「はい、これワンパンマン全巻」
ドサッと10冊の単行本を置いた。
「え、あ、ありがと……」
「ううん」
「それにしても、すごいね。沙優ちゃんの部屋……」
「うん?何が?」
「本の数だよ」
織姫が驚いているように、沙優の部屋は本棚で埋め尽くされていた。その本棚には色んな漫画やラノベが置いてある。
「すごいでしょー。何か読みたいのあったら持ってっていいよ」
「今日はこれだけでいいよ。たくさんあっても読み切れないから」
「分かったー。あ、お菓子とか今持ってくるね」
「うん」
そう言うと、沙優は部屋から出た。
店の中に並んでる駄菓子をテキトーに手に取ると、再び部屋に戻ろうとする。
すると、一匹の黒猫が前から近づいて来た。
「どういうつもりじゃ?」
「………あ、夜一ちゃん。ねこまんま食べる?無いけど」
「ふざけるな。何故、ここに他人を連れてきた?」
「えー、いいじゃん別に。そもそも、ここ表向きは普通の駄菓子屋なんだし。織姫ちゃんって、あたしと一番仲良くしてくれてる子なんだよ?」
「お主がそれで良いならいいが……」
「何、妬いてるの?そういえば、夜一ちゃんと最近遊んであげられてないね」
「バカ言うな。殺すぞ。………まぁ、いいじゃろう。その代わり、正体はバラすなよ」
「分かってるよー。じゃ、またね夜一ちゃん」
「頭を撫でるな」
夜一の頭を一撫ですると、部屋に戻った。
「お待たせ〜。はい、これおやつ」
「えっ⁉︎ご、ごめんね……」
「ううん、いいって。後これお茶。好きなだけ漫画も読んでっていいから」
「うん」
最初は遠慮がちだった織姫だが、20分後には満喫とほとんど同じ空気になっていた。
1
翌朝。沙優が起きて家を出ようとすると、ちょうど見覚えのある女の子が店から出て行った。
「………ん?今の子って……」
「あ、ああ、沙優。もう行くンスか?」
「最近、遅刻ばっかだからね。……それより喜助ちゃん。あれ、朽木ルキアさんだよね?何でこんなとこに?」
「いつも通りっスよ。記換神機のスペア燃料と内魄錠剤。それと義魂丸」
「あの子も大変だね〜。死神の力吸われてからお金掛かってるなぁ」
「その分、虚を頑張って倒してるンスけどね」
「たまにはあたしも手伝ってあげよーかなー」
「ダメっス。お前の力は後々必要になるンスから、それまで正体も明かさないように」
「………はーい。じゃ、行ってくるね」
「ウィッス」
沙優は元気良く出て行った。
2
学校に向かう途中、織姫が歩いてると後ろから竜貴が背中を叩いた。
「おはよう、織姫」
「あ、竜貴ちゃん。スラマッパギ」
「」
言葉を失う竜貴。
「おっはよーう!織姫ちゃん、竜貴ちゃん!」
後ろから沙優が呑気に声を掛けた。直後、竜貴が胸ぐらを掴んだ。
「てめええええ‼︎昨日、織姫に何を見せやがったああああ‼︎」
「えーっと……ワンパンマン、ナルト、日常、劣等生……そんなもんじゃない?」
「織姫を返せこの野郎オオオオ‼︎」
「た、竜貴ちゃん!」
間に入ったのは織姫だ。そして、憎たらしいほどに呑気な笑みを浮かべ、
「頭をヒヤシンス」
「沙優うううううう‼︎」
ガックガックと胸倉をメチャクチャ揺すられた。
3
昼休み。お昼を取ってる中、竜貴は未だに不機嫌そうな顔をしていた。
「ねぇ、竜貴ちゃん。そんなに怒らないでよ」
「ふんっ。人の親友をオタク化させておいて何を言ってんの?」
「そんな変な漫画教えてないよー」
「日常は十分変でしょ!織姫が『囲碁サッカー部』作るとか言い出したらどうする気⁉︎」
「竜貴ちゃんも結構詳しいよね……」
織姫が引き気味に呟いた。
「ふわあ……眠い」
「昨日の夜、寝なかったの?」
「うん……織姫ちゃんが帰ったあと、ブン投げたジン太と戦争してて鉄裁ちゃんに怒られた……」
「おい待て、ブン投げたって何?」
「帰宅早々、ドロップキックかまして来たから無限の彼方に追い出しただけだよ……」
「弟?大事にしてあげなよ」
「大丈夫、大して効いてないから」
「しかし、大家族なんだね。沙優の家は」
「え、あ、うん。まぁ、そだね」
設定としては、喜助→兄、ジン太→弟、雨→妹、鉄裁→父、夜一→ペットである。
「今度竜貴ちゃんも来る?」
その話はなるべく避けるため、話題を逸らした。
「あたしはいい。オタク化はごめんだもん」
「ふーん。じゃ、織姫ちゃんは?今日もうち来る?」
「行く!」
「じゃああたしも行く」
「なんで?来ないんじゃないの?」
「織姫をこれ以上、オタク化させられないし。それに、ジャンプ系ならあたしも興味あるからね」
「ジャンプ以外もでしょ」
「なんか言ったか?」
「いえ、何も」
そんな話をしてる時だ。織姫がガタッと席を立って、窓の外を見た。
「な、なんだ⁉︎どうしたの織姫⁉︎」
「黒崎くんのにおいがした!」
「した!って、何言ってんの犬じゃあるまいし!第一、ココ3階よ!匂いがしたとしても、こんな所から一護が入ってくるワケ……」
竜貴がそう言いかけた直後、窓から一護が入って来た。
「」
「ここ……1年3組であってるよな?」
「ギニャアアアアア⁉︎」
竜貴が腰を抜かす中、沙優はぼんやりと一護を眺めた。明らかに身内のミスだと気付いた。
竜貴が織姫を背中に庇いながら、一護を指差す。
「あ、ああああんた!今どうやって上がって来たのよッ⁉︎」
「どうやって?今見てたろ?跳んであがってきたんだよ」
「…………‼︎」
「なあ、スゲーか?ビックリしたか?」
それを見て、騒然とする教室内。
その様子に、一護はとても気持ち良さそうな表情を浮かべた。で、キョロキョロと首を振ると、織姫に目を向けた。
織姫の胸を見て、少年の様な目をすると、一瞬でその前に跳び、手を取った。
「初めまして、美しいお嬢さん。僕にお名前を、教えて下さいな」
そして、手の甲にキス。全員が言葉を失う中、沙優は目を腐らせた。
「………喜助ちゃん、なにを売ってるのまったく」
ため息をつくと、沙優はのんびりと一護に近付いた。
「おーい、えっとー……黒崎ちゃん、でいいのかな?ちょっとこっち来て」
「おっ?」
ジロリと沙優を見る一護。その一護を後ろから竜貴が抑え込んだ。
「ちょ……っ!一護あんた!自分が何してるのかわかってんの⁉︎ジョーダンじゃすまされないわよ‼︎さっさと織姫から離れなよね‼︎」
「……お前も近くで見るとかわいいなあ」
「………え?」
そして、頬にキスをした。
クラス全員が、凍り付いた。