兕丹坊が一護に向かって斧を振り下ろす。
一護も斬月を抜いて、その一撃を止めた。
「むふ‼︎よし!まだ立っでるだな‼︎」
それを満足そうに見下ろすと、さらに斧を振り上げた。
「まだまだいくぞ‼︎喰らえ‼︎十本兕丹打祭だ‼︎いーぢ、にーい、さーん、しーい、ごーお、ろーぐ……‼︎」
ゴッガッドゴッと振り下ろされる斧。石田達の方には、ただ轟音のみが響いて来た。
「そろそろフィニッジュいぐど〜〜〜……‼︎」
最後の一撃は、大きく斧を振り上げた。
「十ッ‼︎」
ズガンッ‼︎という大きな音共に地面が大きく抉れ上がった。
「……な………な……」
だが、兕丹坊の表情は驚愕していた。一護は無傷で立っていた。
「な……なんで……お前え……なんでまだ立っでられるだ……?」
「………終わりか?」
一護はガードに使っていた斬月をようやく構えた。
「じゃあ、次はこっちからいくぜ……!」
「‼︎ ま、まだだ‼︎まだだど‼︎まだオラの技はおしめえじゃねえど‼︎」
直後、懐から2本目の斧を取り出した。
「受げでみろ‼︎オラの最後の必殺技……万歳兕丹打祭‼︎」
同時に振り下ろされる斧。その斧を前に一護は、
「悪ぃ、潰すぜその斧」
斬月を横に振り抜いた。斧どころか、兕丹坊ごと吹き飛ばし、後ろに引っくり返らせた。
「ッ……な、何だ……?」
ひっくり返りながら呟いたが、後ろに吹っ飛ばされたことに今更気づき、起き上がった。
「ぶはーっ!あ、あぶねえあぶねぇ!オラとすだこどがうっがりすべって尻もぢなんかついちまっただ!」
言い訳がましくそう言いながら、ニヤニヤ笑って見せる。
「あっ⁉︎なんだ、お前えその顔⁉︎さではお前え、今オラが吹っ飛んだと思ってんだべ⁉︎ははっ!何言ってんだお前え!オラが吹っ飛ぶなんてそっだらこどあるわけねえべ‼︎まっだぐ、これだから田舎もんは困んべな〜!まっでろよ〜〜今もっかいオラの斧で……」
言いながら手の中に握られている斧を見た。だが、その斧は完全に砕けていた。
「………お、斧っ⁉︎オラの斧⁉︎オラの斧がっ⁉︎」
慌てて斧を見るが、どう見ても砕けている。
「オラの……斧があ……‼︎」
「な……」
そして、目尻に涙を浮かべた。
「ご、壊れぢまった!壊れぢまっだ!オラの斧が……壊れぢまっだあああ〜〜〜‼︎」
あまりにも号泣するものだから、一護は逆に気の毒になってしまい、謝ることにした。
「え、えっと……なんつーか、わ、悪かったな……斧壊しちまって……何も2本とも壊すことなかったよな?俺も……なっ?」
「うおお……うう…お……お前え……っ!いい奴だなぁ……‼︎」
「えっ」
「お前えどオラは敵同士……だのにお前えは負げだオラの心配まですてぐれる……!完敗だっ‼︎オラは戦士とすでも男とすでもお前えに完敗だ‼︎」
そう言うと、涙を引っ込めてキリッとした表情で兕丹坊は門の前に立った。
「通れ!白道門の通行を兕丹坊が許可する!」
「お……おうっ!」
「おーい、終わったあ?」
呑気な声で近付いてきたのは沙優だ。直後、兕丹坊の表情が変わる。
「⁉︎ う、浦原沙優⁉︎」
「え、なんであたしのこと知ってんの?誰?」
「な、何を言っでるんだお前え!お前えの事を知らない奴なんで、この尸魂界にはいねえべ⁉︎極悪人、浦原沙優‼︎三番隊、五番隊、七番隊、九番隊の隊長格を虚化させた浦原一味の特攻隊長の一人だべ⁉︎」
「ち、ちょっと!背びれが付くにもほどがあるでしょ‼︎」
「沙優ちゃん、尾ひれだよ」
「………悪ぃが、そこの浦原沙優だげは通すわげにはいがねえべ……‼︎」
真面目な顔で言われ、沙優は困ったような顔をする。
「………ふむ、そういう事なら仕方ないのう。沙優、主は空鶴に入れてもらえ」
「あーい……めんどくさいなぁ」
夜一に言われ、沙優は残念そうにため息をついた。
「他のメンバーなら通っでもいいど」
「……うーん、どうしよっか?黒崎くん」
「あー……ウラ、どうする?」
「仕方ないよ。みんな先に行ってて?大丈夫、こんな所頑張ればどうやってでも入れるから」
「お、おう……。じゃあ、みんな行くぞ」
「じゃ、門を開げるど」
言うと、兕丹坊は門に手を掛けた。「ぬんっ」と腕に力を入れ、思いっきり門を持ち上げた。
「ごぉぉおおおおおおお‼︎」
「う、うおおおおおお‼︎」
スゲェーとでも言わんばかりに盛り上がる一護達。だが、兕丹坊が動きを止めたため、それを不審に思った。
「? どうした?何止まってんだ?何かあったのか?」
「ああ……ああああ………!」
門の奥には、白髪のキツネみたいな顔をした男が立っていた。
「ッ‼︎」
気付いた沙優が門に向かって走り出した。
「……さ、三番隊隊長……市丸ギン……!」
青ざめた表情で呟く兕丹坊。
「あァ、こらあかん」
直後、兕丹坊の腕に何かが通った。それと共に、腕が落ちた。
「あかんなぁ、門番は門開けるためにいてんのとちゃうやろ」
「があああああああ‼︎」
斬られた腕から血が噴き出す。力が一気に抜け、門が落ちて来るのを、肩で支えた。
「おーー、片腕でも門を支えられんねや?流石、尸魂界一の豪傑。けどやっぱり、門番としたら失格や」
「…………オラは負げだんだ……負げだ門番が門を開げるのは……あだり前のこどだべ‼︎」
「何を言うてんねや?わかってへんねんな」
表情を変えず、ニヤついたままギンは言った。
「門番が負けるゆうのは……死ぬゆう意味やぞ」
ギンは斬魄刀を出した。
「射殺せ、『神鎗』」
それが兕丹坊に向かったが、それを沙優が木刀で下から弾いた。
「っ! おっと……これは有名人やな。浦原沙優」
「隊長羽織……誰だか知らないけど、隊長格って事でいいんだよね」
呟くと、沙優は後ろの夜一達を見た。
「夜一ちゃん。みんなは別の入り口から行って。ここはあたしが受け持つから」
「お、おいウラ!」
「うむ、分かった」
「よ、夜一さん!」
「兕丹坊、降ろせ」
「お、おい……!」
言われるがまま、兕丹坊は門を降ろし精霊廷内には沙優とギンのみが残された。
門の外で、一護が夜一に食って掛かった。
「お、おいどういうつもりだよ夜一さん!」
「馬鹿者。奴は三番隊の隊長だ。いくら沙優でも、貴様らを守りながら奴を退けるなどできるものか」
「いくら沙優でもって……?」
「良いから行くぞ。まずは兕丹坊の腕を治してやれ」
四人と一匹は、兕丹坊と沙優の荷物を持って流魂街の方へ向かった。