インフィニット・ストラトス ~ダークサマー~ 小話集   作:kageto

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文体が安定しない


ORIGIN

 インフィニット・ストラトス ~ダークサマー~ ORIGIN

 

 

 自身の特異性を理解したのは、歳を片手で数えられる時だった。

 

 

 大人の会話が理解できる。そんな領域はとっくに過ぎていた。

 

 大人が理解できないという事実が理解できない。小学校にすら進学していないころに、すでにその場所にまで至っていた。

 

 夕食後の家族の団欒。テレビのニュースで流れていたのは、海外の大学の教授が発表したという論文についてだった。まだ研究の初期段階だというソレは、人類の科学が進歩するために必要なものだということで世界中が盛り上がっていた。

 

 キャスターがカンペを見ながら説明するそれが両親には理解できないという。

 

 それが理解できなかった。あんな簡単なものが、なぜわからないのか。

 

 理解できないと同時に理解した。

 

 

 

 自身が異常で、特異で、異端なのだと。

 

 

 

 両親との見えない溝に、心が壊れそうだった。世界に理解者がいないことが、猛烈に寂しかった。

 

 そんな時に妹が生まれた。愛すべき、可愛い存在。無邪気に自分に手を伸ばす赤ん坊の妹は、自身を世界につなぎとめる確かな綱となった。

 

 

 それでも世界と自身の乖離は進む。あらゆる学問に手を出した。どれも長い時間はいらない。理解はすぐに終わる。

 

 それは絶望への道でしかないと理解していた。未知の消失は自己の進化の終わりでしかない。進化の終わった生物の行く末など押して測るべし。

 

 

 そんな時に目を向けたのが宇宙だった。

 果ては?起源は?地球以外に人類の住める星はあるのか?

 謎は尽きず、興味は湯水のごとくわいてきた。

 

 夢中になった。憧れた。

 

 世界に、自分の居場所を見つけた。

 

 

 それでもなお、世界との、世間とのずれは大きくなっていく。

 

 そして、もう一人の異端と出会った。

 

 

 織斑千冬

 

 

 幼くして両親がなく、弟と二人必死に世界にあらがっていた。

 子供であろうとすでに個を確立し、守るべき物を定め、ズレと戦っていた。

 

 ズレを放置する自身とは違う姿に、興味を持った。

 

 話してみると意外に気が合い、弟妹を愛するという点で共感し、世界に対する在り方に対立し、親友となった。

 

 彼女のいる世界ならば悪くはないと、そう思えた。世界と自身をつなぎとめる綱が、増えていた。

 

 

 

 妹である箒と、千冬の弟である一夏は、歳を重ねるごとに愛らしさを増す。

 箒が自身より千冬になつき、一夏が千冬より自身になついたことで盛大に喧嘩をして、笑い合ったものだった。

 

 

 

 世界への絶望が薄らごうとも、宇宙への憧憬は尽きず、むしろより深く、より密度を増していた。

 一夏を宇宙に連れて行くと約束したことも一因だと言える。

 

 宇宙への憧憬が、一夏との約束が、自身の異端を加速することを止めなかった。

 

 今、宇宙のより先へと進む術がないのであれば、自身で創り出せばいい。

 

 より遠く、より深く。無限の、その先へと進む術を。

 

 

 異端の加速は止まらない。必要なものがないなら創ればいい。概念からすべて。自身で生み出す。

 

 

 

 インフィニット・ストラトス

 

 

 

 憧憬への道。約束への道。夢の標。現時点でのすべてをつぎ込んだ、魂の結晶。分身であり、我が子。想いのカタチ。

 

 

 

 幾日も籠もっていたからだろう。完成したISをめでる自身の背後に、様子を見に来たらしい親友が立っていた。

 

 

「ちーちゃん。これが、私の、夢の結晶だよ」

 

 

 

 

 

 そして、決別の時が来た。

 

 

 

 

「ふざけないで!ちーちゃんの言ってることは、結局のところ、これを、この子を!戦いの道具として世に出せということでしょう!この子は先に進むために生み出したの!戻るためでも、停滞するためでもない!」

 

「わかっている。どれほど無茶なことを言っているのか。どれほど束の夢を踏みにじることを言っているか」

 

「ならっ!」

 

「それでもっ!それでも私は一夏を守りたい。守るための力がほしい」

 

 目の前で土下座をして、一度も額を地から離さない友に、悪態を吐く。知りうる限りの汚い言葉を投げつける。

 

 

 そして、ISに縋って、物ごころついてから初めて、本気で、声を上げて、泣いた。

 

 

 

「いっくんが、あんたの庇護下を離れる時まで。その時までだ。その時が、あんたの願いの終わりで、あんたの願う世界の終わりだ。そこからは、私が、私の夢のために、この子を使う」

 

 振り返り、目の前で土下座するソレに、期限を突き付ける。

 

「それまでは、最大限あんたを手助けしてやる」

 

 くるり 一回り

 

「その日まで、私は、たばねさんは、ちーちゃんの親友で、世界最狂の科学者で、世界最高の狂人だよ!」

 

 くるり もう一回り

 

「ははははは。あははははははははははははは」

 

 くるくるくるくる まわる まわる 

 

 狂ってるたばねさんは、泣かない。涙なんて見せない。だから、心で、涙する。

 

 くるくるくるくるくる まわって まわって 心をごまかす。

 

「でも忘れるな。あんたのためじゃない。いっくんのためだ。勘違いするなよ。織斑千冬」

 

 耳元で囁いてやってから、頭をフル回転させる。

 

 

 

 

 

 世界に、間違った変革を与えんがために

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ごめんね。愛しいわが子。




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