彼女と解り合えるのか…?
一夏とマドカは戦う
それぞれの信念を持って
━━最終決着━━
戦いの最中、一夏はマドカに言葉をかけ続ける。
「マドカ!何故お前は俺にそこまで拘る!?」
「そんなもの当然だろう!!
お前がいたから……お前が産まれたから私はッ!
居場所を失なったんだ!!!」
「居場所…?」
「そうだ!お前が私の……私が要るべき場所を取った!!
お前が生きている限り、私は姉さんと暮らせない!!!」
マドカはまるで悲鳴をあげるかのように叫ぶ。
それに比例して一瞬で一夏に接近し、
2本のブレードで彼の頭をかち割ろうとする。
一夏はそれを避けながら、理解した
マドカが、自分に対して異常とも言える執着を見せる理由
マドカが一夏に抱いているのは憎しみや怒りでは無い
【羨望】だ
本来自分がいる筈の場所に、一夏がいる
自分が味わっている筈の、幸福が一夏に注がれている
それが羨ましい…ただそれだけだ
それだけの…しかし、大きい感情だ
一夏はそれを知った
だからこそ
「馬鹿かあんたは!!!」「何!?」
一夏は彼女を許せなかった
「居場所がない? それは違うぞ!!!」
「なっ…どういう意味だ!!!」
叫びながら一夏に疑問をぶつけるマドカに、
一夏は溜息混じりで叫び返す。
「俺は確かに作られた存在だ。 本来なら居なかった……
だけど俺はここに確かに生きている!!!
それはマドカ!お前も同じだろう!!?」
「っ!?」
これは自分の身勝手なエゴかもしれない
彼女の決意を、気持ちを踏みにじる考えかもしれない
だがそれでも…そうだとしても一夏はマドカを否定する
幸福を諦めているマドカの心を
彼女を蝕む理不尽な悲しみを
一夏は叫ぶ
己の感情を、吐き出す様に
マドカに伝える
「俺が要るからと言って
お前の居場所が無くなったとは言えない!!!
……マドカ
俺達『家族の所に戻って来てくれ!!!』」 「!!!??」
一夏の言った事にマドカ…そして千冬が驚愕する。
「一夏………」
箒は想い人の名を呟きながらあの時、
一夏が言ったことを思い出す。
2日前
「俺は……マドカに家族に戻って来てもらう」
「!」
一夏は箒に、自分の【決意】を話した
「俺達は家族なんだ…それは千冬姉も言っている。
それに…覚えてないって言っても俺も……
戻って来てほしい。
家族はどんなに離れてても家族なんだ……
だから俺は…マドカに受け入れて欲しい
家族として!!!」
それはある意味倒す事より難しい事だ。
自分に憎しみに近く、それ以上の敵意を持っている人物に仲良くなろうと言っているような物だからだ。
だが一夏は言った。 『諦めない』と。
だから箒は信じる。 一夏なら…やってくれると
「……」
一夏の言った言葉を聞いてマドカは
攻撃の手を止め顔を埋める。
……迷っているのだ。
「私は……」「…………」
マドカの応えを静かに聞く一夏
「…そんなもの望まない!!!」「!!!」
「あの人の……千冬姉さんの隣に立つ資格があるのは私だけなんだ!!! お前は……必要ない!!!」
そう言ってマドカは最大出力のビームを放つ。
その威力は島1つ軽く木っ端微塵に出来るでかさだ。
これでは例えエネルギー攻撃に無敵の強さを誇る零落白夜でも全てを無効化出来ず、 飲み込まれるだろう。
「この…分からず屋!!!」
だがそれでも一夏は諦めない。
維持で左右の零落白夜を最大で発動させる
「なっ!!?」
その大きさは今までの比ではなかった。
ビームに圧敵する程だ。
それは白式の性能では無い
理屈じゃない彼自身の信念だ
「うおぉォォォ!!!」
雄叫びをあげながら一夏は零落白夜をビームに向かい放つ。 その光の剣は黒いビームを叩き斬った。
「な……」 それに唖然とするマドカ
そんなマドカに向かって一夏は追撃を加える
…のでは無く、言葉を投げ掛ける
「家族になるのに資格がいるのかよ!?
家族って言うのは……
互いを想っていたらなれるんじゃないのか……
…俺は…アンタとまた一緒に暮らしたいと思ってる……だから……
俺を…家族に向かえてくれないか……?」
頼む……そう願う一夏
その目からは涙を流れていた
マドカはそんな一夏を見て
「何故だ……何故、お前は私にそこまで…… 私は…お前を殺そうとしたんだぞ……! なのに何故……」
その質問に一夏は応える
「俺は何も知らなかった…… だが今なら……全てを知った今なら言える。 それでも俺達は家族なんだって」
「!!!」
「何があっても……家族なのは変わりない。
だから俺は望むんだ。
千冬姉とマドカ……アンタと一緒に暮らしたいって
それに……」 そして一夏はマドカに語る
自分の運命を
「俺はもう死ぬ」 「!!?」
「俺の身体は近い将来朽ち果てる…… だからマドカ
お前には千冬姉の側にいて欲しい」「………」
「支えてやって欲しい。
千冬姉は…強いけど、それでも人間なんだから
それからお前も知ってるだろうけど、
あの人ああ見えて寂しがり屋だから………
家族がいないと駄目だろう? だから…頼むよ……
戻って来てくれ……」
「………………」 「………………」 「………………」
長い沈黙が流れる。 それを破ったのは…
「……お前は」 マドカだった。
「お前は何故そこまで強い?」
「……俺は強くない。
ただ強くなりたいと望んでるだけだ。
大切な物を死んでも守りたいから」
「…ふふ……そうか……」「!」
マドカは……『笑った』。
安らかな笑みを浮かべた
一夏は初めて見た気がした
「でもな…それは……無理みたいだ……」
「え?」 そうマドカが言った途端、彼女は……
「!?なっ!マドカ!!!」「マドカ!?」
力が抜けたように落ち始めた
一夏は急かさずマドカに駆け寄り彼女を支える
「どうしたんだよ…マドカ!?」
一夏の呼び掛けにマドカは弱々しく呟いた
「……私の身体にはな……様々な身体能力の向上を促すナノマシンが埋め込まれている…… それにより五感や集中力、精神力を格段にはね上げているのさ……
陰鴉を使いながら個別移動出来るのは、
それのお陰なんだよ……」
お前には破られたがな……と苦笑いするマドカ
更に彼女は語る
「だが……ナノマシンの過剰摂取で
私の身体は普通じゃなくなった
…人間って言うのは不便なものだな……
私の身体は、それに耐えきれなくなったんだ……」
「マドカ……」
彼女に駆け寄ってきた他のメンバー。
その中の千冬がマドカに近寄りその手を握る
「…ごめんね……姉さん……」
「もう良い…喋るな……」
「……私、またくらしたかったよ……」
「っ!マドカ………」
マドカは一夏に向き直る
「すまないな……折角……お前が私を受け入れてくれたのに……」 「マドカ……」
「……全く……私の人生はこんなのばかりだ……
家族とは離されて……そして……
親に売られ、その親を殺した……」
「「な!!!??」」
その発言に目を見開く一夏と千冬
他の皆も同じ様だ
「どういう事だ!?」千冬はマドカに聞く
マドカの解答は、許せざるものだった
「……あの2人は、研究に必要な資金が足りないと言って……私を売ったんだよ……亡国に……」 「「!!!」」
「その前にお前の事を聞いて……精神がズタズタになっていた私は……目の前に叩きつけられた現実に耐えられなかった…… 『今日からお前はこの人達に世話になるんだよ』そう言われた瞬間……私は……感情が爆発して近くにあったスパナで2人の頭を…… まあ……その事が有って私は直ぐに直属の部隊に入れたのだがな……」
マドカは溜息をついて語り続ける
「姉弟と別れ、両親に棄てられ、その実の親を殺した……
…はは……何て無様な生涯だったんだろうな……」
でも……とマドカは更に喋り続ける
「最期に……いい思いが出来たよ……」
「マドカ……」
「……一夏……お前は残りの命が僅かと言ったが……それでも……その間は姉さんの側にいてやってくれ……」
「そんな───」
「一夏……私の身体のことは私が良く分かるんだ……」
「っ……!」
顔を歪ませる一夏
そんな一夏にマドカは言葉を掛けた
「……嬉しかったよ」「え?」
「……私を……家族と言ってくれて……」 「……っ」
マドカはそう言い終わると、
スゥー…と深い溜息を吐いて空を見上げた。
雲1つ無い青空だ
何処までも続く……広い大空
「……今日は気持ちいい日だなぁ……」 「…!」
マドカの呟きを聞いて一夏は思い出した。
それは昔の記憶。
『一夏とマドカ』の記憶
『今日は気持ちいい日だな』
『うん!そうだね!!
マドカ姉!!!』
一夏は思い出す
大切な……暖かい記憶を……
「…ああ、そうだな……マドカ姉」
マドカは少し驚いた顔をして、笑顔を浮かべた。
それは今までで一番、
明るく……慈愛に満ちた優しい笑顔
「ありがとう。一夏……」
マドカはそう言うとゆっくり目を閉じた。
「マドカ……」「…マドカ姉……」
2人は腕の中で眠る大切な家族の名を
噛み締める様に呼び続けた。
マドカはその呼び掛けに応えず、
ただ優しい笑顔を浮かべるのみであった。
こうして一夏とマドカ
2人の互いの気持ちをぶつけ合う、
壮絶な【姉弟喧嘩】は終わりを迎えた。
空は相変わらずの綺麗な青空だった
後二話程続きます
もう少し自分の作品にお付き合い下さい。