防衛大学校の劣等生   作:諸々

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00-56 研究所跡地

翌朝ようやく深雪たちは佐渡に着いた。

港で朝食を済ませ昼のお弁当を買い、途中少し観光しながら研究所跡地へ。

「今更ですが民間の研究所なんかに私たちの様な部外者を入れても良いんですか?」と水波。

「重要な物は既に運び出されていますから問題ないですよ。」と吉祥寺。

「いえそうでは無くて、5年もたっているんですから何らかの工事が始まっているのではないですか?」

その言葉に将輝が苦い顔をしていった。

「それは…」

「将輝、僕から言うよ、それは保険会社と研究所がもめているからなんだ。」

「何故でしょうか?5年もたてば保険金は下りるのではないでしょうか?」

「あれは新ソ連の侵略だった、あいつらと戦った俺が保証する。」将輝が絞り出すように言った。

「所でみんなは保険には免責事項、つまり保険金を払わなくていい条件がある事を知っているかな。

その中の一つに戦争が有るんだ、損害が想定できないから保険金を算出できないという理由でね。

5年前の佐渡の事件は新ソ連との戦闘なのか、それとも単なる犯罪なのかを裁判中なんだよ。

状況証拠は侵略なんだ、だが直接証拠は一切なかったし新ソ連もそれを否定した。

同じ時期の沖縄があっさり戦争と認められたから保険会社も強気なんだ。

保険金のめどが立たないから工事は計画すら始まっていない。

でも遺族側はそんな事は関係ない、そこで工事が始まるまで遺族関係者には開放される事になったんだよ。

事前に登録していれば跡地にはフリ-パスだよ。」

 

ゲートで通関手続きを行う。と言っても無人機に真紅郎のIDをかざすだけだ。

『内部は全て自己責任で』の警告を受けて中に入るとすぐに一人の男と出会う。

海辺で風が強いからかフードを目深にかぶっているため顔は分からなかった。

男は吉祥寺達をちらっと見ただけですぐにゲートから出て言った。

真紅郎達は車でしばらく走った、所々に建物の跡が見える。

やがて車はトンネルを抜け奥まった湾にたどり着いた、そこは切り立った崖で覆われた場所だ。

 

研究所の建物は2棟あった。崖を背に前は日本海、それだけ見れば絶景スポットだ。

2棟の内、海側の建物はひどく壊れいる。もう一棟の一階の駐車場に車を止める。

駐車場を出て海側の建物へ向かう。玄関先には新しい花束が置いてあった。

「ジョ-ジ以外にこの時期に慰霊に来る奴が居るとは思わなかった。」と将輝。

「僕も初めてだよ。」そう言いながら手早く準備を終えた。

みんなで一緒に黙祷、その後女性陣は車で昼食、男たちは釣りの準備だ。

「ジョージ、こんな昼間に釣りなんてできるのか?」

「まあ見ててよ。」真紅郎は得意げに言った。

建物を出てすぐの所に小さな港があった。いや港だった物だ。

護岸は滅茶苦茶に壊れ船が沈んでいるのが見える。

だが将輝は気付いた。ここは魚影が信じられないぐらい濃い。

「壊れた護岸や船がいい具合に漁礁になったみたいだね。

おまけにここにはめったに人が来ない。

まさに理想的な漁場だよ。

おまけにこれだ。」ジョージは得意げに荷物を開けた。

その中身に将輝は見覚えがあった。

「そう、最新式のポータブル海中探査レーダーだ、性能は下手な軍のレーダなんか目じゃないよ。

剛毅さんに頼んで借りてきた。

これで大物をゲットして彼女に良い所を見せようよ。

将輝これを。」そう言ってイヤホーンの様なものを渡してきた。

「これは?」

「超音波式のトランシーバーだよ100M程度なら届く。

僕が裏からサポートするから。」

マイクとスピーカをセットしてレーダーを立ち上げる。

「あれ?」真紅郎が声を上げた。

「どうした、ジョージ。」

「ちょっと待って。」移動魔法でマイクやスピーカーを湾の外へ移動させる。

「やっぱりおかしい。

何かが湾の外にあると出ているんだ。」

「ほんとにあるんじゃないのか?」

「何百メートルも有る物がかい?

潜水艦でもいるって言うんなら分かるけど。」

「流石にそれは無いだろう。

じゃあ壊れているのか?」

「…仕方ないね。

元々魚影は濃いからこれなしでも釣れると思うよ。」

ソナー本体を担いで駐車場へ戻って来た時、後ろで大爆発が起きる。

湾内で爆発したのか、海水があたり一面滝の様に降り注ぐ。

将輝達は振り返り、女性陣は外へでてきた、そして見た。

沖合の海中から何かが発射され、複雑な軌道を描きながら迫ってくる。

近くに来てようやく正体が判明する、巡航ミサイルだ。

すかさず深雪が進路にフリーズフレームを発動させた。

ミサイルはそのまま失速し墜落。

その瞬間、魔法発動の気配がした。間髪おかず魔法式が辺りを覆い爆発した。

とっさに水波、将輝、吉祥寺は魔法障壁を張ることに成功する。

「まさかホントにいるとは…」と真紅郎。

「どこに敵がいるのか分かるんですか?」と深雪。

真紅郎は慌ててソナーを操作して深雪に位置を教えた。

深雪はその方向を見つめCADを掲げた。

膨大な魔法力が吹き荒れたかと思ったら海の上に巨大な氷山が忽然と現れる。

深雪と水波を除くメンバーが驚く中、さらに驚く事が起こる。

氷山の陰からまたミサイルを撃ってきたのだ。

また深雪がフリーズフレームを発動、だが今度は催涙ガス弾だった。

失速し後方に着弾、それと同時に勢いよくガスが噴射される。

後ろに居た茜が少しガスを吸い込みむせかえった。

将輝はそれを見て収束魔法でガスを集め無害化した。

このタイミングを見計らったようにまた魔法攻撃が加えられる。

真紅郎、水波が魔法障壁を張る。得意な水波にに対して真紅郎は若干苦しそうだ。

この場所は町から遠く離れており、携帯も通じない。

たまらず無事な建物の中に避難する。ただ生き埋めにされる事を恐れて入り口付近だ。

たちまちミサイルが襲う。

だが建物の被害は意外なほど小さい。

「そうか、大戦時代に作られたから防爆性が有るんだ。」と真紅郎。

また広範囲の発火魔法が襲う。だが何故か建物内には魔法は及ばない。

ここで一行はようやく一息つくことが出来るようになったようだ。

 


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