幻想殺しと電脳少女の幻想郷生活 作:軍曹(K-6)
プロロローグです! ロが一個多いぞ。 失礼、噛みました。 違う、わざとだ。 かみまみた! わざとじゃない!?
上条当麻は幻想郷の人里を少し離れた道を、アリス邸を目指し歩いていた。
「あー・・・体中がいたい・・・。あの童師が・・・!」
上条は伊吹萃香の事をそう呼ぶ。最近上条は彼女に弟子入りしたのだ。
それもこれも、萃香が
【「当麻、力任せに拳を振るいすぎだよ。もう少し別の鍛え方をしてみたら?」】
といったせいだ。上条が、『人里での武術は俺の力じゃ無理』と、答えたら。紫や霊夢が結託して、上条に枷を作った。
上条の全力百分の一まで力を強引に押さえる枷。もしそれ以上の力を出そうとしたら、上条の意識が刈り取られるという仕組みだ。
上条は己の右二の腕にはめられた、腕輪を恨めしそうになでる。腕輪なら外せばいいと言うが、そこは貴音まで協力して、幻想殺しにギリギリ反応しない、幻想喰いが食らえないぎりぎりのラインで枷を作ったという。
が。
上条は“枷”の正体に気づいていた。二の腕についているのはただの外れない加工がされた見せかけの枷。本物の枷は上条の“魂”に深く突き刺さっている。
(この枷を外そうとしたら俺の命が吹っ飛ぶって算段か・・・。考えたなー。ま、いつか外してやるけど)
そんなこんなで昨日もこってり絞られた上条は体に疲労感を覚えていたのだった。
「・・・・・・ん」
と、その途中。上条は見覚えのある背中を見かけることになった。背中というか、リュックサックなのだが。
「八九寺じゃん」
小さな身体に、大きなリユックサック。ツインテールに、見るからに生意気そうな横顔は、確かに八九寺真宵だった。小学五年生位の女の子。
上条自身、こうして見かけるのは、春に入って初めてだ―――いや、本当に、随分久し振りになるんじゃないだろうか。
上条はまるでトト□のようにニタリと笑う。が、すぐに顔を取り繕って。
(んー、んー、んー・・・・・・。アリスとの約束があるしなあ。大体俺、あの生意気な小学生、そもそもあんまり好きじゃないんだよなあ―――いやもう、はっきり言っちゃえば嫌いだし。もう大嫌い。見かけたからって声かけるような仲じゃ、そもそもないんだよ。たとえ正面から目が合っても無視するくらいの気持ちがあるだろう! でもまあ、そうだな、年上の高校生として、小学生相手にそんな態度を取るのも器がちっちゃいか。嫌いな相手ともコミュニケーションが取れてこそ、一人前の男だろう? あくまでも子供に接する際の当然の態度として、ちょっとだけ相手をしてやるさ。いやもう本当全然会えて嬉しくなんかないけど、せめてその振りくらいはしてやるのが最低限の礼儀って奴かな? ふっ、俺も甘い)
上条はクラウチングスタートの体勢になると、かつてないほどのスタートダッシュで八九寺の元へ駆け寄り、彼女の身体を力の限り抱き締めた。
「はちくじいい! 会いたかったぞ、この野郎!」
「きゃーっ!?」
突然背後から抱き締められ、悲鳴をあげる少女八九寺。上条は構わず彼女の柔らかなほっぺたにキスの雨を降らせた。
「ああ、もう、全然会えないからさあ、お前どっか行っちゃったんじゃないかと思って、もう気が気じゃなくて、ああもう、だからもっと触らせろもっと抱きつかせろもっと舐めさせろ!」
「きゃーっ! きゃーつ! ぎゃーっ!」
「こらっ! 暴れるな! パンツが脱がせにくいだろうが!」
「ぎゃああああああああああああっ!」
八九寺は大声で悲鳴を上げ続け、
「がうっ!」
と、上条に噛み付いた。
「がうっ! がうっ! がうっ!」
「痛え! 何すんだこいつ!」
(痛いのも。何すんだこいつも、やっぱり俺だった。いやゴメン本当は俺、こいつが大好きなんだ)
一生消えないんじゃないかと言うくらいの歯形を上条の腕に残したところで、八九寺は上条の魔手(?)を逃れ、距離を取って、
「ふしやーっ!」
と、うなり声をあげた。野性化モードだ。
「ま、待て! 八九寺、よく見ろ! 俺だ!」
この場合、たとえよく見て上条だったからといってどうということはないのだが。
言うだけ言ってみるものだったようだ。野性化し、赤い警戒色に染まっていた八九寺の瞳が(人間じゃねえ)、徐々に元の色に戻っていく(念のために表記しておくが、それは青色ではない)。
「、・・・・・・あ、・・・・・・」
と。
八九寺は立てていた爪を仕舞いつつ、上条の顔を確認して、言った。
「阿良々木・・・・・・読子さんじゃないですか」
「概ねその通りであって非常に惜しい感じなんだが、しかし八九寺、人を神保町に本で詰まったビルを所有している大英帝国図書館特殊工作部勤務の紙使いのおねーさんみたいな名前で呼ぶな。僕の名前は阿良々木暦だ」
(つーかお前、うっかり噛まずに俺のあだ名をそのまんま言っちゃったもんだから、下の名前で無理矢理噛んだな)
上条はそう心の中で突っ込んだ。よし、やることはやった。と上条が歩き出そうとした時だった。
「少々お待ちください、阿良々木さん! 最近阿良々木さんのセクハラが真剣に犯罪のレベルに到達しつつあります! 次あたりわたしの貞操がかなり本気でピンチです!」
「何言ってんだ、あれくらいのハグで。アメリカでは普通だよ」
「後ろから忍び寄ってのハグなんてありますか!」
「いつまでもそういう既成の枠にとらわれてるところが、この国の駄目なところなんだよな」
「さっきから阿良々木さんはどこの国の人の立場で語っているんですか! ・・・・・・あと阿良々木さん、阿良々木さん的にはほっぺにキスしただけのつもりでしょうけれど、何回かは微妙に唇の端とかにも触れちゃってますからね!」
「マジで!? それはごめん!」
上条はかなり本気で謝りに行く。が、原作での彼の特技である土下座はしないようだった。
「しかし、それはそれとして、阿良々木さん。今日はどちらにお出かけですか?」
「お出かけっつーか。今日はアリスの家に呼ばれてるんだよ」
「ほほう。上条ハーレムですか」
「? お前は何を言っているんだ?」
「世の中金だなって話です」
「いや他にもあるだろ・・・・・・。愛とか」
「はい? 愛? ああ、はいはい、知ってます。それ、こないだコンビニで売ってました」
「売ってたの!? コンビニで!?」
「ええ。二百九十八円で」
「安っ!」
上条はそこでふと思って。
「そう言えばよくコンビニなんか知ってるな」
「私と忍さんはかなり前につい近現代日本から幻想入りしたんですよ」
「・・・・・・まぁ、外から来たからコンビニを知っているというワケか」
「そうです」
上条は何となく納得して、そのまま歩き出そうとすると。
「ふうむ」
と。やや難しい顔をして、八九寺が腕を組んでいた。
「・・・・・・?」
「なるほど、修羅々木さん」
「ものすげー格好いいからむしろそっちの名前に改名したいくらいだが、しかし八九寺、何度も何度も繰り返して言うように、僕の名前は阿良々木だ」
「失礼。噛みました」
「違う、わざとだ・・・・・・」
「噛みまみた」
「わざとじゃないっ!?」
「ファミマ見た?」
「そんな気軽にコンビニの場所を確認されても!」
(愛か? 愛を買いに行くのか? 二百九十八円で!)
上条はそんなおふざけをしたあと、八九寺と分かれて先に進むことにした。
「今度は博麗神社にも遊びに来いよ?」
「・・・迷わせることが目的の私は、大抵迷いの竹林と人里を行き来してます。博麗神社は幻想入りして迷った者が訪れる場所。私が行っていい場所ではありません」
「・・・・・・なるほど。じゃあな! 八八寺」
「ええ。では! ・・・・・・ってちょっと待ってください! 阿良々木さん! 阿良々木さん!?」
最後にボケだけ残して上条は去った。
*
「・・・確かここって太陽の畑・・・。迷ってるな! アリスの家と逆方向だぜ! ・・・・・・はぁちくじぃいぃいぃい!!」
上条はストレスを発散させるために手近にあった向日葵の花を引っこ抜く。
それを地面に叩きつけて踏み潰し、スッキリしたのか八九寺を捜しに行こうとした上条は、殺気を感じて飛び退いた。
「んだ!?」
「あなた、自分が何をしたのか分かってる?」
「・・・八つ当たり」
「そう。それで私の花畑を荒らしたの。死んで」
「唐突に喧嘩を売らないでくださいませんかねぇ!!」
上条は「マスタースパーク」をその身に受けても無傷のまま立っていた。それに興味を引かれたのか女性は恍惚とした表情で。
「いい玩具見ぃつけた」
「俺で遊ぼうってか? 俺はそれなりに抵抗するぜ」
「覚えておきなさい。風見幽香よ」
「上条当麻。趣味で博麗の巫女の代理をしている者だ」
上条はその場を蹴って飛び出す。強く握られた拳と傘がぶつかるその時、割り込む影があった。
上条も幽香も慌てて攻撃をとめる。
「・・・・・・はっはー。こんな場所でさー、傘で拳で人に殴りかかって・・・・・・本当、幻想郷の住民ってのはどいつもこいつも元気いいなー。何かいいことでもあったのかい?」
アロハ姿のおっさんは、そんな事を言ってくれた。
あれ? これ物語シリーズじゃないよね? タグ増やそうかな・・・。