
スカートを手で押さえながらレミリアは降りてくる。
「い、今すぐ私の下着の映像を消去しなさい!!」
「ごめん。目に焼き付ける能力持ってるから無理」
「なによ。それ」
「見た物を忘れない力」
「忘れろぉっ!!」
「無☆理」
「馬鹿ぁぁぁ!!」
ポカスカと殴られる上条。本当にこんなのがラスボスでいいのだろうか、とも思った。その時、上条の腹に穴が開いた。
「あ・・・・・・ガフッ!」
「油断したわね。全く、この容姿を使って攻撃することになるとは思わなかったわ」
「俺も、まさかいきなり腹に大穴開けられるとは思ってなかったぜ」
そう言って笑う上条の腹の穴は既に閉じており、怪我の匂いなど一切させなかった。
「へ? アンタ何者!?」
「・・・・・・んー。人間の皮を被った魔神・・・かな」
「ま、魔神!?」
「数一〇年前にな、俺は神様から神格をもらったんだ。それで俺は神様に―――って俺の話はどうでもいいんだ。もう霧を止めろ。お前が首謀者なんだろ?」
「嫌よ。あれがあるから私達吸血鬼も自由に出歩けるの。私達にだって外を自由に歩く権利ぐらいはあるはずよ!」
「ん。あるかもな」
「でしょう!?」
「でも、だからって他人を傷つけて良い理由にはならない。お前はそうやって一体どれぐらいの人を傷付けてきた?」
「あなたは今まで食ったパンの枚数を覚えているのかしら?」
「・・・・・・覚えてるぜ? 言ったろ。見た物は忘れない。人が迷惑してるんだ。霧を止めろ」
「わ、私は吸血鬼よ! 襲われる身の人間がどうなろうが知った事ではないわ!!」
「エサである人間を根絶やしにしても良いと。随分と自分勝手で先が見えてないお嬢様だな、妖怪の年齢は人間の年齢に見た目通り比例するのかな?」
「う、うるさいうるさい!」
「そっちが素なんだろ。飾らない方が俺は好きだぜ?」
「アンタに気に入られたくなんかないわよ!!」
叫ぶレミリアに上条はゆっくりと近づいていく。同じように説得の言葉をかけながら。
「お前さ、太陽の元を歩きたいんだろ」
「うえっ!」
「さっき恋しそうに太陽を見てたもんな。本当はお日さまの下を歩きたかった」
「ち、違う! 太陽なんて大っ嫌いよ!」
「でも、自分は吸血鬼。自分に微笑んでくれない太陽なんて消してしまえばいいと思った」
「違う。言わないで」
「だからこの霧を、この異変を起こしたんだろ?」
「お願いだから黙ってよ!!」
頭を抱え、身体を丸めてしゃがみこむレミリア。上条はその頭に左手をポンと置いて。
「もうそんなことをするな。俺が、お前がお日さまの下を堂々と歩ける方法を見つけてやるから」
「・・・・・・なによ、そんな方法あるの?」
「知らねーよ。だから探すんだ」
「私は敵なのよ!?」
「悪役がいつまでも悪役でいなくちゃいけないなんてルールはどこにもないだろ」
「・・・・・・そこまで言うなら・・・。力づくで抑えてみなさい!!」
「はぁ・・・・・・やっぱりそうなるのか・・・・・・」
「神槍「スピア・ザ・グングニル」!!」
紅く光る巨大な槍を構えるレミリア。
「うっわ! か弱い見た目の少女に大型の得物ってやっぱりロマンあるわー」
「何で余裕そうなのよっ!」
レミリアが大きく振るったグングニルは上条の左手が受け止めていた。
「余裕だから。じゃダメか?」
「当麻っ! アンタどこでそんな力手に入れたのよ!!」
「これは神の力じゃないから、ただの筋トレで手に入れた肉体だぜ?」
「筋トレ・・・・・・?」
「悪いな。レミリア。これで仕舞いにしようぜ」
「な、何する気・・・よ」
「必殺マジシリーズ。マジ殴り!」
空気を叩き潰した上条の拳は、凄まじい衝撃波を発生させる。全衝撃を前方へ逃がす工夫をしたため、避けたはずのレミリアも、多少は喰らったらしい。紅い霧を吹き飛ばしたその衝撃波を見上げたレミリアは、力の差を知ったらしい。
「ねぇ」
「何だ?」
「私を弟子にして」
「やだよ。面倒臭い」
「じゃあしもべでいいから!」
「貴音だけで間に合ってますぅ」
「ねぇお願い!」
「仮にも一国の主がそんな事言うんじゃありませんっ!!」
上条は呆れながらにも、レミリアを太陽光から守っていたりする。
これにて、紅霧異変は上条の手によって解決した。