インフィニット・ストラトス ~ダークサマー~ 小話集 作:kageto
これを一夏は言い訳だと切り捨てるんだろうなという話。
最初は途方に暮れた。
唐突な両親の失踪。幼い弟と二人、家に取り残された。
幸いにしてお金はあった。遺産、というと齟齬があるが、ある程度の金額はあった。
少女と呼ばれてもおかしくない年頃だった自分には知らないことが多かった。家事なんて手伝い程度だった。施設に入れられないようにするために、法律も知らなければいけなかった。
残された悲しさと、先の見えない恐怖とで、何度も夜に泣いたのを覚えている。
それでもやってこれたのは、守るべき弟がいたからだった。
一夏。私に残されたたった一人の肉親。幼く、守るべき子。
一夏を守る。それだけを支えに踏ん張ってきた。
少女と呼ばれることがなくなったころ、私は社会を知り、恐怖した。
庇護のない女が幼い弟を一人で守るには世界はあまりにも辛辣だ。男女平等を謳っていてもいても社会は女には厳しく、資本主義の社会は持たざる者に辛辣だった。
強くあれ。ただ守るために。強くあれ。
勉学はもちろんスポーツでも、いやストレートに言おう。武力だ。両親のいない若い女だからと侮られないように。搾取されないように。明確な力が欲しかった。
幸いなことに文武ともにそれなりの才能があった。助けてくれる親友もいた。
それでもなお私は恐怖から逃げられなかった。
それこそが私の弱さで、私の罪なのだろう。
義務教育ではない学校に莫大なお金が必要だと知った。自身で思い知った。
日々の生活を送るのに消えていくお金にめまいがした。
成長し、体が大きくなっていく自身と弟の衣服を買い替えるたびに頭を抱えた。
一夏が大学を出るまでの資金がないわけではない。だが、何か不測の事態が起きた時には?常に心の奥にネガティブな思考があった。
新卒の手取りの給料がたかが知れていると知って、さらに恐怖は加速した。加速させてしまった。
今の私では、いつか必ず一夏を守れない時が来る。世界というシステムが、一夏を守らせてくれない時が。
大切な、家族を、守れない、瞬間が。
そんな時だった。親友がソレを造り上げたのは。
世界を変えてしまう、革命的で、革新的なソレを。
そして、私の中の弱さが、囁いた。囁いてしまった。
ソレガアレバワタシハツヨクアレルンジャナイカ?
悪魔の、囁きだった。
土下座の状態でみえないが、親友が声をあげて泣いているのが聞こえる。未だ嘗て泣いた姿を見たことのなかった親友が。
もう、引き返せない。賽は投げられた。いや、私が賽を投げたのだ。親友の夢を踏みにじって。
それでも私は、弟を、守りたいと、願ったのだ。
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