インフィニット・ストラトス ~ダークサマー~ 小話集   作:kageto

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勢いって怖い


???編 いち

 

 どうしてこうなった。

 

 黒板の前におかれた、一際豪華な椅子に腕を組んで不機嫌そうに座ってる。

 今日という日のほとんどを、この椅子か控室で過ごさないといけない事実が重くのしかかる。

 

 いや、別に椅子に座ってるだけ、だけとも言えないが。座ってる分にはいい。

 

 だが、だがしかしだ。

 

「はい。あーん」

 

 差し出されたケーキを不機嫌な表情のまま頬張る。

 

 俺にお菓子を食べさせるためだけに教室を出てさらに長蛇の列ができるって、どうよ。

 

 

「や~ん。イチカちゃんかわいい~」

 

 

 

 しかも女装で。

 

 

 

 

 しかも女装で。大事なことだから二度言ったぞ。むしろまだ言ってやろう。

 

 

 

 しかも女装で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 事の発端は臨海学校後すぐ、学園祭の出し物についてHRで話し合いをしていた時だ。

 高校生の出し物としてアウトラインを余裕で飛び越えるような提案が嬉々として挙げられる事態に終止符を打つ案を出したのがのほほんさんだった。

 

 

「侍従喫茶とかいいと思うよ~」

 

 その声に喧騒がピタリとやんだ。

 さっきまで挙げられていたアイデアは、いかに俺が女子生徒にエロいサービスをするかだったが、侍従と聞いて執事服姿の俺を想像したのか、盛り上がっていたクラスが妄想に沈んだようだ。

 

「もちろんわたしたちもメイドさんとか執事さんとかの恰好をするよ~。おりむーだけってふこーへーだよ~」

 

 のほほんさんの追加爆撃に、別の理由で沈黙が下りる。まさか自分たちにまでお鉢が回ってくるなんて思ってなかったんだろうな。

 

 学園で唯一の男ってことで、見世物になるのは半ば覚悟していたが、ナイスだのほほんさん。こうなりゃクラスみんな道連れといこうじゃないか。

 

「あ、それなら執事の方をおおくしたほうがいいんじゃない?」

 

 日本の学園祭に圧倒されていたらしいシャルが手を挙げて提案してきた。

 

 男装女子か。

 

「ここって、一夏以外の生徒は女子だから、男装してちょっとカッコつけてもてなしたら集客取れると思うんだよね。外来で来る男の人はメイド女子と男装女子でほっといても集まってくるだろうし」

 

 あつまるな。俺が外来客だったら必ず行く。むしろ真っ先に来て、最後帰る前にも来るな。

 

 今度は男装が―。とか、メイド服がー。なんて言ってクラスが盛り上がり始める。

 

「でしたら侍従の服はわたくしが手配いたしましょうか」

 

 そこまで大きくない声だったが、クラスに再び沈黙が訪れる。

 

 声の主は、クラス中の視線を集めて、気まずそうにしながらも小さく上げた手は降ろさなかった。

 

「いいんですか?オルコットさん」

 

 クラスにおけるオルコットの立ち位置を把握してる山田先生が、色々と言葉に込めて確認の問いを送った。

 

 正直なところ、クラスマッチ敗北後からのオルコットは、放課後に時間ギリまで訓練に打ち込んでいて、鬼気迫る姿に誰も声をかけられなかったんだが。

 

 ISの使用目的が変わってしまった日に、オルコットは保健室に運ばれていった。

 ショックの度合いがひどすぎて精神のブレーカーが落ちたらしい。それ以後はいつも自分の席に座り、ただぼーっとしているだけだった。

 見かねた何人かが声をかけたりしていたようで、誰かしらと一緒にいる姿を見はしたが、生気の感じられない様子だった。

 

「はい。みなさんに嫌われて当然のことを言ってしまったのは心得ていますが、それでもこういう時に少しでもお役にたちたいと」

 

 初日の高慢さはどこへやらといった姿だ。

 

 パチパチパチ

 

 そっと手をたたいてやると、クラス中から拍手が響く。

 高慢で見下すように接してきたから相応の態度を取っただけで、向こうが歩み寄ってくるのであればこっちも歩み寄る。

 

 

 

 で、それた話題をもどすことになったんだが。俺は執事とメイドどっちを着るんだ?

 女子が男装するっていうからには、俺に女装が振られても断らないぞ。学園祭だし、同じ阿呆ならなんとやらだ。

 

「え?おりむーはお嬢様だよ?」

 

 は?何言ってんだこのきつね

 

 

 

「メイドさんも執事さんもいるんだから、あと必要なのはご主人様だよ?」

 

 

 

 

 この一言で、俺の学園祭は椅子にふんぞり返ることが仕事となった。

 

 しかも女装で。




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