犬吠埼樹は悪魔である   作:もちまん

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第六話 桜咲く

LOCATION:讃州中学校、勇者部部室

 

 

南四局。オーラス。親は友奈。ドラ{9}

 

 

友奈「………」

 

 

友奈は配牌時から、とある役満を想定した打ちに入る。

 

 

樹「{南}」

 

夏凜「カン!」{横南南南南} 新ドラ{6}

 

樹「(早速の翻牌カン…速攻か?)」

 

夏凜「(…樹との点差は25800点…樹に倍満を直撃させなければトップを取れない計算…正直、私の逆転は絶望的…なら、もういいわ!もう好きに打っちゃおう!)」

 

 

夏凜は樹から跳満直撃に成功してもギリギリ逆転できない点差。

カンをして少しでもドラを増やす作戦。役はドラをのせた混一狙い。

 

 

友奈「{中}」

 

樹「ポン!」{横中中中}

 

東郷「(うっ…夏凜ちゃんも樹ちゃんも翻牌鳴き…まずい…)」

 

樹「(よし…)」

 

 

樹は序盤から早あがりの特急券、{白・發・中}の三元牌のうちのひとつ、{中}をものにする。

1000点でもあがればトップになる樹にとって手の高い安いは関係ない。

 

樹に対し、東郷は厳しい。満貫手を作り上げなければ逆転不可能なのだ。

樹からの直撃であれば、満貫である必要もないが、いざとなれば守りに入ればいい樹から直撃を取ることは至難。

狙いは満貫手…東郷は、静かにその機を待つ。

 

 

10巡目

 

 

東郷「カン!」{■88■} 新ドラ{白}

 

 

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風「(夏凜に続いて東郷もカン…典型的な対子場…巡子が重なりにくい状況…)」

 

 

園子「(このオーラス、わっしーも勝負に出たね)」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

東郷「そして、リーチよ!」

 

樹「(…カンしてからのリーチ…このオーラス…みもりんさんの満貫は確定的…しかも数巡前に、にぼしさんもカンをしているから、ドラの枚数次第では逆転か…降りることもできるけど…手牌に安牌は少ない…どうしよう…)」

 

友奈「…リーチ!」

 

樹「(友奈さんもテンパイ…しかもドラ切りリーチ…みもりんさんと同じく満貫以上の可能性が高い…でも鳴ける牌だし…とりあえず一発は消しておこうかな)」

 

友奈「{9}」

 

樹「チー!」{横978}

 

 

樹、この鳴きで東郷と友奈のリーチ一発を消す。

樹の手は一歩前進し、{四}切りでテンパイ。

{四六七八④④⑥⑧} ポン{横中中中} チー{横978}

 

しかもこの{四}、東郷と夏凜には現物の牌。振り込む可能性はない。まさに一石二鳥。

 

 

樹「(友奈さんに対して現物はない…振り込む可能性もあるけど…通れ…!)」

 

友奈「…!」

 

樹「{四}」

 

夏凜「(私のツモ…)」

 

友奈「待って」

 

夏凜「え?」

 

友奈「…うん。その牌だ。ロン…!」

{③③③⑦⑦⑦三三三五五五五} ロン{四}

 

樹「(しまった…!しかしこの手…)」

 

友奈「リーチタンヤオ三暗刻」

 

夏凜「…ち、ちょっとこれ、直前の{9}を切らずに{五}を切っていたら…役満の四暗刻確定テンパイじゃない!」

 

友奈「うん。でもドラ単騎だと誰も切らないじゃない?だから{四}に受けたんだ」

 

樹「…ですが友奈さん、それじゃあ親満12000点止まり…逆転しないっスよ」

 

夏凜「そうね。{9}は生牌なんだからツモあがりに賭けてもよかったと思うけど」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

風「(友奈はなんでこんなことを…?通常…ドラが溢れにくいとはいえ、四暗刻を蹴るかしら…単純に連荘狙い…?とりあえず、このあがりで友奈は18600点…対する樹は12000点を失い29800点…友奈は次局、跳満以上をツモれば樹も東郷も抜いてトップ…逆転…)」

 

園子「(…でも、どうかな。これで点数的にわっしーがイッつんを抜いてトップ。次の局、今度はわっしーが1000点でもあがればトップが確定…どうなるかな~)」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

東郷「やるわね友奈ちゃん。でもこれで、点数的に私がトップ…次局は勝たせてもらうわ」

 

友奈「どうかな?まだ…わからないよ」

 

東郷「…え?」

 

友奈「裏ドラだよ」

 

東郷「裏ドラ?」

 

友奈「うん。リーチしたしね」

 

 

友奈は、カンにより増えた3つある内の裏ドラ…その1つをめくる。

 

 

友奈「{二}…まずドラ3。跳満18000点」

 

東郷「(うっ…!)」

 

友奈「2つめ…あっ、これも{二}だね…対子でドラ6。倍満24000点」

 

東郷「(そんな…こんなことって…もし最後の裏が暗刻で乗れば…)」

 

夏凜「(13翻折れて、親数え役満48000点…!逆転トップ…)」

 

樹「(ま、まさか…)」

 

友奈「{⑥}…合計ドラ9…決まったね」

 

風「り、リーチタンヤオ三暗刻ドラ9…逆転!」

 

 

ざわ…

 

 

樹「(そ、そんな…!)」

 

 

友奈、リーチタンヤオ三暗刻ドラ9の数え役満48000点を和了。

{③③③⑦⑦⑦三三三五五五五} ロン{四} 裏ドラ{三三⑦}

 

最終的な順位はこう。

一位友奈53600点、二位東郷36600点、三位夏凜16000点、四位樹-6200点

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

風「さすがね友奈!たった一度のあがりで部長の座をもぎ取るなんて!」

 

友奈「もう普通に打っていたら逆転は難しいですからね。ここまで来たら役満狙いの全ツッパしかないかなーって思ったんですよ。幸いにも対子場でしたし」

 

風「なるほどね~その読みと執念の勝利ってわけね」

 

樹「………」

 

夏凜「樹…そんなに落ち込まなくても…」

 

樹「…いや、あれは私が悪いんスよ。テンパイの誘惑に惑わされずに、もっと…警戒するべきでした。そうすれば、あそこで振り込むことはなかったっスから…」

 

夏凜「…そうだとしても、樹の判断…私は正しかったと思うわ」

 

樹「にぼしさん…」

 

夏凜「{四}は私と東郷の現物だった。それにもし、あの場で樹が振り込まなかったとしても…2人がリーチしている状態なんだからこの局、どちらかはあがっていたはずよ。あの局樹はトップで、しかも{中}という役が確定していたんだから、あの場は多少危険でも手を進めていくべき。樹の鳴きと{四}打は、結果的には裏目に出たのかもしれない。でも…それは違う。それは、勝つための一打…!私には、そう見えた」

 

樹「…にぼしさん…」

 

夏凜「何?」

 

樹「にぼしさん、優しいんスね…惚れちゃいますよ?」

 

夏凜「あそ」

 

樹「あれ?」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

風「んじゃ、これからは友奈が部長ってことで、よろしく~」

 

友奈「え~、でも私、やっぱり自信ないなー…」

 

風「なーに言ってんのよ!勝ったくせに!」

 

友奈「あ、あのときは勝つことで精一杯で…」

 

風「なによもう、友奈らしくないわね。では副部長の東郷さん、励ましてあげなさい!」

 

東郷「え?」

 

友奈「え?」

 

風「あれ、言ってなかったっけ。今回の勝負、二位だった人は副部長になるのよ」

 

友奈「き、聞いてませんよ?」

 

東郷「同じく…」

 

風「春からは新部員も増えると思うし、これからは部長1人だけじゃ大変だと思うのよね。実際夏凜の時点でアタシ、結構忙しかったし。だからサポート兼お付け目役として、来年度から副部長も配置することにしたのよ」

 

樹「お姉ちゃんはいつも突然だね…」

 

風「…東郷。急なお願いかもしれないけど、任せてもいい?」

 

東郷「も、もちろんです!任せてください!」

 

友奈「よろしくね、東郷さん!」

 

東郷「よろしくお願いします、友奈ちゃん!」

 

風「部員全体で協力しての勇者部よ。だから、東郷だけじゃなく樹や夏凜も、ちゃんとサポートしてあげてね。もちろん、私もできる限り力になるわ。それと悩んだら相談!これも忘れないこと!」

 

東郷「は、はい…!」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

樹「いやー負けちゃったっスよ」

 

園子「イッつん~」

 

樹「お疲れさまっス、そのっちさん」

 

園子「さっきは惜しかったね~でもすごかったよ~イッつんの闘牌」

 

樹「いやぁ、どうもっス。でも、自分はまだまだっスよ!もっと強くならないと…」

 

園子「お~その心意気やよし~ところで、イッつんがよかったら…どうかな?この後、私ともうひと勝負…」

 

樹「マジっスか!?そのっちさんも麻雀打てるんスか?」

 

園子「うん。大赦の人とはよく打っていたよ~イッつんは負けちゃったけど、私はイッつんの麻雀からなんかこう…すごい才能を感じたんだ~それで、久々に打ってみたくなって~」

 

樹「いいっスねぇ!やりましょうよ」

 

風「よっしゃー!アタシもやるわよ。あと1人は誰が出る?」

 

夏凜「…ああ、私はパスよ。なんか、すっごく疲れたし。後ろで見とくわ」

 

東郷「部長…いえ、風先輩。すみませんが私もそうさせてもらいます」

 

園子「じゃあ、ゆーゆ、やろうよ~」

 

友奈「いいよ!」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

???「そのこ…そのこ…」

 

園子「…わかちゃん…」

 

若葉「『わかちゃん』はやめろ…恥ずかしい…」

 

園子「若葉先輩…」

 

若葉「久しぶりだな、園子が麻雀を打つのは…」

 

園子「…そうだね」

 

若葉「さっそく潰すのか?あの樹って子…」

 

園子「先輩…潰すだなんて…」

 

若葉「違うのか?」

 

園子「…ん~…今はそれほど危険な存在ではないかな。でもそれは、それほど容量が計れないってことだよ~」

 

若葉「…ふむ」

 

園子「イッつんには、才がある。つまり将来…間違いなく私の敵になる存在…でも、今なら勝てるよ。格の違いを…教えてあげなきゃ。もう戦えなくなるくらいに…」

 

 

一度バランスを崩せば、それは才気優れる者ほど脆い…!

 

 

若葉「それでは、金髪率が減ってしまうじゃないか…」

 

園子「はい?」

 

若葉「…なんにせよ、園子の麻雀…また見られるのか。期待しているぞ」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

園子「ん~…ただ打つのもつまんないから、ここはサシ勝負にしない?」

 

樹「サシ?」

 

風「一対一での勝負ってことよ」

 

樹「私とそのっちさんで?(察し)」

 

園子「うん。あと~ちょっとしたギャンブル要素もほしいかな~って…」

 

樹「ギャンブル?」

 

園子「これとかどう~?」

 

樹「そ、それは…!」

 

 

 

第六話、完

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