やっぱり明るいほのぼのとした艦これの話とかが、一番ですよね。
この作品終わらせたら、自分でも書いてみましょうかね。
またTSで、熊野の話とか。
現実は人の予想を超えていく。
とはいえ、決して想像の域を超えることはない。
人間の考えることは全て、実際に起こりうることである。
妖精さんの工房。
艦娘の艤装の製造と管理を行う場所である。
妖精さんの住居ともいえる場所であり、排他性が非常に強いことでも知られている。
艦娘でさえ、工作艦の明石以外は気軽に入ることができない場所である。
その明石も、修理・改装のこと以外はよく知らないし、知ろうとしない。
が、夕張はアプローチの試行錯誤の末、妖精さんに認められ、自由な見学を許されている。
そしてその甲斐あって、ある程度建造の成り行きを理解できている。
「41cm連装砲、かあ。大和型なら46cm三連装砲搭載のはずだから、つまり昭さんは」
これにより、夕張は建造艦の艦種を完成前にある程度、知ることができるのであった。
そして艦娘としての体が成熟する時期ならば。
夕張はその自身の経験による直勘を基にして、艦の名前まで特定できるのである。
「長門型。妹ポジションにあたるから、陸奥、か。まあ妥当よねー」
*絶望の国の希望の艦娘たち 8.Close To You ④*
「という訳なんです。昭さん改め、長門型戦艦の陸奥さん」
「まだそう呼ぶには早いさ。体はもう艦娘のものだろうけど、俺はまだ生きているんだし」
自身が戦艦、陸奥の艦娘であるのは理解した。
だが、まだその名を名乗るつもりはない。
未だに親とも再会できていないのに、武藤昭の名を捨てるつもりはなかった。
それにまだ、自分の中に、陸奥らしさを感じ取ることはないのだから。
「申し訳ありません、昭さん」
「いいって」
夕張は素直に謝罪する。
空気はそこまで悪くなっていないが、何か別の話題が欲しいところだ。
「そういや、艦娘の服ってもう、出来ているのかな」
「はい?」
「ああ。青葉や長月さんが着ている制服のことですか」
艦娘ならだれでも持っている、正式な戦闘用の制服のことだ。
艦娘にとって制服とは、艦のイメージであり、武装であり、勝負服である。
ちなみに夕張が普段ツナギを着ているのは、工房やら実験やらで汚れてしまうからである。
「自身の制服が気になっちゃいましたか? 長門型は戦艦なんですから、巫女衣装みたいなものじゃないんですかねぇ」
「セーラー服じゃないのか。海軍なんだろうに、巫女服って」
「違うんですよねぇ、それが」
確かにセーラー服は水兵さんの服であるが、艦娘は艦娘であるので別の服を着ているのである。
そういや、何で伊勢型以前の戦艦たちって巫女服モドキを着ているんだろうね?
「まー、艦娘って制服のデザインが統一されていないんですよ。例え、型が同じでも、全く違ったデザインになることもあるんです。吹雪型の叢雲さんがそれですね」
青葉はデジカメを取り出し、スライドショーを見せる。
「ああ、ありました。これです」
写真には6人の少女が写っていた。
5人の少女は黒髪でセーラー服を着ているが、1人だけ銀髪でワンピース服を着ている。
彼女が叢雲だろう。
制服とは別だが、彼女だけ艦娘のイメージにしっくりきている。
例えるなら、美少女らしさというか、整っている気がする。
他の娘も可愛くはあるのだが。
「へえ。ここまで違うものなんだな」
「これでも全員吹雪型なんですよ。彼女には何かしらの事情があるらしい、だとか噂されてますね」
よく見ると彼女の表情は暗い。
しかも不機嫌、というより、心ここにあらず、といった感じだ。
なるほど、他人には言えない事情を持っていそうだ。
「制服のデザインは確か、提督指定と聞いたことがありますが。いや、妖精さんのお手製でしたっけ?」
青葉が夕張に話を振る。
「えー。あー。さあ?」
夕張は、制服の話を振られるのに困った。
実のところ、デザインは妖精さんによるものである。
そこはいい。
が、その陸奥のデザインに非常に困っていた。
長門型の制服は、何か、際どかった。
和服らしさがあって、クールジャパンで格好いいのだが、格好いいのだが。
ともかく着る人を体形的に選ぶ服である。
陸奥には恐らく似合うのだろう。
が、昭に面と向かって、これ着てください、とはとても言えなかった。
加古だって、あのへそ出し制服を着るのは、最初拒否されていたのだ。
昭に拒否されるのは目に見えている。
そんなわけで話題に出したくない。
ここは話題を絶対に流すのだ。
「それより、面会の予定が決まったわよ」
「ん。ようやくか」
本当にようやくである。
昭としては今まで何をしていたのか問いただしてみたい。
「言い訳することになるけど、親御さんの方も色々あったみたいよ。息子が艦娘に成るということで、心中穏やかでなかったみたいね」
大事な息子が妖精さんに浚われ艦娘にされてしまうのだ。
世間の目も含めて、相当の心労であったそうだ。
「昭さんの現状は、現在進行形で伝えてありますから。もちろん携帯のことも伝えてある。だから、うん。好きな話を気兼ねなくできると思うわ」
**
そうした日の夜。
昭にとって夜は、長月と特に仲良くしていることもあって、お気に入りの時間である。
まあ、元から夜型ではあるのだが。
最近は酒も手に入るようになって、特にお気に入りである。
夜を好む存在は人間の若者や、
実は、妖精さんも夜がお気に入りだったりするのだ。
が、案外知られてなかったりする。
そんな中で昭は長月と雑談を楽しんでいた。
「そうか。しかし、随分遅い。特例とはいえ遅すぎるぞ」
「まあ、会えるってことでも俺は安心だよ」
面会の件で、長月も連絡を送るなり、手回しをしたものだ。
軍部の方は意外と早く理解を示してくれたが、真に問題は軍部の外であった。
民間の方が昭の実家で事件を起こし、軍部がそれに巻き込まれることになった。
これには長月も憤慨した。
そんなことをしている場合ではなかろうに。
「しかし、戦艦陸奥かぁ」
とはいえ、予定が決まり、ひとまず落ち着いたのだ。
なんと携帯も、通信機能付きで還ってきた。
またゆっくりと建造艦の面倒を見れる。
さて、戦艦陸奥の話でもしようか。
「陸奥について何か知っているのか」
「ああ。私が知っている限りは、国民の人気者だったな」
戦艦といえば、大和を思い浮かべるのが普通であろう。
とはいえ、戦時中は軍事機密であり、当時は長門型が花である。
長門型のどちらが人気だったかというと、親しみやすい陸奥の方であった。
「国民の人気者って。そんな柄じゃないんだけどな」
「戦艦というのは強さの象徴で、皆の憧れだったのだ」
未だに格好いい存在ではある。
ただ戦艦は、色々と重すぎたのだが。
だがそもそも、あの時代はああするしかなかったのだし、それなりに戦果は挙げているのだ。
長月としては文句はない。
「だが、気負わずにいるといい。そっちの方が昭らしいからな」
「ははは。そう言ってくれるとありがたいね」
まあ、戦艦達は形を変えて、今も現役で活躍している。
戦艦娘の有用性も判明してきた。
陸奥も将来の作戦に参加することになるはずだ。
と、そこに訪問者が現れた。
「こんばんは。青葉ですぅ」
青葉である。
重巡であり、夜戦も得意である。
この時間は夕張の実験手伝いやら、話し合いやらをしていたはずだが。
「珍しいな、この時間に会いに来るとは。夕張とはもういいのか?」
「ええ。また次の機会に、ということになりまして」
青葉は重巡であり、夜戦も得意であるはずである。
が、今夜は顔色が優れないようにも見える。
「どうした? 寝た方がいいのではないか」
「いえいえ、取材のためにはこの位はして当然です」
青葉はかつて従軍作家を載せていたこともあり、記者としての気質を持っている。
大なり小なり。
「で、何の用だ。時間的に考えて、私に取材なのだろうが」
記者としての気質はつまり、好奇心であり。
「ええ。夕張さんから興味深いことを聞きまして」
そして、ここが建造ドッグであるからして、建造のことを聞くのは当然である。
「長月。建造について何か隠してますね?」
空気の温度が下がった。
「それはあるだろう。だが、ここで話すことではない」
ここには昭もいる。
彼が興味を持つことはなさそうであるし、出直したほうがいいと思うのだが。
「夕張さんも知っていて。なおかつ、一般に知られてはいけないことがあるそうです。しかし、明確に禁じているわけではない」
「なんのことだか」
隠してあることは当然たくさんある。
知らなくてもいいし、知ってもどうにもならないから隠しているだけである。
「青葉はそれが知りたいです」
建造を知りたい、という気持ちは長月にわからない。
長月はため息をつく。
「私に聞くんじゃない。私は下っ端だ。自身の提督にでも聞くんだな」
室井提督、ということで、あることに気付く。
「しかし、室井提督から聞いていないのか? 教えてないのか、何も知らないのか」
兼正と室井の提督の仲が良いのは長月も知っている。
それでいて室井提督が知らないというなら、それは彼が知らなくてもいい、という訳であろう。
「まあ、いい。どっちにしろ、あまり首を突っ込まん方がいいぞ。建造は、艦娘にもあまり知られて良いことではないのだろう」
「知らされていない。というのは、あまりにも残酷だと思いますが。これではまるで、戦時と同じではないですか」
戦時、大本営は国民に戦果を偽り続けた。
空襲を受けてもなお、降伏したあの日の前まで。
歴史をちょっと知っている者ならだれでも知っていることで、艦娘たちも後に知らされることであった。
我々は国民を裏切っていたのだと。
「かもしれん」
長月も、その負い目が無い訳ではない。
艦娘となった今でも、自分は言わないことで仲間たちを、国民を騙しているのだから。
「だが、今も昔も知る私としても、知らない方がいいのだと思ってしまう」
長月は兼正提督に、世の中には知らない方がいいこともあると言われている。
そして、なるべく秘密を秘密にしろとも言われている。
「どっちにしろ、私には判断できん」
長月は兵士である。
その動向がどうであれ、上の采配に従うだけだ。
「どうしてもというなら、兼正提督に聞くのがいいだろう。彼なら確実に知っているし、答えるかどうかは解らんが、いずれは折れてくれるかもしれん」
「あの人、苦手なんですよぅ」
青葉にとって兼正提督は元上司であり、期待を裏切ってしまった関係なのだ。
室井提督の元に青葉が着任したのは、そういう経緯があってである。
「なら、諦めるがいいさ。彼に聞けないなら、お前にとってその程度のことなのだろう」
長月は青葉に語り続ける。
尾崎提督に聞くという選択も示したうえで、忠告をする。
「間違いなく、建造は第一級の厄介事だ。軽々しく判断するのは不味い。一般に知られて、それが暴動になったらどうするのだ。お前は責任を負えるのか」
過去のこともあって、国防軍の信頼は低めである。
艦娘に対してもしかり。
一般大衆に示すものは、慎重であるべきだろう。
「私には、とてもじゃないが責任を負えないよ。私も若くないみたいだ。若いころのように、どうしてもリスクを背負いきれない」
見た目が小さい長月であるが、艦としての人生も艦娘としての人生もそれなりに長い。
体に不調は感じないが、心の感覚は一般とのズレを感じている。
「恥ずかしい話だが、私が背負いきれる責任は自分が引き受けた仕事の責任だけだ。お前はどうなのだ、青葉」
青葉は押し黙る。
もちろん、自分なりに覚悟をもってこの仕事に挑んでいるつもりだ。
だが、想定外のことが起こって、それでも自分は責任を負いきるのだろうか。
「そこも含めて、室井提督と相談してみたらどうだ」
そういった意味では、自分は覚悟が足りていない。
ひとまず出直すべきだろう。
「そうですね。ありがとうございます」
「いいさ。これも仕事だからな」
ふと、青葉は今まで大人しくしている人物のことを思い出す。
「昭さん?」
見ると、昭は壁に寄りかかって寝ていた。
傍には妖精さんが工具をもって出入りをしている。
「ふん。始まったということだな。建造の真打が」
「どういうことですか?」
「艦の記憶の流入だよ。青葉もあっただろう」
艦の記憶の流入は、脳の整理が始まる睡眠時に行われることが判明している。
そして睡眠に抵抗しようとすると、無理やりに眠らされることも判明している。
「青葉。建造を知りたいなら、提督にいくらでも聞くがいい。だが、それでお前の心がどうなっても、それはお前でどうにかしなければならないことだ。其処のところも覚悟を抱くことだな」
何時も現実は、人間の想像を容易く超える。
だが、どんなことでも理解はできなくないのだ。
ただ、理解したくないこともあるのが問題である。
「とりあえず、運ぶぞ」
**
幸運というのはそこまで嬉しいものではないと思います。
だって、幸福の後には不幸があるんですから。
青葉は度重なる怪我と復帰から、ソロモンの狼との異名を頂きました。
でも、辛いものです。
周りの皆がどんどん死んでいくのを見届けないといけないし、いくら戦っても勝てないのですから。
死んだ後でも、私はこうやって生きているんです。
そうしてまた、知りたくないことを知ってしまうのですよ。
生きなきゃよかった、知らなきゃよかったって、偶に思ってしまいます。
冒涜的ではあると解っていても、青葉には解らないんです。
青葉は、駄目な艦ですよね、提督。
次も来月の頭に投稿予定です。