「た、竜貴ちゃん⁉︎」
織姫が声を上げる中、沙優は落ち着いた動作で攻撃を全て捌いていた。
(! 竜貴ちゃん……確か空手お化け、だっけ?この子はちょっと油断できないな)
大きく距離をとると、織姫をおんぶした。
「織姫ちゃん、ちゃんとしがみ付いててね。1/10でも力を抜いたら死ぬと思って」
「へ?」
直後、初めて沙優は戦闘を開始しようとした。
迫り来る竜貴と他の操られている生徒達の猛攻を、背中を見せる事なく捌く。躱す、防ぐ、いなす、の繰り返し。
だが、人数が違い過ぎる。右左、両側から迫り来た拳を掴む。正面から竜貴の拳が迫って来た。
「! ここから先は正当防衛だかんね……!」
掴んだ両腕に力を入れて、そこで自分の体を支えながらジャンプし、竜貴の攻撃を左膝でガードした。
そして、右足で回し蹴りを出そうとした。
「ま、待って!やめて沙優ちゃん‼︎」
「っ⁉︎」
背中から制止され、一瞬迷ってしまった。その迷いが大きな隙になった。
『やっと隙が出来たな』
いつの間にか後ろに回り込んでいた虚が、織姫に向かって攻撃した。
「っ⁉︎」
「えっ?」
「ッ……‼︎」
織姫を庇うように、虚から伸びた触手のようなものの攻撃を受け、お腹を貫通した。
「‼︎ 沙優ちゃん‼︎」
『エヒャヒャヒャヒャ‼︎お前は強そうだから、こうでもしないと殺せなさそうだったからねぇ。エヒャヒャヒャヒャ‼︎』
ポタッと垂れる血。
「さ、沙優ちゃん!しっかりして沙優ちゃん!」
庇われながらも涙目でそう叫ぶ織姫。その織姫の頭を撫でながら、沙優は言った。
「大丈夫だよ、織姫ちゃん。こんな攻撃、毛ほども聞いてないから」
微笑みながらそう言われ、織姫はほんの一瞬、かなり安心してしまった。
『ほう、言ってくれるね。だけど、それもここまでだよ。次の一撃で、今度は後ろのその子ごとブチ抜いてあげる』
自分の触手を一度抜こうとする虚。だが、抜けなかった。動かないどころか、微動だにしなかった。
『⁉︎ なに、クソ!抜けない⁉︎というか、動かない⁉︎』
「ようやく自分から来てくれたね。これで、誰も傷付けないようにお前を仕留められる」
『なんっ……⁉︎』
そう言う通り、虚の操っていた生徒達は、誰一人として傷一つ負ってなかった。
『ま、まさか……!貴様……‼︎』
「あーあ、手を出すつもりなんて無かったんだけどなぁ、まぁこのくらいは許容範囲でしょ」
沙優は虚の顔面につま先を叩き込んだ。顔面に大きく穴を開けながら、大きくぶっ飛ばされる虚。
『そんな、バカな………‼︎』
捨て台詞を吐くと、虚は穴が空いた箇所を中心に消滅していった。
すると、操られていた生徒達の種子も消えて行った。
「お、戻ったね。……にしても、鈍ってるな。やっぱたまには運動しないと。今度、夜一ちゃんに遊んでもらおっかなー」
「だ、大丈夫なの⁉︎沙優ちゃん‼︎」
「へ?………ああ、これの事?」
織姫に聞かれ、ようやく自分のお腹に穴が開いてる事を意識した。
「うーん、ちょっとヤバイかな。今日に限って何も持ってきてないし」
「そ、そんな呑気な……!き、救急車!」
「血が足んなくてふらふらする〜……」
バタン、とその場に倒れ込んだ。
「わ、わあ!ど、どうしよう……沙優ちゃん……‼︎」
涙目でオロオロしていた。そもそも、沙優がこんな目にあったのは自分を守るためなので、尚更死なせたくなかった。だが、今の自分はどうすることもできない。
すると、自分の周りをヒュンヒュンと何か飛んでいることに気付いた。
「………? なにこれ?」
「その子を死なせたくないかい?」
「………しゃべってる………?」
その飛び回ってる奴らが、織姫の肩に止まった。
「よろしく、織姫さん。ぼくらは『盾舜六花』。キミを守るために生まれたんだ。君の能力さ」
「うわぁ!こ、小人だ!空飛ぶ小人が出てきてあたしに話しかけてる‼︎」
「おっ⁉︎いい反応だなぁ!嬉しいね。だけど一つ間違い、僕らは君の能力だよ。君が受けた『影響』によって呼び起こされた、君自身の『魂の力』。つまり、僕たちは君自身ってことさ」
「………………」
「とにかく、今はその子を治そう」
「え……え?」
「大丈夫だよ、落ち着いて!言霊を乗せるんだ。復唱して。僕は舜桜、彼女はあやめ。名前を言った後、言霊を乗せる」
「シュンオウ、アヤメ!」
「『双天帰盾』」
「『双天帰盾』」
「『私は拒絶する』」
「『私は拒絶する』」
直後、沙優を包み込むようにオレンジ色の膜が出来た。
それが、沙優のお腹の傷を修復していく。
「…………おお、すごい」
沙優が声を漏らした。
「こんな力があるなら、あたしの正体隠す意味ないかも」
「沙優ちゃん………」
「ん、ああ!正体っていうのは別に……!」
「さゆちゃあん……」
「へっ?」
気が付けば、織姫の顔は涙と鼻水でグチャグチャになっていた。
「さゆちゃああああん!」
ガバッと抱き付いてきた。
「ちょっ、織姫ちゃん⁉︎大げさだよ!あの程度ならあたしは全然元気だから……!」
「よかった……良かったよお〜………」
抱きついてきてる織姫の頭を撫でながら、沙優いつの間にかいなくなった盾舜六花の代わりに、6枚の花びらのついた髪留めを眺めた。
「………ところでさ、織姫ちゃん」
「なに?」
「鼻水とか制服に着けてないよね?」
「………クリーニング代出すよ」
「いや、別にいいけど」
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