犬吠埼樹は悪魔である   作:もちまん

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第十一話 勿忘草と彼女

「…とうとう、2人だけになってしまったなぁ…」

 

                                       「………」

 

 

眼に映るこの景色は、今まで幾度となく見てきた。

しかし、その景色の彼方にいる『それ』は、今まで見たこともない『もの』だった。

『進化体』よりさらに強力な個体…『完全体』…というものらしい。

 

やつらも、進化しているのか。まるでちっぽけな我々人間をあざ笑うかのように。

あれは倒さなくてはならない。国のためにも、仲間のためにも―――

 

………倒せるのか…?私たちだけで…?

ある予感が、頭の中をかすった。

 

 

「っ!おああああああっーーー!!!!!!」

 

                                       「!?」

 

「(押し殺せ押し殺せ押し殺せ!)」

 

 

無意識の咆哮だった。

その咆哮はまるで、敵の強大さに包み込まれるのを拒絶しているかのような…

 

 

「はぁ…はぁ…!くそっ…!」

 

 

それは、乃木若葉初めての経験であった―――

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

風「今月の話も、なんかすんごいことになっているわね!」

 

東郷「謎が謎を呼ぶ展開ですが…ついに出るんでしょうか?」

 

夏凜「ちょ、ネタバレは止めなさいよ!私まだ読んでいないのに…」

 

樹「来月号まで待ちきれないっス!」

 

友奈「雷撃G’zマガヅンは、毎月20日発売です!」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

LOCATION:讃州中学校、勇者部部室

 

 

樹「みもりんさんの真似しているのかと思いましたよ…」

 

若葉「何の話だ?」

 

夏凜「…すやすや…zzz」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

LOCATION:夏凜の夢の中

 

 

友奈「だっ、誰かー!助けてー!黒い帽子にマントの変質者がー!」

 

国防仮面(神樹様の恵みモード)「へっへっへっ…へい!へい!そこの娘ちゃん、可愛い顔をしているわね♪あたいと一緒に楽しいことやらない?」

 

友奈「変態だーっ!」

 

夏凜「待て待て待てえーっ!」

 

国防仮面「何奴っ!?」

 

夏凜「若い娘に対して何たる無礼!目に入ったからには、見逃すわけにはいかないってえーもんよ!」

 

国防仮面「やいやいやいやい!てめぇーには関係ねぇこった!口出しするんじゃあないわ!」

 

夏凜「とやかく言ってねぇで手を離しな!さ、娘さん。こっちにおいで」

 

友奈「は、はいっ!」

 

国防仮面「おっと!」

 

友奈「きゃっ☆」

 

夏凜「なっ…!かっ…可愛い…!」

 

国防仮面「へへへ…この娘は渡さない…!さぁ友奈ちゃん。家に帰って、一緒に国防仮面のDVDを見ましょう。初回限定版のフィギュアに、お蔵入りNG集もあるのよ」

 

友奈「ひぇー…なんか言っているよ~…」

 

国防仮面「あなたにも神樹様の恵みを受けさせてあげるわ…ふふふふ…」

 

夏凜「野郎…いい加減に…」

 

国防仮面「野郎じゃないわ。それとも何かい?あたいとやろうってのか!?」

 

友奈「気を付けて!一体どんなプレイを強要されるか…」

 

夏凜「…あんたには…この桜吹雪が目に入らないようね…」

 

国防仮面「そっ…!その刺青シールは…!『遊び人の夏凜』…!?」

 

夏凜「まだやるかい」

 

国防仮面「お、覚えていなさいーっ!」

 

 

………………

 

 

夏凜「怪我はないかい、娘さん」

 

友奈「あ、ありがとうございます!お侍様…ぜひ、あなた様のお名前を…!」

 

夏凜「わざわざ名乗るほどの者ではないわ。では、達者で………うっ」

 

友奈「お侍様!?」

 

夏凜「ふっ…さっき登場するときに、足を挫いてしまったらしい…」

 

友奈「…そうだ!私の家においでください。簡単な手当てならできますので」

 

夏凜「恩に着るぜよ」

 

 

………………

 

 

友奈「…はい、終わりました」

 

夏凜「かたじけない」

 

友奈「お侍様、もう日が暮れます。よろしければ今晩は、私の家に泊まっていきませんか?」

 

夏凜「えっ…(ドキッ)」

 

友奈「近頃は、うどんの株価変動の影響もあってか…近辺、あのような輩がたむろするようになったのです。ですが、お侍様が泊まってくだされば安心です。実家はこのとおりカフェーを経営しておりますので、うどんはもちろん…にぼしに、ぼた餅もあります。御代はいりませんので、今晩の宿が決まっていないのであれば、ぜひお泊りになってください」

 

夏凜「いや、拙者は…」

 

友奈「にぼしもありますので」

 

夏凜「…拙者でよければ、世話になる」

 

 

その夜………

 

 

友奈「もぞもぞ…お侍様…」

 

夏凜「ん、どうした?こんな夜分に…まさか賊か!?」

 

友奈「いえ…賊ではございません」

 

夏凜「それではなぜ、拙者の布団の中に入る…?」

 

友奈「…気付いてくださらないのですね…」

 

夏凜「え?」

 

友奈「お侍様…私は、私はあなた様のことが…!」

 

夏凜「や…やめるんだ娘さん!カフェーの娘が、侍となど…!」

 

友奈「私の気持ちは、もう止められないのです!」

 

夏凜「娘さん…!」

 

友奈「今だけは…『友奈』って呼んで」

 

夏凜「あっ…」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

LOCATION:讃州中学校、勇者部部室

 

 

夏凜「………ううっ」

 

東郷「あ、夏凛ちゃん。起きたんですね」

 

夏凜「…ふぅ。あれ?今…どういう状況…?」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

樹「つまりは、ルール変更です。どちらかの点棒が0になるまで打つのではなく…回数を設定…ゲーム終了時に100点でも点棒が多い方が勝ち…そうしてもらいたい」

 

若葉「…な、なぜだ?」

 

樹「ふふ…」

 

 

ざわ…ざわ…

 

 

夏凜「…ど、どうして樹はあんにゃことを…(寝ぼけている)」

 

東郷「なるほど…いいかも知れないわね」

 

夏凜「にゃ?」

 

東郷「そのっちの点棒はすでに80000点…これを0にすることはほとんど不可能…できたとしても時間がかかりすぎるわ…帰りが遅くなれば学校の先生にも迷惑だし…至難の業…それならあえて、短期戦でイチかバチかの勝負に出るのも悪くないわ…」

 

夏凜「なるほど…」

 

若葉「…だが、いいのか?いくら時間がないとはいえ…お前の点棒はたった500点。それにこの膨大な点差だ…頼んだ私が言うのもなんだが、残り4ゲームではあまりにも少ない…さすがにそれでは園子に逃げ切られてしまうぞ…」

 

樹「いえ…麻雀にセーフティーゾーンなんてありませんよ。それにこの局、そのっちさんは自分の流れを崩してでも勝ちを取りにいきました。しかし、それが結果的に裏目…私は直撃を受けながらも生き残った…これはもう、天が私に味方している証拠。おそらく次の局から、流れは変わる…そう思いませんか?」

 

若葉「…そうか。樹…お前がそう言うのなら、なぜだか安心できる。それと園子もだいぶ疲れているだろうから、もう私の力を使うことはないだろう。頼んだぞ………あうっ」

 

樹「頼まれたっス…!」

 

若葉「………」

 

園子「………くかーっ」

 

風「あ、もう1回起こすのねこれ」

 

友奈「園ちゃん、起きて!」

 

園子「…あれ~?私、寝てました~?」

 

樹「先輩!おはようございまス!グレープフルーツジュース飲むっスか?」

 

園子「…あ!これ、果汁100%じゃないじゃん~飲むけどね~」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

風「樹…水を差すようだけど…無理はしないでよね。アタシは、樹が無事ならそれで…」

 

友奈「でも、500点じゃリーチすら…」

 

夏凜「友奈!あんた…」

 

樹「いいんスよ…もし、私よりそのっちさんが先にあがることがあれば…そのときは『天』が私たちを見放したってことっス。お互い覚悟しようぜ、にぼしさん」

 

夏凜「そっ、そう言われても…樹…!」

 

樹「…ですが、それもすべて配牌次第…もし私にまだ…運が残っているのなら…ありえるっス…逆転の手が入る可能性…!そのときは逆に、私に分があると考えるっス…天の意志が、私に勝てと言っている…!キリッ!」

 

風「(あー、あんなこと言っちゃって~やっぱ樹は可愛いわねー)」

 

東郷「録音しておきましたよ」

 

風「…さすが東郷ね。スキがないわ…あとでデータを…って!なんでニヤケてんの!?」

 

東郷「ところてんで樹ちゃん、次からの具体的な戦略なんだけど…絶一門はどうするの?」

 

樹「あれはもうやめるっス。なんだか待ちを工夫するあまり、窮屈に感じてしまって…」

 

夏凜「そうね。特に今は少しでも点棒を仕入れなきゃいけない状況だし…」

 

友奈「樹ちゃんは、樹ちゃんらしい麻雀をすればいいんだよ!」

 

樹「みなさん…ありがとうございます。絶対、勝ってみせます」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

この時点で、園子80000点。樹500点。

その点差、79500点。もはや絶望的と言っていい大差である。

 

 

風「…よっし、席を変えましょう」

 

樹「え?どうして…」

 

風「気分転換よ、気分転換。それに決着の方法がデスマッチからトップ取りに変わったんだし、東一局から始めるなら席を変えて、仕切り直した方がいいわ」

 

園子「それもそうですね~」

 

友奈「はいはーい!じゃあ席順決めるよ~風先輩から、どうぞ!」

 

風「おっ、悪いわねー。じゃあアタシはー…この牌に決めた!」

 

 

……………

 

 

友奈「結局、私と風先輩の位置が入れ替わっただけでしたね!」

 

風「んっんー!友奈!そういうこと言わない!虚しくなるから!」

 

 

席順も一新し、次より決戦…!

それでいいのか勇者部員…!

 

 

 

第十一話、完

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