悪役令嬢に転生したけど物理で世界最強になった件   作:Rosen 13

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約一カ月ぶりの更新です。お待たせしました。


閑話ミリムスーパーライブ1

 “革命の戦妃”

 

 ミリムの国民は王妃レイカ・ローズウェンディスのことをそう呼んでいる。

 

 彼女は病院や平民向けの学校の設立、それまで快く思われていなかった女性の社会進出を後押しするなど夫とともに革新的な政策を打ち出した。彼女らの政策によって平民の識字率は向上し、才能を持ち腐れしていた有能な貴族令嬢を筆頭とした女性達が仕事を得て各所で活躍しはじめた。それ以外も肥料の導入などの農地改革や書式の統一などの仕事の効率化を推し進めて、いつしか先王時代から荒れていたミリム王国は瞬く間に立ち直り、かつてないほどの最盛期を迎えていた。

 

 そんな偉業を成し遂げた彼女は国民達からまるで神のように信仰されている。

 

 故にもし彼女が突然民衆の前に現れたならどうなるかは火を見るより明らかだろう。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「順番にチケットを拝見しますので押さないでくださーい!」

「おいそこ割り込むな! ……はあ? 自分は貴族子息だから文句言うなって? 何言ってんだ、貴族なら余計ルール守れよ。ほらあそこを見ろ、レオンハルト殿下だって早朝から順番守って並んでるんだぞ」

「うわあ、並んでるっつっても殿下ほぼ先頭だよ。徹夜は禁止だから夜明けぐらいから並んでたのかな」

「まさかのガチ勢超え? 殿下、マジぱねえ」

 

 王都の中心にある大きな劇場、ミリムスーパードーム。普段は劇を上演している王都民の憩いの場は大人気の歌姫ルルアーナのライブ会場として人がごった返していた。ルルアーナグッズを販売する特設エリアには最後尾が見えないほどの大行列ができている。

 

「ぶひひ、ルルアーナちゃんの限定ポスターをゲットしたぶひ」

「ふっ、まだまだ甘いでやんす。あっしは等身大ルルアーナちゃん抱き枕を買ったでやんす」

「おや、君はそんな物で満足しているのかい? 私は完全受注生産のルルアーナフィギュア(幼女ver)だ! 依頼してから約半年……ようやく君に出会うことができたよ」

「殿下!? 」

 

 とまあ、色々あって遂にライブ開始一時間前。ライブ会場はすでに満席。倍率五千倍のチケットを購入できなかった人々は会場の外に溢れかえっていた。

 

 そして開始時間が近づくにつれて、会場からはルルアーナコールが響き始める。

 

『ルルアーナ! ルルアーナ! ルルアーナ! 』

 

 コールが鳴り響く中、ライブ開始時間を迎える。

 

「ミリムスーパードーム、キター!!!!」

 

 幕が上がると同時に、青のドレスを身に纏った青髪の美少女ルルアーナが魔道具『マイク』を片手に叫ぶ。

 

『ウオオオオオオオオ!!!!』

 

 マイクによって大音量で会場内に響くルルアーナの声に数千の観客達が総立ちし、ありったけの声を振り絞って叫ぶ。ポスターを買ってた者は席から『ルルアーナ命』と書かれた鉢巻と団扇を装備してぶひぶひ叫び、抱き枕を買った者は興奮のあまり声にならない声を上げている。

 

「おおう! かなり盛り上がってますねえ! それじゃ早速一曲目いきましょうか! 」

 

 満足そうなルルアーナの合図とともに彼女の後ろに控えていた演奏団の魔道具『ギター』、『ベース』、『ドラム』、『キーボード』がマイクに負けぬ大音量でメロディを奏でる。

 

「~♪~~♪」

 

 演奏団が奏でるアップテンポなメロディとその音量に負けないルルアーナの力強い歌声に、それまで声をだして興奮していた観客はその迫力に呑まれる。観客は静まりかえり、会場は彼女一人の歌声が支配していた。

 

「すっげえ……」

「これが歌、なのか」

 

 初めて彼女の歌を聴いた者達はそれまでの音楽の常識をぶっ壊されるほどの衝撃を受ける。しかし無理はない。

 ルルアーナ登場以前の歌と言えば聖歌など静かで厳かなものが主流だった。それがアップテンポで激しい常識破りなルルアーナの歌とギターなどの魔道具の出現で、それまでの音楽の概念は大きく変わったのだ。

 

 

 

 

「えー、改めましてルルアーナです! よろしく! 」

『ウオオオオオオオオ!!!』

 

 

 ルルアーナはアップテンポな曲やバラードなど数曲を歌い終えると、改めて観客に挨拶をする。観客も彼女に対して叫ぶことで反応した。

 

「うっはあ、皆さん元気ですねー! そんな皆さんに朗報です。なんと今回、特別ゲストとして私の歌の師匠が来てくれました!」

 

 ルルアーナの突然の発表に会場がざわめき、困惑を隠せない。彼らにとって今をときめく歌姫に師匠がいたなんて初耳なのだ。

 それに仮に彼女の師匠がいたとしても何故ライブに出てくるのか理解できなかった。

 

「あれ? 皆さん、反応悪いですねー。師匠、割と有名なはずなんですけど」

 

 それでも観客の反応は良くならない。

 

「じゃあヒント出しますね。実は師匠はギターなど楽器系魔道具の発明者です。これで分かるかな?」

 

 彼女のヒントが出た途端、会場内の空気が二分した。ひとつは師匠の正体が全く分からない者達、そしてもう一方は薄々ながら師匠の正体に気づいた者達だった。

 

「おいおいマジかよ……」

「嘘だろ」

「えっ? お前ら分かったの? ていうか何でそんな驚いてんだよ」

 

気づいた者は驚愕し、分からない者はそんな彼らの様子に困惑する。

 

「おっ、気づいた人がいるようですね。ではでは早速お呼びしましょうか! 特別ゲストはこの方です、どうぞ!」

 

 ルルアーナの合図に合わせてステージ上が輝きはじめる。観客はどよめくが、一部の者は気づいた。

 この輝きは魔力そのものだと。

 

 

 そして輝きの中から現れたのはオレンジ色のフリフリしたドレスを着た十代前半に見える黒髪の美少女。輝きが完全に消え、閉じていた瞳を開いた。その瞳は虹色に輝いていた。

 

「ご紹介与りました、特別ゲストとして呼ばれましたミリム王妃レイカ・ローズウェンディスです」

 

 彼女は観客に向かってにっこりと笑う。

 

『ウオォォォォォォォォォォオオ!!!!!』

 

 その瞬間、ルルアーナ登場をはるかに超える大歓声が会場を沸かした。

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