幻想殺しと電脳少女の幻想郷生活 作:軍曹(K-6)
「ああもう。こっちに来させちゃ駄目だって言ってるのに」
「あれ? ここトイレじゃないのか。ま、犯人がいるならそれでいいか」
先程の女性と偶然にも再会した上条は、拳を握る。
「悪い。月が沈む前にコトを終わらせなくちゃならないんだ。お前は犯人じゃないって勘が告げてるんでな!」
―――幻槍「グングニル」―――
本来槍とは突き刺すもの。だが、上条はそれで女性を殴打した。
のびた女性のスカート部分を地面と槍で縫い合わせて先に進む上条。
「あー名前聞いてないや。ま、いいか」
上条が暫く歩くと、綺麗な満月が見えてきた。
「満月だ」
「そう、ただの満月よ。貴方達が何百年も何千年も見てきた本物の魔力」
「魔力? 満月光線ビビビみたいなものか」
「変な名前をつけないの! 今は、月本来の力が甦っているの。穢れのない月は、穢れのない地上を妖しく照らす。この光は貴き月の民ですら忘れた太古の記憶なのよ」
「ほう。そりゃ大層なこって。だがな、何だって満月が出てるんだ? 今幻想郷は綺麗な満月が見えない状態のはずだぜ?」
「永琳の術で穢れのない月と穢れのない地上は隔離された。私はここにいる事で、地上からも月からも身を隠す事が出来る様になったわ」
「おぉ! あの女性えーりんつーのか! ・・・にしても大げさなかくれんぼだな」
「でもね。永琳のこの術は完全だけど、あまり好きじゃないわ。ここには誰も居ない。誰も訪れない。退屈過ぎて死にそうだわ」
「なら、私めと踊りませんか? お姫様。もちろんここじゃなくて外でな」
「まぁ、私はここの生まれじゃないから、私を連れ出すのは本当に大変な事よ。・・・・・・大昔にも同じ様なやり取りをした事があるわ。・・・・・・そうだ、こんな私を連れ出そうとする人には、いつも難題を与えてきたわ」
「難題? そりゃなんだい? www」
「今まで、何人もの人間が敗れ去っていった五つの難題。貴方に幾つ解けるかしら?」
「解ける解けないじゃないんだな。これが」
上条は息を吸い込んでから言った。
「解くんだ!!」
「そう言うの、キライではないわ。スペルカード。難題「龍の頸の玉-五色の弾丸-」」
「おっ。ならこっちは! 即席スペルカード。解答「龍の首の珠」」
上条の放った弾幕は、綺麗に姫様の弾幕を相殺していく。
「やっぱり思ったとおり。アンタは人間が書いた竹取物語主人公のお姫様って訳だ」
「あら、頭の回転が意外に速いのね」
「それなりに目星はつけてたぜ? 周りにいるのはウサギ、月、そして姫。月の姫って言ったら俺は竹取物語のかぐや姫ぐらいしか思いつかないんでな」
「正解。私は蓬莱山輝夜。貴方達がよく知るかぐや姫と同一人物よ。多分ね」
「自信はないんだな・・・」
「ええ。貴方は?」
「俺は上条当麻。趣味で博麗の巫女の代理をしている者だ!」
「・・・フフッ。貴方本当に面白いわね。スペルカード。難題「仏の御石の鉢-砕けぬ意思-」」
「お褒めいただき光栄ですよ! 即席スペルカード。解答「仏の御石の鉢」」
先程と同様。上条の弾幕で輝夜の弾幕が相殺されていく。
(いくらスペルカードバトルとはいえ、ここまで私の難題をスラスラ解くのも不思議ね・・・・・・)
「あー、面白。古文の復習してる気分だ」
「・・・なるほど。外の世界での学問で竹取物語を学んでいたのね」
「ん。そういう事」
「スペルカード。難題「火鼠の皮衣-焦れぬ心-」」
「即席スペルカード。解答「火鼠の裘」」
「じゃあこれは? スペルカード。難題「燕の子安貝-永命線-」」
「即席スペルカード。解答「燕の産んだ子安貝」」
上条は続けて二度、輝夜の弾幕を相殺する。
(次は蓬莱の玉の枝・・・だよな?)
「・・・今考えた難題を特別に出してあげる」
「は!?」
「即席スペルカード。難題「歪んだ世界を正す力-神殺し-」」
「・・・・・・ッ!!」
上条を殺しに来るような、訳の分からない弾幕だった。
「さあ、人間の少年。上条当麻。これが解けるかしら? 解けたら貴方のことを認めてあげる」
「別に求婚してもないのに新たな難題作られてもねぇ・・・。でも、これは俺にとっては楽な解答だ」
「?! な、神よ!? 神様を殺す力よ!?」
ゴッ! と、輝夜の弾幕である光が止められる。
「その難題は、生憎。俺の力だ」
「神を殺すなんて不可能? 確かにな」
そう。解は元から持っていたものだ。
「俺じゃなかったら諦めてるね。スペルカード。幻牙「
「な・・・っ!!」
神殺しの右手。そう呼ばれる力を持つ少年は今日も拳を握る。
「ここからは、俺のターンだ。スペルカード。幻槍爆弾「全てを消し飛ばす幻想消去」」
上条の体から莫大な力が溢れ、今回の時間を止めた“永夜”の力、月が欠けた結界の力両方が一瞬にして効果を失った。
「そもそもここは外界と隔離された幻想郷だ。恐れなくても月の使者なんか迎えに来やしないよ」
「・・・杞憂だったのね。迷惑をかけたわ」
「構わないさ。面倒臭いし、出来れば畳の上でゴロゴロしていたいけど、それでも。退屈しないよりマシさ」
「・・・そうね」
即席スペルカード。三分でできあがる。
既製品のラーメンみたいだなぁ。