イカれ軍人どもの戦国ネーションズ! 作:サンドワーム愛好家
……俺は闇の中にいた。
真っ暗で何も見えなくて、何も感じない場所。自分が立っているかも分からないような場所にいつの間にか俺はいた。同時に身動きが取れない事を知る。
何故こんな所にいるのだろう、という考えよりも先に、俺は今どこにいるのだろうと言う感情の方が先に芽生えた。俺はなんとなく、何故ここに居るのかを分かっていたんだ。
そして周りの闇が歪み始める。
ぐにゃぐにゃ、ぐるぐると歪んで色々な模様を描きだし、一瞬で弾け飛んだ。俺は不覚にも目を閉じてしまった。
次に目を開けた時には、俺は街中の交差点のど真ん中にいた。ミンミンと蝉が五月蝿く鳴いていたが、俺を避けるように歩く人達は大して気にはしていないようだった。
そして俺は気づいた。人が避けているんじゃない、避ける何かが俺の周りに漂っているんだと。
事実、俺を中心にした円の数メートル範囲は誰も入らずに通り抜けていた。俺がコレに気づいたきっかけはこれだった。
そして居場所はまた突如変わった。次に俺がいた場所は花畑だった。白い小さな花がここら辺一帯に咲き誇る大きな花畑だ。
そして俺の視界にナニカのぬいぐるみを持った小学生くらいの女の子が入った。
女の子は身動きが取れない俺に近付いてきて何かを話しかけてくれた。でも俺にはその女の子がなんて言っているか聞き取れなかった。まるで音声が切られた動画を見ているような気分だった。
すると女の子は飽きたのか、ポケットから飴玉を幾つか取り出して俺の足元に置いて去って行ってしまった。それが何を意味するのかは俺にはわからなかった。
女の子が去った後、またしても俺の居場所は変わっていた。今度の場所はそこら中が燃えてしまっているお寺のなかだった。目の前ににある大仏が俺をじぃー、と見ているような気持ちになった。
すると一人の男の子がまだ燃え移ってない渡り廊下を駆けたのがチラリと見えた。残念ながら体が動かない為、それから先を見る事は出来なかったが。
そして、ブシャァ!! という何かが噴き出るような音が聞こえると同時に周囲が真っ暗になった。
次に目を開けた先は、どこかの和室だった。しかし信奈達が居たような和室ではなく、コンセントや電気ポットがある現代風の和室だ。
どうやらここでは俺は身体を動かせるみたいだった。相変わらず体は重いが、動けるだけマシだ。
周囲を探ってみたが、どうやら抜け出す事も、何かをする事もできないようだ。
廊下に繋がっているであろう
ポットやちゃぶたいなど置物はボンドでくっつけられているんじゃないかと思うくらい堅く、取れなかった。
もう何もヤル気が出なくなった頃、後ろから聞き覚えのある男の声が掠れて聞こえた。それは今は亡きH1のものだった。
俺はすぐさま振り返る、知り合いがいると信じていたのだ。
しかしそこに居たのは化け物だった。
四足歩行でクネクネと歩く、赤みが増したツルツルの化け物だ。顔に当たる部分は口のみしかなく、目などはない。そしてその口はまるで蛇の口かと思うほど開くようで、振り向いた際に吠えたその時に見る事ができた。
分かりやすく例えるならばMHのフルフル亜種だ。それが今、目の前にいた。
そしてその大口が大きく開き、俺を丸呑みにしようとした所で周囲が光りだした。俺は眩しさに敵わず目を閉じてしまった。
ふと目を開けるとそこは、最初にいたあの暗闇の中だった。どうやら今度は体を動かせるようだ。
しかしやる事がない……と思っているまたしても先ほど聞こえたあの声が俺の耳に入って来た。
先程の化け物か! と思い少しばかりの恐怖を抱きなから俺は振り返った。
しかしそこには先程の化け物はいなかった。というよりも暗闇しかなく、何も見えなかった。
幻聴か……、と思い諦めていた頃、先程の声が今度はハッキリと聞こえた。そこにはジャマーのような雑音が掛かっていなかった。
「……い…た……大尉! 聞こえますか!」
姿はなかったがそれはH1のものだった。
俺は返事を出そうと声を出そうとしたが……出ない。
どうやら今度は体が動かせる変わりに声が出ないようだ。
俺はなんとかして声を出そうと振り絞ったが結果はなにも残らなかった。それより先にH1は話を続けた。
「大尉、聞こえていますか! H1です!」
俺は声を出して応答したかったが、声が出せなかった。
「大尉、聞こえているなら大丈夫です。大尉は意識を集中させておいてください」
それの意味はわからなかったが、なんとなくH1の言葉を聞き逃さないように注意した。
H1の声が聞こえた。
「大尉、貴方はとても強く、弱い方です。俺たちが居なければ恐らく死んでしまうでしょう。そして、これからも貴方の為に兵士は死んでしまう。俺のように」
H1は言葉を区切った。
心なしか、その声質は怒っているように聞こえた。
「でも、絶望しないでください、大尉。私達の存在意義は貴方なのです。貴方が生きているだけで我々は幸せなのです」
その言葉に、やめてくれ、やめてくれと警報を鳴らし続ける脳。少しきついものがあった。
「大尉、貴方は素晴らしい方です。普通の人間にはない思考の持ち主です。
貴方はこれから先、何度も困難に遭遇し、挫折する事でしょう。勿論、その際に兵士の死なんて数え切れないものになります。
そこで、絶望しないでください。貴方の画期的な考えで私達を導いてください。私達は、貴方なしで……生き…ないの……から……」
だんだんと声が声が小さく、聞こえづらくなってきた。
「……い……なたは……絶望…で……」
ついにほぼジャミングが掛かったようになってしまった。俺は微かに残る声に集中する。
「……ねがい……す………生きて……」
そしてついに、何も聞こえなくなってしまった。H1の声は、もう聞こえない。
後に残ったのは、静寂のみだった。何もない、静寂。
俺はいつの間にか、考えるのをやめ——
「はっ⁉︎ ……またあの夢か」
時刻を見ると8:40を示していた。少し寝すぎたか。
更に俺は少しそそをやらかしたらしい。股間部が少し湿っている。……とりあえず片付けるか。
俺はズボンを脱いで一階の洗濯機に放り込んで置いた。
そこで、俺は振り返る。あの夢の事を。
実はあの夢を見るのは、今回が初めてではない。あの夢は定期的に見ているのだ。
最初の頃はただ戸惑っているだけだった。なんだこの夢は、って。
そして少し慣れた頃には対策を持ってそれに挑もうとしたんだ。例えば、交差点では強く念じれば誰かに聞こえるんじゃないかとか、あの化け物は殴れば倒せるかも、とかな。
でもそのたんびに俺は同じ行動をいつしか取っていた。勿論今回もだ。
そして最後にH1の声が聞こえて夢が終わる。朝起きるとちょこっとちびっている、という結果がいつも残っているんだな。
因みにコレを一週間に2度は見てる。いい加減慣れたはずなのだが、毎回同じ行動を取る、起きるとちびっていると何も変わっていない。なんだか変な気分だ。
「しかし毎回思うが、アレは一体なんなんだろうな……」
溜息をつきながら呟く。
毎回最後にH1の声が聞こえて、ジャマーが掛かって終わる。これの繰り返しだ。
なぜH1なのか、とも思うがな。もしかしたらH1が化けて出てきているのかも、とも思う。
まあそれでも、この夢で彼が出てくれるから、ここが戦場である事を再認識させてくれるので、ある意味コレも俺の力になっているが。
「失礼します、大尉。
「了解だ。俺も司令室へすぐに向かう。準備していてくれ」
「了解です」
さて、兵士達にも呼ばれた事だし、お仕事でもするとしよう。
それじゃあ今日も、バシバシふざけていくぜ!
俺はその場を後にした。
と言うわけで司令室に到着した。部屋には既にメンバーが揃っているようだった。
「よおお前ら、おはよう。今日も頑張っていくぞ」
「勿論であります、大尉!」
「いい返事が貰えたようで結構」
「はっ!」
俺は一つだけ空いている少しお高そうな椅子に座る。
さてと、それじゃあ会議を開始しよう。
俺は先程の歩兵に報告を促す。
「報告します。昨夜道三殿に付けていたCS1から無線が届きました。報告では同盟反対派が道三殿を狙ってくるきそうとの事です。また城に忍び込ませて置いた忍者からも同様の報告がある事から、確率は高いと思われます」
「ふむ……他にはあるか」
今度は基地に追加配備した狙撃兵のリーダーから報告が来た。
彼らには基地内に追加で建設したバンカーを改造した高見台で稲葉山城、基地入り口、基地周辺一帯を見張らせている。
「大尉、我が隊が周囲を警戒していると興味深い者を捉えました。残念ながら死亡してしまいましたが」
「どういう事だ」
いや、マジでどういう事だよ。なんでいきなり死んだんだよ。
その疑問に
「はい。実は今朝の事なのですが、我が隊の一人が基地の入り口の近くでウロウロしている男がいるとの報告がありましてね。私もスコープを覗いて見てみると実際にウロウロしている男がいたんです。
するとその男は何を思ったのか懐から拳銃を取り出し自らのこめかみに押し付けたのです。
流石にマズイと思い、すぐさま狙撃銃で拳銃を撃ち落としたのですが……残念ながら……」
SN1は途中で言葉を区切る。まあ助けようとした相手が死んでしまえばそうなるだろう。
すると美濃技術部(フロイド・ゾーイの洗礼を受けた歩兵達)のリーダーから、それに関して一つ……と言って報告をする。
「その自殺をした男から採取したスマホを勝手ながら解析してみました。すると驚きのデータが取れたので報告させて貰います」
「ほう、それはなんだ?」
「ええ、こちらのモニターをご覧ください」
そう言って司令室の大型モニターを起動させる。
そしてそこには映っていたのは……見知らぬ男だった。
どうやら自撮りのようなものをしていたらしい。動画データとして残っている。
今から動画が始まるようだ。
『あー、あー。これちゃんと写っているのかなぁ? まあ写っていなければいないでいいけど。
自己紹介します。俺の名前は本河 そうた、この世界に不幸にも呼び寄せられた可哀想な
この動画は、俺の他にも呼び寄せられてしまった後輩へ送る動画として撮るものだ。活用してくれれば嬉しい。
まず俺がこの世界に呼び出された時の話から。俺が呼び出されたのはなんかの儀式で呼び出されたものらしい。変な城見たいな所で俺は目覚めたしな。ついでにいうと俺の他にも呼び出された奴も何人かいた。
次に今のこの世界について。どうやら俺と同じく呼び出された寺長 たいきによると、この世界は『織田信奈の野望』という漫画の世界らしい。
最初は、は? 何言ってんの? と思っていたけども、どうやら当たっていたらしい。この世界に俺たちを召喚した張本人が言っていた。
コイツが何者かは知らないが、どうやら人間の上に位置する上位存在、つまり俺たちから言えば不思議存在らしい。なんかすごい力を持ってるから逆らうな、との事だった。
で、コイツは俺たちに能力を授ける、との事だった。そいつは俺たちの頭を触ったんだけど、なんとその後俺を含めた全員がスマホゲームの力を使えるようになっていたんだ』
最初の部分を見た感想がある。……コイツ俺と同じ境遇じゃね、と言うものだ。
出来れば一緒に同行して欲しかったという無念の気持ちで一杯だよ、くそったれ。
動画は続く。
『そいつは俺たちに、その力をつかって世日本を侵略しろ、と言っていた。
彼によると、世界中でこのような侵攻が行われており、彼はここの総督らしい。それで俺たちはその為だけに召喚された駒のだと。クソみたいな話だが、事実らしい。
さらに俺たちには爆弾を埋め込んでいるらしい。命令違反でもすればすぐ爆破、だそうだ。
まあ、俺がこうやってこの組織をぶっ壊そうとしているのに爆破しない所をみると、ブラフだとは思うけどな。
……この動画を見ている奴にお願いしたい事がある。この組織の企みを阻止してくれ。
この組織は、別世界であるこの場所を侵略し、略奪の限りを尽くそうとしている。そんな事は許されないし、俺も日本人として許せない。
だから頼む。俺が奴らに殺されたら……後を頼む。まあ、どこの誰かさんに頼むってのもおかしいけど。
それとこの組織に呼び出された人間の中には組織の意向に賛成派と反対派がいる。もしも反対派を見つけたら仲間にするといいだろう。俺には出来なかったが、この動画を見てる誰かは出来るかもしれない。
……っと、結構時間経っていたな。今回はこれで終わりにする。俺がそれまでに生きていれば、次も集めた情報を動画として残しておく。じゃあな、俺と同じ、哀れな駒の誰かさん達』
そこで動画は切れてしまった。どうやら終わりらしい。
モニターの電源が落ちる。
「えー、今のは先程の興味深い者のスマートフォンからサルベージした物です。データは何者かに消されていたようですが、完全には消されてありませんでした。そこからデータを修復させた物が今の動画です」
「ほう、やはり消されていたのか」
「ええ、そのようです。
今の動画の話を要約しますと、彼は人間ではない何者かに半ば強引に
この世界に着くと自分と同じような境遇の者がたくさんいた。
呼び出した者に聞くと、自分達は世界を侵略する為の道具という事がわかった。また、命令違反等をすれば爆破されるという事も。
そしてその組織に呼び出された者にも、この目的に賛成する者も反対する者もいた。彼も反対する者だった。
彼は反対派を説得して協力しようとしたが、失敗した。
そしてなんらかのプロセスがあって、我が基地周辺に辿り着き、自決した。
……こんな所でしょう」
「ああ、そうだろうな。
所でその者の遺体とスマートフォンはどうしている?」
「ええ、
「了解だ」
俺は技術部長を座るよう促した。
ふむ、だとすると早急に
そんな中、司令室の扉を勢いよく開けて一人の歩兵が入ってきた。
それに対し、防衛班の隊長が怒鳴るが、それを俺は制止する。
「何事だ、慌てている所を見るに、何かあったのだろう?」
「は、はい! その通りです!
今さっき道三殿につけていた突撃兵から連絡がありました。どうやら敵に勘付かれたようで、現在こちらに向かっているとの事です!」
「そうか、だかそれがどうしたというのだ。気付かれたら速攻で逃げるというのが作戦だろう? それなら反撃したという理由付けができるからな」
そう、実は非常に面倒ではあるが、戦争には理由が必要なのだ。面倒だけどな。
腐敗政治を〜、とか 奴らは日本を外国に売った〜、とかな。資源が足りないとかでもいいかも知れない。
そして、その理由が最もらしい物ならば、他国から狙われる事はない。今後の事を心配しないくていいのだ。……まあ戦国武将とかぐらいなら戦車でワンパンだけど。
と、言う訳でこういう方法をとったのさ。なので別に大した問題でも無いと思うんだが……。
しかし、そんな俺に放った彼の言葉は俺に少なくない衝撃を与えた。
「はい、実は……敵にこちらの移動ルートを把握されていたようで、現在は長良川付近を彷徨っているとの事です!」
「……は?」
俺は少しの間思考回路が止まった。