防衛大学校の劣等生   作:諸々

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00-60 吉祥寺真紅郎(2)

真紅郎の持ってきたポータブルソナーには中性子線の軌跡がハッキリと浮かび上がっている。

水とあまり反応しない高レベルの中性子線だがわずかに反応して小さな気泡が発生しているのだ。

それはコンクリートぽい壁から推測される物とほぼ一致していたが、正確なそれが分かったのはとても大きい。

それに起動スイッチを押してから発射までのタイムラグも把握できた。

初撃で当てられなかったのは残念だけどこれは仕方が無い。

今回相手は偶然回避できただけだろう、次こそは当てると真紅郎は気合を入れた。

 

真紅郎は身体強化をして茜の待つコントロールセンターへ向かう、当然の様に水波もついてきている。

そこには深雪もいた、術を維持するだけならここでも問題ないようだ。

「茜ちゃん、上手く行ったよ、これで敵を撃退できそうだ。」

「本当!よかったー!!」椅子に座ったまま茜は言った。

その様子を見て真紅郎は深雪に向かって言った。

「司波さん、この機械の操作を教えます、よろしくお願いします。」

真紅郎は深雪に操作を教えながら茜をちらっと見た、椅子から動かずガスの影響が残っているようだ。

「茜ちゃん、さっきのスイッチをまたお願い、僕は将輝の所に行ってくる。」

真紅郎は茜に何もさせないよりは何かを任せたほうが良いだろうと判断したのだ。

 

「将輝、そっちはどうだい?」

「燃料の気化は魔法でばっちりだ、そのおかげで燃費は良くなっている様だぞ。

今回の様子だと後10発ぐらいは打てそうだ。」

「よかった!じゃあ引き続きお願い。」

「分かった、だがここの換気は大丈夫か?

発電機の排気は逆流していないのか?」

「…それは分からないな、だけどこの作戦で撃退できれば問題ない。」

そう言って戻って行った。

 

「真紅郎くん、準備できたみたい。」

「分かったよ茜ちゃん、タイミングはこっちで指示するから。」

ソナーに向き合う真紅郎、敵潜水艦?の軌道を慎重に見極める。

「………茜ちゃん!」

「はい!!」

「……………次いくよ。」

 

真紅郎は焦っていた。

「6発撃った、だがギリギリで逃げられる。

流石におかしいだろう、発射のタイミングが読まれている様だ。」

トランシーバーのスイッチを切って独り言を言う真紅郎。

考える、考える、考える…

「真紅郎くーん、準備できたよー」努めて明るい口調で茜が言ってきた。

「りょーかいー」真紅郎も明るく返す。

そして真紅郎は覚悟を決める。

…そしてその時はきた。

「茜ちゃん、君は僕が守るよ。スイッチを入れて。」

中性子バリアーを張っていた水波は真紅郎が大規模な魔法を発動させたことを感知した。

中性子バリアーに集中していた水波は発射後数十秒たち解除する。

ふぅーと息を吐き緊張を解く。

だが直ぐにおかしい事に気が付いた、真紅郎が次の指示をしなかったのだ。

慌てて確認すると真紅郎は意識を失って倒れていた。

 


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