防衛大学校の劣等生   作:諸々

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旧作よりも若干日時が早いです。
流石にこれ以上待たせるのは難しいでしょうから。



00-21 千葉家

達也と深雪(水波も)が九校戦から帰ると、渡辺摩利からメールが有った。

テロ事件で魔法科高校への外部アクセスを制限していたが、犯人の音沙汰が三か月以上無い、

そして九校戦で不便だと声が上がった為限定的に解除された結果だ。

(卒業生のIDを使い不確かな情報が流出するのを防止するため。)

九校戦出場者でかつ確認が取れた人のみ解禁して、その様子を見て新学期からは元に戻す事が検討されている。

前回同様丁寧な前置きだったが、肝心の内容は『ある人物(男性)を紹介したいので会ってやってほしい』だった。

達也は前回のメールでは深雪の感が当たっていたから、今回の判断は深雪に任せた。

深雪は少し考えていたが一緒に行くという条件で許可を出した。

 

深雪は渡辺先輩のメールについて考えた。

春の顛末については達也様から聞き出している。

紹介したい人物を男と限定しているのは私へのメッセージだろう。

強引な渡辺先輩だ、紹介したいという事はここで断ってもしつこく言ってくるに違いない。

九校戦も終わり夏休み、課題は免除されているので普通の学生なら時間がたっぷりあるので断るのは難しい。

だけど達也様はそうはいかない、101の訓練やシルバー社(小百合さんが何かしたらしい)などで時間は無いはず。

受けるしかないがダラダラと長時間過ごさせるわけにはいかない。

私の用事を口実にして時間制限を設ける事にしよう。

 

自宅近くの駅で渡辺先輩と待ち合わせ、約束通り一人だ。

先輩は私を見てクククと笑い「彼を紹介するだけだよ。」と言った。

個型電車に三人で乗り込み目的地を目指す、先輩が予約していたらしいのでスムーズに進む。

先輩に相手を聞いても「会えばわかる。」とだけ、他に会話も無く到着する。

駅から少し離れた所の軽食喫茶スペースに案内された。

そこで待っていたのは千葉修次、渡辺先輩の恋人だ。

二年前よりはるかに鋭くなったその姿に一瞬誰だか分からなかったが達也様の言葉で判明した。

「初めまして、千葉修次さん。」

「…話をするのは初めてだったな、君は有名人だから初めての気がしないね、司波達也君。」

「お互い知り合いだったか、なら話は早いなシュウは達也君の強さに興味があるんだよ。」

修次が達也様を見据える、二年前の柔らかな印象と違い武芸者そのものの顔だ。

「ですが渡辺先輩、『千葉の麒麟児』に俺の強さなど不要では無いですか?」

「そんな事は無いよ、千葉家と言えど強くなる努力を怠ると転落しかねないさ。」と修次。

「俺は基本的に刀を使いません、それでも必要ですか?」

「そう言えば君はあの九重先生の指導を受けているんだったよね。」と摩利。

「それは凄い、あの方は外部に弟子は取らない事で有名だからね。

どんな手を使えばそんな事が可能なのか教えて欲しい位だよ。」

「正式な師弟関係ではありません、言わば俺が勝手に師匠と呼んでいるだけです。

師匠とは組手の相手としてしか認識してもらえていないでしょう。」

「それはそれで凄い事だよ、……」

しばらくあたりさわりのない話が続いたが深雪が言った。

「渡辺先輩、そろそろ」深雪が言おうとしたが修次がそれを遮って言った。

「司波君、どうしても聞きたいことが有るんだが。」

「何でしょうか?」と達也。

「兄の最後についてだ。」

「警察の調書や師匠から詳しい報告が有ったと思いますが。」

「僕が知りたいのはそういう表面的な事じゃないんだ。」

「女性には少々刺激が強いと思いますが。」

「そうです、時間もありませんから後程文書で回答しましょうか。」と深雪。

「いや質疑応答があるから、出来れば今お願いできないかな?

そう言えば深雪さんは用事が有るんだったね、摩利、最寄り駅まで送ってくれないかな。」

優しいが有無を言わさない口調で修次は言った。

「…分かった達也君、彼女は責任をもって送り届けよう。

どうかシュウの望みを叶えてやってくれないか。」と頭を下げながら言う摩利。

「…分かりました、深雪送ってもらいなさい。水波には連絡すれば良いだろう。」

 


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