幻想殺しと電脳少女の幻想郷生活 作:軍曹(K-6)
軽い足音を立てて、上条当麻が人里に降り立った。
が、
「な、なんだ・・・これ。人里がねぇ・・・・・・」
「お前か。こんな真夜中に里を襲おうとする奴は」
「あぁ? んな訳ねーだろ」
「じゃあ何故、吸血鬼が人里に来る必要がある」
「ん、あ。い、いや。俺だって、慧音!」
「・・・お前が誰であろうと関係ない。里を襲う者は倒す」
「だぁあぁあぁあぁあ!! 話が通じないのは相変わらずかぁーっ!!」
上条はやけくそ気味に右手と左手、両手に一枚ずつスペルカードを出現させる。
「「命名決闘開始!!」」
「スペルカード 産霊「ファーストピラミッド」」
「スペルカードW 幻槍「
上条が放った
「なっ・・・! この現象は!」
「矛と盾の登場する故事成語ぐらい知ってるよな?」
「矛盾・・・!」
「
「知らんな。それは使用者の使い方次第だろう。私の知った事ではない。スペルカード 始符「エフェメラリティ137」」
「スペルカード。「人間でいる事に耐えられなかった弱い化け物」」
上条の体が異形に歪む。紫のスキマのような大量の目が体中に現われる。
吸血鬼アーカード。そのチカラ全てを身に宿す上条当麻の吸血鬼としての全力だった。
「何・・・だ。そのスペルカードは!」
「その名の通りだよ上白沢慧音。この能力の元となった化け物は、人間でいる事から逃げた。自ら神に背き、吸血行為をし吸血鬼となった。そう、魔が差したのだ」
犬・猫・鳥・蛇・獣・虫・魔物・・・・・・etc.
この暗闇の中、上条の使い魔が大量に集まってきた。慧音も流石にヤバいと思ったのか一歩、二歩下がる。
「さぁ、やろうぜ」
「それが・・・お前の本当の姿か」
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。そもそも、俺にとって姿形など何の意味もなさない」
「そうか・・・」
「それに、俺は別に人間を取って食う気なんかさらさら無いよ」
「なっ!?」
「吸血鬼が血を吸う以外で人間を襲うか? そもそも俺は人間だ」
「・・・待て。噂には聞いていたが・・・、当麻なのか・・・?」
「ああ。俺は上条当麻。趣味で博麗の巫女の代理をしている者だ!」
「そう・・・か。本当に人間ではなくなったのか」
「バーカ! 俺は人間だ! 俺のこれはスペルカードだ」
「・・・・・・良く分からないが、私の知っている当麻だというのか?」
「俺は上条当麻。それ以上でもそれ以下でもないんだよ」
慧音は上条のその言葉に笑うと、人里を復活させた。
「おぉ!?」
「さ、行くと良い。竹林の方に犯人がいるはずだ」
「・・・知ってるのか」
「私は歴史を知っているからな」
「・・・そうか。ンじゃ!」
そう言って上条は人里を駆けていく。
―――人里のとある家。
「あのーすいません。竹林ってどっちの方にありますか?」
勢いよく飛びだしたものの、上条は迷っていた。近くにあった家に声をかける。
すると、
中で倒れている人を発見した。
「?! ち、ちょっ! 大丈夫ですか!?」
「・・・・・・き、キミは・・・?」
「あ、俺は博麗の巫女の代理をしている者です」
「! そうか。なら丁度良い。私の代わりに、私の娘の敵を取ってくれ」
「敵討ち・・・相手は妖怪ですか?」
「ああ。吸血鬼だ。四十年前に私の娘は喰われた。あの美しい容姿を持つ吸血姫になっ!」
ゲホゲホと咳き込み始めた老人に、上条は問いかける。
「いいんですね? 自分で取らなくても」
「いいさ。私はもう動けん。その代わり、そこに立てかけてある二本の刀でヤツを取ってくれ。私が打った。これでも刀鍛冶は得意でな。三〇年以上もかかってしまったが、ようやくできた」
「・・・・・・」
上条が老人の指差す先を見ると、それは二メートルを超す大太刀と通常の小太刀が置いてあった。
「何だ? あれ」
「妖刀だ。長い方が妖怪殺しの妖刀『心渡』。短い方が妖怪生かしの妖刀『夢渡』」
「何で。生かす物なんて作ってんだ」
「娘がな・・・生きていると希望を持ったんだ。だから、希望も作った。吸血鬼を、人間に戻せる。そんな可能性を持ったものを」
「生かさなくて、良いのか」
「年老いた父親の元に戻っても何もない。母親もいない。もう、生きていたとしても切ってくれ」
「分かったよ、じいさん。この刀、使わせてもらうぜ」
上条は『心渡』と『夢渡』。両方の妖刀を手に持った。
「さて、じいさんの願いを叶えに吸血鬼を探しますか!」
「若いの」
「何だ?」
「奴の根城は迷いの竹林。ここから南にまっすぐ行ったとこ・・・ろ・・・だ」
「お休み。じいさん」
「・・・・・・」
上条は振り返らずに家を出る。迷いの竹林はすぐそこだ。
妖刀「心渡」
ジャッカル・ハーディスと並ぶ上条当麻のメイン武器の一つになります。
次回はその吸血鬼との闘いです。