悪役令嬢に転生したけど物理で世界最強になった件   作:Rosen 13

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解決策

 どーも、十二歳なりましたカサンドラです。当初は十二歳になったその日に冒険者登録をするつもりでしたがワケあってそれは延期になりました。

 ワケとは何かですって? それは未だにティアナと仲直りできていないからよ(泣)

 冒険者になると言ってティアナを泣かせてから一週間が経過し、あれから私は一度もティアナに会えていない。何度も伯爵邸を訪れてティアナに会おうとしたけど、ティアナが会いたくないの一辺倒で屋敷入ることすらできなかった。一方でレイナードはよくこちらに訪れてくる。が、ティアナが姿を見せることはなかった。

 レイナード曰く、ティアナはここ最近屋敷から出てこないらしい。

 

「ティアナの奴、俺にも会いたくないってさ。ここ数日、まともに会った記憶がないぜ。あいつがここまで頑なだったなんて俺も初めて知ったよ」

 

 レイナードが疲れたように溜息を漏らす。本当にごめんなさい。

 

「カサンドラもウチの妹が悪かったな。まだ冒険者登録してないんだろ?」

「そんなの気にしないでちょうだい。今回悪かったのは完全に私なのよ。もう少し周りの冒険者に対する心証について考えるべきだったわ」

「たしかに姉のように慕っていた人が突然死亡率が高い冒険者になるって言いだしたら、そりゃあ怒るのも当然だな」

 

 ティアナに泣かれて思い出したのだけど、この世界の冒険者に対する認識は一部の上位冒険者以外は地位が低く、死に直結する危険な職業なのよね。でも冒険者として成功すれば一攫千金も夢ではないから冒険者を目指す者も多いってお爺様が言ってたけど、やっぱり貴族であるティアナには冒険者に良い感情をもっていなかったみたい。

 そこでふとある疑問が浮かび上がってきた。

 

「レイナードは私が冒険者になることについてどう思ってるのかしら? ティアナみたいに反対しないの?」

「ん?反対はしないな。寧ろカサンドラらしいなとは思う」

 

 私らしい?

 

「ああ、そりゃあ初めて聞いた時は驚いたけど、よくよく考えればその歳で歴戦の戦士だったあの大叔父様とその部下相手に遣り合っているカサンドラが冒険者を目指すのも不思議じゃないと思った」

 

 うわ、レイナードの私への評価が思った以上に高いよ。嬉しいけどちょっと恥ずかしい。

 

「ふ、ふーん。よくわかってるじゃない、ホント私のことよく見てるのね」

 

 恥ずかしさを誤魔化すために、ニマニマしながらグイッと顔を近づけ、上目遣いでレイナードを見つめる。

 

「バッ、バッカ! そんなにジロジロ見てえねえよ!」

 

 すると突然レイナードが一瞬視線を下に落としたと思ったら、急に鼻を押さえて、まるで逃げるように慌てて私から距離をとってしまった。私と三メートルくらい離れたレイナードは何故か前屈みになりながら顔を真っ赤にさせていた。

 

「いきなりどうしたの? 顔が赤いようだけど」

 

「べ、別に赤くなってねえし!」

 

「顔真っ赤にして何言ってるのよ。もしかしてあなた熱出してる?」

 

 だったら早く寝かせないと。前世では大したものでない風邪も医療が発達していないこの時代ではそのまま死に直結してしまう可能性がある。だけど私が近づこうとするとその分レイナードが前屈みのままずるずると後退していく。なんか微妙にムーンウォークぽくってちょっと笑いそう。

 

「レイナード、逃げるのやめなさい」

「やだっ!」

 

 ムカッ

 

「そう……なら実力行使よ!」

「うわああ! ち、近づくなあ!」

 

 背を向けて逃げようとしたがそうはさせない。縮地で一気に間合いを詰めて両肩を掴む。くるっと反転させるとレイナードの真っ赤な顔がどアップで映る。

 

「やっぱり顔が真っ赤じゃない。風邪引いているんでしょ」

 

 熱を測るために自分の額とレイナードの額を合わせた。うん熱いね。

 

「はっ、離せぇぇぇぇぇ!」

 

 するとそれを嫌がったレイナードが両手を突き出し、

 

 むにゅん

 

「へ?」

 

 歳不相応に育った私の胸を鷲掴みしてた。……鷲掴み?

 

「……………………あ」

「……って何してんじゃゴラァ!!」

「ゴパァッ!?」

 

 反射的に昇◯拳ばりのアッパーを食らわせ、レイナードは綺麗な放物線を描きながら宙を高く舞った。

 

「お~見事なアッパー」

 

 宙に舞うレイナードを見ていたレーニャも驚きのあまり口調が素に戻っていた。

 

「ななななな、何すんのよ!?」

 

 無意識にここ数年であっという間に前世のサイズどころかやや小さなメロンほどまで成長した胸を押さえる。顔に熱が集まるのを自覚しながらレーニャの所まで吹っ飛んだレイナードを睨んだ。

 

「……………………………………」

 

 しかし地面に突っ伏してるレイナードから返事はない。

 

「お嬢様、気絶してます……」

「……………………そう」

 

 レイナードの脈を測ってたレーニャが呆れ半分でこっちを見てる。あー……ごめんなさいレイナード。ちょっと力加減間違えました。

 

 

 

 

 

 それから数分後、目を覚ましたレイナードが土下座。私も心配してたとはいえ強引すぎたと謝ったことで和解し、話題はティアナのことに戻った。

 

「さてティアナと和解したいのだけど、どうしたらいいと思うかしら? ちなみに手紙は無視、アポイントとろうとしても向こうに拒否されています」

「それは……難しいな」

 

 頭を抱えながらレイナードは溜息をついた。

 

「協力してやる……って言いたいところだが、お前同様ティアナに会えない俺じゃ大して力になれないしなぁ。ところで大叔父様からカサンドラと後ろのメイドが王城に忍び込んだことがあると聞いたんだが、それなら伯爵邸に忍び込むことぐらい楽勝じゃないのか?」

 

 ……………………!?

 

「そうか! その手があった!!」

「うおおお!?」

 

 何でそんなことが思いつかなかったんだろう。通常の手段で会えなければ、無理矢理な手段を選べばよかったのだ。この二年で知らず知らず慎重になりかけていたかもしれない。

 

「お待ちくださいお嬢様! それは最終手段です!!」

「でもこのまま大人しくしててもどうしようもないわ。最悪会わないまま冒険者として生きるという手もあるけど、友情を捨ててまですることではないわよ。なら私に残された手段はただひとつだけ」

「しかし……」

 

 レーニャの心配も理解できる。王城の時は公爵家の告発という大義名分があったけど、今回は完全に私のエゴだ。実行しても和解できる保証もないし、下手すれば伯爵家との仲に亀裂が走ることになり私を引き取ってくれたお爺様に迷惑をかけかねない。

 最近過保護気味になりつつあるレーニャをどう説得しようかと考えていると、予想外のところから援護があった。

 

「別にいいんじゃないか? 親や使用人はティアナに構いっぱなしだから屋敷まで手引き程度なら俺でも協力できるし、仮に親父とかが何か言ってきたら俺が何とかしてやるよ」

「えっ、いいの?」

 

 私がこれからすることは決して褒められるものではない。もしかしたらレイナードは怒られるだけじゃすまないかもしれない。そんな心配をレイナードは一蹴した。

 

「ハッ、提案したのは俺だし気にすんな。まあ、あいつの気持ちも分からなくないけど、俺は冒険者の話をしてると目をキラキラとさせてるお前を止める気はねえっての」

 

 レイナードは伯爵家の後継だ。敷かれたレールの上を歩かないといけない彼が自由に生きる私をどう思っているかは知らない。それでもニカッと笑って後押しした彼の姿は私にはとても眩しく見えた。そして初めてレイナードのことをかっこいいと思えたのだった。

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