仮面ライダードライブ&ウィザード Hope is Your Engine 作:瑛松
期末テスト等で忙しくて……あぁ、嫌だ嫌だ。テストなんか視界に入れたくない!
キキィィィィィ!
バサァ!
2人のライダーはハルピュイアを貫き、ドライブは地面から火花を散らして勢いを殺しながら、一方ウィザードはローブを翻して華麗に着地した。
「ぐっ、申し訳……ございません………」
ドォォォォォン!
この場にいない誰かへの謝罪を呟き、魔法陣が体に浮かぶハルピュイアは爆発。その姿は跡形もなく、消えていった。
(今の言葉………やっぱり、ハルピュイアに命令できるヤツがいる?)
ウィザードはハルピュイアの最期の言葉を聞き、そう考えた。他のファントムに命令出来るという事は、かなりの力を持っている事になる。今後そんな相手が再び襲って来るやもと思考を巡らせていると、背後から聞こえる足音に気付き、振り返った。
振り返った直後、白いコートの男がウィザードを蹴り飛ばした。
「ぐぁ!」
咄嗟のことで反応に遅れ、ウィザードは男が腹へと向けた蹴りをもろに受けた。
「晴人!?」
ウィザードの悲鳴に振り返るドライブの横に、男は移動した。いつの間にか横に来た男に、ドライブは裏拳で顔面を殴られた。
「なっ!?ぐはっ!」
2人のライダーをあっという間に地に伏せた男は、ひとりごとの様に呟く。
「…やれやれだぜ。既に倒された後とはな………」
地面に転がる2人は何とか起き上がり、男を見据える。今の言葉で確信した。この男はハルピュイアに関係している、ファントムであると。
「まぁ、魔法使いがいるとなれば、簡単にいかねぇとは思っていたがな………」
「アンタ、ファントムなんだよな?」
ドライブは口を開いた。
「何人来ようが俺は負けない。霧子も、絶望なんか絶対にさせない!」
言っても相手が諦めるとは思っていないが、ドライブは己の覚悟を示した。
「いや、ゲートはもう諦める」
「は?」「何!?」「なっ!」「へ?」「えっ?」
男の言葉に、全員が驚いた。まさか本当に諦めるとは思ってもみなかったドライブは、続く言葉が出て来なかった。
「別に俺はゲートを狙って出てきた訳じゃあない」
男は再び口を開き、ウィザードを指さした。
「………『賢者の石』を貰いに来ただけだ」
ドライブ、そして霧子には、『賢者の石』が何なのか分からなかった。ウィザードを指したからには、彼が持っているという事は察しがつくが。
「………渡すかよ。絶対に」
ウィザードは自分の胸に手を当てて、そう言い放った。まるでそこに宿る『何か』を守るかのように。
「だろうな………なら仕方ねぇ」
そう言って帽子を取った男の顔に模様が浮かび、次の瞬間、男の体は変化した。
先程までの白いコートとは対照的な黒い体表に、大きな口が特徴的な犬のような顔。両肩にも、同じような犬の顔が生えている。肩の二頭は少し小さめだが、誰もが鋭い牙を持っていた。
「テメェはこの『ケルベロス』が、直々にブチのめす」
自ら名乗り、ケルベロスはウィザードの方へ走った。ウィザードは指輪を交換し、ベルトにかざした。
ケルベロスはパンチを繰り出したが、同時に現れた炎の盾によってその拳は止められた。
だが、
「オラァ!!」
バリィィィン!
ケルベロスが再び拳を振り抜くと、魔法陣が砕け散った。
「何!?」
火傷では済まない炎を潜り抜け、『ディフェンド』の魔法を文字通り打ち破った力に、ウィザードは驚いた。
「フンッ!」
「くっ!」
もう一度振るわれた拳を、ウィザードは地面を転がり右に移動することで回避した。その際ケルベロスのパンチが起こす風圧を感じ、彼のパワーに恐怖すら感じた。
「なんつーパワーだ……」
「だがあれほどの力なら、素早さは持ち合わせていないだろう」
クリムは冷静に分析した。ケルベロスは明らかにパワータイプであると。
「なら………」
クリムの分析を瞬時に理解したドライブはキーを捻り、シフトアップを行った。
タイヤが高速で回転すると、ドライブはケルベロスの正面に素早く回り込み、連続でパンチを打ち込んだ。
だが、ケルベロスにその拳は届かなかった。
ケルベロスは、ドライブが高速で打ち出す拳を全て手のひらで受け止めたり、軽く払うことで全て防いで見せたのだ。最後にドライブの両拳をがっちりと掴み、その動きを止めた。
「なっ!?」
「用があるのはオメェじゃあないんだがな………」
ケルベロスは驚くドライブの腹に蹴りを入れ、地面を転がせた。
「スピードまで兼ね備えているとは……かなり手強いぞ」
「こりゃあ、出し惜しみしてらんないな…………」
パワーとスピードを併せ持つ敵に、クリムとドライブは警戒を強めた。
「邪魔するなら容赦しねぇぞ」
何とか立ち上がるドライブを見てそう言い放ち、走り出したケルベロスの足は、
すぐに止まった。
「あん?」
右手が後ろへと引っ張られているのを感じて振り返ると、魔法陣に通した腕が伸びて、ケルベロスの右腕に巻きつけているウィザードの姿があった。
「俺のコト忘れてもらっちゃ困るなぁ」
「そいつはすまねぇな」
そう言いながら、一度左手で口を覆ってから勢いよく離すと、
ドォン!ドォン!ドォン!
ケルベロスの口から火球が放たれた。
「あぶねっ!」
ウィザードは回避するために、腕の拘束を解くことを余儀なくされた。
右腕が自由となったケルベロスに、
「タァ!」
ドライブが強襲を仕掛けた。
高くジャンプし、空中から手に持ったジャスティスケージをケルベロスに叩きつけるが、腕を交差する事で防がれてしまった。
「このっ!やろっ!どうだ!」
何度も打ちつけるが、全く効果は見られなかった。今度は反撃とばかりに、ケルベロスの拳が飛んで来る。
「オラッ!!」
カァァァァンッ!
ジャスティスケージでそれを防ぎ、辺りに甲高い金属音が響き渡った。
「いっ………てぇぇ〜〜!!」
ドライブの腕は痺れた。強すぎる衝撃が両腕に及び、思わず盾を落としてまった。
「これが最後だ。俺の目的はおめーじゃあない。死にたくなきゃ失せな」
脅しでもあり警告でもある言葉に、ドライブは腕を振り回して痛がりながらも答えた。
「いってて………いや、引くつもりは無い。あ〜痛い………市民の脅威を野放しにするなんて選択肢、警察にも『仮面ライダー』にも無いんでなっ!」
ドライブは、
「何!?」
ケルベロスは空中に飛んだジャスティスケージを見上げた。見上げてしまった。
ケルベロスが目を離した隙に、ドライブはキーを回してレバーを3回倒す。
鉄柵がケルベロスを囲み、巨大化したジャスティスケージがそれに蓋をする。
「おぉ〜、やるな進之介」
「まぁな。さーて、『賢者の石』ってのが何なのかは後で聞くとして…………お前は何でそれを狙うんだ?」
まるで取り調べの如くケルベロスに質問するドライブの姿を見て
(オレもあんな風に問い詰められんのかな………)
と、ウィザードは1人考えていた。
「……『サバト』を開くためだ」
「『サバト』?」
また自分の知らない単語が出てきた。今回の事件は自分の知らない事が多すぎると、ドライブは頭を抱えた。
「……本気で言ってんのか?」
やはり、ウィザードは知っている様だった。
「言っとくが、サバトは「『ワイズマンが自分の娘を蘇らせるのに必要な魔力を集めるためにやった儀式』。もちろん知ってるさ」……………」
ウィザードには分からなかった。そこまで知っておきながら、あの儀式を再び行う意味が。
その疑問は、ケルベロスが続けた言葉で吹き飛んだ。
「重要なのは『魔力が集まる』って所じゃあない。『その過程で大量のファントムが生まれる』ってとこだ」
「何!?」
「大量の………ファントムだと!?」
先程からさっぱり話について行けないドライブも、その言葉だけで、ケルベロスがどれだけ恐ろしい事を企てているかを理解した。
『大量のファントムが生まれる』という事は、『大勢の人間が死ぬ』事を意味している。
「おい!それってどういう「悪いが、俺が言えるのはここまでだ」っ!?」
ケルベロスは2本の鉄柵を両手で掴んだ。
バリバリバリバリィッ!
当然彼には電流が流れる。しかしそれを物ともせず、鉄柵を左右に引っ張った。すると檻に自分の体が通れる程の隙間ができ、ケルベロスは簡単に抜け出した。
ドライブとウィザードは後退しつつ、その一部始終を見ていた。
「まさかハンターの檻の高圧電流に耐えるとは……」
「とんでもねぇな。アレを無理やりこじ開けるなんて………」
ケルベロスの力に唖然とするクリムとドライブ。対してウィザードは、左手の指輪を交換しながらドライブに言った。
「奴の狙いはオレだ。別にアンタ達が一緒に戦う必要はないぜ?」
「そういう訳にはいかねぇよ。助けて貰った恩もあるし、こうなったらもうひとっ走り付き合ってやる!」
「Exactly!今の話を聞いて、見過ごす事は出来ない!」
忠告しても聞かないであろうと、ウィザードには分かっていた。自分が同じ立場でもそうするからだ。
『仮面ライダー』というのはそういう者達なのだ。
「だと思った……………じゃ、行きますか!」
ウィザードはベルトのレバーを操作して、指輪をかざした。フレイムウィザードリングに酷似しているが、それよりも派手な装飾が施された指輪だ。
「あぁ、行くぜ『ベガス』!」
ドライブはリムジンの形をした『ドリームベガス』を取り出し、レバーモードにしてブレスに装填。ベルトのキーを捻り、レバーを倒す。
【ボー!ボー!ボーボーボー!】
『グォォォォォ!』
眼前に現れた魔法陣がウィザードの体を通過すると、そこから炎に包まれた竜が出現し、同時にウィザードも炎で覆われた。竜はウィザードの周りを旋回し、やがて力強く吠えながらウィザードの体に宿ると、覆っていた炎は消し飛び、そこには新たな姿のウィザードが立っていた。
黒だったローブは真っ赤に染まり、肩の銀色のアーマーは円形に巨大化し、紅い宝石が埋め込まれている。胸には竜の顔の模様があしらわれ、アンテナロッドは竜の角の形になっている。
ウィザードは、炎の力を極限にまで高めた『フレイムドラゴン』となった。
一方ドライブの元には、様々な絵柄が描かれた『ドリームベガス・タイヤ』が飛来した。ドライブの胸に装着される寸前、ドリームベガス・タイヤは3つに増え、1つはそのままドライブの胸に、あとの2つは両手に装備された。
「さあ、ショータイムだ」
ウィザードはウィザーソードガンを、ドライブは2つの盾・『ドラムシールド』を構える。
「やれやれ…………」
そう言って、ケルベロスは口から火球を発射した。
するとドライブがウィザードの前に出て、ドラムシールドでそれを防ぐ。その隙にウィザードは右手の指輪を交換すると、ウィザーソードガンのハンドオーサーを起動させ、かざした。
現れた魔法陣がウィザーソードガンを通過すると、同じように宙に浮く魔法陣が通った先から、もう1本のウィザーソードガンが現れた。
最後の一発を耐えたドライブの肩を、ウィザードは踏み台にして跳躍。
ケルベロスの正面に着地しながら、一閃。間髪入れずに2本の剣で突き、続けて回転しながら斬りつける。その後も二刀流で連続攻撃を繰り出すが、ケルベロスはものともしなかった。鎧でも纏っているようだと思った次の瞬間………
ドンッ!
突如ウィザードの左脇腹に衝撃が走った。驚きながら、右方向へと吹き飛んでしまう。
(何だ?今の………)
ケルベロスの両腕は、衝撃を受けた瞬間も視界に入っており、動いていなかった。蹴りを入れられたようにも見えない。だとすれば何処から攻撃してきたのか。ケルベロスにはまだ隠している能力があるのか。
そんな思考を巡らせていたウィザードにはお構いなしに、ケルベロスはウィザードを仕留めんと駆け寄って来るが、
「させるか!」
そこにドライブがシールドの1つをケルベロスの行く手を阻むように投げた。
「…うっとおしいぞ!」
ケルベロスはその場からジャンプし、ドライブへと鋭い飛び蹴りを放った。
「ぐっ!」
もう1つのシールドでそれを防ぎ、その衝撃に何とか耐える。
「オラッ!」
「うぉっ!」
着地してすぐケルベロスの拳が飛んで来たので、完璧なガードが出来ず、ドライブは吹き飛ばされた。
「進之介、大丈夫か?」
「何とかな……にしてもあいつ、ものすげぇパワーだぞ。まともにやり合うのはヤバいかもな………」
ドライブに駆け寄ったウィザードは、ドライブの言葉を聞いて、すぐに行動に出た。
「なら………『コレ』でどうだ!」
ウィザードは両手の剣を地面に突き刺すと、右手の指輪を交換した。これまでのオレンジ色ではなく、深紅の宝石が使われた指輪だった。
「2人とも、来るぞ!」
クリムの言う通り、ケルベロスはこちらへ向かって走っていた。迎え撃つべく、ウィザードは指輪をベルトにかざし、ドライブはキーを捻るとブレスのボタンを押し、レバーを倒した。
【ヒッサーツ!フルスロットル!VEGAS!】
ウィザードの胸の位置に現れた魔法陣から、再び炎の竜が現れた。竜がウィザードの背後から胸へと宿ると、ウィザードの胸には、金色の角を構え、額には紅い宝石が埋め込まれた竜の口『ドラゴスカル』が装備された。
一方で、ドライブは片手のドラムシールドを上に放り投げた。すると、先程投げたもう1つのシールドが、ブーメランの如く回転しながらこちらに戻って来た。
2つのシールドはひとりでに旋回し、ドライブの胸のタイヤと横並びの形で装着される。結果、胴体がタイヤ2つ分右上に突き出ているという、奇妙な姿となった。
ウィザードのドラゴスカルの口には炎が溜め込まれ、ドライブの胸のタイヤとシールドでは、様々な絵柄が描かれている部分が回り始めていた。まるでカジノやゲームセンターで見るスロットの様に回転する絵柄はやがて止まり、『7・7・7』と、3つの『7』が並んだスリーセブンとなった。
ゴォォォォォ!
ジャラララララララッ!
ウィザードはドラゴスカルから炎を放つ『ドラゴンブレス』を、ドライブは胸のスロットから大量のコインを飛ばす『ミリオンアタック』を発動させた。真っ赤な炎と大量のコインが、迫り来るケルベロスを飲み込んでいく。
「グッ、オォォォォ!」
だが、ケルベロスは耐えていた。立ち止まり、両腕を顔の前で交差して直撃を防いでいた。
そしてあろうことか、一歩……また一歩、と前進を始めた。
仮にも必殺技、並みの怪人なら一発で倒す事が出来る必殺技を真正面から受け、避けたり、同じかそれ以上の威力の技で相殺する事無く、ただただ耐えながら、ケルベロスは近づいて来るのだった。
そして次の一歩を踏み出す間隔は段々と短くなり、遂には最初の様に走っていた。ドライブとウィザードに充分なまでに近づくと、交差していた腕をそれぞれ左右に振り抜き、コインの波と炎を消し飛ばした。
「っ!やばい!」
ドライブはすぐさま元の姿に戻り、シールドを構えた。その横ではウィザードも、胸のドラゴスカルを排除し、2本のウィザーソードガンを地面から引き抜いて構えていた。ケルベロスは目の前まで迫っていた。
次の瞬間、ウィザードの両手の剣は、後方へと飛んで行った。ケルベロスが拳を剣に当て、吹き飛ばしたのだ。そして2人、いや、クリムを入れれば3人の者達にその動きは見えなかった。気付いたらウィザードの手から剣が離れていた、という感覚だった。
「このやろっ!」
咄嗟に、ドライブはドラムシールドの1つをケルベロスに向けて投げたが、片手で弾かれてしまった。
「進之介、タイプスピードの装甲で奴の攻撃を受けるのは危険だ!」
「あぁ!分かってる!」
クリムに賛同しながらもう1つのシールドを投げると、ドライブは黒いシフトカー『シフトワイルド』を取り出した。
「パッションは満タンだ……熱く行くぜ!」
すぐさまそれをレバーモードにして、ベルトのキーを捻ると、ブレスのドリームベガスと交換し、レバーを倒した。
音声が鳴り、ドリームベガス・タイヤが胸から外れると、ドライブの周りに黒いエネルギー体が出現。変身した時と同様、実体化し、装甲となってドライブに装着されると同時に、タイプスピードの装甲は弾け飛んだ。そしてトライドロンから、真ん中に銀の線が入ったオフロードタイヤが生成・射出され、ドライブの右肩に縦向きに装着された。
シルバーグレーのスーツの上に黒い装甲を纏い、タイプスピードとは逆に、速さを犠牲に腕力を強化させた『タイプワイルド』となったドライブは、ケルベロスへと突っ込んでいく。ウィザードは剣が無く、敵との距離も近いままどう戦うかを考えていた。
一方で、ケルベロスは灰色の小石を取り出し、ドライブの方へと投げた。地面に落ちると、そこから10体程のグールが現れた。
「くそっ!」
ひとまず目の前を遮る敵を片付けようと、ドライブはタイプスピードの時よりも威力の高いパンチやキックを繰り出していく。時折振るわれる槍は、腕や肩に装着された『タイプワイルド・タイヤ』で受け止める。
「テメェの相手は俺だぜ」
「っ!」
隙を見てウィザーソードガンを拾ったウィザードの前に、ケルベロスが立ち塞がった。
「悪いがこっちも急ぎの用でな。あくまでも俺の目的はてめーだけだ。まぁ、邪魔するなら泊進之介も容赦しねえが………」
「………ファントムを大量に生んでどうするつもりだ?世界征服でもすんのか?」
「さぁな。知りたきゃ俺を倒すんだな」
言いながらケルベロスは歩み寄り、対してウィザードは両手のウィザーソードガンを、ガンモードに変形させた。
ダダダダダァァン!ダダダダダァァン!
そのままウィザードは発砲。2丁の銃から大量の弾丸が放たれる。
「無駄だ」
しかしケルベロスは、その一つ一つを手でキャッチした。軌道を変えて回り込もうとする弾丸も、それよりも速いスピードで掴み取られた。
「俺に小細工なんざ通じねぇ!」
両手に持った弾丸をケルベロスは投げた。そのスピードは、もはや銃から発射される弾丸と大差ない。
ガギギギギィィンッ!
しかし、弾丸はウィザードには当たらなかった。彼が剣で防いだからだ。魔法陣を通って、通常の何倍も大きくなった巨大化なウィザーソードガンで。
「チィッ!そういうことか!」
ケルベロスは、先ほどの攻撃は時間稼ぎだと気付いた。剣を巨大化させるための。
「食らえ!」
『ビッグ』の魔法で巨大化した剣をウィザードは一度振り上げると、ケルベロスへ向けて振り下ろした。
「……………オラァ!!」
ケルベロスは拳を振り上げ、当たる直前だった剣を一度押し戻した。しかしそれだけで剣は止まらず、再び振り下ろされる。
「オラァ!オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ……」
ケルベロスの拳は止むことなく続いた。質量では圧倒的有利にも関わらず押し切れないウィザードの手に、無数の衝撃が走る。
「……オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!………オォラァ!!」
バギィィィィン!
最後に渾身の一発が叩き込まれと、ウィザーソードガンは折れた。折れた剣先が、破片をまき散らしながら地面に落ちる。
「マジかよ!?」
元の大きさに戻ったウィザーソードガンを投げ捨てると、ウィザードは右手の指輪を、ランドウィザードリングに似た指輪に換え、ベルトにかざした。
【ダンデンドンッズドゴン!ダンデンッドゴン!】
『グォォォォ!』
地面の黄色い魔法陣から現れ、吠えながら土煙を上げる竜が、ウィザードに宿った。ローブや宝石が黄色に染まり、肩のアーマーは四角形に変化した『ランドドラゴン』へと姿を変えたウィザードは、すぐさま次の指輪を右手にはめ、ベルトにかざした。
再び現れた竜はウィザードの両腕に宿り、そこには金の爪が3本ずつ生えた手甲『ドラゴヘルクロー』が装着されていた。
「まだやる気か?」
「諦めないのが取り柄でね!」
ウィザードは臆さず立ち向かう。自身の胸に秘めた『希望』を守るために…………
一方ドライブは、
「だぁぁ!」
肩のタイヤによるタックルでグールを吹き飛ばし、パワフルな格闘戦で圧倒していた。すると、足元からクラクションが聞こえた。
「ん?」
見ると、ディメンションキャブが自身の上にタイヤ型のゲートを開いていた。このゲートは空間を繋げるもので、離れた場所に移動したり、そこにある物を取り出すことが出来るのだ。そこにクレーン車型の『フッキングレッカー』がワイヤーを突っ込んでいた。しばらくしてワイヤーを巻き取ると、ワイヤーが巻きついているある物が、ゲートの中から現れた。
それは剣だった。刀身は青く、鮮やかに輝いている。持ち手の部分には、車のハンドルを模した特徴的なパーツが付いていた。
その剣の名は、『ハンドル剣』開発された圧縮SO-1合金で構成された刀身であらゆる物を斬り裂く、ドライブが愛用する武器の一つだ。
「ハンドル剣!………どっかの誰かさんが忘れて来たから、お前らが持って来てくれたって訳か!」
「………君達を助けようと、武器を積む間も無いほど急いで来たんだがね………」
クリムは不貞腐れている様子だったが、ドライブは無視した。
「よーし……行くぜ、ハンドル剣!」
ハンドル剣を手に、ドライブはグール達へと走る。一番近い敵を素早く斬り裂き、続けて肩のタイヤをぶつけた。左手の方向でグールが槍を突き立てようとするのをちらりと見ると、剣の持ち手のハンドル型のパーツを、グールがいる方に回した。
「ハァァ!」
「グォォッ!」
コールと共に、ドライブは左方向へと勢い良く剣を振るった。加速のついた斬撃が、グールの体を斬り裂く。
その後も素早い剣と力強い格闘でグールを打ち倒したドライブは、ベルトのキーを捻るとブレスのシフトワイルドを引き抜き、ハンドル剣の鍔の部分に装填した。
「これでトドメだ!」
一度ハンドル剣を構え、体全体を使って剣を振り抜くと『ドリフトスラッシュ』が発動。まるで独楽のように回転し、そのままグール達の間を旋回しながら、何度も斬りつけていく。
キキィィィ!
ドドォォォン!
まるで急ブレーキを掛けたかのように回転を止めると、ドライブの後ろにいるグールは皆倒れ、爆発した。
「よし………」
ケルベロスの方を見ると、また姿を変えたウィザードと交戦中だった。加勢しようと、ドライブは走った。
「やれやれ………これじゃグールがいくつあっても足りねぇじゃあねぇか……」
ドライブがグールを全て倒した事に気付いたケルベロスは言葉の割に、ほとんど焦りを感じさせなかった。
「『ダンプ』!」
叫んだ直後、ドライブの手に収まったのは、黄色いダンプカーの『ランブルダンプ』だ。ドライブは走りながらベルトのキーを回し、レバーにしたランブルダンプをブレスに装填、そして倒した。
ドライブの肩に、黄色い『ランブルダンプ・タイヤ』が装着された。それにはさらに、先端にドリルの付いた武器『ランブルスマッシャー』が付属している。
「どいてろ晴人!」
「えっ?…ってあぶね!」
ドライブはケルベロスに向かって突進。それを見たウィザードは身の危険を感じ、言われた通りどいた。
ドライブは肩のタイヤをぶつけるが、同時にケルベロスは拳を繰り出していた。
「タァァ!」「オラァ!」
ドンッ!!
パワーはほぼ互角。2人は何歩か後ろに下がり、再び己の力をぶつけ合う。
ドンッ!!
もう一度。
ドンッ!!!
さらにもう一度。
ドゴンッ!!!!
徐々に込める力を上げ、両者とも最後にはのけ反りながら大きく後退させられた。
「タイプワイルドでようやく互角かよ………」
ドライブが驚くのも無理はない。タイプワイルドはパワーに特化した形態。しかもランブルダンプ・タイヤで攻撃力が上がっているにも関わらず、ケルベロスとは未だに互角なのだから。
「ハァ!」
「ぐうっ!」
突然ケルベロスの足元に黄色の魔法陣が現れたかと思うと、そこからウィザードが飛び出て来て、竜の爪でケルベロスの体を傷付けた。
ウィザードは着地するとすぐに、追撃を狙ってケルベロスに接近。ドライブも肩のタイヤからランブルスマッシャーを取り外して左手に持ち、走る。
「アォォォォォォォン!!」
突然、ケルベロスが吠えた。
空を見上げ、どこまでも届きそうな遠吠えに、2人は立ち止まって警戒した。
「…何だ?お仲間でも呼んだか?」
犬や狼の遠吠えと言えば、仲間を呼ぶ為の行為であると、ドライブは推理した。
「まぁ………そんなとこだ」
ケルベロスの言葉の直後、
バァン!
「ぐぁ!」
ドライブの背中に何かが命中。突然の痛みに耐えながら振り返ると、
「なっ、グール!?いつの間に…………」
そこには10体程のグールがいた。その内の数体が、左手の武器を向けていた。そこから発射された光弾が、ドライブの背中に命中したのだ。
グール達は槍を構えて突撃を開始した。
「何度来ようと同じだ!」
しかし、ウィザードにとっては長年捌いてきた手慣れた敵。ドライブもグールとの交戦にすっかり慣れた。ウィザードは爪で切り裂き、ドライブはドリルによる突きと剣の素早い攻撃で、あっという間にグールを蹴散らしていく。
余裕のあるウィザードは、ケルベロスに向けて言う。
「確かに、これじゃいくつグールがあっても足りな………っ!?」
そこまで言って、ウィザードは気付いた。
一撃必殺の威力のドラゴヘルクローの攻撃を食らったグールが、一体も倒せていない事に。
「オイオイ、随分タフだな………」
言いながら、ドライブはウィザードと背中合わせの状態になった。倒したと思っていたグールは続々と立ち上がり、取り囲まれていた。
そんな中、クリムはある事に気付いた。
「妙だな………操真晴人」
「ん?何?えっと………ベルトさん?」
「あのグールとやら、ハルピュイアやケルベロスが持っていた石から生まれるようだったが……」
「あぁ、確かにグールはあの石がなきゃ生まれない……筈なんだけどな」
「こいつらが出た時、ケルベロスはそんな物を投げていなかった。それにこのグール達はこれまでよりも強い………」
『このグールは何かが違う』全員がそれを感じていた。
すると突如、2人の左右から2体のグールが飛び出してきた。迎え撃とうと互いに右側を向いた直後、
「だぁ!」「どぉりゃ!」
さらに横から2つの陰が飛び出して、それぞれがグールを蹴り飛ばした。
それは人間、しかも2人とも青年だった。1人はフードが付いて、そのフードから背中に掛けて2本の赤い線が引かれた白いジャケットを着ている。その下には、大きく『GO』と書かれたシャツが見える。
もう1人は、こちらもフードがついて、フェイクファーが目立つオレンジのベストを着ていた。下のシャツには、大きくライオンの顔が描かれている。
「だらしねーな晴人。たかがファントム1体に手こずるなんて」
ベストを着た青年が、ウィザードへ向けて言った。
「『仁藤』………」
「「仁藤君(さん)!?」」
その男は、晴人達と共にファントムから人々を守ってきた戦友『仁藤攻介』だった。
「お前、何で「あ〜!分かってる、皆まで言うな!何で俺がこの場所に来れたのかだろ?輪島のおっちゃんに聞いたんだよ。『ファントムと戦ってる』ってな。だから『グリフォンちゃん』に探してもらったって訳だ」………」
『グリフォンちゃん』とは、今仁藤の横でホバリングしているプラモンスター『グリーングリフォン』の事だ。
だが、晴人が聞きたい事はそれではない。彼は考古学者の卵で、今も海外で遺跡を調査しに行ってるはずなのだ。『何故今日本に来ているのか』それを聞きたかったのだが、仁藤にいつものように遮られたので、一先ず後で聞くことにした。
白ジャケットの青年は、笑顔でドライブに話しかけていた。
「どーよ?今のキック。いい絵だったでしょ?」
「「剛!?」」
その青年は、霧子と進之介の弟『詩島剛』だった。
「ってあれ?……………何で進兄さん変身してんの?えっ!?何でクリムがここにいんの!?」
剛は、封印されているはずのドライブドライバーがここにあり、進之介が変身している事に、今更気付いた。
「剛!詳しい話は後だ!」
クリムがそう言うとトライドロンの助手席のドアが開き、そこから物体が飛んで来た。正確には、
そのバイクの名は『シグナルバイク』シフトカーと同じようにそれぞれが意思を持った仲間達だ。彼らが運んできた、バイクのマフラーに似た形状をした物をキャッチした剛は、
「よく分かんないけど、とりあえず『考えるのはやめだ』って事で」
そう言いながら腹部に当てるとベルトが伸びて、それは装着された。
剛は自分の周りを走るシグナルバイクの内、白いボディの『シグナルマッハ』を掴むと、仁藤を見た。
「じゃ、行くよ?『仁藤さん』」
「あぁ、お手並み拝見ってやつだな『剛』」
当然の様に言葉を交わした仁藤は、右手の中指にはめられた、黒縁で六角形の指輪を、腰にある門のような形をしたバックルにかざした。
音声と共にバックルは巨大化。バックルが巨大な門の形をしたベルトになった。
次に仁藤は、左手に正方形の指輪をはめた。緑の目をした、金色のライオンのような顔があしらわれている。
仁藤はその左手を手のひらを前にして高く突き上げ、直後に裏返し、指輪を正面に向ける。
「変…………」
築き上げた左腕と腰の位置にある右手を時計回りに大きく回し、やがて両腕は体の左側に行き着く。
「………身!」
長く溜めた『変身』と同時に、両腕を右側に振りかぶった。そして左腕を左側に真っ直ぐ伸ばした後、ベルトの左側にあるスロットに指輪を差し込む。
音声の直後にドラムロールが鳴り響く。仁藤は構わず、指輪を差し込んだスロットごと回した。扉に掛かった鍵を開けるかのように。
スロットを回すと同時にベルト中央の扉が左右に開いた。黄金に輝く獅子の顔のレリーフが、姿を現した。
仁藤は一度かがみ、何かを解き放つかのように、気合いを入れて起き上がる。
「ハッ!」
すると、ベルトから魔法陣が現れた。ウィザードの物とは少し形が違う黄色い魔法陣だ。
不思議な呪文と共に魔法陣はある程度前進すると静止し、仁藤の元へと戻って来た。その魔法陣が仁藤を通過すると、その身体は変化していた。
黒と金を基調とした姿で、左肩にはライオンの頭部を模した肩当てがある。顔の仮面は左手の指輪と同じ、ライオンのような顔に緑の複眼を持っている。
それを見て、剛は腰の『マッハドライバー炎』の右側の部分を上げた。そこはパネルになっており、シグナルマッハをそこに装填。
すぐさまパネルを下げる。
後輪に描かれた、金色の『R』の文字がベルト中央の窓から浮き出て、左側からオレンジ色の炎を吹いた。
剛は待機音声を聞きながら、右腕を体の左側に置いた。肘から先を上に向け、左手はその肘に添える。
そして両腕を時計回りに大きく回して、今度は体の右側に右腕を置き、斜め上に軽く伸ばした。左手はまた、肘に添えられている。
「レッツ………………変身」
笑みを浮かべ、静かに口にした。その笑みからは、既に勝利を確信しているような、余裕が感じられた。
直後、2つの小さなタイヤが対角の位置を保ちながら、剛の周りを旋回し始めた。やがてそれらは剛の胸と背中の位置で止まり、そのまま空中で分解された。同時に剛の身体を覆うように白いエネルギー体が出現。ドライブと同様、装甲となって装着され、2つのタイヤも吸い込まれるように剛の身体へと消えた。
剛が姿を変えたのは、全身を白いスーツと装甲で覆う戦士。鮮やかな青の複眼で、頭部や胴体、首から垂れるマフラーには赤い線が引かれている。そして右肩には、小型のタイヤが装備されている。
「追跡!」
敵を指さし、
「撲滅!」
左手の拳を右手に当て、
「いずれも〜………マッハ!」
手を合わせ、左右に開いた。
「仮面ライダー………」
右腕をぐるぐると回し、右足を上げて片足立ちになる。
「マッハ!!」
両足立ちで右膝を大きく曲げ、決めポーズをキメることで、ようやく長い名乗りは終わった。
自ら名乗った通り、剛が変身したのは『仮面ライダーマッハ』ドライブを大きく上回るスペックを誇る『ネクストシステム』を搭載した仮面ライダーだ。
「さぁ、ランチタイムだ!」
謎の決め台詞を言った仁藤が変身した姿は、『仮面ライダービースト』
音速の戦士と、
「「えっ!?知り合い?」」
2人が交わした言葉の方が気になっていた。
剛の変身は、初変身の時を意識しました。
次の投稿は、おそらく来年になると思います。それでは皆さま、よいお年を