防衛大学校の劣等生   作:諸々

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この話が旧作の第一話になります。
この時は原作の20巻が出る前でした。
ですからこれより前は今作品の半分以下を想定していました。
それで話のインパクトを重視してこの話から初めてどうしてこうなった、で引っ張るつもりでした。
それが破綻し苦しい展開に、つじつまを合わせるために話があちこちに飛んでしまいました。
旧作を辛抱強く読んでくださった方にはすっきりしたと思います。
編集程度では済まなかった為に余裕がなくなりつつあります。


00-26 嵐の前

高校最後の九校戦(まれにみる激戦になった)も終わり、達也(大黒特尉)は朝に101基地に出頭した。

理由はいつもの合同訓練なのだが、入り口に藤林中尉いた。

「こんなところで会うなんて珍しいですね、何かあったんですか?」

達也は極力『なんでもない』様に話しかけた。

「特尉、訓練終了後『基地司令』のところに出頭してください。」

幾分疲れた声と顔で中尉は答えて事務棟へ歩いて行った。

その様子に少し違和感を覚えたが、こんなセキュリティレベルのところで話すことはできないので

仕方なくそのまま合同訓練に向かうことにした。

 

「ご命令どおり特尉に直接伝えました。」藤林は司令室で報告した。

「ご苦労中尉、ところで訓練の終了は何時だ?」

「1700です」

「では第0会議室に1710に連れてきてくれ。」

この言葉に藤林は、かすかに顔をひきつらせた。

なぜなら0会議室はエレクトロンソーサレスの力も使用するセキュリティレベル最強の会議を意味する隠語だからだ。

ちなみに物理的な場所は副官室(藤林の)がデフォルト。

「他の参加者は、真田、柳の両名だ。」

「小官は?」

「オブザーバーで参加を許可する。」

藤林は命令を復唱した。

「以上だ、下がってよろしい。」

 

部屋に帰り最低限の準備を終えると、響子は最近くせになったかの様にため息をついた。

ここ1~2か月頻繁に風間は、一人防衛省に呼び出されていた。

響子は軍内部で何か大きな事が起きわが隊にも波及しそうなのに、自分一人が蚊帳の外に置かれている様に感じていた。

また去年の九校戦以来、達也君がらみの件は独立魔装大隊副官としては不本意の極みだ。

年長者として情けない、足を引っ張っているだけの様な気がする。

「達也君なら訓練も早く終わるだろうから、少し話を聞いてもらおうかな」小さくつぶやき仕事にもどった。

 

訓練が終わる頃合いをみて響子は達也のトレーナーに声をかけた。

「特尉の訓練は?」

「今日の分はもう終わりです」

「なら借りていくわね」

こんなやり取りに後に副官室につれてきた。そして端末を少しいじった後

「これでセキュリティはOKね、1710にここで打ち合わせよ。」軽い口調で言った。

「すこし時間がありますね。」

「話を聞いてもらおうと思って。」

愚痴の間違いじゃないのかと達也は思ったが、今朝のこともあり口にはしなかった。

「まずは九校戦総合優勝おめでとう。

『奇跡のスーパエンジニア、神話から伝説へ』ニュースでも大きく取り上げられたけど

トーラスシルバーのあなたなら当然の結果なのかもね。」

「今年も選手運に恵まれました。」

「そう言う事にしてあげる。」去年も繰り返された会話をする。

 

「ところで話というのは。」そう言って達也は話題を切り替えた。

「上層部の動きが不明なの、隊長も慌ただしいし、おそらく十師族も絡んでそうなんだけど何か知らない?」

「本家の方からは何も、それにおれの方はそれどころではありませんでしたから。」

「シルバーの件?」

「ええでもそっちは今は小康状態ですね。近く相手と会うための段取りをしています。」

「こっちでも援助しようかって話をしてたんだけど。」

「それは話し合い以降でお願いするかもしれませんね。

それに金銭面であれば何とかなりそうですから。」

「ならよかった。少し心配だったから………そっちはてことは他にもあるの?さすがトラブルに愛されてるわね。」

ちよっと可笑しそうに響子は言った。

達也は内心しまったと思いながら「………秘密です。」と言った。

「最近達也君の周りで変わったことといえば、五輪家絡み?今まで付き合いはなかったよね。」

にやりとしながら響子は言った。

やや憮然としながら達也は「秘密です。どうしても知りたければ直接五輪家へ。」と言った。

「わかりました降参、何かの手掛かりになるかと思ったのに。」軽く響子は言った。

この後予想通り、達也は時間いっぱいまで愚痴を聞かされことになった。

 

1710になり風間達が入ってきた。

セキュリティの確認、軽く九校戦の話題ののち「特尉、この時期に異例のことだが辞令の内示があった。

貴官は統合参謀本部予備役に転属になる。

サードアイによる超超遠距離戦略級魔法『マテリアルバースト』は完成した。

だがその影響は我々の思惑を超えてしまった。

いつまでも実験部隊に置いておくわけにはいかない。」

「いよいよ戦争の準備ですか?」と柳が問いかけた。

「それもあるかも知れないが、むしろ戦争回避策だな。

これにより、予想した1年以内の開戦の可能性は、ほぼ無くなるとみている。」

「含まれるということは他にも何かあるのですか?」と真田は考え込みながら聞いた。

「2週間以内に公表されるはずだが、今後の対応もあるので簡単に説明するが、現段階では極秘扱いで。

灼熱のハロウィーンはマテリアルバーストが失敗した事にする予定だ。

未知の相互作用により被害が拡大した、言う解釈だな。」

「USNAのマイクロブラックホール実験と同じ解釈ですか。」と真田。

「『実験』は中止、主要術師は統合参謀本部預かりとすると発表される。

これにより他国の追及をかわし、いざという時には…だ。」

「なるほど、で我々は戦力が大幅ダウンと言う訳ですか。」

「いや横浜事変以後の我々の活躍が評価され、我が大隊から実験の文字が取れる事となった。

人員、予算その他諸々が大幅アップされる事が内定している。」

「ここへきて新人追加ですか、訓練が楽しい事になりそうですね。」天を仰いで柳が言った。

「達也、これは内示であり実際の発令は高校卒業後の予定だ。

これによって大学生活は少しはましになると思うが。

話は以上だ。藤林、達也を送って行ってくれ、部屋はこのままでいい。」

「了解しました」と言って藤林は達也とともに部屋を出て行った。

 


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