幻想殺しと電脳少女の幻想郷生活 作:軍曹(K-6)
「・・・・・・何やってんの?」
「いや~。ケンカ?」
「あ、ご主人。お帰りなさい」
「ケンカ?」
上条が異変を解決(月も永夜も)して帰ると、博麗神社では霊夢と紫が地べたで目を回していて、萃香と貴音が立って笑っていた。
「・・・おーい。霊夢、大丈夫か?」
「・・・ん。とう・・・ま?」
「はいはい。上条さんのお帰りですよ」
「おっ。じゃあそろそろ約束を守ってもらおうかな?」
「・・・宴会が終わったらにしてくれないか? 約束は守る。絶対付き合うから・・・。もう、今日は疲れた・・・・・・」
上条はそれだけ言うと、倒れるように眠った。
―――少しして。
「・・・・・・あれ?」
上条は周りの喧噪で目が覚めた。
「起きたか? あるじ様」
「・・・忍?」
「起きたようじゃな。もうすでに宴会は始まっているのじゃが。いつまでダラダラしとるつもりじゃ」
「要するにお前も遊びたいんだな。おk把握」
「ち、違うのじゃ!」
「・・・お前のことはもうみんな知ってるのか?」
「一応な。あるじ様をここまで運んだのは儂ではないが」
「ふーん」
上条は宴会の会場を見渡して、
「永夜異変の宴会だよな?」
「・・・ちょっと待って当麻」
「・・・なんだよ」
「永夜異変なんて呼び方したら悪いの私達じゃない」
「そりゃ、月が欠けたのなんて人間からしてみればどうでもいいことだからな。時間が止まったことの方が記録に残るさ」
「・・・・・・くっ」
「殺せ」
「・・・・・・ご主人?」
「・・・ん。何だ」
「何で従僕属性が増えてるんですかぁー!!」
「な、泣くな泣くな! 痛くないけど痛いから!」
ポカポカと可愛らしい擬音で叩かれる上条は少し微笑みながら貴音を引きはがそうとする。
「当麻。あの子は誰?」
「・・・? あの子? 霊夢お前一体誰のこと言って・・・」
「どうも! 阿リャリャ木さん!」
「阿良々木だ」
「失礼。噛みました」
「・・・っていうか、人の名前をうっかり八兵衛みたいに言うんじゃない・・・」
「可愛らしいと思いますが」
「すげえヘタレな奴みたいだ」
「んー。まあ、存外、お似合いではないかと」
「・・・で、結局。当麻のことを阿良々木なんて呼ぶコイツは誰なの?」
「あっ、申し遅れました。私、八九寺真宵と言います! 人を迷わせる、迷い牛の妖怪です!」
「・・・・・・迷い牛? 強いの?」
「まぁ、失礼ですね。どう思います? 阿良良々木さん」
「今度は良が一個多いからな?」
「失礼。噛みました」
「違フ。ワザトダ」
「・・・かみまみた!」
「わざとじゃない!?」
上条は一通り突っ込んだあと、宴会に向き直り。
「あれ。何か大変な約束をしていた気がするけど・・・。何だっけ」
「酷いなー。私との約束を忘れるなんてさ」
「・・・あー。思い出した。そうだ、鬼と闘う約束してたんだった」
「「え!?」」
「本気なの当麻!!」
「鬼と闘うって・・・萃香と!?」
「ああ。異変解決の後に闘うって約束してたのを忘れてた。さて、やるか?」
「スペルカードはどうする?」
「使わなくていいんじゃね? 鬼としてもそっちの方が良いだろ?」
上条と萃香が離れて向き合う。周りには妖怪や妖精が集まっていた。
「はいはい! 伊吹童子対神上統魔の闘いだよ! どっちに賭ける?」
「当麻だろ」
「でも相手は鬼だぜ?」
「あたいは当麻に賭けるよ!」
「・・・・・・あいつら・・・。人で博打してんじゃねぇよ」
「はは。まあいいじゃないか。賭ける賭けないは無しにして、勝算はあるのかい?」
「無けりゃ、鬼に挑むなんて馬鹿なことはしないさ」
「違いないね」
二体の化け物はにらみ合う。
「言っておくけど、人間が鬼を退治できるかな? もうその方法は失われているのに」
「方法なんか関係ない。殴ってぶっ飛ばす。それで終わりだ」
「面白いね」
「そりゃどうも」
そして上条は右拳を握る。
「・・・・・・決闘・・・開始ッ!」
ドンッ。と、合図と同時、爆発的に飛びだした上条の拳が、萃香によって止められていた。
「・・・? この程度なのか?」
「ばーか。ちょっとここからだ」
「は? この体勢で」
強引な力業。すでにのびきった腕を、体を近づけることで曲げた上条は、さらにそこから拳を突き出した。
「ぐぅ!?」(あの体勢から・・・この衝撃を!?)
「さて、ここからが弾幕(物理)だ」
上条はそこで笑って。
「例え鬼だろうが何だろうが、レベルを上げて物理で殴る戦法には敵わんことを教えてやるぜ」
「私もまだ本気を出してないことを忘れるなよ!!」
「連続。普通のパンチ」
スペルカードとしてではなく、単純な攻略の隙が無い拳の連撃。
「なっ!」
「あれ!? 当麻の弾幕ってあんなに濃かったか!?」
「アレは弾幕じゃないですよ。命名決闘では使わない。ご主人の連撃です」
「でも、本気じゃないんでしょ?」
「ええ」
萃香も何とかそれをかわそうとするが、あまりに速く。一撃二撃を喰らってしまう。
「あぐっ・・・!」(重い! コイツ、本当に人間か)
「どうした。鬼。その程度か」
「こっちもそれなりに本気を出さなきゃね!」
その言葉とほぼ同時、上条の腹部に少女の一撃が決まっていた。鬼としての力が人間の腹に決まった。それは大きな事だが、上条は一歩二歩後ろに下がって。
「いってー。打撃がここまで効いたのは久しぶりだ」
「なっ!!」(それだけ!?)
「じゃあこっちから行くぞ」
ドゴッ!! と、上条の拳が萃香の腹部に埋まる。インパクトが少女の体を貫き、背中側から空気を振るわせ飛びだしていた。
「はっ。どうだ? 萃香さん」
「・・・こりゃ、本気を出さなきゃダメだね。もし、死んだらごめんね」
「ん?」
ボゴッ。と、上条の顔面と腹部に衝撃が走る。勢いそのままに上条の体は数メートルノーバウンドで吹っ飛び、地面を転がって止まった。
「どう? 博麗の巫女の代理。これが鬼の力だ。といってもまだ本気じゃないけどね」
「あ、あわわ」
「当麻が吹っ飛んじゃった!」
上条が止まった位置は土煙がたっていて、よく見えないが、ある程度体幹がしっかりしている彼が地面から剥がされ飛ばされた。その事実は今まで闘ってきた妖怪達を驚かせるのには十分だった。
「もしかして死んじゃった? まぁ先に謝っておいたから許してよね」
「―――勝手に殺すなよ」
土煙の向こう側に立つ影が見えた。姿がハッキリする。立っていたのはもちろん上条だったが、額が割れ、血が流れ出ていた。
「―――だが、これが本気じゃないって聞いて安心したぜ。こっちも久しぶりに本気になれるってもんだ」
「・・・・・・無傷って訳じゃなさそうだけど・・・。私の拳以外でダメージを受けてない感じだね」
「ご明察」
「しかし一体誰だい? 当麻に本気を出させた相手ってのは」
「ここまで強くなる前にな。先代の博麗の巫女に何度も全力で挑んでたよ」
パキパキと、上条の体の節々から異形な音が響いていく。それはまるで何かが割れるような音。
全員が息をのむ。上条の体に異変が起こる。まるで甲殻類の脱皮のように、上条の体を覆っていた何かが剥がれ落ちていく。
ある程度剥がれた所で。ガラスを割ったように、何かが全方位に飛び散った。
「何だろうな。これ」
「さあね。全力を出す為の儀式って感じかな」
「俺も分からないのにお前に分かる訳無いか」
上条はそのまま地面から火花を散らして飛びだした。
「よいしょっ!!」
表現できないような音を立てて、萃香の体が地面にめり込んだ。
「ハハハッ! どうだっ―――」
上条の台詞も途中で途切れ、吹き飛ばされる。
「戦闘の最中に動きを止めるなよ」
「ご忠告どうも」
お互い初期位置辺りまで離れ(偶然)、再度向かい合う。
「さて、人間様を舐めるなよ!」
「お前が人間なら、私は認識を改めなくてはならんだろうさ」
衝撃波の風が辺りに巻き起こる。お互い一歩も引かずに攻撃や防御を繰り返す為、地面にクレーターもでき始める。
「そろそろ終わりにしないかね? 鬼さん」
「ここまで鬼とやり合えるお前が人間なのが驚きだ」
「生憎人間さ」
「終わりにしたいのは山々だが、ソレにはどちらかが降参だぞ?」
「ハァ? 何言ってんだ? 決闘が勝者を決めて終わるワケないだろ。決闘ってのは敗者を決めて終わるんだぜ」
「ふっ。ならばどちらが敗者か」
「本気で決めますか」
連撃の最中、上条の右手だけがいやに鮮明に写る。
「必殺マジシリーズ。マジ殴り」
「なっ!!」
スペルカードでは決して出さない威力。紅霧異変のときよりも、春雪異変のときよりも爆発的なエネルギーが生まれる。
その衝撃が萃香の左手を吹き飛ばした。
「「「「なっ!!」」」」
「・・・ずっとこの技を使って空気を叩き潰してきたが、こうすることが本来なんだよなー」
上条はそう言って右手を開いたり閉じたりしている。その拳には傷はない。一体いつから彼の体に傷はつかなくなったのだろうか。
「だから久しぶりだ。こんなに俺の体がボロボロになったのは。さあどうした? まだ腕が
「!!」
「鬼の力を見せろ!! 体を変化させろ!! 腕を再構築して立ち上がれ!! 拳を握って反撃しろ!! さあ闘争はこれからだ!! お楽しみはこれからだ!!
「ばッ・・・ば。ばッ化物か!?」
「
上条の右手。正確には肩口辺りから半透明の何かが飛びだして形を作り出し始める。
「お前は、龍の
完全に形作られたソレは、西洋の龍の顎。言い換えると、ドラゴンストライク。だろうか。
「いい加減しろバカ当麻!!」
―――
ドゴォ!! と、上条の頭部が一瞬でヘコみ、地面に頭だけがめり込んだ。
「はい。ウチの馬鹿当麻が失礼しました。ほら、ご主人も謝る!」
「・・・・・・(どうやって謝れっつうんだこの野郎)」
上条は両手を使って器用に頭を引っこ抜く。
「・・・悪かったな。ちょっとやり過ぎた」
「・・・いや、いいんだ。当麻が人間じゃないってのはよく分かったから」
「一応人間の範疇で闘ってたんだけどな」
「「「「ウソつけ」」」」
「ウソじゃねーよ」
上条はそう言ったが、生憎誰も聞いていなかったようだ。
「あ、そうだわ! 肝試ししません?」
「どこで」
「・・・迷いの竹林でいいじゃないですか?」
輝夜の提案で迷いの竹林で肝試しをすることになったようだった。