幻想殺しと電脳少女の幻想郷生活 作:軍曹(K-6)
「だったらどうしたんだよ。なんでお前なんかに、俺の悩みを聞かせなくちゃなんないんだ。それに、格好付けてる? ふざけんな! 例え誰が肯定したって俺だけは肯定しない。俺は、俺の悩みはおいそれと人に話していいようなもんじゃない!」
「つまり、人に話せないほど嫌で、それを馬鹿にされるのが怖いと言うことですね」
「―――ッ」
怖い? 誰が? 俺が?
「本当にあなたは愚か者ですねぇ」
「・・・・・・な、に・・・?」
「まったく、愚かですねぇ―――あなたは。話せば楽になりますよ。どんなに嫌な思い出も、話してしまえばただの物語です。私が聞きますよ。先輩の物語、聞かせてください。私は聞き上手ですから」
俺はその甘い誘惑に乗ってしまった。一度使ってしまえば逃れることのできない忍野扇という強い毒性を持った麻薬を使用すると言うことで、俺は苦痛を逃れようとした。
▽
「―――なるほど。つまるところ上条先輩はその場で何がしたかったんですか?」
「何?」
「安心院さんを助けること? 人里を守ること? それともどちらも無傷で救うこと?」
「・・・・・・決まってるだろ」
「だったらそれは大間違いを犯してます。それはもうとてつもない大間違いですよ」
「何が間違っているんだよ。教えてくれよ扇ちゃん」
「そうですね。まず一つ目。そこから分かりませんか?」
「もしかして・・・紫の言うことを真に受けたからか?」
「惜しいですね。結果論としてはそれは正しい答えの一つですが、あなたが今していること、それがヒントです」
「自分で考えることをしなかった・・・?」
「ええ。満点花丸です。上条先輩はその時、ご自慢の頭脳を生かせなかった。IQ168が聞いて呆れますね」
「・・・・・・」
「二つ目は」
「まだあるのかっ?!」
「ええ。ありますとも。まさかあなたの失敗が一つだけだと思ったんですか。それはそれはとてもおめでたい思考回路をしていますね。素直に称賛させてもらいます」
「ぐっ・・・」
「それで二つ目ですが・・・」
「何となく分かってきた。あれだ、闘う場所は人里じゃなくてもよかっただろ。って事だ」
「概ね正解ですよ。模範解答としては、何故あの場でなければならなかったのか。と言ったところです」
「何故、なじみが暴れていた人里であんな方法で殺したか、も含まれてるだろ。例えば人気の無い洞窟の中で拘束してスキルの暴走を食い止める方法もあったしな」
「思い返してみれば、後悔先に立たず。とは言いますが、これからのあなたには関係ないでしょう?」
「・・・いやいや、いくら俺だって無闇矢鱈に未来を見通したりしないぜ。それはつまらない。困難や不条理に突然ぶち当たってこその人生だろ」
「価値観は人それぞれですが、それは宝の持ち腐れですよ上条先輩。せっかくそれほどの力を持っていて、全てを使わないなんてもったいなさ過ぎますよ」
「・・・まあ、俺は未来を見たって面白くないって思うから見ないだけだよ。それ以上でもそれ以下でもない」
「なるほど。それで、あなたはこれからどうするんですか?」
「ん?」
「私はとても興味深いお話を聞かせてもらいましたが、あなたからしてみれば話したくもない辛い思い出を語ってしまったことになるんですが」
要するに扇ちゃんはこう言いたいのだろう。口封じ等はしなくて良いのか? と。俺はそんな事するつもりは毛頭ない、というか今はそれより気になることができた。
「そんなことより扇ちゃん。俺は君に
「上条先輩は最近物忘れが激しいようですね。自慢げに話してくれたじゃないですか。妹さんのエピソードと一緒に」
そうだったか・・・? いや、でも貴音ですら知ってるかどうかすら怪しい情報を、簡単に話してしまっていたのだろうか。でも、知っているんだから恐らく喋ってしまったのだろう。いやはや、扇ちゃんと話しているとつい口が軽くなる。気を付けないといけないな。
「あれ。 扇ちゃん? 扇ちゃん?」
彼女はいつの間にか消えていた。何だったのだろう。まさかあの子は俺が愚痴を聞いてもらうために生み出した幻覚だったりするのだろうか。
「何でしょうか?」
「うわっ! ・・・そんなところにいたのか、脅かすなよ扇ちゃん」
彼女はすぐ傍の団子屋にいた。三色団子を頬張るその姿はどこか小動物を思わせる。というか、ハイライトがない目でよくそんなに感情表現ができるな君。
ともかく団子をもしゃもしゃと食べている扇ちゃんは・・・って
「ちょっと待ってくれるかな扇ちゃん」
「?」
「どうして君は、その袖で団子の串を持ててるのかな?」
扇ちゃんは今現在というか出会った時から尋常じゃない袖の長さの制服を着ている。そのため常時袖から手が出ないことはおろか、余ってしまって垂れてしまっている。その状態。つまり、手が完全に隠れてしまっているはずなのに彼女は恐らく手があるであろう部分で串を持っていた。
「いやいや、別に何ら不思議なことではないでしょう? 別に手が出ていなくても串をこうやって現に持てているわけですし、手を使わずに団子を食べる人も居るでしょう?」
「あー、うん。まぁ、ごく稀にな。そんなことより扇ちゃん。俺はもしかして幻想郷の外でのことまで君に喋ってしまっているのか?」
「えぇ、聞かせてもらっていますよ。妹である桃さんの怪我のこと。上条先輩の親友であるアヤノさんのこと。成り行きで入って酷い目に遭ったメカクシ団のこと。教えてもらっていますよ」
「・・・君は、一体どこまで知っているんだい? 扇ちゃん」
俺のその問いに、扇ちゃんは意味深な言葉で、こう返してきた。
「―――私は何も知りません。あなたが知っているんです」
そう言って彼女は去って行った。お団子の代金を俺持ちにして。
払ったけどね。あれだけ店前で仲良く話してたし、俺の
しかし、さっきの言葉の意味は何だろう。扇ちゃんは何も知らないのに、俺が知っている? ・・・なるほど。扇ちゃんの前でぺらぺら喋っちゃう俺だから、彼女の情報源にされてるわけか。だから、彼女は色んな事を知ってるのか。俺から聞いて。・・・本当に気を付けなきゃなあ。