その他アニメみててツッコミたいところたくさんあったんですけど、そういう意味ではこの作品って二次小説としてはとても美味しい作品かと思わざるを得ない。
あと、紫のキャラですが人によっては合わないかもしれません。
第三次世界大戦を終えて35年、西暦2095年、春。国立魔法大学付属第一高校、入学式、そこに一人の女性が足を踏み入れた。
八雲紫。
西洋風の整いすぎた顔立ちと見事なスタイルから高校生には到底思えないが、着用している服は学校制服であり、その服装によって何とか彼女が新入生であることを示していた。
彼女はこれから始まる学生生活に思いを馳せ高揚した気分で講堂へと向かう。
「さすが私と言ったところね。試しに着てみた制服も中々似合ってるじゃない……いいえ、17歳だから当然だったわね」
扇子を片手に口を隠しふふふと含み笑いをしていると、前方から走ってくる二人組。その片割れの女子生徒は息を切らして尋ねる。
「はあはあ、あの、貴方、新入生総代の八雲紫さんで間違いないですか?」
「ええ、私がその八雲紫ですわ」
「急いで来てください!式が開始してもう15分も過ぎてるんですよ!」
慌ててとても困った風に怒鳴る彼女の言葉に、え?と驚く。悠々と到着したつもりの彼女だが、その実全く間に合ってなどいなかった。
「早くしてしてください、皆さん待ってますから!」
「ま、まあ優秀な私でもこんなこともたまにはありますことよ」
おほほとひきつった笑いで誤魔化そうとするが、もう一人いた男子生徒が額に青筋を立てる。
「貴様!新入生で浮ついたことは仕方ないにしても現状を理解しろ!総代に選ばれたからには立場と責任を……
「あらあら、そんなに怒られては可愛いお顔が台無しですわよ、ほらもっとニッコリと」
説教を垂らそうとした彼の頬に手をやってにこやかに言葉をかけるが
「…き、きっさまぁ」
と彼はさらに怒りを増長させた。年下の女子にお姉さんぶられたのだ。顔が美人なだけにより腹が立ち彼は顔を赤くした。
しかしそこで、もういいから早く行って下さいと、隣の女子生徒、後に聞けば生徒会長であったのだが、その人に背中をぐいぐい押されて入学式の壇上に上がることになった。
八雲紫は新入生総代に選らばれていた。
一般教科七科目、魔法理論、魔法工学はオール百点。実技の魔法力に関しては処理速度、演算規模、干渉強度その全てが評価基準において彼女は他の追随を許さなかった。
この学校に入学できて光栄だ、とか祝辞を述べる紫。ややおちゃらけながらも厳格とした口調。しかし胡散臭げな雰囲気が否めない。
そんな彼女をある男子生徒、司馬達也は値踏みするように観察する。彼は彼女の存在を警戒した。自分の妹をも越える実力をもち、かつ八雲という名前をもつ。
八という数字を苗字にもつが、八代という家名が十師族にあることからナンバーズとの関係は薄いと考える。
しかし、八雲という馴染み深い名前をもつ者にも関わらず彼女程の実力者など彼は聞いたこともなかった。
故に彼の警戒は強まる。
──八雲の名をもつ彼女は一体?
そうやって達也の鋭い眼光が彼女を突き立てていると
「…では皆さん、ご機嫌よう」
紫の祝辞が終わる。しばらくしーんとするがパチパチと拍手が鳴り出し、それは徐々に大きくなって喝采に。式が中々始まらないことに客席の者達は皆、遅刻した新入生総代に苛立ちをもっていたが、拍手を贈るその顔は一様に紅潮していた。紫の美貌とその透き通るような声はそれほどまでに圧巻であったということである。
──完璧。威厳と気品溢れる私に皆虜になっていたわ。美しすぎるというのも罪なものね。
客席全員の顔が恍惚なものになっていることに満足した彼女。
この学校を手中におさめて優雅な学園生活を送るといったそんな目標を思考に巡らせていると、朝にあった男子、生徒会副部長の服部が近づき
「今回は不問にするが今後はしっかり一年総代として、また1科生としての自覚をもって……」
と説教しだした。紫はまあまあとへらへらと適当にあしらって怒られると自身の教室へと向かった。全く話を聞く気がない彼女に服部は拳を握ってぐぎぎと、歯を食い縛った。
1ーA教室,HR。
それぞれのクラスメイトが自己紹介を始めた。皆自身の得意魔法や家名を誇らしげにアピールする。注目をさらに集めるためにもここが正念場だと、紫は扇子の裏でふふふとほの暗い笑みを浮かべると
「では次、八雲紫さん」
その名が呼ばれた瞬間皆一様にぐるっと首を回して紫へと注目。来たっと、目をキランと光らす紫。そしてスッと気品を思わせるように席を立ち、扇子を優雅にふって口を隠す。
「八雲紫です。皆さま、これからどうぞよしなにお願いしますわ」
にこやかにそう言って席に座る。え、それだけ?と皆はやや困惑するが紫は陰でにやにやする。注目をより浴びるため彼女はここで一つ計画を図ったのであった。
しかし
「そ、そうですかと」
苦笑気味に次の方に移ろうとする先生。え、ちょっ、ちょっとと、ここで自分に質問が来ると確信していた紫はやや慌てた。このままでは不味い。
「はい、質問。八雲さんの得意魔法は何ですか?」
質問の手が上がった。よ、よかったと、内心ホッと安堵し質問した彼女、北山雫に感謝する。そして優雅に扇子を開き口元を隠すと
「あら?私に得手不得手などありませんわ。魔法実技、知識両面において、私はありとあらゆる面でここにいる誰よりも優れていると、そう自負しておりますわ」
北山を流し目で見やりふふふと含み笑いをして返す紫。周りのクラスメイトはおおっと感嘆するが質問した北山はややムッとした。
北山自身も魔法に関してはそれなりの自信がある。このクラスでは実力として3位に相当する。そんな彼女を眼中にないとでも言いたげな視線で流し目に返されたのだ。自尊心もやや傷つけられる。
しかしそれ以上に忌々しい馬鹿馬鹿しいと思っている差別意識や人を見下すような空気。それをこうもだされたことに彼女は腹を立てた。
──この人も結局こういうタイプの人か
雫は紫をそう評価してそれ以上の興味を向けることをやめた。
数日後の昼休み、昼食の時間だ。
紫は教室で一人席に座っていた。チラチラと周りに視線をやるが誰も寄ってくる様子はない。男子と視線があった。しかし首ごとそらされる。訝しげな表情でえ?と固まる紫。何か計画と違うと感覚的に違和感を感じ始める。
手持ちに昼食の弁当はなくキョロキョロと視線を泳がせると、彼女は決意を胸に席を立つ。そして近くにいた女子生徒達にほがらかに話しかけた。
「そこの貴女方よろしければ私と昼食をご一緒しませんこと?私食堂というところに興味がありまして……」
「あ、え、えとごめんなさい八雲さん。私達今日はお弁当持って来てて……」
話しかけられた女子達はわたわたと慌てて、また誘ってねと遠慮がちに言うとそそくさと去っていった。何故断られたのかと、彼女達の態度に紫は微妙な顔になる。しかし断られたのなら仕方ないと、小さく息をつくと食堂へと歩いていった。
食堂。
トレーにのる料理を粛々と一人で口に運ぶ紫。あまり期待していなかったがそれなりの美味しさに満足していると隣の卓から険悪な空気が漂ってきた。
「1科生と2科生のけじめはつけたほうがいい」
「…何だと?」
見れば森崎を中心としたクラスメイトが2科生と言い争っている。他にも北山雫、光井ほのか、司馬深雪の三人が。
クラスメイト達は深雪と一緒に食事をしたいために彼女を誘っているようだ。森崎のウィードという差別発言に2科生はいきり立つ。
一触即発の光景を見ている紫は、何故私を食事に誘わないのかと、森崎やクラスメイト達に不満げな表情を向ける。
もしゃもしゃと咀嚼しながら自身よりも格下でありながら人気がある深雪に嫉妬の視線を送っていると、突如2科生の男子が立ち上がる。
「深雪、俺はもう済ませたから先にいくよ」
「おい待てよ、達也!」
「達也君!」
そう言って彼が去っていくとその他の2科生の男女が彼を追いかけるように去っていく。紫は食事を終えるとふらふらと学内を見回った。
放課後、校門前。
昼食の時に険悪な空気を作っていた者達が再び言い争う様子が見える。紫は一人帰路につこうとしていたが妬みと好奇心が相まってその様子を遠巻きにうかがうことにした。
「いい加減あきらめたらどうなんですか!!」
「僕たちは彼女に相談したいことがあるたけだ!」
「そうよ、司馬さんには悪いと思っているけど少し時間を借りるだけなんだから!」
また深雪の取り合いで騒ぎが起きている様子。紫の深雪への嫉妬が深まる。クラスメイトの言い分にメガネをかけたおとなしいそうな2科生、柴田美月が声を張り上げて怒鳴った。
「一体貴方達に何の権利があって二人の仲を引き裂こうとするんですか!!」
「み、美月さんたらそんな、引き裂くだなんて……」
美月のやや誤解を受けそうな言い分を聞いて身体をくねらせる深雪。
隣で静観していた達也はそんな深雪に、どこかニュアンスの受け取りかたを間違ってないだろうかと、疑問に浮かべるがそのまま静観を続けた。2科生の自分が仲裁に入っても火に油を注ぐだけだ。
「これは1ーAの問題だ、ウィードごときが僕たちブルームに口出しするな!!」
森崎が高圧的に怒鳴ると美月は肩を震わせた。
「…同じ新入生じゃないですか。今の時点で貴方達ブルームが一体どれだけ優れているというんですか!!」
声を張って気概をみせる美月の言葉に森崎は一瞬たじろぐもすぐさまニヤリと口を歪める。
「どれだけ優れているか知りたいか?」
「おもしれえ、是非とも教えてもらおうじゃねえか!」
森崎の挑発に長身で肩幅の大きい男子、レオンハルトは大きく進み出る。売り言葉に買い言葉。
同時にレオは臨戦体勢へと構え、森崎とクラスメイト達も臨戦体勢へとやや下がって距離をとる。
「教えてやろう……これが、才能の差だ!」
言葉を言い放つと同時に森崎は銃型のCADを取りだしてレオへと構える。
森崎の身体からサイオン粒子がもれるようにあふれだし、銃身から小規模の起動式が展開される。
それを見るや否や、うおおおお!!と、雄叫びを発して突っ込むレオだが、カンッと甲高い音とともに森崎の銃型CADが弾けとぶ。
「この間合いなら身体を動かしたほうが早いのよね」
赤髪の2科生、千葉エリカが二人の間でかがむと立ち上がり、不敵な笑みで挑発的に言ってのける。彼女がその手にもつ警棒で銃型CADを弾き飛ばしたのだ。
片腕を前方に魔法の発動を止めようとしていた達也は、その光景に内心ホッとする。
しかし、2科生にやられたことに怒りが頂点を達したクラスメイト達は皆それぞれがCADを掲げだしサイオン粒子をあふれさせる。
ほのかはそれをみて止めようと起動式を展開させるが、突如明後日の方向から魔法の銃弾が飛び出しほのかの魔法発動を阻害する。
「貴方達やめなさい。自衛目的以外の魔法の使用は犯罪行為ですよ」
生徒会長の七草真由美だ。
続いて風紀委員長の渡辺摩利が事情聴取をしようと全員についてくるよう呼び掛ける。
達達は事が大きくなることを避けるため悪ふざけが過ぎたと言って場をおさめようとはかる。
「森崎一門のクイックドローは有名ですから後学のためにと見せてもらうだけのつもりだったのですが、それがあまりにも真に迫っていてつい手が出てしまいました」
訝しげに顔を歪める摩利。穏やかに話しかける達也に警戒しつつ、摩利はほのかが攻撃性の魔法を発動しようとしたことを言及する。
「あれはただの閃光魔法です。威力もかなりおさえられていました」
ほお、と摩利は感心する。
まるで展開された起動式を見ただけで発動される魔法が読み取れるような発言だ。
感心を示す摩利に実技は苦手だが分析は得意ですと言ってのける達也に警戒を緩めるも口調は厳しいままにする。
「誤魔化すのも得意なようだ」
「誤魔化すなんてとんでもない。自分はただの2科生です」
摩利の言葉に苦笑して肩の紋無しの印を指差す達也。
すると深雪が前に出てきて、これには行き違いがあったと謝罪する。
その様子にえ?と戸惑う摩利。
隣にいた真由美も二人の間に入るように出てきて、もういいじゃないと、司波兄妹をかばうように摩利を宥めた。
「達也君、本当にただの見学だったのよねぇ」
と真由美は振り向いて達也にウィンクして確認する。
そして生徒同士が教えあうことは禁止されていないが魔法の使用にはルールと制限があり今後は魔法を行使した自習活動は控えるように言って場をおさめた。
ごほんと、摩利が咳払い。
「会長がこう仰せられているので今回は不問にします。……今後はこのようなことがないように」
そう言って摩利はその場を去るべく足を踏み出す。騒ぎの関係者である生徒達全員は摩利と真由美に頭を下げていると
「あら、一体全体どういう訳でこの騒ぎは不問だなんてことになるのかしら」
突如響く威厳がともなった声に全員がその声の発生源へと顔を向ける。
そこには口元を扇子で隠し感情が見えにくいように佇む新入生総代、八雲紫。
場が収まったことに全員が内心安堵しているところに再び緊張がともなった。
「生徒会長と風紀委員長がこのようなことではこの学校も程度が知れていますわね」
学校内で最高権威をもつ二人に対し明らかな罵倒だ。それを聞いた周りの生徒達はギョッとする。
そして紫の見下すような視線に摩利はギロッと紫を睨み返すと彼女の胡散臭い雰囲気により顔をしかめた。
「新入生総代、八雲紫か。お前は一体何のつもりで口を挟む。もうこの件は終わりだ、お前にとやかく言う資格はない」
「随分なことを言いますわね。風紀委員長ともあろうお方が善良な一般生徒には意見を発言する権利などないとおっしゃるのかしら?」
「いいえ、そんなことはありません。八雲さんは何か言いたいことでも?」
険悪な空気を察して真由美が間に入る。
「ええ、私はここにいる周り生徒達を代表して言いますわ。そこにいる規則を破った犯罪者達を何のお咎めもなく不問にするなんて一体どういう了見なんでしょう。何故そういった結論になったのか詳しくお聞きしてもよろしいかしら?」
犯罪者といった単語に騒ぎの中心である生徒達は蒼白する。摩利もその言葉に目付きを鋭くした。
「おい、新入生総代だからといってそのようなことを言っていいとでも思っているのか?」
「聞いておりまして? 私はここにいる生徒達の代表として意見しております。そのような犯罪者達が野放しのままでは私達は明日からその犯罪者達とともにどう学園生活を送るというのかしら」
「八雲さん、彼らをそのような言葉で揶揄するのはやめてもらえないかしら。確かに彼らは規則を破りました。しかしあくまでもそれは魔法見学という自主活動であって、彼のいうように攻撃性も低いとのことからそこまで咎めるものでもないと、私は判断して…」
「貴方は何を言っているのかしら? 理由はどうあれ違反は違反。自主活動であろうと争いが起きてることは事実ではないですか。ましてや当事者の言葉を鵜呑みにするなどありえませんわ」
紫は真由美の言葉を遮る。その瞳には剣呑さが増すが扇子で隠された口元は楽しげに歪んでいる。
「治安維持を努める貴方達が、まさか事を大きくしたくないからなどと言って学校の面子を言い訳にはしませんわよね?」
紫の口調、態度はもはや敬意などなく不遜なものへとなっており、摩利は彼女の言い分を聞いていることに我慢できず厳しい口調で声を発した。
「会長が不問と判断したことはもはや覆ることはない。お前が何と言おうとこの話は終わりだ!」
「同じ学生の貴方が何を言っているのでしょう。階級制度はあっても私達は訴える権利がありましてよ? 私は正当な権利をもとに主張しますわ、そこにいる不正に魔法を行使しようとした生徒達全員には詳しい調査のもとに処罰をくだし、場合によっては退学処分をして頂きたいと存じます」
退学処分という言葉に全員が動揺する。魔法を行使しかけた者達全員の顔は真っ青だ。摩利がいきり立つ。
「退学処分だと!お前に一体の権利があってそんなことを言っている!!」
「CADは拳銃やナイフと同様、凶器に値しますわ。凶器を振り回しといて自主活動だから大丈夫だなんてまかり通ると思っておいでですの? だとしたら今の生徒会と風紀委員というのはお飾りとしかいいようがありませんわ」
「なっ!」
侮辱といえる言葉に摩利と真由美は絶句し、摩利は反論しようとするが紫はそれを遮るように続ける。
「何度も言いますがこれはこの学校に通う生徒ととしての正当な権利です。 遠くの人に攻撃できる魔法は拳銃に匹敵します。攻撃性が低いなど問題ではありませんの。 公共の場で拳銃に匹敵するCADを掲げたこと自体が問われるべき罪、しかるべき処分が必要ですわ。それが秩序というもの。でないと私達は明日から何の躊躇いもなく凶器を振り回す犯罪者達とともに生活を共にすることになるのですのよ?そんなもの怖くて仕方ありませんわ」
あーこわいこわいと身体をさするような紫の仕草に摩利や真由美は歯を噛み締める。凶器や犯罪者、処分といった厳かな単語に森崎、ほのか、クラスメイト達は冷や汗をたらした。これからどうなるのか、もはや生きた心地がしない。
「彼らはまだ入学したてなのです。新入生故に浮ついてしまうのも仕方ないと私は判断してのことです。彼らに酌量情状の余地はあります」
「はじめだからこそけじめが必要だと存じ上げますわ。見せしめがなければ周りは誰も今回のことを教訓としませんもの」
「み、見せしめだなんて!」
「それに酌量情状の余地があるというならなおさら不問だなんてあり得ませんわ、詳しい聞き取りもしないなんて職務怠慢もいいところですもの」
紫の厳しい瞳に真由美は言葉が詰まる。
摩利はもういい!わかった!と怒鳴って話を終わらせると再び事情聴取のために騒ぎの関係者全員を呼び出すことにした。
「お前はもう去れ、この件には関係ない!」
摩利の敵意を秘めた睨みにあらやだと、紫は茶化すように応える。
「そんなに怒らないでくださいませ、私は生徒会と風紀委員のためにと思って言いましたのよ」
ほほほと含み笑いをする紫に摩利は訝しげに睨み返す。
「…私達のためだと?」
「ええ、明らかに誤魔化しであるとわかりきった2科生の言葉を理解した上でその言葉を受け入れる生徒会長と風紀委員長。 公共の場でそのような様子を見せられた生徒達はきっとこう思いますわ。規則を破ってもそこまで重い処罰は下らないと。 よかったですわね、私のおかげで治安維持に全うできたあげく意味不明な言いくるめに言いくるめられた生徒会長と風紀委員長…なんていう体面の悪いことにならずに済んで」
その言葉に摩利は剣呑な瞳をさらに鋭くするが、その他に今の言葉を達也の侮辱と受け取った深雪は怒りの表情で前にでる。
「お兄様の言葉のどこが意味不明とおっしゃるのですか!」
「全てが意味不明ですわ。まず第一に誰が見ても明らかな度を越えたケンカ。それを魔法見学だから大目に見て欲しいだなんて、誤魔化すには甘すぎる言い分と思わないのかしら?」
「ですから、お兄様は魔法見学していたところを不運にも事故をきたしてしまったという意味でおっしゃって…」
「深雪、よせ」
達也は手を横にあげ深雪に制止をかける。
「そうですわ、やめたほうがよろしくてよ、誤魔化しをいつまでも貫いていると自身の首をしめるだけですもの」
扇子の上から見下ろすような紫の視線に達也は睨み返す
「先ほども言いましたが誤魔化しなどとんでもない、自分はただの2科生です」
「あらそうですの?だとしたらおかしいわね、森崎君はてっきり加害者かと思ってたけど本当の加害者はその赤髪の子になるわねぇ」
「は、はあ⁉ 何言ってんのよアンタ!!」
「だってそうでしょう?魔法を見せるために魔法を発動しようとしたらそれをする前に彼はCADを弾き飛ばされたのですから」
はじめから様子を見ていた者達にはそう見えると紫は説明する。
「ですからそれは彼の魔法が真に迫って……」
「あら、じゃあ森崎君はわざと人に向けて構えたと言いたいのね。じゃあそこの貴方、その前に何か言い争っていたけど何を言い争っていたのかしら、何か差別的なことでも言われたの?」
達也の言葉を最後まで言わせず紫はレオへと話をふった。突如話を振られたレオは慌てるもしっかりと言い返そうと声を張る。
「ああ、言われたさ! アイツがウィードだの才能だのなんだの言ってケンカ売ってきて俺にCADを向けて来たんだ!だから悪いのはアイツだろうが!なんでエリカが悪いんだよ!」
「あら、そんな険悪な状況があったのね、やっぱりケンカじゃないの、それを後学のための見学なんて誤魔化すのはとても苦しいわよ?」
レオはあっと口をふさぐがエリカははぁとそんな様子のレオにため息をついた。
達也は黙ったままこちらを睨みつける。達也は最大限の警戒を紫に向けた。彼女が一体何を目的に事を大きくしているのかが理解できなかった。深雪に被害が及ばないようどう手を打つべきか思考を巡らすも。
「そこまでだ!八雲、これ以上は我々の仕事だ。ここから先首を突っ込むことは私が許さん」
摩利がしびれを切らしたように怒鳴りつけるが、紫はではお任せしましたわと、何もこたえた様子はなくにこやかに微笑むと彼女は去っていった。
「………」
真由美は黙って紫の後ろ姿を見つめ続ける。彼女は紫の態度と口調、その全てが胡散臭げに思えて仕方がなかった。
そしてこれから新入生総代として生徒会に引き込む必要があることを思うと憂鬱にならざるを得ない。
「………」
ふぅと小さく息をつく真由美。
そのとなり、達也もまた紫の後ろ姿を睨みつける。学校の得体のしれない雰囲気。彼はただただ警戒と敵意の視線を紫に向けたのであった。
ただ場を引っ掻き回したい紫でした。
他の執筆している作品が行き詰まったので気晴らしに書いただけなんで、続くかはわかりません。