翌日、夜一と沙優は二人でトランプをしていた。
「……………」
「………あっ」
「………チッ」
「…………お」
「……………なんじゃ、勝負でいいのか?」
「いいよ」
「フルハウスじゃ」
「……………………」
「あっ、こらカードをすり替えるな!」
「やーだー!もうお金ないのー!」
「ダメじゃ!勝負にならんじゃろうが!」
「うるさいガングロババァ‼︎」
「が、ガガガングロババァ⁉︎」
またまた懲りずに殴り合いが始まりそうになった時、ガッと沙優の頭が掴まれた。
「?」
「おい、貴様。いい加減身分を弁えろ。隊長への言葉遣いも分からんのか」
砕蜂だ。下級貴族の蜂家の当主で、夜一への憧れは最早、崇拝と表現したほうが適切なまである。
「そいぽんちゃんだって副隊長のあたしにタメ語じゃん」
「その呼び方はやめろ!」
「えーいいじゃん、そいぽん。そいぽんぽん」
「二連続で言うな!」
「そーいぽんぽん」
「なんだその頭の悪い擬音は!というか人の名前で遊ぶな!」
「そいぽんか……可愛らしくて良いのではないのか?」
「浦原沙優、採用しよう」
「やったね!」
「黙れ、変わり身が早くて何が……あれっ?」
まさかのツッコミ無しに、砕蜂は変な声を漏らしてしまった。
「ところで夜一様、何をしてるのですか?」
「ポーカーじゃ」
「ぽ、ぽーかー?」
「なんじゃ、知らんのか」
「夜一ちゃん、教えてあげて下さい」
「おい貴様、夜一様を顎で使うとは何様だ」
「だって説明面倒臭いんだもーん」
「………夜一様、こいつ斬らせて下さいませんか?」
「ダメじゃ。それに、お主じゃ沙優には勝てんぞ」
「いえ、今日こそは勝ってみせます!」
「無理無理無理無理。一万年と二千年早いから」
「なら、試してみるか?」
「よーし乗った、表出な」
「おい、よせ。昨日の今日でそれはまずい」
はぁ……と、夜一はため息をついた。
「うちの隊も、中々血の気の多いのが揃っておるのだな……」
「も、申し訳有りません!夜一様……」
「良い良い、大人しすぎるより全然マシじゃ」
「そうだよー。少し言うこと聞かないくらいがちょうどいいんだから」
「お主は少し弁えろ」
「へ?かなり大人しいじゃん、あたし」
「殺すぞお前」
いきなりの殺人予告に、さすがに沙優も黙った。
「それで、そいぽんもやるのか?ポーカー」
「い、いえ、私は……」
「えー、ぽんぽんちゃんやらないのー?」
「なんだ、ぽんぽんって!タヌキか私は⁉︎」
「やろうよたぬぽんちゃん」
「た、たたたたぬぽん⁉︎」
「やらんのか?」
夜一の軌道修正で話が元に戻った。
「………じ、じゃあ、一度だけ」
「よし、ルールを教えよう」
そう言いながら、夜一も沙優も邪悪に口を歪ませた。
((初心者だろうと容赦しない。精々搾り取らせてもらおう))
数時間後、砕蜂の前に金が大量に積まれていた。
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「あーあ、酷い目に合った〜」
金をほぼ全て巻き上げられた沙優は、まだブーブーと文句を言っていた。
「ふんっ、主が弱いのが悪いんじゃ。敗者がブーブー言うな」
「夜一ちゃんだって負けてたじゃん」
「儂は負けてない。勝たせてやったんじゃ」
「えっ、か、勝たせていただいていたのですか?ならば、このお金は………」
「あ、あー冗談じゃ砕蜂。その金は主にやると言ったろう」
「あ!あたしは勝たせてあげてたんだよ?だから返し……」
「断る」
即答だった。
すると、部屋の扉が開いた。一人の隠密機動の男が入ってきて、夜一の前に膝を着いた。
「なんかあったかの?」
「浦原隊長が『地下特別檻理棟』に入りたいとの事ですが」
「喜助ちゃんが?」
「は。夜一様には既に許可を取ってあるとのことでしたが……」
「ん〜……。何じゃったかのー……」
「あれじゃない?中の人にえろ本貸す約束してたとか」
「そんな約束なら通したくないのじゃが……」
思い付きで適当なことを言う沙優にシレッと夜一は返した。
「如何致しましょう。ご記憶にないのであれば、お引き取り願いましょうか?」
「いや、いい。どこへなりと通してやれ」
「思い出されたのですか?」
「全然」
「夜一様!」
「なんじゃそいぽん。うるさいのう」
「そーだよ。耳元で大声出さないでよ」
「貴様は黙っていろ!よろしいのですか?」
「心配いらん。喜助のことじゃ、何か考えがあっての事じゃろ。心配なら沙優に同行させるが……」
「負け分取り返さないといけないからパス」
「まだやる気かお主……」
呆れる夜一だった。