LOCATION:讃州中学校、勇者部部室
風「…来年度の勇者部新部長は、麻雀で決めます!」
ざわ…
東郷「麻雀ですか…」
友奈「風先輩、なんで麻雀なんですか?」
夏凜「唐突にもほどがあるわ…麻雀知らない読者が読んだら怒るわよきっと」
風「アタシだっていきなり思いついたわけじゃないわ。これにはねぇ、ちゃんとした理由があるのよー」
夏凜「ホントかしら」
園子「理由ですか~?」
風「乃木には話していなかったけど、次の部長に友奈に東郷、夏凜までもがやりたいって言い出すのよ?候補が3人ともなると、さすがのアタシも困っちゃって」
園子「3人とも部長になりたいんですね~」
風「そうなのよ。それで、それぞれ個別に話も聞いてみたんだけど…うーん…ぶっちゃけ誰も捨てがたいのよね…友奈はたくましいし、リーダーシップもあるし…東郷や夏凜は部費や書類関係の仕事をきっちりとやってくれそうだし…」
園子「たしかに、いい意味で迷っちゃいますね~」
風「でしょう?3人ともしっかりしていて誰に決めるか悩むけど、やっぱり1つの部活をまとめるためには、1人のリーダーがいる。だからもう、これはアタシ1人が決める問題じゃないと思うわけ。そこで思いついたのが、麻雀よ」
園子「ほえ~」
夏凜「いや、なんでそうなるのよ。筆者の趣味全開じゃない」
友奈「夏凜ちゃん!これ以上の発言は…大赦に消されるよ!ぞぞぞぞー!」
夏凜「なんのこと?」
風「そう!麻雀とは奥深いゲーム…勇者部の部長の座を勝ち取るためには…人としての基本的能力…それだけではダメ…知力・洞察力・観察力・選択処理能力…さらには運命力さえ味方につけなければ、次期勇者部部長は務まらないわ!あと女子力」
夏凜「た、たしかにそう言われると否定できなくもない…わね」
東郷「風先輩の言う通り…いいかも知れませんね。麻雀とは取捨選択のゲーム…必要な事柄を見極める能力を計る意味でも、これからの勇者部にとって必要な能力だと思います」
友奈「私、運なら負けない自信あるよ!よーし、やっちゃうよー!」
東郷「友奈ちゃん、麻雀は運だけでは勝てませんよ」
園子「うん~?なんか正しいような~正しくないような~…」
風「こういうのはゲーム感覚で適当に決めた方が案外うまくいくのよ」
夏凜「でも、麻雀は4人でやるゲームよ。始めるにはあと1人足りないわ。私に友奈、東郷で…あと1人は誰がやるのよ」
風「そ、そうだったわね…そこは考えていなかったわ…このアタシとしたことが…あ、そうだ樹、あんたがやんなさいよ!」
樹「マジっスか先輩。私ルールわかんないっスよ」
風「いいから、いいから。基本的なことは教えるから。あ、あと樹が勝ったら部長ね」
樹「マジっスか」
東郷「そ、それはさすがに荷が重すぎでは…」
夏凜「そうよ。それに、ルールだってわかんないって言っているのに…」
風「だって次の新部長を決めるのよ?我が愛する妹すら倒せないようじゃ、この先部長が務まるかどうかとてもとても…あ、ひょっとして夏凜。あんた樹に負けるのが怖いのー?」
夏凜「い…いーわよ。やってやろうじゃない!」
友奈「じゃあ、やろう~」
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のちに―――
裏の勇者部を震撼せしめる存在となる、犬吠埼樹。
これがその始まり。初めての麻雀。
犬吠埼樹13歳。このとき、樹は卓につく5分前に姉の風から麻雀のルールを簡単に説明されただけで、役など一切知らない…トーシロ以前の状態だったという。
麻雀とは基本的に牌3枚の組み合わせ(面子)4組と、同じ牌2枚の組み合わせ(雀頭)1組…
計14枚で役を作る。その組み合わせのスピードや点数の高さを競うゲームである。
今回は友奈、東郷、夏凜、樹の中から1名を新部長に決定する。
トップであがった者が次年度の勇者部新部長となる。
持ち点は各25000点。東は樹、南は夏凜、西は東郷、北は友奈。
樹から見て右(下家)が夏凜、正面(対面)が東郷、左(上家)が友奈。
樹→夏凜→東郷→友奈→樹→夏凜…の順番でゲームは進む。
勝負開始。樹に目立った様子はない。
東郷「ツモです。七対子ツモドラドラ、満貫。前半戦終了ですね」
{六六①①445577東東南}ツモ{南}ドラ{7}
夏凜「や、やるじゃない」
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東局(前半戦)終了。
この時点でトップは東郷35000点、二位夏凜27000点、三位友奈21000点。
結局、初心者である樹の点数は四位の17000点。
振り込みもしないがあがりもしない…平凡な内容。
のちに裏の勇者部を統括する才気の片鱗はまだ見えない。
後半戦開始。
南一局。親は樹。ドラ{五}
開幕、樹は静かな立ち上がりを見せた。
樹「り、リーチ!」
4巡目、樹テンパイ。
東郷「(親の樹ちゃんのリーチ…あがった場合、親の得点能力は1,5倍…捨て牌からしてタンピン系が濃厚…さて…)」
夏凜「(気になるのはこのリーチの早さ…よほど配牌がよかったのか…いや、それはないわね。なぜなら樹は初心者…役がどうとかはまだ理解の外…そうなれば答えは1つ。テンパイ即リーで連荘を目指すのが狙いのようね。だから待ちは、そんなに良くないはず。とりあえず私は字牌整理…しばらくは様子見…)」
友奈「(たしかに親のリーチは怖いけど…いい手が入ったし、降りることはないよね!)」
樹「(さて…ルールもある程度覚えたし…まずは減った点棒を集めておこうかな…集めやすいところから…)」
樹の思考はこう。
まず自分が最下位であること。これを利用する。
最下位ということでほぼ自分はノーマークになる。
東郷と夏凜はそれぞれ30000点近い点棒を抱えている。
そんなときに起きた、ノーマークの樹のリーチ。
この場合、そこそこの安全圏にいる彼女たちは、イチかバチかの勝負はしてこない。
様子を見ながら場を回し、振り込みは極力避ける…ことなかれ主義。
そういう輩には、捨て牌にタンピン系を匂わせた字牌の単騎待ちが効果的。
あとは勝手に、向こうから振り込んでくれる。
樹「にぼしさんは…お兄さんとうまくやっていますか?」
夏凜「えっ!?な、な、なによ。いきなり…」
樹「いえ…なんて言うか…急に気になったものですから。どうですか?最近…」
夏凜「どうって言われても…ふ、普通よ、普通」
樹「そうスか」
夏凜「(なんなのかしら…)」
樹「(ふふ…)」
夏凜「{西}」
樹「ロン、リーチ一発一盃口…裏ドラ2つで…親満12000点」
{223344⑤⑥⑦七八九西} ロン{西} 裏ドラ{2}
夏凜「えっ…!?」
ざわ…
樹「や、やったぁー!あがれたー!」
風「すごいわ樹―!」
夏凜「(…{西}単騎…?そんなこと…だって樹の捨て牌…リーチ直前のあの牌を切らずにいれば、もっと理想的な待ちにできたものを…なのにそれを蹴っての{西}単騎…!偶然なんかじゃない…樹は、私の溢れる捨て牌を狙っていた…!今思えば、さっきの会話…それこそが罠…!身内の話題で私を動揺させ、溢れ牌を出させやすくする作戦…!こいつ…!)」
樹「にぼしさぁん!すいませんねぇ!」
夏凜「(…でも、やはり樹は初心者…この手、一発に裏ドラが2つ乗らなければリーチ一盃口のみの安手…そう、これは単なる偶然…ビギナーズラック…)」
が、実際に満貫を振ってしまったことも事実。
このあがりで、樹は17000点あった点棒を一挙に29000点にまで盛り返す。
逆に夏凜は樹からの直撃を受け、27000点から15000点にまで落ち込む。
このときより―――
勝負の振り子はゆっくり、樹へと傾き始める。
第二話、完