悪役令嬢に転生したけど物理で世界最強になった件 作:Rosen 13
「お、王妃様だ……本物だ……」
「なんとお美しい。まるで女神のようだ」
「ああ~ロリロリしいんじゃ~」
まさかの王妃登場で特に平民の観客が大歓声を上げる。彼らにとってレイカは自分の暮らしを良くしてくれた英雄で雲の上の存在だ。そんな彼女が目の前にいるなんて信じられなかった。
「レイカ様、音楽まで手を伸ばしてたんだなあ。楽器みたいな魔道具を発明してた時からなんとなくそんな気がしてたけど」
「なんか色々と規格外すぎて驚かなくなってきた」
「あの歌姫の師匠とは流石というかなんていうか……」
「おい、何呆けてるんだ。レイカ様の御前だぞ!」
「あ、今回は私人としてだから堅苦しいのはなしでお願いします」
一方貴族達は一部を除いて臣下の礼をとろうとするが、レイカにやんわりと固辞された。
「というわけで、今回は王妃としてでなく、唯のレイカとしてやってきました。なので皆さんあまり固くならないでくださいね!」ニパッ!
『オォォォォォォォォォォ!!! 』
レイカの満面の笑みにやられた観客は、突然の王妃登場で困惑した空気から元の熱気へと一気に戻す。
「王妃様ハァハァ」
「ルルアーナちゃんも可愛いけど、王妃様マジキュート」
「あれで人妻なんだろ。そんなの……最高ですありがとうございます」
「人妻系ロリ……ふぅ」
「警備員さんこいつらです」
一部変な輩が出現したが、会場はルルアーナ以上の盛り上がりを見せる。
「おうおう盛り上がってますよ! ではここで師匠から私とのエピソードを話してもらいます、やったね!」
「えっ、そんなの聞いてないんだけど。まあ、いいか。……え~、まず私とルルアーナとの関係なんですけど、彼女は私の妹弟子ですね。私が魔法使い見習い時代からの付き合いだから大体二十「ちょっ! 年齢関係はNGですから!」あ、そういう設定……」
「設定言わない! ルルアーナは永遠の十七歳。いいですね?」
「アッハイ」
ステージでみせる二人の漫才みたいな掛け合いにハハハハハ、と客席から笑い声が漏れる。
二人は歌姫と王妃という立場を忘れて楽しそうに笑い合う。特に心の底から楽しそうにしているレイカを見て、普段レイカに王妃らしさを求めていた貴族達もやれやれと苦笑い。
「ああもう、師匠に任せると色々やばそうなんで私が話します。というわけで師匠は黙っててください」
「そんなー」
『王妃と歌姫のエピソードwktk』
それまでレイカの私人発言もあり、王妃と歌姫の共演にもかかわらずほんわかしてた観客は二人のエピソードを聞こうとある意味臨戦態勢に入る。
(いやいや空気変わりすぎでしょ。どんだけ話聞きたがってるのよ……)
穏やかな雰囲気から一転して静寂に包まれた会場にルルアーナの笑顔が若干引き気味になる。
ふとステージ横で必死に腕をぐるぐる回してるスタッフが目に入った。
(えっ、時間ないから巻けって? これから面白くなるところなのにー)
だが思ってる以上にトークが盛り上がってたことを自覚していたルルアーナはずっと喋りたいという思いを封印する。
「あー、まことに言いづらいのですが、どうやら時間が押してるらしいので手短に説明します。ごめんブーイングしないで。まず何故私がレイカ様を師匠と呼んでいるかというと、それは彼女が私に歌を教えて歌手という道を開かせてくれたからです」
当時のルルアーナは魔法使い見習いだったが、魔法の実力が頭打ちになっていて魔法使いとしして大成することはできなかった。そんな時、たまたまレイカが口ずさんでた歌を聴いたルルアーナはそれを聴いて感動し、レイカにその歌を教えてくれと頼み込んだ。彼女は妹弟子の頼みを無下にせず、快くその歌を教えた。その歌はルルアーナがそれまで聴いてた歌とは全くの別物で、レイカ曰く、『遠い故郷の歌』ということだった。
「それでその歌を歌ってみたところ、師匠にプロでやっていけると絶賛されまして。当時は魔法使いとして生きても三流以下だったのは目に見えてたんで思い切って歌手に転向しました。すると私とその歌の相性が良かったのかどんどん有名になって今に至ります。だから私は歌を教えてくれた師匠のことを師匠と呼んでいるのです。とまあ、こんなところですね。さて時間がないのでさっさと進めましょう! 次は私ルルアーナと師匠レイカ様とのスペシャルコラボです!」
『オォォォォォォォ!! 』
スペシャルコラボと聞いて、それまでしんみりしていた会場は再び盛り上がる。
「これから歌う曲はさっき言っていた師匠が教えてくれた曲で私のデビュー曲でもあります。さーていきますよ、師匠」
「あの曲かー。随分と懐かしいね」
「嘘やろ……まさかここで
「安い酒場で歌っていた彼女のファンになってから十数年経ったけど、俺はやっぱり彼女のデビュー曲が大好きなんだよな。ついに王妃様とコラボするなんて長生きはするもんだ」
古参のルルアーナファンはまさか王妃とのコラボでデビュー曲が聴けるということで興奮で震えている。他の観客も彼女のデビュー曲は有名であることを知っている。興奮しないわけがなかった。
しかも普段ルルアーナはこの歌を滅多に歌わない。実際彼女がこの歌を歌うのは数年ぶりであった。
「「それでは聴いてください。『異世界ファンタズム』!!! 」」
軽やかなメロディの前奏が流れ始めると会場のボルテージが急上昇していく。
「~♪~~♪~~♪」
出だしのAメロはルルアーナの静かな独唱から始まる。ルルアーナの力強い歌声は観客を引き込ませる。
Bメロに入ると歌い手はルルアーナからレイカへ。徐々にテンポアップしていくパートをレイカは高く甘い歌声で歌い上げる。観客は初めて聴いた王妃の歌声にうっとりとしている。それは最前列にスタンバッてたレオンハルトも例外ではない。
「これが母上の歌声か。なんとロリロリしく甘い声なんだ…………うっ、ふぅ」
「え、殿下?」
実の母親の歌声で欲情した第一王子を放っておいて、歌はついにサビの部分を迎える。
「「~♪~~♪~~♪」」
『ウオォォォォォ!! キター!!!!』
力強く伸びのあるルルアーナとレイカの砂糖のように甘い歌声が会場に響く。会場のボルテージは最高潮に達していた。
観客全てが総立ちし、皆特設エリアで購入したレイカ印のペンライト擬きを必死に振り回す。レオンハルトは最前列のルルアーナファン達を持ち前のカリスマで纏め上げ、キレッキレのオタ芸を披露する。護衛ドン引きするも、殿下に逆らえず必死にオタ芸。
「おおおおおおおお、母上ぇぇぇぇぇ!!」
特にペンライトを六本を持つレオンハルトのオタ芸は歴戦の猛者にも劣らない。いかにもな美形の王子様がキレッキレのオタ芸とかなんてシュール。
そして演奏団がアウトロを弾き終わると、会場からは割れんばかりの大歓声と拍手が沸き起こった。
「皆さん、今日はありがとうございました!! とても楽しかったです!」
「私も久しぶりに王妃という立場を忘れてはしゃぐことができました。ルルアーナ、再びミリムでライブを開くことがあったらまた呼んでくださいね」
「あははは……ぜ、善処しまーす」
こうしてルルアーナのミリム公演は世紀の大成功を収めたのであった。
「ふふふ、今日はとっても楽しかった。今度は
最近貴族の間で話題になっているあの幼女。そして、おそらく私と同類の――
「へくちっ、ズズッ、うーん風邪かしら?」
「お嬢様、だからちゃんと服を着てくださいと言ってるではありませんか」
彼女達の邂逅は遠い未来の話でないことをまだ誰も知らない。
これで第一章は終わりです。本当はラファエル視点の話も書こうとしましたが、どうやってもRー18な展開不可避だったので挫折しました。