幻想殺しと電脳少女の幻想郷生活 作:軍曹(K-6)
上条は走っていた。忍野扇が待つといった壱年参組がある寺子屋へ。
「あら、当麻さん」
「あれ、当麻じゃん」
「お兄様ヤッホー」
少女達の声も無視して上条は寺子屋へ駆け込んだ。
そして、壱年参組の教室に転がり込んだ。
「はっはー。そんなに慌てて、何か良いことでもあったんですか? 上条先輩」
そこに忍野扇はいた。前回と同じ椅子に座って両肘をついて。
「良いことはこれからある・・・気がする」
「確証もないのにやってきたのですか。本当に上条先輩は愚かですねぇ」
別に良いだろ。と、上条は吐き捨てるように言った。そして、睨むように顔を上げる。
「扇ちゃん。君は・・・もう一人の俺、なのか?」
「何を言ってるんですか? 上条先輩。いつも通りですが脈絡がなさ過ぎますよ」
「じゃあ説明してやるよ。そう結論づけた理由は3つある」
「初めの一つはこの教室だ」
「教室ですか?」
「最初は
「一体何を思いだしたんですか?」
「窓の外の景色だ。生憎、パネルを填めたかのように外の景色の日が傾いたりすることはないけど、景色で分かる。これは
「・・・・・・」
「今でも親友と呼べる関係のアヤノ。アイツと隣の席になる前から窓の外はよく見てた。呆れながらもよく覚えてるよ。あのビルは俺の中学校から見えるものだ。そして、その中学校を再現できるのは、同じ学校に通ってた奴だけど・・・この高さ、この傷からして俺たちが三年生時の教室。もしかしたら扇ちゃんが俺たちと同じ中学校卒業だった可能性も考えたが・・・俺と貴音は特例だ。平行世界からの幻想入りをしたから外の世界に俺たちが住んでいた街はない。つまり・・・この世界でこの景色が見えるこの教室を知っているのは俺だけなんだよ、扇ちゃん。流石に景色まで話すことはできないだろ? こんな傷一つまで再現できるのは・・・・・・俺の目に焼き付ける蛇で覚えるしかない」
「・・・・・・」
「二つ目の理由だが、これは案外簡単だ。君は何も知らないくせに、俺に関して知ってることが多すぎる。俺から聞いたって言うけど、よくよく思い返せば何も喋ってないんだよ。なのに君は知ってる。なんでか? そりゃそうさ。扇ちゃん。君は俺自身なんだから」
「・・・・・・」
流石に俺に妹が居ること、メカクシ団のことは話しても仕方がないかもしれない。だが、“神界の眼科医”リガ=エル=メヌヒュト。貴音ですら知らない、“俺に神々の義眼を押しつけやがったアイツ”のことまで、話すわけがない。
「なのに扇ちゃん。なんで君が知ってるんだ?」
「・・・・・・いやー。参りました。流石上条先輩。何でも知ってますね」
「知ってるんじゃないぜ。見透かしてるだけさ。三つ目の、理由とは言えないかもしれないけど、神々の義眼が君を見透かさなかった」
「・・・・・・」
「神々の義眼は本来、その性質上、開いている時は問答無用で大量の情報が目を通して入ってくる。だが、扇ちゃんを見た時は何もはいってこなかったんだ。
なんでか俺なりに考えてみた。それは今なら言えるけど、扇ちゃんが俺自身だからだ。性別以外の情報がほとんど全て同じな存在。そして、この頃の俺は自分で自分を責めていた。つまり、自分と向き合うのが怖い状態だった。だから、君の情報が見えなかったんだ」
「・・・・・・100点満点です。今私がサインペンを持っていたら貴方に花丸をあげていましたよ。上条先輩」
「それは嬉しいな」
「ですが、これからどうするんですか?」
「もちろん扇ちゃんは一人の女の子さ。ただ俺が、知りたかっただけだ。扇ちゃん、君が何者なのかをね」
「はっはー。私が何者か、ですか。実際私もよく分かってないんですよ」
「・・・そうか」
「―――じゃあ僕が教えてあげようか? 当麻くんに扇ちゃん」
「「?!」」
その声に驚いて二人で声のした方。教室の前黒板の方を向いた。するとそこには、綺麗な装飾がしてあるチョークの字で、『祝! 安心院なじみ復活』と書いてあった。
その文字の通り、黒板を背にして教卓の上になじみが横ピースをして座っていた。
「な、なじみ・・・?」
「おう。正真正銘なじみさんだぜ。なんなら胸でも揉むか?」
「どんな確認方法をとらせる気だ・・・」
「それでも手が伸びるんだ」
「うっ!」
「上条先輩」
「あー・・・」
「吸血鬼・・・パンチッ!」
「ガッ!」
上条は自分の影から飛び出してきた忍にアッパーカット気味に拳を喰らい教室の床をゴロゴロと転がっていく。
「何すんだよっ!」
「あるじ様もあるじ様じゃっ! 何をこんな少女共にうつつを抜かしておる! お主はロリコンじゃろうが!」
「へぇ・・・。それは初耳だな当麻くん」
「異常性癖ですかねー。なーぞでーすねー」
「・・・・・・ねぇ。何で俺攻められてるの? 俺みんなのこと大好きだよ? 家族ぐらい大好きだぜ? なんで怒られてるの?」
「・・・・・・まあ良いじゃろう。儂も気になっておったところじゃ。安心院の娘、そこの忍野扇について何か知ってるなら教えてはくれんか」
「いいよ。教えてあげるぜ。少々昔話風に、客観的に語ることにしよう」
▽
―――彼は|英雄『ヒーロー』だった。 彼の行いは皆から指示され、褒められた。
―――それが例え、彼の心に傷をつける行為だったとしても。
―――彼はいつの間にか英雄になっていた。始めはただの趣味で行っていたことだったが、いつの間にかそれは誰からも認められる称賛されることになった。
―――人を傷つけ、殺すことであっても。
―――
―――殺生は誰もが認める悪行である。だが、その時は違った。
『よくやった』
『ありがとう』
―――などといった
“否定”
―――英雄と呼ばれた彼は、誰かにその行為を否定してほしかった。『もっと他のやり方があっただろう』『どうしてそんな事をした』といった具合に。
―――その時、彼は自分で自分を責め続けた。“世界の基準点”なんて呼ばれる右手を持っているくせに、少女一人守れなかったのか、と。やり方は他にもあったのではないか、と。
―――彼と繋がる少女は彼にこう言った。
『あまり自分を責めすぎるなよ。あるじ様』
―――彼を信頼する少女はこう言った。
『ズルズル引きずるのは良くないですよ?』
―――彼の彼女である少女はこう言った。
『あぁ、もう。ご主人は褒められたことをしたんです。もっと誇っていいんですよ!!』
―――なんと不幸な事だろう。彼の精神にとどめを刺したのが彼の愛する恋人の言葉であろうとは。
―――もう一つ要因を上げるとしたら、それは地底の館『地霊殿』の主である少女が起こした彼のトラウマだろう。
―――トラウマで蘇った少女は、彼に頭を上げて言った。
『僕を止めてくれてありがとう。当麻くん』
―――彼は傲慢で強欲な自分の我儘を自らで否定していたことに気付く。『自分の世界の人を笑顔にする』
―――それは彼の願いだった。小さな小さな願いだった。だが、自分の力では足りない。誰もが彼を支持する中では、誰も彼の考えを否定しない。彼以外の人が救われても彼が救われない。
―――誰もが彼を支持する世界で、彼は自分で自分を責める。だがそれでは限界があった。精神は疲労し、擦り切れ。かけられた枷に魂の方が耐えられなくなっていった。人間の精神は元より弱いものだ。
―――そんな彼を救うために、世界の基準点を守るために。世界は“少女”を生み出した。
『まったく、愚かですねぇ―――あなたは。
話せば楽になりますよ。どんなに嫌な思い出も、話してしまえばただの物語です。
私が聞きますよ。先輩の物語、聞かせてください。私は聞き上手ですから』
―――もう一人の“世界の基準点”。彼を理解し、批判する。彼を押さえる抑止力となる。
―――“忍野扇”はこうして生まれた。
「と言う感じだよ。そろそろ文字も多くなってきたから次話に行こうか」
「メタいわ! メタいのは八九寺Pだけで十分だ!」
どう・・・でしたでしょうか。
補足として、忍野扇という存在は上条当麻の全能力を受け継いで、上条の血の伴侶となった榎本貴音を介して生まれています。原作“終物語”の忍野忍ポジに貴音が納まっています。
一言で言うなら、上条当麻と榎本貴音の娘って事です。忍野扇は。