幻想殺しと電脳少女の幻想郷生活 作:軍曹(K-6)
双方相まみえぬ者の出逢い Eaters-in_GENSOUKYO
「・・・・・は?」
とある少女は目を覚ました。小さな林の中にある、小さな広場の中で。
「・・・・・何で・・・・・?」
見えるのは林と空だけ、自分は寝転がっているようだった。急いで起き上がると、勝手が違う事に気が付いた。
体が小学生ぐらいにまで縮んでしまっていたのだった。
「え? え、ええ!?」
急いで辺りを見渡す少女の目に、少年の姿が入る。その少年も、どこか見覚えある少年だが、自分と同じように縮んでしまっているようだった。
「ご主人っ! ご主人!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・・・・・・うっ」
とある少年もまた目を覚ました。体を大きく揺さ振られれば誰でも意識が覚醒するものだ。
「エネ・・・・・? じゃなくて貴音か。悪い」
「んもう、どちらでも良いんですよご主人。それより、ここどこでしょうか・・・・・」
二人がいるのは林に囲まれた広場・・・・・と思いきや、小さな古びた神社が建っていた。
「色々疑問があるが・・・・・お前、何が起きたか覚えてるか?」
「え、ええまあ」
上条達は、自分達の見に起きた事を整理してみる。
つい先程貴音が持ってきた本を右手で開いて、吸い込まれた。
おおざっぱに言うとこんな感じだ。
「・・・・・さて、と。ここが一体何処なのかと言うところだが・・・・・」
そう言って、所持品を確認する上条当麻。ポケットから出てきたのは、携帯端末だけだった。
「あー。癖で入れておいたけど案の定圏外か・・・・・・」
「相当深い森の中みたいですね」
「ああ、そうみたいだな」
ポケットに入れ直す上条。そして、神社の方を調べに行く。それと並行して、貴音は鳥居や参道である長い階段を調べる。
少しして、上条と貴音は集合する。
「何かあったか?」
「いいえ、何もありませんでした・・・・・」
「まあこんな鳥居に何かあるとも上条さんは思いませんが・・・・・」
「そういえば、この神社の名前わかりましたよ」
「え? 社にも書いてなかったのに?」
「ええ、鳥居の所に付いてました。『博麗神社』って♪」
貴音がそういった瞬間。鳥居の間に手を伸ばしていた上条の右手が、何かを破壊する。
「ご、ご主人・・・・・? 何ですか、アレ・・・・・」
「な、なんだよコレ・・・・・」
そこには、先程までの林と長い参道はなく、綺麗な階段と手入れされた木々、そして目下に広がる大自然だった。
「これは一体・・・・・」
そう言いながら二人が階段へ一歩を踏み出す。そして、何を思ったか振り返ると、そこには古ぼけた社はなく、綺麗な神社と呼べる社が建っていた。
「ここ・・・・・どこだよ・・・・・」
「さあ・・・・・私もさっぱりでして」
二人揃って考え込むと、後ろから声を掛けられた。
「あんた達外来人かい?」
「「・・・・・へ?」」
上条と貴音は思わず声が出た。慌てて声のした方を見ると、巫女さんが立っていた。片手に箒を持っている、どうやら掃除中だったらしい。
その巫女さんに連れられ、神社の隣にある建物(おそらく居住スペース)に案内される上条と貴音。
「・・・・・えっと・・・・・俺達が外来人って、一体どういう意味ですか・・・・・?」
「そのままの意味さ。ここは『幻想郷』 結界っていう『壁』で外の世界。君たちが暮らしていた場所だ、から隔離。されている訳」
「なるほど・・・・・詰まる所ここは最も身近にある異世界と言う訳ですね」
貴音が納得したように頷く。上条はいまだある疑問を投げかける。
「帰る方法は、あるんでせうか?」
「帰る方法ね・・・・・悪いけど完全に隔離されてる世界。偶然迷いこんで来た人間はまず居ないし、そもそも外に出る方法を作る必要が無いからね・・・・・ひょんな事に迷いこんで来た人間が辿る道は二つ。ここ、博麗神社に辿り着く前に妖怪に食べられて死ぬか。辿りついて移住するか。そのどちらかね」
「マジですか・・・・・」
「妖怪なんてモノがこの世の中に・・・・・」
「信じられないのも無理はないね。ここはそういう所だから」
上条と貴音は考える。そして、二人で一つの結論へとたどり着く。
「「お願いします! 俺(私)達を鍛えてくださいッ!」」
「き、鍛える・・・・・?」
普通聞かない単語なのか、戸惑う巫女さん。
「せっかく異世界に来たんですし、やれることやりたいんで」
「体も子供になってしまっているので、強くなるにはちょうどいいと思いまして」
「「だから、鍛えて欲しいんですが。ダメですか?」」
二人揃って首をかしげる上条と貴音。そんな二人に巫女さんは
「うーん・・・・・鍛えてあげたいのは山々だけど・・・・・あいにくそんな暇は・・・・・・」
「できる事があれば何でも手伝いますよ?」
「一応これでも大人の一歩手前まで成長した身ですから!」
「へえ、じゃあ特別に鍛えてあげる。自分達でも自主的に何かしてみること。いい?」
「「はい!」」
勢い良く返事をする上条と貴音。それを見て巫女さんは、うんうんと頷いていた。
その時
「珍しいわね。あなたが弟子を取るなんて、ねぇ? “博麗の巫女”さん」
「「?!」」
「あら、あなたがやってくるのは珍しいんじゃないかしら?」
上条達が驚いて声した方を見ると、そこには空間に開いた穴に腰かけた、高校生ぐらいの女性がいた。
「ど、どちら様ですか・・・・・?」
「あら? 人に名前を尋ねるときはまず自分が名乗るのが先決よ?」
貴音の問いかけをある意味正論で返される。上条と貴音は慌てて
「榎本貴音です! ご主人の相棒です!」
「上条当麻。俺は・・・・・・神だ!」
「神・・・・・・」
「神ねェ・・・・・・」
「え? お二人ともご主人の言う事信じるんですか?」
驚いたような貴音に巫女さんは、
「だって彼、『神格』持ちだから。それに、普通の人間とは異質な何かが彼を完全なる神へと昇格させているね」
「それ、幻想殺しの事ですか」
「ところで、お二人の自己紹介がまだなんですが・・・・・」
「ああ! そうだったね。私は博麗の巫女。博麗命よ。私にはちょうどあなた達より二、三歳若い
「で、私は八雲紫。境界を操れる妖怪よ」
「妖怪・・・・・ですか」
八雲紫と言うその少女の自己紹介に怪訝そうな顔をする貴音。上条は自身の右手を開いて閉じてを繰り返していた。
「改めて言います。俺の右手は『
「へぇーすごいじゃない」
「確か別名・・・・・・『
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
素直に感心する命と、何故か驚いた顔をする紫。
(ありえない。幻想殺しですって・・・・・!? 『
「・・・・・? どうかしたの?紫」
「あ、いいえ。なんでもないわ」
―――――――――
――――――
―――
その日から、上条と貴音は博麗神社にお世話になる事にした。
「さっき言ってたウチの子。霊夢よ」
「は、じめまして」
「よろしく」
「よろしくねー」
かなり小さい。おそらく上条当麻達が今小学一年生ぐらいだとしたら、二歳ぐらい年下、四歳ぐらいだろう。
上条は、明日から始まる修行にココロオドらせ、その夜は眠りについた。
次の日から始まった修行はかなりきつかった。正直訳の分からないほどの実践は鍛練だった。
そんな日が続いたとある日の事。
上条は博麗神社の参道の掃除をしながら自身の右手に視線を落としていた
「・・・・・その右手が伝説通りの代物なら、『異能の力』を喰らい栄養にすることが可能よ」
「おぉう。いきなり出て来ないでくださいよ紫さん」
「あなたはまず、私への敬語を抜きなさい」
「目上の人には敬語を使え。常識ですよ」
「いいから、敬語なんて使われたらこっちの背筋が震えあがるわ」
「ご主人! 早くその妖怪BBAから離れてください!」
「誰が妖怪ババアだ!」
「貴音。お前馴染み過ぎだろ・・・・・・」
暫く頭の中で紫の言葉を反芻し理解していた上条は右手が覚醒を告げているのを本能的に感じ取った。
「・・・・・なにか、分かりやすい魔法ありますか?」
「あるわよー」
紫のすぐ隣にスキマが開き、そこから炎の塊が出てくる。
「ご主人!」
「・・・・・」
上条は焦る事もなく、ただ冷静にその塊に右手を合わせる。すると、その塊は上条の右手に当たった瞬間、四方八方へと飛び散った。さながら水風船でも殴り飛ばしたように。
「・・・・・いつっ!」
その時、上条は右手を押さえてしゃがみこむ。激痛が右腕、正確には右手の甲に走ったのだ。焼けるような、手が爛れる様なその痛みに、上条は顔を歪める。
「ご主人!? 大丈夫ですか!? 右手が、通用しなかったんですか!? ・・・・・?」
「な、何だ・・・・・これ・・・・・」
上条がようやく引いてきた右手の甲の痛みの原因を知る為に、甲を見る。すると、そこには不可思議な形をした紋章が焼き付けられていた。
「あら、『
「幻想紋・・・・・?」
「なんですか? それは」
紫の言葉に首を傾げる上条。貴音は身を乗り出すようにして聞く。
「そのままの意味。『幻想』の象徴。『世界の基準点』それがその右手だという証拠よ」
「そんなにご主人ってすごいんですか!?」
「ええ。間違いないわ」
「・・・・・でも、何でいきなり浮かび上がって来たんですか? 今までこんな事はなかったですよ?」
確かにそうだ。そうなのだ。上条当麻がいままで異能の力を消して来ていたとしても、その紋章は今まで浮かび上がってこなかったし、ましてや右手が熱くなった事も(やけどは除いて)ない。
「それはね。当麻。あなたが
「・・・・・!」
上条の感情に呼応するように、赤黒かった紋章は紅く光り出す。
「ご、ご主人・・・・・?」
「分かった。分かったぞ・・・・・・」
何かひらめいた上条は、真正面。水平の高さに右手を持ち上げる。そして―――
―――右手の紋様が濃く光ったと同時、上条の右手から炎の塊が発射された。
「?!」
「・・・・・これが、俺の
「幻想喰いの伝説。聞きたい?」
そう聞く紫に上条は、はい。と神妙な顔でうなずいた。
「その昔、ね――――
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
昔の昔、そのまた昔。今ではただの
神が下りてくるという事は、悪しき者も下りてくるという事。自由奔放な神に人々は迷惑していたという。そんな時、とある時に生まれた少年は目の前で親を悪神に殺されたという。その少年は神を殺すべく修行した。せめて、親を殺したあの悪神を倒そうとして。
その話を上条当麻と貴音貴音は息をのんで聞いていた。
「そして、その少年は青年へと成長し。『神殺し』をしたのよ」
「そう・・・・・なんですか」
「それで? どうなったんです?」
「・・・・・その少年は妖怪と恋に落ち、子を産んだわ。その子の名前は神上討矢と言うそうよ」
「神上・・・・・」
「ご主人のお父さん?」
「んなわけあるか」
「・・・・・そしてその青年の名が、神浄討魔。と言うそうよ」
その言葉に、時間と空間が止まったような感覚が与えられる。上条は自分の右手に視線を落とす。その甲には自身の能力が覚醒したのを確認できる紋様が浮かんでいた。
「俺が・・・・・『神殺し』の一族の末裔・・・・・?」
「そうね。『幻想喰い』と呼ばれる一族がその体に継承する能力が何故『幻想殺し』と呼ばれるのかは不明だけどね」
「・・・・・・おそらく、必要なくなったんじゃないですかね」
「必要なくなった?」
「はい。幻想喰いなんて大袈裟なチカラは時代と共に効果範囲も小さくなっていった。神や妖怪が存在しないとまで言われる世の中になった現在では、それは“運命の赤い糸何かをまとめて消してしまっている幸運を打ち消す『不幸』の右手”に変質したってわけです」
「ご主人の不幸の原因はその右手ですか・・・・・・」
「幻想殺し・・・・・・その小さな右手に幻想喰いの力全てが眠っていると言いたいのかい?」
命さんが境内の方からこちらに向かってくる。
「そうは考えてませんけど・・・・・・。とにかく幻想殺しは、幻想喰いの力の内“打ち消す”事に特化したものって事じゃないですか?」
「目に見えて発現する力はそれほどまでに抑えられてしまうって事ですね!」
「ああ。それとさっきの幻想紋ですけど、だんだん広がって来ましたよ」
そう言って腕を出す上条。そこには幻想紋から肩口までにかけて赤く波打つような模様が浮かんでいた。
「・・・・・・一応聞くわ。何をしたの?」
「え? いや~『この力。全身に張り巡らせないかなー』って思ったら、広がって来ちゃって」
「・・・・・使いこなし過ぎでしょあなた・・・・・」
「それにこれ、こう別の何かで覆うと消えるんだぜ?」
実際にやって見せる上条。目に見えて何かしたというのはないが、幻想紋を含め、全ての紋様が消えていた。
「抑え込んだの? 『幻想喰い(イマジンイーター)』の力を、『幻想殺し(イマジンブレイカー)』で呑み込んだの・・・・・?」
「・・・・・ん? 今何かわき上がってきた」
「早くないですか? ご主人」
納得する上条に首を傾げる貴音。その言葉に上条は、自分の能力だしな。と言った。右手を二三回開いたり閉じたりする。そして、幻想殺しでのカバーを解除した。
すると、先程まで刺青のように刻まれていたはずの右手の甲には先程までの紋章はなく、右手の甲の上に物理法則などは完全に無視で文字通り浮いていた。
「あれ・・・・・?」
「・・・・・何か先程までと違いますけど・・・・・?」
「・・・・・『幻想紋(マスタースペル)』はそれ単体での攻撃力・防御力も高いとされているの。上手く使えばそれのみで、世界を敵に回すことだって可能らしいわ」
「マジですか・・・・・」
精神的防御状態に入った上条の心に呼応するように、紋章はその周りに円をまとう。
(本当に・・・・・天性の才能よね。これを磨いたら一体どんな宝石が出来るのか楽しみだわ)
「なんか。攻撃の技が思い浮かんだ・・・・・!」
「何ですかご主人?」
「見てろよ?」
上条は少し口角を吊り上げニヤッと笑う。その瞬間。エネルギーが広がるように、刻みこまれた波が手首から肩口にかけて赤く光り始める。見ようによっては血流にも見えた。
(嘘・・・・・。まさか、
「
上条がそう叫ぶと応じ、体中に刻み込まれた紋章が呼応し、更なる光を放つ。
「―――
上条はそう叫び、少し大振りに拳を振るう。すると右腕から生み出された炎の塊が、柱のごとく伸びていった。
「おお! 流石ご主人!」
「・・・・・本当に何者なのよ・・・・・」
「上条当麻です」
上条当麻と榎本貴音が幻想入り。次回から時は進んで紅霧異変を書くつもりです。