幻想殺しと電脳少女の幻想郷生活 作:軍曹(K-6)
夜の街の中。赤いコートに赤い帽子。サングラスをかけた青年が歩いていた。
その青年に、黒い影が一瞬で近づき首をはねる。
が、すぐ再生してしまった。
「・・・やっぱり、一筋縄ではいかないか」
「・・・お前は」
「俺か? 闇夜の黒猫。上からの命でな。オマエを殺すぜ」
「人間か」
「・・・ああ」
青年の問いに少年は答える。
「私は吸血鬼アーカード」
「俺は人間、上条当麻だ」
「さぁ、かかってこい」
「あくまで受け身ですか、余裕そうだな~」
上条は笑うとアーカードに向かって銃を構える。
弾数は九発。全てアーカードに当たった。
だが・・・
「さっき首を切り落としても再生したんだ。まだ死んじゃいないよな。アーカードさん?」
「ふむ。これだけか?」
「銃でできるのはこれぐらいだな。後は、俺の人間としての身体能力ぐらいだ」
上条はそう言うと、銃をしまい構えをとる。
「・・・かかってこいよ。
「じゃあ、遠慮なく」
ボン!! と、音が響いた。アーカードの右脇腹が吹き飛び、中が見えていた。
「ほほう」
「結構柔らかいんだな」
上条はそう言うが、アーカードは気にした様子もなく回復した。
「では、こちらからも行こうか!」
アーカードの持つ黒い銃が上条に火を噴く。少年の胸の中心に当たった銃弾は、皮膚を貫通せず、そこで止まっていた。
彼はそれを指でつまみ上げると、まじまじと見つめる。
「うっわスッゲー、デカさ。これ本当に銃弾かよ」
「お前、本当に人間か?」
「何? 俺は人間じゃないって? 正真正銘ただの人間だよ。化物って呼ばれることはたまにあるけどな」
上条のその言葉にアーカードはふむ。と言葉を口にする。
「? どうした?」
「・・・拘束制御術式第3号・第2号・第1号、開放。状況A「クロムウェル」発動による承認認識。目前敵の完全沈黙までの間、能力使用。限定解除開始。では教育してやろう。”本当の吸血鬼”の闘争というものを・・・・・・」
「は?」
上条は思わず首をひねる。その瞬間、アーカードの使い魔たちが襲い掛かってきた。
「なっ!? ああ!?」
「安心しろ。そいつらはいうなれば魔力の塊、貴様が嫌う殺生にはならん」
「なんで俺の身上を知ってる」
上条は基本不殺主義だ。だから標的しか殺さない。この状況も彼にとっては望まないことなのだが。
「仕方ないか」
上条はそう言うと、今まで避けていた狗のような生物を蹴りで四散させる。
「ほう」
「幻想殺しを封印。正真正銘ただの手に。連続・普通のパンチ!」
上条の右手の拳の壁が、使い魔たちを影に戻す。
そしてよそ見をした瞬間。上条の左腕がぶら下がった状態になった。
「あ?」
「ククク。よそ見禁物だ
「忠告ありがとよ」
「どうする? もうその左腕は使えないぞ? 降参するか? 逃げ出すか? それもまた一興か」
「うるせぇよ」
「・・・?」
「うるせぇっつってんだろ」
上条は一枚のカードを右手で持つと左腕の千切れかけた部分に当てる。
(これは・・・食い千切られた・・・という事か。喰らう側の人間が、ね)
「修復「エレメントハンター」」
上条の持つカードが光り千切れかけていた腕が元通りの状態に引っ付いた。
「何だ。それは」
「魔法だよ。お互い全力で戦った方が楽しいだろうが?」
上条は言うが早いかその拳をふるう。
拳圧が生み出した衝撃は、爆風となりアーカードの体をボロボロにする。
「できれば降参してくれるとありがたい。あんたの力がほしいからさ。
「力がほしいだと?」
「ああ。俺はさ、化物を倒すのは人間の仕事だと思うんだ。倒すべき怪物は“悪”で、守るべき人間は“善” なあ、それは当たり前だ。だがな、悪役がいつまでも悪じゃないといけないなんて
「・・・・・・」
「悪にだって悪の救世主がいたら良いじゃねーか。沈んでいた闇の底から引きずり出してもらえばいいじゃねーか。俺は闇夜の黒猫だぜ? 誰よりも深い闇の中にいると俺は自負してるね。さて、話がそれたがアーカード。いや、ヴラド=ツペシュ公爵。俺の友達を救う手伝いをしてくれ」
「・・・無理だ。私には使えるべき主がいる。貴様に手を貸している暇はない」
「・・・・・・そうか。だったら勝手に喰らっていくぜ!」
上条は叫ぶようにそう言うと、右手の甲に幻想紋を、両目に神々の義眼を発現させる。
「! その紋章は!」
「・・・知ってるのか?」
「詳しいことは知らないが、それが世界の基準点であることは知っている」
「あーらら。そいつはうれしいね」
上条がそういう間も、右手の甲から腕、顔、左腕、胸・背中、足と幻想紋から力の波が刻まれていく。
「
上条がふるった右手から巨大な炎の柱が飛び出してくる。
「なるほど」(人間の状態のままで
「ちょこまかと。
「・・・なっ!?」
アーカードの胴体辺りを囲う様に三つ、幻想紋を円が囲う幻想の烙印が出現する。
「連続・普通のパンチ」
アーカードを囲む幻想の烙印に上条の拳が叩き込まれる。そして離れながら上条は一言告げた。
「・・・爆散」
瞬間。
アーカードの胴辺りで大爆発が起こった。
服までボロボロになったはずのアーカードは笑いながら、それでも何かが引っかかるのか、上条に問いかける。
「何故だ。何がお前をそこまで強くした。何故、人の心で体のリミッターをすべて外せているのだ」
「・・・・・・自分のため。と言いたいところだけど、違うよな。俺は守りたい何かのために頑張ってきた。それが例えこの世の全てでも、世界を敵に回したたった一人の存在でも。手を伸ばしてあげることで救えるのなら、助けてやりたいって、思っただけだ!」
上条は叫ぶ。無意識の内に抑えていた力を開放し、リミッターが外れた体を最大限酷使できる状態にしながら。
「・・・・・・ククク。そうか、そうか!」
「あ?」
「・・・面白い。貴様の考えはそこらの人間とは違うようだ。おそらくお前は、いま私の前に立つときも、その力がなくても立ち上がったのだろう? 拳を握ったのだろう? 面白い!」
「・・・ああ?」
「お前は私を喰ってどうするつもりだ」
「友達を助ける。ただそれだけだ」
「ほほ~う」
「てめーは死にはしねぇよ不死者。俺の幻想喰いのでっかい胃袋の中で、愛した女性とナカヨシやってろ」
「ミナが・・・そこにいるのか?」
「ああ。あいつは俺に殺されたいって言った。長く生きたから、死にたいって言ってな。だが俺は殺してはいない。あいつらの命は俺の命になったようなものだ。ミナの吸血鬼の特性が俺に少し影響を与えてる。回復力も上がってるが、それ以前に防御力が化物だけどな」
「・・・・・・はっ。私は今から30秒動かない。喰らうなら好きにしろ」
「は?」
(・・・翻訳するとですねご主人。喰われてあげないこともない。だがそれは今から三十秒の間だ。喰うなら早くしろ。です)
(何そのツンデレ)
上条はまあ好都合だ。と思うとアーカードの懐まで入る。
「アーカード。また、会おうぜ」
その直後。巨大な龍の顎に丸呑みされ、アーカードがこの世から消えた。
旦那が弱い?
上条さんが桁外れに強いだけです。人間単体として。
眠っていた間アーカードが何をしていたかは知りませんが、シュレディンガーを取り込んだ上で、まだどの命も殺していないアーカードさんです。そうした方が都合がいいので