犬吠埼樹は悪魔である   作:もちまん

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第二打【犬吠埼風覚悟の章】
第十八話 蝦夷菊の真意


―――ちゃん、起きて…

 

                             んー…もう少し、寝かせてくれ…

 

このやり取り、今日で3日目なんだけど…

 

                                         zzz…

 

…ほーら、行くよー!

 

                              ひあぁっ!?な、何をする!?

 

ふふ、弱点をさらけ出して寝ている方が悪い~

 

                                 ………すまん、起きる。

 

うんうん~でもま、その気持ちもわかるけどね。

 

                    本当に、久しぶりだったからな。こうして眠るのは…

 

 

 

                  「本当に」

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

LOCATION:讃州中学校、勇者部部室

 

 

樹と園子…その激闘からちょうど2か月。時は神世紀300年12月22日。

勇者部である結城友奈、東郷美森、犬吠埼風、犬吠埼樹、三好夏凜、そして乃木園子。

終業式を終えた彼女たちは、今年最後の勇者部活動を行っていた。

新年に幼稚園で行われる演劇…それの打ち合わせである。

勇者部一同、各自その準備に取り掛かっていた。

 

 

風「え?乃木は帰っちゃったの?」

 

友奈「はい。なんでも、急ぎの用があるとかで…」

 

風「ふぅー(風先輩のことではない)…本番まで時間がないから、脚本の調整したかったんだけどね…まぁ、いいわ。乃木には、あとでアタシから連絡入れとくわ」

 

友奈「お願いします。園ちゃん担当の脚本、面白くなりそうですよね!」

 

風「そうね。でも、お姫様も勇者も女って言うのは…」

 

夏凜「新鮮で良いんじゃない?そういうのも」

 

友奈「お姫様という恋愛要素が追加されることによって、さらに観客をストーリーに引き込ませられる…らしいですよ」

 

風「でも、そうしちゃうと本来のメッセージ性が弱まると思うのよね…乃木には悪いけど、そこら辺の配分も、ちゃんと考えないと」

 

友奈「…それもそうですね。夏凜ちゃんは、どう思う?」

 

夏凜「私は………―――」

 

樹「ねェ、いいっショ?みもりんさん…」

 

東郷「むっ…今いい所なのに…」

 

樹「今月の雷撃G'z読ませてくださいよ~、面白い連載あるんスよ~もちまんって人の!」

 

パソコン「ピコーン!」

 

東郷「ん?ちょっと待ってください、樹ちゃん」

 

友奈「パソコンがしゃべった!?」

 

樹「マジっスか。勇者部に依頼っスかね?」

 

東郷「………これは………」

 

友奈「?東郷さん?」

 

東郷「………みなさん、このメールを読んでください」

 

風「差出人は………たっ!大赦から!?」

 

東郷「送信元はそうですね。宛先は樹ちゃん。本文には私たちの名前も書かれています」

 

夏凜「大赦が樹宛のメールを、わざわざ『勇者部』に送って来たということは…つまり樹だけが対象じゃない。結局は私たち全員にも見てもらいたい…共通する内容…ってことよね」

 

樹「さすがの洞察力っスねにぼしさん!マジパネェっス!」

 

風「樹…なんかあんた、麻雀始めてから本当に我が道を行くようになったわねぇ…しみじみ」

 

友奈「あれ?でも、園ちゃんの名前は書かれていないようだけど?」

 

東郷「それは…この送り主がそのっち本人…そして、若葉先輩だからです」

 

4人「!?」

 

 

大赦から送られてきた一通のメール。

差出人は乃木園子。そして、乃木若葉である。

メールの内容は、2か月前、樹が要求した賭け麻雀の続行…それを引き受けるとのこと。

1万円のサシ勝負の承諾である。(大赦書史部・巫女様検閲済)

 

※神世紀の1万円は西暦の貨幣価値に換算すると、10万円以上である。

 

 

ファクス「ビビーっ!」

 

友奈「『勝負当日は本紙の内容に同意、または選択の上、明後日12月24日20時に大赦本殿へお越しください。また、賭け金は1万円としておりましたが、金額は新たにこちらで設定させていただきます。犬吠埼樹様30億円、犬吠埼風様、結城友奈様、東郷美森様、三好夏凜様各位25億円を最大賭け金とし…?』」

 

夏凜「…何よこれ?なんで私たちにまで値段が…」

 

友奈「私たちも勝負できるってことじゃないかな?園ちゃんたちと」

 

夏凜「たしかに、本文を読む限りではそうかも…」

 

樹「でも友奈さん。そもそもこの金額…私たちのような一般人に支払える金額じゃないっスよ…負けたら払えってことっスかね?」

 

友奈「そうだろうね。でも最大賭け金って書いてあるから、その通りの金額を賭ける必要はないと思うよ」

 

東郷「つまり…仮に25億円張って勝つことができたら、25億円もらえる…そういうことですね…(静かな興奮)」

 

夏凜「な、なるほど…ハイリスク、ハイリターンってやつね。しないけど」

 

東郷「課金が捗るわね」

 

夏凜「…は?」

 

東郷「課金が捗るわね(ニコッ)」

 

夏凜「懲りないわね…」

 

風「東郷、まさか勝負するつもりじゃないでしょうね…心配だわ」

 

東郷「友奈ちゃんも一緒に受けない?」

 

友奈「…いや、危ないよ。これは」

 

東郷「友奈ちゃん?」

 

樹「友奈さんが2回も倒置法を使うなんて…穏やかじゃないかほりがするっスよ」

 

友奈「東郷さんの言う通り、もし勝つことができたのなら…この金額をもらえるのかも知れない。でも、そこが怪しいというか…落とし穴というか…」

 

樹「そうっスかねぇ…」

 

東郷「そのっちは嘘をついたり、約束を破ったりする人ではありませんから…そこは問題ないのでは?」

 

友奈「うん…そこはわかっているんだけど…これが園ちゃんの打った文章とは限らないし…額が額だからね…なんか違和感が…」

 

東郷「友奈ちゃん…」

 

友奈「えへへ…なんか私、おかしいよね。友達を疑うなんて」

 

夏凜「…まぁ、『何かご不明な点がございましたら質問を』…ってあるから、そこは聞けばいいんじゃない?」

 

風「樹はどうするの?この勝負、だいぶ前の話だし…嫌なら断っても…」

 

樹「うーん…これはそもそも私から言い出したことっスからねぇ…それじゃあこう返信して…タッタッタ…ターン!ビシッ!」

 

風「キーボード打つの速っ!」

 

樹「学校で習ったっショ」

 

東郷「むっ…」

 

 

勝負の前日…園子からある『物』をもらい受けることを条件に、樹これを承諾。

園子との倍プッシュ…1万円のサシ勝負は、園子側が新たに金額を設定。

その賭け金は、限られた金額の中、樹たちが自由に設定することができる。

最大1万円のサシ勝負は、最大30億円へと膨らんだ。

神世紀の30億円は西暦の貨幣価値に換算すると、300億円以上に匹敵する。

 

翌日12月23日朝。

樹はメールの送り主、乃木園子と勝負の打ち合わせを行う。

樹が直接会っての打ち合わせを要求した理由…それは、メール内容の確認と確定。

メール本文のみでは不明な点が多い。互いの解釈を一致させるためにも、直接話し合っての賭け金やルール設定などの事前把握は必須。これは樹側としては当然の要求。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

LOCATION:商店街通り

 

 

風「やっぱり危ないって!樹ィ!メールは乃木たち…つまり大赦から送られて来た!大赦の奴ら、四国のためなら勇者を平気で見殺しにするような連中なのよ!い、今からでも遅くないワ!断りの連絡を入れよう!」

 

樹「何言ってるの。せっかく頂いた、そのっちさんからのお誘いなのに」

 

風「そういう意味じゃないわよ!このメールはねェ…と、とにかく…捕まれば監禁か?脅迫か?いずれにしろ、ろくでもない目に!」

 

樹「…わかってるよ。でもねお姉ちゃん。このことは、そもそも私から仕掛けたこと…私だけでなんとかしてみせるよ。それに、私たちはバーテックスと戦う勇者だよ?今更監禁も脅迫も怖くないでしょ」

 

風「そっ、そう言うけどね…樹ィ!」

 

樹「私ももう中学生なんだし、自分が使ったうどんのどんぶりは、自分で洗うよ。いつまでもお姉ちゃんに頼りっぱなしってわけにはいかない。これは、私の意志でもあるんだから」

 

風「樹ぃ…成長したわねぇ…」

 

樹「…着いた。このカフェーだね。お姉ちゃん、そんなに心配なら一緒に行く?」

 

風「い、いや…アタシはこれから特売の卵を買いに行かないと…」

 

樹「…用件が済み次第出てくるよ。早くて20分くらいかな」

 

風「気を付けてね、樹。早めに戻って待ってるから」

 

樹「うん…」

 

 

 

第十八話、完

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