幻想殺しと電脳少女の幻想郷生活 作:軍曹(K-6)
「そうそう、一つ忘れてたよ」
「?」
先に歩き出そうとした上条に、燐は話しかける。
「
「・・・まだやる気か? でも安心しろ。俺は死なない体だから」
「え?」
「いや、正確には『不死身』なんてものは存在しない。俺はただ、数えるのが億劫になるほどの命を持ってるだけ。それがつきれば死ぬさ」
『・・・実質不死身ですよね』
『・・・話は変わるけど。この前、変な動きしてなかった?』
『どんな?』
「あれか? 『「ジャンプ」+「ジャンプキック」』の繰り返し」
『ドゥエドゥエ言ってたアレ?』
『何やってるんですか!?』
「変態機動」
上条はニヤニヤ笑って。
「じゃあその本物を見せてやろう。行くぜ変態機動」
そう言った彼はその場で軽くジャンプすると、前方に向かって蹴りを繰り出した。
「ドゥエドゥエドゥエドゥエドゥエドゥエドゥエドゥエドゥエドゥエドゥエドゥエドゥエドゥエドゥエドゥエドゥエドゥエドゥエドゥエ」
『うわ・・・キモ』
『凄い! 本物です!』
そんなこんなで上条は先へと進んでいく。
「・・・あっつ・・・・・・もうドゥエしてらんねぇ」
『灼熱地獄ですかここは・・・・・・』
「やっと見つけたわ! 貴方が噂の地上から来た変わり者ね? 私に会いに来るって噂を聞いて、いてもたってもいられなかったわ」
「・・・地獄鴉?」
『見たいですね』
「貴方の目的は間欠泉を止める事ですって?」
「話が早いな。それはありがたい。止める方法はあるのか?」
「遥か遠くの地上からわざわざ来てくれたのにこんな事言うのも心苦しいんだけど・・・・・・。間欠泉は止まらないわよ。もう遅い、遅すぎたわ」
「は?」
「間欠泉は私が手に入れた究極の力の余剰分を地上に逃すためだけの穴。私はもう究極の力を手にしてしまった。その力を使う度に間欠泉が湧くの。だから止める事が出来ない」
「究極の力だって? 使う度に間欠泉が湧くって、湯沸かしの力か?」
『そんな小さな能力使ってどうするんですか。・・・まぁもってそうな人一人だけ知ってますけど』
「・・・ま。何にしてもここまで来たらこいつを倒せば間欠泉も止まるだろ」
「ふふふ、そうこなくちゃね! 貴方を倒した後は地上にこの力を試しに行くつもりよ。うふふ、哀れ地上は新しい灼熱地獄に生まれ変わる」
「はっ。安心しろよ。お前は今から俺に倒されて地上侵略なんかできないんだからな」
「黒い太陽、八咫烏様。我に力を与えてくださった事に感謝します。地上に降り注ぐ太陽の光。それは新しい原子を創る核融合の熱。究極の核融合で身も心も幽霊も妖精もフュージョンし尽くすがいい!」
「核融合ゥ? また現代的な・・・・・・」
『誰が力を与えたか分かりますね・・・』
『・・・誰よ』
『山の神様ですよ。ほら、ご主人がなじみさんと遊んでるときに解決した』
『あぁ。あいつらね』
「何か分からんが・・・。とにかくコイツの能力を解析したら八咫烏を使い魔にできるかもしれないだろ!?」
『・・・馬鹿』
『相変わらず欲望に忠実に生きてますねぇ・・・・・・。といってもここ最近の変化ですが』
上条は凄絶に三日月のように口の端を歪め嗤う。
「さぁて。体の隅から隅までその能力を調べさせてもらおうか!」
「行くよっ。スペルカード。爆符「ペタフレア」」
「はっ。スペルカードッ。幻盾「
巨大な爆発を全て上条の右手がかき消した。いや、正確にはかき消したのは上条に向かってきた爆発の一部だけであり、八割ほどは上条の後方で爆発を起こしているのだが。
「・・・むぅ。それがさとり様の能力も無効化する力だね!」
「あ? あぁ。幻想喰い。またの名を幻想殺しっていってな。いやー使い方次第でホント幅広い活躍をしてくれるぜ。こんなに使い方を思いつくとか、俺ってもしかして天才じゃね?」
『・・・・・・馬鹿ですね』
『馬鹿ね』
『当麻らしいちゃらしいけど』
上条は笑顔で飛び出すとその右手を異質に変化させる。
それは吸血鬼の能力で分化させた上条の右腕一つ一つに幻想喰いを張り巡らせたもの。それが空を縛り上げる。
「ぐっ。捕まった!?」
「捕まえた」
暴れる空を放って、上条は意識を集中する。地獄鴉から八咫烏へと進化したのなら、必ずあるはずだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・なるほどなるほど」
「・・・・・・? 何?」
『あのー・・・皆さん。私とっても嫌な予感がするんですけど』
『奇遇ね貴音。私もよ』
『私もよお姉ちゃん』
『当麻がやることだからなぁ』
「・・・・・・・・・おいで」
上条がそう言って横に左手を水平に差し出す。その姿はまるで鷹匠のようだ。
数度の羽音の後、彼の左手に止まった影があった。
まさに影というのが正しいほど真っ黒な外見。遠目で見たらただの鴉だが、近くで見るとその鴉は異常だった。
全長は二メートル近く、上条の手の上でたまに羽ばたくその翼は、広げると4,5メートルにはなりそうだった。何よりも特徴的なのが、その鴉の足の数。それが三本あった。
神の使いである“八咫烏”。それが上条当麻の使い魔となってそこにいた。
『やった!』
『流石、私達にできないことを平然とやってのけるっ!』
『そこに痺れる憧れるぅ!』
「うるさいぞ外野共」
「八咫烏様・・・?」
「を、模倣した俺の使い魔だ。そこまで力も強くないだろうし観賞用のペットとしては愛嬌があっていいんじゃないか?」
せわしなくあちこちを見る八咫烏。普通の鴉のようで案外可愛いのだが、それは遠目で周りに比較対象がないときだけだ。上条の手に止まっている以上、その大きさを、異常性を目の当たりにしてしまう。
「さて。俺の人生でやりたいことリスト。『神獣をペットにする』が埋まったところでお前を倒して異変解決としゃれ込もうか」
上条はそう言うと右手に力を込める。
「お前。核融合を使うんだったよな」
「そうだけど?」
「じゃあ俺は―――核分裂ってことで」
全てを焼き尽くす太陽が一瞬でき地底で大爆発が起きた。太陽はすぐにしぼみ消えた。
「・・・・・・何が起こったの?」
博麗神社では、閃光の後何も映さなくなった画面を魔理沙がベシベシと叩いていた。
霊夢の問いに貴音が答えた。
「核分裂・・・1945年に広島長崎に落とされた爆弾と同じ現象ですよ」
「・・・・・・?」
「核爆弾って言う兵器があるんです。起爆すれば辺り一面を焼き尽くし人間を大量に殺すというものが」
「・・・大量殺戮兵器?」
「それです」
『ザザッ・・・・・・あっはっはっ。流石にウランとプルトニウムの同時起爆はやり過ぎたなぁ』
「・・・・・・馬鹿なんですか。馬鹿なんでしょうね。原爆安置に怒られますよ」
『これはフィクションの中の出来事だし、怪我したって治せる。相手は妖怪だし。お前等が撃ってる弾幕だって似たようなものだろ? 威力と使い方を間違えれば簡単に人を殺めることができるんだから』
「・・・・・・」
『力の使い方を間違えるな。これは人類全てに共通して言えることだろうな』
「・・・・・・異変解決は? 済んだんですか?」
『ん? おう。アイツならそこで伸びてるぜ』
「無事だったんですね・・・」
『ま、曲がりなりにも妖怪だし』
「・・・じゃあ早く戻ってきてください」
『オッケオッケ。超特急で帰還するぜ』
―――地底。
帰ろうとした上条を引き留めたのはさとりだった。
「本当に、信じて良いのかしら?」
「任せろ」
「・・・でも。私の能力は嫌われてきた。この力を持つ私を好きになる人なんか」
「居るさッ。ここに一人な! 安心しろ。俺は何をしでかすか分からんらしい。少なくとも表裏無く自分の思ったように行動してるだけの俺だ。誰かを裏切ることはあっても見捨てることはしないさ」
「・・・・・・」