犬吠埼樹は悪魔である   作:もちまん

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第十七話 桃の芽生え

LOCATION:???

 

 

「ここは、どこだ…?」

 

 

「私は、たしか――…」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

LOCATION:讃州中学校、勇者部部室

 

 

樹と園子の長い戦いが、今終わった。

勝負を決めたのは、土壇場で樹が見せた3つの強運。

{北}の大明槓、嶺上開花、そして新ドラが乗ったこと。

これで樹はノミ手を満貫にまで押し上げ、園子に完全逆転勝利…!

 

 

{南} ポン{横⑧⑧⑧}{二横二二}{88横8} カン{北横北北北} ツモ{南} ドラ{南}

 

 

最終的な点数はこう。樹57200点(前局48900点) 、園子55100点(前局63400点)。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

夏凜「ふぁー…長かったわ…(夜中の3時半か…スーパーの惣菜…もう売り切れているわよね…ていうか閉まってる。コンビニ行こ。ていうか夜が明ける)」

 

東郷「結局この勝利は、風先輩や友奈ちゃんのサポート、そして樹ちゃん本人の運だけで片付けられるものではないわ。他人を寄せ付けない圧倒的才能…そしてセンスが、樹ちゃんにはある…」

 

夏凜「…いや、やっぱり運でしょ」

 

東郷「むっ…」

 

友奈「そうかな?たしかに運もあると思うけど、私も運だけじゃないと思うよ」

 

夏凜「そう言われても…」

 

友奈「例えば麻雀で夏凛ちゃんが、満貫以上の打点を狙える絶好の好配牌を手に入れたとして…その局、必ずあがれるって言い切れる?」

 

夏凜「いや…思うように鳴けなかったり、ツモが悪かったりしてまったく手が進まないときは、当然あがれないわね…そんなときに他からリーチでもされたら…場合によっては降りることもあり得るわ」

 

友奈「そうだよね。それにその逆のパターンも然り」

 

夏凜「逆?」

 

友奈「最悪の配牌でも、その後のツモが良かったり、鳴きたい牌が思うように鳴けたりできれば、自然と形になることもあるよね」

 

夏凜「ええ」

 

友奈「配牌が良くても悪くても、ツモや鳴き次第で手は高くも低くもなる。それが麻雀。樹ちゃんには…『流れ』っていうのかな。そういう勝負の流れを読む状況認識能力が誰よりも優れているんだよ。この牌は捨てるべきなのか、この牌は鳴くべきなのか…取捨選択の判断が適切で、早い。それは、二手も三手も先を読んでいるから。こればっかりは、樹ちゃんの才能と言うしかないよね」

 

東郷「そういうことよ…」

 

夏凜「いかにも東郷が説明しましたって口調、やめなさいよ…まぁ、わかったわ。なるほどね…意外と言うか…知らなかったわ。あの樹にそういう才能があったなんて…」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

園子「ごめんなさいイッつん。そしてみんな…」

 

風「そんなことより、乃木。あんたは勇者部の顧問になって一体何するつもりだったの?」

 

園子「………顧問を通せば、部費や合宿…その他もろもろの部活動の申請がスムーズになりますよね。だから顧問が居れば、私たちの今後の勇者部活動にいろいろ便利かな?って思ったりして~…私、部活っていうのを今まで経験したことがなかったから、どんな接し方をすればいいのかわからなくて…つい、なりゆき任せのゲーム感覚で、決めようとしていました…ごめんなさい~…」

 

風「乃木…(人のこと言えない)」

 

園子「…私はただ、顧問になれば部費がもっと増えるかも…そう思っただけで…そのお金でみんなとコミケに行ったりコスプレの衣装を買ったり…みんなと楽しく部活を…そう、私が今まで経験したことのない部活動を、やりたかっただけなんです…!」

 

友奈「なんだ、そんなことだったんだ」

 

園子「え?」

 

樹「全然問題ないっスよね?」

 

風「うんうん」

 

東郷「お金の使い方はさておき…そのっちは、ちゃんと勇者部のことを考えてくれていたんですね。そのことだけでも嬉しいです」

 

園子「わ、わっしー…みんな…」

 

夏凜「(っはぁーーー!よかったああああっー!樹が勝ってくれてー!コ…コミケ行くのは別にいいとして…コスプレとか絶対やりたくないわあああー!本当にー!)」

 

風「…んで、樹。顧問には本当になるつもりなの?部長以上に大変だと思うけど」

 

樹「もちろん、頑張るつもりっスよ!裏で勇者部を支配していきまス!」

 

風「可愛い(苦笑)」

 

友奈「おおっ!樹ちゃんが頑張るなら私、応援するよ!」

 

東郷「忙しくなるとは思いますが、樹ちゃんならできると信じています」

 

園子「私も顧問はイッつんがふさわしいと思うよ~もちろん私たちにできることがあるならなんでも言って~」

 

夏凜「私も、応援するわ。はい、オリーブオイル」

 

樹「ありがとうございます!みなさんが協力してくれるのなら100人力っスよ!」

 

 

樹と園子…その決着。

そして謎に包まれていた園子の目的と意図が明らかになったことで、部員同士の緊張は解け、和解。

部室には安堵の気配漂う…緊迫し、張り詰めた空気から一転…弛緩した空気が流れた。

園子の敗北でこの勝負は終局…後ろで見守っていた東郷や夏凜をはじめ、友奈や風も、これで勝負終了であると…誰もがそう思っていた。

しかし!ある人物だけは、東郷たちとはまったく別のことを考えていた。

 

 

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若葉「樹、本当にありがとう。お前のおかげで園子はこの通り正気を取り戻すことができた。今この場で礼を言わせてもらう。本当に、感謝してもしきれない」

 

樹「こ、こちらこそ!ですが、この勝利は私だけのものではありません。お姉ちゃんや、友奈さんのサポート…そしてみもりんさんとにぼしさんの応援があったからこそ、勝てたんだと思っています。私はただ、若葉先輩との約束を守りたかっただけで…」

 

若葉「謙遜するな。私は、お前のことを誇りに思うぞ」

 

樹「そ、そんな…照れちゃいますぅ~」

 

風「はぁ~あざとい!なんてあざといのかしら!ねぇ!」

 

東郷「知りませんよ…」

 

若葉「そして樹、約束のチュンカード…5000円分だ。受け取ってくれ」

 

樹「………あ…そ、そのこと…なんですが…」

 

若葉「どうした?」

 

樹「…い、いりません」

 

若葉「え?」

 

風「いりませんって樹…」

 

樹「そのチュンカードをそのままそっくりサシウマに乗せてもう一勝負…!レートを倍にして、次は1万円のサシ勝負っス…!」

 

 

※神世紀の1万円は西暦の貨幣価値に換算すると、10万円以上である。

 

 

樹「まだだ…まだ終わらせない…限度いっぱいまで行く」

 

若葉「…!」

 

東郷「い、樹ちゃん!?何を言い出すかと思えば…引き際を知りなさい!」

 

夏凜「そうそう…!これで終わりよ…!」

 

樹「引き際なんて最初からないっスよ。この勝負はこの世界と同じ…そう、人間とバーテックス…その関係と一緒っス。これはもう私とそのっちさんだけの問題に収まらない。犬吠埼家と乃木家…そのどちらかが破滅するまでやる…そういう真剣勝負だったはず…ですよね、若葉先輩」

 

若葉「…読者のためにも、そう言いたいところだが…その園子が負けてしまってはな…打ち手がいないんだ…もう…」

 

樹「何言ってるんです。そのっちさんで再戦すればいいじゃないスか。勝負は五分五分だった…」

 

若葉「…そうもいかない。わかるだろう。今の勝負で完全に格付けが付いてしまった…今の園子はもう、お前には勝てない」

 

樹「じゃあ…若葉先輩が戦えばいいじゃないスか」

 

若葉「いや…私なんかは園子に到底及ばない…顔に出やすいタイプだからな。園子で及ばない相手を私がどうこうできるわけでもない。つまり、私の園子が負けた時点でこっちの勝ちの目は消えた…それに園子の目的が消えてしまった今、こちらにはもう勝負する理由がないんだ。だから降りる…!その決断は変わらない」

 

樹「むー………」

 

友奈「…樹ちゃん」

 

樹「友奈さん」

 

友奈「いいじゃない。今日はもう遅いし、ね?」

 

樹「…まぁ、友奈さんがそう言うなら…」

 

 

このとき樹、意外に素直。

 

 

若葉「…ほら、チュンカード…5000円分だ」

 

樹「…どうも」

 

東郷「いいですね樹ちゃん…5000円もあれば、イベントも十分に走れますし…ガシャなら、今のキャンペーンで2~3枚はSSRが出るかも知れません」

 

友奈「東郷さん!また課金の話!」

 

東郷「あっ…」

 

夏凜「…樹ならもっとうまい使い方するわよ…少なくとも東郷よりは」

 

風「………」

 

樹「…課金かぁ…」

 

 

そのときの樹の表情は印象的で、今でもよく覚えている。

 

 

風「(樹のあの目…とてもきれいな目をしているわ…子供が、興味のないおもちゃを見つめる目…さっきまでの樹の狂気が去っている…きれな目…まるで今までの憑き物が落ちたかのように…そうよね、樹はまだあたりまえの中学生…13歳の女の子。他の子となんら変わりないのよね…)」

 

 

ああ…私はもう、勇者部を辞めよう…

 

 

風「(今回の勝負で、私はわかってしまった。樹の強さが。樹にはあって、私にはないもの。その正体が。そうよ。私が樹のように勝てるわけないじゃない…なぜなら、私には生涯…あんな目はできないだろうから…)」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

樹「どうです?汗もかいたことですし、今からプール行きませんか?学校の」

 

友奈「えっ!?今から!?」

 

夏凜「まさか泳ぐ気?外は真っ暗よ」

 

樹「何も泳ごうなんて言ってないっスよ。ただ学校のプールにあるシャワーを借りようって話で…まぁ、私は泳ぎますけど」

 

夏凜「うん…突っ込まないわよ、もう」

 

樹「どうです?どなたか、一緒に泳ぎませんか?スッキリしますよ」

 

東郷「…仕方ありませんね。それでは、本編では見せられなかった私の泳ぎをry

 

樹「そのっちさんは、どうします?」

 

園子「いや、私は遠慮しとくよ…スク水しかないし」

 

樹「…そうですか。では、若葉先輩」

 

若葉「スク水しかないから…止めておく。それに気分じゃない」

 

樹「えっ!?先輩…そんなこと言っちゃって…もしかして泳げないんスか?(笑)」

 

若葉「んだとぉ!?」

 

風「っ!まぁまぁ。2人とも落ち着いて。それに樹?どうせ泳ぐなら、ちゃんとしたプール施設か海で泳いだ方がいいって!」

 

樹「じゃあ有明浜まで行きますか」

 

風「今からは勘弁。帰ろ」

 

樹「マジっスか。じゃあビニコン寄りましょう。例の物、買ってもらうっス」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

LOCATION:コンビニ

 

 

勇者部6人(+乃木若葉)は、樹の例の物を買うためにコンビニへと移動。

時刻は、午前4時になろうとしている。

 

 

店員「らっしゃっせー!」

 

風「キョロキョロ…」

 

友奈「風先輩、どうしたんですか?」

 

東郷「幽霊でも見ましたか?」

 

風「そ、そんなわけないでしょ…!たしかに幽霊は苦手だけど…」

 

友奈「先輩、ゆーれいに会ったことあるんですか!?」

 

風「ないってば…!なんでそんなに目ぇーキラキラさせてんの!?ひ、ひとまずその話は置いといて…この時間ってさ、おもいっきし深夜じゃない?未成年の深夜徘徊はアレだし…帰り道、もしあの人に出くわしでもしたら…」

 

友奈「あの人…って誰ですか?」

 

風「ほら、今噂になっている国防仮面よ国防仮面。見つかったらお説教とかされそうで…」

 

友奈「ああー…」

 

 

国防仮面とは…近頃、観音寺市近辺で話題になっている謎の憂国の戦士のことである。

その存在の波紋は勇者部の間にも広まっていた。しかし、それも当然のこと。

国防仮面の行っていることは、基本的には人助け。

自身の正体を明かさないことを除けば、彼女ら勇者部が普段行っている活動と何ら変わりはない。

主な出現時間は平日の夕方から夜。休日は昼間にも姿を見せるという。

つまり、金曜日から土曜日にかけてのこの時間帯は、最も出現率が高いことになる。

 

 

東郷「そうですね。ですが国防仮面のことですから、捕まったらお説教で済むかどうか…」

 

風「やっ!やめてよ東郷ー!」

 

友奈「でも私は会ってみたいかも!だって人助けしているんだから、悪い人じゃないと思うし」

 

東郷「ええ。名前から察するに、きっと護国思想の持ち主ね」

 

友奈「あはは、それなら東郷さんとは気が合いそうだね!」

 

東郷「ギクッ」

 

樹「まぁ…国防仮面もそうですが、それよりも今私たちが最も危惧すべき存在…それはK察…」

 

風「あー、そっちの方が面倒かもねぇ…」

 

樹「にぼしさん、捕まってみます?きっと楽しいっスよ(私が)」

 

夏凜「もし捕まったら補導…反省文…前科持ち………わ、私…先に帰る!」

 

樹「あらら~」

 

園子「にぼっしー、安心して~きっと大丈夫だよ~」

 

夏凜「へっ?」

 

園子「深夜徘徊で捕まっちゃう時間帯は、地域にもよるけど基本的には夜の11時から朝の4時までだからね~平気平気~」

 

夏凜「べっ、別に知らなかったわけじゃないし!知ってたわよ、そのくらい」

 

園子「ふ~ん………」

 

夏凜「な、何…?」

 

園子「赤信号~みんなで渡れば怖くない~」

 

夏凜「…ってー!ダメじゃない!」

 

園子「あはは~、ひっかかった~冗談だよ~冗談。国防仮面さんも、今頃起きてるんじゃないかな~?ね、わっすぃー」

 

東郷「そっ、そうね…」

 

友奈「(あれ?今なんで東郷さんに振ったのかな?)」

 

 

………………

 

 

樹「はい、そのっちさん。それと、若葉先輩」

 

園子「…これは~?」

 

樹「ボリボリ君の秋ビニコン限定、焼肉味のアイスっスよ。お姉ちゃんの奢りです」

 

若葉「むっ、悪いな。ありがたくいただくよ」

 

園子「この伏線は回収するんだ~」

 

若葉「それ、伏線か?」

 

樹「これで2本…あとはみもりんさんと友奈さん、そしてにぼしさんの分と合わせて5本…」

 

風「これで全部ね」

 

樹「お姉ちゃん。あれは私の分で5本って意味だよ?だからあと5本買って欲しいな~…」

 

風「い、樹ぃー…!」

 

若葉「(結局買うのか…)」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

LOCATION:帰り道

 

 

友奈「雨止んでよかったねー!雨上がりの空気、私は好きだなー」

 

東郷「友奈ちゃん、あんまりはしゃぐと転ぶわよ」

 

夏凜「放課後の雨が嘘みたい…明日は晴れそうね」

 

 

………………

 

 

友奈「じゃあ、私たち帰り道こっちだからー!」

 

園子「あっ、そうだったね~じゃあここまでだね~」

 

若葉「私と園子以外は別方向か」

 

友奈「ばいばーい!園ちゃん!若葉先輩!」

 

風「乃木ぃー、気を付けて帰りなさいよー!まだ暗いんだしー!」

 

夏凜「では、達者で」

 

東郷「ぼた餅」

 

樹「そのっちさん!若葉先輩!ま、また学校でー!」

 

園子「うん~またね~」

 

若葉「………」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

LOCATION:帰り道(海岸沿い)

 

 

若葉「今日は疲れたろう。大赦に帰ったら、ゆっくり休むといい」

 

園子「そうだね~」

 

若葉「………」

 

園子「………」

 

若葉「………このままでは…終われないな………ボリボリ」

 

園子「…え?」

 

若葉「樹のことだ」

 

 

若葉は、ボリボリ君を噛み砕く。

 

 

若葉「園子を救ってくれたことはいい…それには感謝している。だが、なぜだ。今回の勝負…私は樹に頼んだ。園子に勝ってくれと…そして約束通り樹は勝った。チュンカードも渡したし、これでもうお互いに勝負する理由はなくなった。それなのになぜ、樹は倍プッシュ…もとい、再戦を申し込んだのか…」

 

園子「そっ…それは…」

 

若葉「…その答えは1つ。樹は、あの流れなら100%園子に勝てると確信していたからだ。だからあのとき、その機を逃さず搾り取るだけ搾り取ろうとしたんだ。時間や園子の体調なんて関係ない…ただ自分が勝つために、もっともっと勝ちを積もらせるために…!」

 

園子「………」

 

若葉「くっ…!許せん…許せんぞ…犬吠埼樹…!もしあのとき、樹にいいように言いくるめられて再戦していたら…それが原因で園子に…もしものことがあったらと思うと…!園子、私は決めたぞ。ボリボリ」

 

園子「…え?」

 

若葉「『何事にも報いを』乃木家の…誇りだ」

 

園子「若葉先輩…まさか…」

 

若葉「止めるな、園子」

 

園子「私のために怒ってくれる…その気持ちは嬉しいよ…でも、その考えはもう…止めたって…」

 

若葉「我々乃木家が、『誇り』を守らなければ…一体誰が守ると言うのだ?それに、園子をここまでひどい目に遭わせようとしたんだ。腕の一本くらい、もらっておくべきだと思うぞ…血の味を、もう一度『生大刀』に思い出させてやる…クッフッフッフッ………」

 

園子「じょ、冗談だよね?(その笑い声も)それはあまりにも…」

 

若葉「…年を取ると冗談が出てくるようだな。だが、安心しろ。報いは受けさせてやる…」

 

園子「じゃ、じゃあどうやって…?」

 

若葉「麻雀の借りは…麻雀で返す…!」

 

園子「ま、麻雀…!?」

 

若葉「ボリボリ…美味いなぁ、これ」

 

園子「…あ!私の分まで…!」

 

 

朝。雲間から昇る朝日。

まるで戦いに負けた2人を、悲しくも称賛するかのような…その閃光が、2人を眩しく包み込む。

しかしその光も、憎悪に満ち溢れドス黒く染まってしまった彼女の瞳の奥底には、決して届くことはなかった…

 

 

こうして、伝説の夜は終わった。

 

 

否、これは始まり…

この日神世紀300年10月22日の出来事である。

そして、世間は再び樹を知ることになる。

そのわずか2か月後に………

 

 

 

第十七話、完

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