悪役令嬢に転生したけど物理で世界最強になった件   作:Rosen 13

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第一章
プロローグ


 ふと目を覚めると私はまわりが真っ白に覆われた不思議な空間にいた。ここは何処だろう? 何秒か考えて私は理解した。

 

  「なんだ夢か。さっさと寝よ「ちょっと待ってください‼︎」ファッッ⁉︎」

 

 突然私の後ろから大きな声が聞こえた。吃驚して思わず変な声あげちゃったじゃん!

 振り向くとテンプレな格好をした天使がいた。中年のおっさんの。

 

「おえええええええええ‼︎」

「ぎゃあああああ‼︎ かかったんだけど‼︎ 七色に光るナニカがかかったんだけど‼︎」

 

 煩いわゲテモノが‼︎ 普通天使っていったら金髪のイケメンが美女だろうが(もしくは幼女でも可)‼︎ 何で中年のおっさんなんだよ‼︎ しがないサラリーマン風バーコードハゲのおっさんがそんな格好してたらどうみても変態じゃボケェ‼︎ それと光るナニカじゃなくて乙女力(物理)だし。

 

  「初対面相手に結構な毒吐きますね! あとさっきのは乙女力じゃなくてとし「乙女力(物理)な」アッハイ」

 

 変態死すべし。慈悲はない。

 

「変態じゃありませんよ。しがない転生課所属の天使です(キリッ)」

 

 こんな怪しい天使がいてたまるか。不気味すぎて街で見かけたら間違いなく通報されるレベルの不審者だからねあんた。あとキリッはウザイ。って私さっきから声出してたっけ?

 

  「いいえ、出してませんよ。私があなたの心の声を聞いているだけです」

 

 へー(棒)。まあ夢だし何でもありだね。それに声出さなくても思ってることが伝わるなんて楽だし。

 

「そんな反応されたのは初めてですよ…。それとこれは夢じゃないです」

 

  夢の中なのに夢じゃないって言われるとは思わなかった。

 

「えー、突然ですがあなたは死にました」

 

 スルーか。せめて何かしらの反応はほしかった。まあ少しおふざけが過ぎたと思うけど。ていうか私死んだんかい。 はいはいテンプレ、テンプレ。

 

  「落ち着いてますね。もっと慌てるかと思ったのですが」

 

 いやー、意外とテンパってるよ。一周回って冷静になるくらいには。でもネット小説で似たもの読んだことあるから案外パニックにはならないけどね。ところで私の死因は?

 

「あなたの死因は睡眠中に野球ボール大の隕石が頭にピンポイントで落ちて死亡です。画像見ます?」

 

 ノーセンキューだそんなの。自分のグロ画像など見たくないわ。SAN値が下がる。嫌がらせかこの野郎。

 

  「分かりました。あの…そろそろ会話しません? 今のところ、ずっと私が一方的に話しかけてる状態なんですけど」

 

  やだ、面倒くさい。さっきから言ってるけどこっちの方が楽だし。

 

「はあ、仕方ないですね。では話を進めます。というよりこれからが本題です。あなたには異世界に転生してもらいます」

 

 どうやら自称天使(変態)は諦めたようだ。うん、英断だと思うよ。我ながら面倒な性格してるからね。

 

 というか転生か。やっぱりテンプレだね。なんとなくそんな気はしてたけど。

 

「実はあなたはこちらのミスで死んでしまったのです」

 

 うん? 要するにあんた達が私を殺したってこと? 確かにテンプレだけどちょっとイラッとするな。

 

「具体的にいえば私の上司の神が因果律の不具合を起こしたのが原因なので、そういう解釈で構いません。そのお詫びのための転生です」

 

 へえ。それはサービスが良いことで。まあ、よくあるよね。でも神様許すまじ。一発殴らせろ。

 

「やめてください死んでしまいます。お詫びに転生に伴い特典を3つをプレゼントします。よく考えてください」

 

 何気にネタに走ったなこの天使擬き。

 ちょっと待って。特典の前に私はどんな世界に転生するの? 特典貰ったのに転生した世界で役に立たないなんて勘弁したいんだけど。

 

「それは言えません。ただ言えることはロボットとかは出ませんので、特典についてはそれを参考にして下さい」

 

 むう、ありがたいのかそうでないのか判断に迷う情報だね。ロボットとかが出ないとすると操縦技術系は無しか。ある程度特典の内容が限定できたのは良いけどさ。

 でも本当にどうしよう。ロボットが出ないといってもファンタジーな世界や前の世界のような可能性があるから、汎用性のあるのがいいかな。

 

「そろそろ決まりましたか?」

 

 決まった。まずはそれなりの身体能力ね。当然健康体で。やっぱり身体は丈夫じゃないと。それに自衛も兼ねて。でもある程度セーブ出来るようにして。

 

「なるほど分かりました。具体的にはどのくらいの強さにしますか?」

 

 どれくらいか‥‥。とりあえず、平均より優れた程度で。でも鍛えれば鍛えるだけ強くなりたいから、成長限界はなしでお願い。

  二つ目は重力を操る程度の能力。これは前からあればいいなって思ってたんだよ。自分の重力を増やして修業とか、相手の重力を重くして動き止めたりするとかカッコいいよね。

 三つ目は武芸全般の才能かな。生前は武芸全般やってたけど達人クラスまではいけなかったから、どうせ転生するなら極めたいからね。えーと、これで、大丈夫?

 

「正直言って神を超える力を与えるのはNGなのですが、この内容でしたら身体能力と武芸全般の才能はなんとか大丈夫です。ただ重力を操る程度の能力につきましては範囲や威力などに制限を設けさせることになります。では確認しますね。名前は東城美波、享年は二十五歳。特典はそれなりの身体能力、重力を操る程度の能力、武芸全般の才能でよろしいですか?」

 

 大丈夫だ。問題ない。

 

「不安を煽るような回答ですね。まあいいでしょう。ではこれから転生の儀を始めます。あなたとはこれで最後になりますが、何かありますか?」

 

 自称天使が手をかざすと、自分の身体が光りだす。どうやら儀式が始まったようだ。

 

「元々はそちらのミスだったけど、転生させてくれたことと特典をありがとう」

 

 不器用で優しいエルお兄ちゃん。途中でネタに走った時に気づいたよ。そのネタよく使ってたよね。あと今までほったらかしにしてた罰として暴言は許してほしい。

 

 そして光に包まれて私は姿を消した。こうして私は異世界へ転生したのだった。

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――

 

 

 

「ふふっ、最後まで相変わらずあなたらしかったですね」

 

(それに薄々私の正体に勘付いていた節がありましたし)

 

「彼女は無事に転生出来ましたか『ミカエル』?」

 

 現れたのは金髪のグラマラスな美女。名前をラファエルといった。

 ミカエルと呼ばれた天使は中年から爽やかな青年の姿に変わっていた。いや、戻っていた。

 

「わざわざ悪趣味な格好しなくてもそのままの姿で良かったのではないのですか?」

「そうもいきません。彼女にだけはこの姿で会ってはいけないのですよ。自分を捨てた兄の姿など‥‥」

 

 かつてミカエルは神の命令で一度だけ人として生きていた時代があった。彼女の、東城美波の兄東城エルとして。

 

「それは仕方がなかったのでは? 代償が人としての終焉でも、あなたは彼女を救う為に天使の力を行使したのですから」

 

 美波が高校生の時、両親と美波は交通事故に遭った。エルが病院に駆けつけた時には両親は既に事切れ、美波も瀕死の重傷だった。

 医師には打つ手がないと言われた。たとえ峠を越えても障害も残るだろうとも。

 

「あの時、美波を苦しめずに逝かせればと思いました。生き延びたとしても両親が死んだことを知るのは苦痛でしょうし、残りの人生を死んだように生きてほしくなかった。けど美波は私が思っていたよりもずっと強かったんです」

 

 峠を越えて意識を取り戻した美波は両親の死も障害のことも聞かされた。もちろん彼女は悲しんだし、ショックをうけていた。けれど絶望はしなかった。生を渇望し、希望ももっていた。

 エルが兄として妹を支えていれば不自由ながらも、平穏な幸せがあった。だがエルはそうはしなかった。天使として美波の生き方に魅せられたエルの歪んだ愛情とエルの天使としての本能が全てを変えてしまった。

 ある深夜、エルは寝ている美波に祝福を与えた。祝福により美波の傷跡や障害は全て無くなった。

 祝福の代償に東城エルとしての存在が消えてしまうが、エルは満足していた。これで愛すべき妹は再び幸せになるだろうと。

 だか美波は絶望していた。傷や障害は無くなった。けれど隣にいて欲しかった人がいなかったことに。

 ほんのすれ違いが運命を変えた。平凡な日常に戻った美波は平穏に暮らしていたが、どこか陰があった。

 独り善がりな満足をしたエルはミカエルに戻った後、美波の人生を見て自分の選択が望んだ結末にならなかったことや結果として妹を不幸したことに絶望した。

 

「だから今度こそは幸せになってもらいたいんですよ」

 

 ミカエルは寂しそうに笑った。彼女は知らないだろう。この転生が唯の事故ではなかったことを。

 

「せめて来世では幸せに。後は私がなんとかしますから」

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 おはようございます。東城美波改めカサンドラ・キルシュバウムです。今年で三歳になりました。えっそれ以前はどうしたって? あんな羞恥プレイは黒歴史だよ、言わせんな恥ずかしい。

 ところで無事転生できたけどな・ん・で転生先が『トキメキ学院』の世界なんですかねえ⁉︎

 

『トキメキ学院』は中世ヨーロッパのような世界観で魔法や魔物、冒険者、獣人、エルフなどのRPG要素を含んだ乙女ゲーム。舞台は王立魔法学院で主人公は平民ながら膨大な魔力をもち、特待生として入学する。そこで攻略対象者と恋愛したり友情を育むというありきたりなストーリーだ。私も前世にやったことがあるけど声優が豪華だったこと以外に印象はなかった。

 

 ちなみに私、カサンドラ・キルシュバウム公爵令嬢も攻略対象者である第二王子の婚約者として登場する。高慢で我儘な悪役令嬢で全ルートで主人公に嫌がらせをして、挙句の果てには暗殺者を雇って殺そうとしてしまう。最期は婚約破棄され処刑されてしまうのだ。

 

 兄よ、私に何か恨みでもあったのか。もしかして生前笑顔で『お兄ちゃんなんて大っ嫌い』って言って一日中泣かせたことや持ってた妹系のH本を勝手に燃やしたことを根にもってた? いやお兄ちゃん大っ嫌いについては正直悪かったよ。まさかあそこまで傷つくとは思わなかったし。ただ自殺未遂までするのは勘弁して。あの時ほど罪悪感に襲われることはなかったから。だけどH本は流石にドン引き、燃やされても仕方ないね。

 

 だからってカサンドラだけは勘弁してよ。ああ嫌だ嫌だ。このままじゃ処刑エンドで将来破滅ですよ。それ以前に我儘俺様王子の婚約者なんて無理無理。ストレスで胃にダメージマッハだよ。大体あんな我儘傲慢野郎のどこが良いんだか。

 

 原作通りだと処刑だけど、カサンドラの中身は私だから性格面では問題ないはずだ。ただ問題なのが私の両親。実はカサンドラ処刑の原因でもあるのが両親の不正。

 

 私は生まれてから数回しか両親に会っていないけど、使用人の噂を聞く限りやっぱり相当な悪人なようだ。父は横領などの不正や裏組織と関わりがあるらしいし、母も私には無関心で愛人を囲って贅沢三昧していると聞いた。実際私も両親は悪人だと思う。娘である私に無関心だし、会ってみて性格の悪さが滲み出ているのが分かる。

 

 あ、これはダメだ。色々な意味で終わってる。よし十歳になったら家を出て冒険者になろう‼︎

 

 そう思った私は両親が無関心であることをいいことに書庫で情報を得たり、普段から重力を操る程度の能力で自分にかかる重力を二倍にしたりして将来に備えた。無論使用人に怪しまれない程度に抑えてるから今のところバレていない。

 

「あれ? お嬢様なんで書庫なんかにいるんですか?」

 

 って、ばれたー⁉︎

 私に気づいたのはネコミミの獣人の少女で名前をレーニャという。最近ウチにきた新入りメイドでドジっ子なのか皿などをすぐ割ってよくメイド長に怒られてるのを目にする。よく解雇されないよね。

 

「ほんよんでりゅの」

 

 こらそこ、あざといとかいわない。まだ舌足らずでうまく話せないんだよ。

 

「ほえー、お嬢様はもう本が読めるのですか。すごいですね。私が小さい時なんか寝てばっかりでしたよ」

 

 うん、なんとなくそんな気がしてた。マイペースを地でいくイメージだし。日向ぼっことかしてそう(小並感)。

 

「でももうもどりゅからレーニャついてきて」

 

 うん、嘘は言ってない。一応手の届く範囲の本は大体読んだからしばらくは行く必要がないからね。

 しかし何故我が家の書庫に生前の愛用書だった『ゴブリンでもできる』シリーズがあったんだろう?

 ちなみにレーニャは私の部屋にも本があるのに私が書庫にいることについて何も疑問ももたずについてきた。怪しまれなかったのはよかったけど、この娘なんか心配だなあ。

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