LOCATION:讃州中学校、勇者部部室
東郷「({⑦}…?{⑦}って…)」
掴んだのはドラの{⑦}。
ここで東郷、手替わりの選択。
東郷「(…いや、ここで{⑦}待ちはないわね。なぜなら…{⑦}はすでに私が1枚、そして友奈ちゃんの捨て牌に1枚入っている…つまりこれで待つということは、残り1枚の単騎…地獄待ちということになるわ。でも、その1枚もすでに誰かが…樹ちゃんあたりが止めている可能性が高い…そもそも私の捨て牌は明らかな筒子のホンイツ…それにこの終盤、誰がドラを手放すっていうの…?それに{發}は生牌…まだ1枚も捨てられていないから、ロンでも、ツモでもあがれる可能性あり!私のツモはあと2回…これは樹ちゃんのロン牌の可能性もあるけど…さすがにドラ単騎なんてしないはず…ここは行くわ!まっすぐ!)」
東郷、{發}はそのまま手中に残し、打{⑦}。
自分の読みを信じ、変わらず{發}単騎に受ける。
樹「………」
東郷「(…どうやら通ったようね)」
友奈「私のツモだね」
東郷「(友奈ちゃんはリーチをしているから、それが自分のあがり牌でなければどんな危険牌でも捨てなければならない…ロンあがりなら、友奈ちゃんからあがれる可能性が一番高い…!)」
友奈「(ツモ…!)」
東郷「(来いっ…!来いっ…!来いっ…!發うううううううんっ…!)」
友奈「…{⑦}」
東郷「(…え?{⑦}…?も、もし{⑦}で待っていれば…)」
{發}を切って{⑦}で待っていればあがっていた。
結果論と言ってしまえばそれまでだが、東郷にはこの出来事が納得いかない。
東郷「(あり得ないわ…残り2枚の…しかもドラの{⑦}が…重なっているなんて…!)」
デジタル思考の東郷からすれば、これは当然のこと。
通常、同じ牌が2枚も…しかもドラが重なるなんて確率的にあり得ない。
しかし、それはあくまで東郷の理論での話…決してあり得なくはないのである。
たしかに確率は低いものの、0ではない限りそれは起こり得る。
東郷の確率論…
それはこのような真剣勝負の場においてはズレた能書きに過ぎない。
ここぞという局面には、確率以上のものが求められるからである。
それは、牌に対する(あがり牌に対する)嗅覚。
東郷の理論では牌のバラツキは均等というのが原則。
だが、実際にそんなことはあり得ない。客観的に見ればひどく雑な戦略。
つまり、{⑦}が来る予感…それが東郷にあれば、あがっていた。
東郷が信じているのは確率という名の信仰。それを捨てれば、勝てたのだ。
しかし東郷には、それがわからない…!
東郷「(…まぁいいわ。次、私が引けば…それまで…!)」
{發}…!{發}…!ツモれば…引けば…東郷の逆転…!新部長…!
{發}が出れば…倒せるっ…!犬吠埼樹を…!
なのに…
樹「………」
東郷「(なぜ…?なぜ樹ちゃんは…怖がらないの?私がここでツモれば、12000点オールの大逆転…点棒の少ない友奈ちゃんはとび、私の勝利が確定…それがわからない…ってわけでもないでしょう?)」
東郷のツモは{4}。
またしてもあがり牌ではない。
東郷「っーーー!」
必死の願いもむなしく…ツモれず。
東郷「(はぁ…はぁ…私のツモは次が最後…次で…次で引けなければ…流局…!つまりは、消える…!私の三倍満…!)」
が、次巡。東郷、最後のツモ番…
東郷「(…{4}?)」
東郷のツモは{4}。またしても牌被り…あがりを逃す…!
東郷「くぅーーーそっーーー!」
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園子「なんだかやる気に満ちていますね~わっしー☆」
風「え?そうなの?」
園子「(そんなことより、このわっしーのアゴ長そう)」
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東郷「(…ふぅ。私のツモ番は終わった…もうツモあがりはできない…ラストツモは友奈ちゃん…ここで友奈ちゃんが私のロン牌、{發}を引いて来れば、私のあがり…!それがもし、友奈ちゃんのあがり牌でなければ…!来て…!来て…!發!發!發!發!發!發ぅんっ…!)」
東郷の必死の祈り。
友奈のラストツモは…
友奈「(ツモ…!)」
東郷「(来いっ…!来いっ…!)」
友奈「…{發}」
ラストツモは{發}…!友奈、五面待ちでツモれず…!
そして東郷は…
東郷「うわああああああ!!!!!!」
友奈「!?」
東郷「ロンっ!ロンっ!ロンロンロンロンっ!ロォーン!ロォーン!うわははは~!」
{發} ポン{白白横白}{中横中中} カン{①①①横①} チー{横⑨⑦⑧} ロン{發} ドラ{①⑦}
駆け巡る脳内物質…!
βエンドルフィン、チロシン、エンケファリン、バリン、リジン、ロイシン、イソロイシン…!
実はこのあがり、さらに神がかっていた…!
友奈のラストツモでロンしたことにより、さらに1翻…河底ロンが追加…!
つまり東郷の手、三倍満36000点からさらに進化…!
小三元ホンイツ白中チャンタドラ5…プラス河底ロンで、合計13翻!親の数え役満48000点である。
おそるべき東郷の剛運…!すべてを飲み込む、剛腕の麻雀…!
東郷「(やった…!やったわ…!親の数え役満…!48000点!勝った!勝った!勝った!友奈ちゃんはとび、これで勝負終了…!新部長は…私…!)」
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風「ははは…盛っているわね…」
園子「ふふふ、そうですね~」
風「(…私にも、あんな時期があった…)」
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東郷「ははははーっ!」
樹「………たか?みもりんさん…」
東郷「ほへっ?」
樹「聞こえませんでしたか?みもりんさん…」
東郷「何が…はっ!」
樹「残念、頭ハネっス。ロン、河底&対々和で…5200点」
{111八八八發} ポン{横⑥⑥⑥②②横②} ロン{發} ドラなし
東郷「なっ…なっ………なにぃ~!?」
樹、起死回生の頭ハネ、待ちは東郷と同じ{發}の単騎待ち。
この頭ハネによって、東郷のあがりは無効となる。
友奈は東郷の48000点の代わりに、樹のあがり5200点を支払う。
東郷「うわああああああ!!!!!!許さない!」
夏凜「東郷!?」
友奈「ぼ、暴力はダメだよ!東郷さん!」
樹「あらら」
風「と、東郷!落ち着きなさい!」
東郷「うううっ…ぐぐっ…私の役満が…こんな…こんな理不尽なことって…!」
樹「こんなこともある」
南三局終了。
一位樹41800点、二位東郷36600点、三位夏凜16000点、四位友奈5600点
また、東郷はこのショックで二週間両足を散華する。
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風「…今思えば、樹のあの{中}切り…あれが分岐点だったのかもね」
園子「あ~、部長も気付きました?」
風「ええ。あれは一見、東郷の手を進める手助けをしていたように見えるけど、実は違っていたってこと」
園子「わっしーはあの{中}鳴きでテンパイまで辿り着きましたが、それだと単騎待ちになってしまうんですよね~もう少し手変わりを待っていれば~…例えばあの場面、{中}を鳴かずに、{④}辺りを持ってくれば{中}を頭にして{②-⑤}待ちにしたり、{③}だったらその{③と中}のシャボ待ちにできたりと、待ちを広くできましたよね。そうすれば、ツモれる可能性も増えましたし」
風「うーん。まあ結果論に過ぎないけどね。多面待ちと単騎待ちが勝負しても、単騎待ちの方が先にあがることだってあるんだから」
園子「そうですね~前者はあくまであがれる牌が多いってだけですし~」
風「でも樹は終盤でよく鳴けたわね。友奈と夏凜がそれぞれ筒子を捨てなければ、あの役…対々和はできなかったわけだし」
園子「イッつんは終盤何が切れるのかわかっていたようですね。ゆーゆはもう全ツッパだったんで、いつか筒子がこぼれると思っていたのでしょう。にぼっしーの場合は直前でわっしーから{③}が切られていたので、巡子が構成されにくいから安全と踏んだのでしょう。わっしーの手は筒子のホンイツ。2人とも筒子は警戒していたでしょうが、まだ攻めっ気がありましたからね。イッつんのポンは、それを狙ったポンだったと思います~」
風「…なるほど。変なあだ名ばかりで話の内容が全然入ってこないわ。さてさて、勝負はオーラス。樹と東郷の点差は5800点。樹はどんな安手でもあがればトップ。東郷は満貫手であがれば逆転!いったいどちらが勝つのか!」
園子「そんなこんなで勝負はいよいよ最終戦!張り切っていきましょ~」
親の数え役満をあがり損ねた東郷の流れと性格は最悪。
すっかりいじけてしまった…
一方、頭ハネを決めた樹は一時追い抜かれた東郷を引き離し、再びトップへ。
何者をも寄せ付けない圧倒的樹のセンス…!
この勝負、すべてにおいて流れは樹にある。誰もがそう思っていた。
否!実は違っていた。この勝負の真の流れは友奈にある。
友奈は樹から直撃を取った唯一の人物。
あがれなかったものの東郷のリーチを避けつつもテンパイ維持、面前で倍満手を作り上げるなど、終局間際になればなるほど好調な配牌…流れを掴んでいる。
このとき…まだ誰も問題にしていなかった、結城友奈の存在。結城友奈の秘策。
逆転への執念に、まだ誰も気が付かない…!
第五話、完