インフィニット・ストラトス ~ダークサマー~ 小話集 作:kageto
青春ってなんだったかなぁ
あたしのクラスは手作り小物販売だから、割り当ての時間が過ぎればほんとに暇になる。
朝一の売り子を終えて教室を出る。座りっぱなしだとさすがに腰にくるわね。軽く伸びをしながら隣を見ると、1組は未だ長蛇の列だ。
「アレは反則よね」
昨日見た一夏の女装姿を思い出す。似合いすぎにもほどがある。考えた本音と発展させたシャルはすごいわ。
並んでまでまたあの一夏を見るかと言われると否だ。
「あんまり並ぶのって好きじゃないのよね」
他のクラスも見てみるかと歩き出す。まぁ、昨日ほとんど見てるから目新しさを求めてって感じじゃなくて、暇をつぶしにってところよね。
4個で200円のたこ焼きをつつきつつ、腰かけたベンチから人の流れを眺める。演劇部の公演はまだ先だし、どうしようかしら。
最後の一個を口に放り込み、臨時で設置されたベンチわきのごみ箱にごみを捨てる。
「凰さん?」
不意にかけられた声に首だけ回すと、山田先生だった。
「どうもー。先生も楽しんでます?」
「こんにちは。楽しんでますよ。凰さんは楽しんでますか?」
ベンチの横を先生にすすめて、二人して人波を眺める。
「実は昨日楽しみすぎちゃいまして、今日だけのイベントも一通り見ちゃって、演劇部待ちです」
「それは楽しみすぎちゃってますね」
「はい。楽しみすぎちゃってクールダウン中みたいなものですけどね」
「体調の方はもういいんですか?」
話題がなくなって出てきたのがこれだった。
「織斑先生が辞められて、少しバタバタしましたけど、夏休み中はほとんど休ませてもらいましたし、今日も私だけ巡回という名の休暇なので、大丈夫ですよ」
「よかった。臨海学校前はホントにダメそうでしたから」
「あ、あはは。その頃はご迷惑をお掛けしまして」
「あたしたちの方こそかなりいろいろやっちゃってましたから、ごめんなさい」
「いいんですよー。学生は色々しないと。ってあれ?布仏さんですね」
山田先生の指差した先には、布仏さんは布仏さんでも姉の虚さんがいた。
予定通り、弾と一緒だ。
「一般の方ですね」
「一夏やあたしの中学時代の友人です。バカだけど正直でイイヤツですよ。夏休みに一緒に行動する機会があって、互いに相手を意識し合って初々しいんです」
「青春ですねぇ」
さて、と。と言って山田先生が立ち上がった。
「じゃあ私は巡回に戻りますね。凰さんも最後まで学園祭楽しんでくださいね」
去ってく山田先生に手を振ってあたしも動き出す。またどこか冷やかすか。
で、トウモロコシでも食べるかって来てみたら、次は数馬に本音とシャル発見。出店スペース広くないから、いずれかち合うとは思ってたけど、ほんとすぐだったわね。
数馬の両手に一人ずつ抱き着いてトウモロコシ食べさせるとか、数馬にはもったいない両手に花ね。まぁどっちも毒持ってる花だけど。
横をすり抜けてトウモロコシを買って離れる。数馬から救援を求める声が聞こえた気がしたけど、馬にけられて死にたく無いから、瞬間的に難聴になる。
あーあー。なにもきこえなーい。
本音とシャルが親指を立ててたようだけど、あたしには見えなかった。えぇみえなかったとも。
「明日から走らないとまずいわね」
ちょっと膨れ気味のおなかをさすりながら、またふらふらと歩きまわる。でもまぁ、せっかくの学園祭なんだからその辺は忘れて楽しまなきゃ損よね。同じ阿呆ならなんとやらってね。さて、もうそろそろ演劇部の公演だし、たこ焼きでも買って会場に向かいますか。
そしたら次はこっちなわけね。
視線の先には手をつないで歩く一夏と簪。手にはたこ焼き。なんでこうあたしの身内は行くところが被るのかしらね。
照れる簪にたこ焼きを食べさせてる一夏を見て、向こうに見つかる前に引き返す。
あたしはダチ。あたしはダチ。あたしはダチ。
あたしは、一夏の、ダチで、親友で、恋人じゃ、彼女じゃ、ない。
開演直前の暗い会場に滑り込んで、そっと顔を伏せる。
これから先、ずっとあの二人を見続けることになるんだから、早く割り切りなさい。あたし。
高校最初の学園祭は、再びの失恋の日になった。
誤字脱字などありましたら報告いただけると幸いです。
評価、感想を頂けると次話執筆の励みになります。