姉は夜の鬼、また違う姉は訓練の鬼、なら私は・・・   作:叢雲 狛

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私は・・・。

朝、起きて布団の上で上半身を起こすと三人で使ってる部屋の中央にあるちゃぶ台の前で私の姉は眠そうに目を擦って部屋着に着替えていた。

 

「おはよう!那珂!」

 

「おはよ~川内お姉ちゃん」

 

布団から私が体を起こしたのに気付いた一番上のお姉ちゃん・川内は眠そうにもかかわらず、いつも通りにあいさつをする。

 

「また夜戦帰り?」

 

「そだよー!今日はル級とだったんだけどいい勝負だったんだよ!」

 

「そうなんだ~。戦艦とやりあって無傷って流石だね~」

 

「まあね!相手が砲撃してきたところをぎりぎりで避けて砲塔を切り刻んで艤装を全部壊してから沈めてきたよ!こんどは姫級とやりたいなぁ~」

 

「今度提督にサーモン海域に行きたいって言ってみたら?」

 

「ダメダメ。あそこは提督が軽くトラウマになった海域だから行かせてくれないよ」

 

「そっかぁ。今度は私も夜の海でライブしてみたいし誘ってね」

 

「海の上でライブって流石だな那珂は~私はもう寝るけど神通は食堂向かったよ」

 

「わかったぁ。着替えてご飯食べてくるね~」

 

今、私はアイドルとは思えないような恰好をしている。部屋着だからって赤ジャージはないんじゃない?ってお姉ちゃんに言われたけど結構この格好動きやすいんだよね。

 

「じゃ、お休みー!」

 

「うんお休み~」

 

徹夜で戦艦とやりあってきた夜戦の鬼とも呼ばれる川内お姉ちゃんとの会話を終えて顔を洗い、いつもの制服に着替えてから朝食をとるために食堂に向かう。

 

ーーーーーーーーーー

 

「今日のご飯は何かな~」

 

「おはよう那珂ちゃん。今日は鯖と目玉焼きですよ」

 

食堂に入ってそう呟くとたまたま近くを通った間宮さんが教えてくれた。

基本、鎮守府の食堂は広い作りになっているがここの食堂は他の鎮守府より大きい。

簡単にあるものを上げるとバイキングができるようの机が並び、ドリンクサーバーや酒樽、あまり外に出られない艦娘の為にと小さい回転寿司のレールもある。

 

「え~昨日鮭食べたのに今日も魚なの~?」

 

「昨日提督が来て鯖が食べてぇって言うから作ったのです。文句は提督に言ってください」

 

「なら、あとで文句言ってくる!」

 

「残さず食べてね~」

 

 

間宮さんから朝食を受け取り、これだけ広い食堂でもうちにいる艦娘の数は200を超える。その為、他の子たちと朝食をとる時間が被ると席にすぐに座ることができないこともたまにあるんだよねぇ~。今日はどこがいいかな・・・と座るところを探していると見慣れた制服を着て朝食をとっている姉を見つけ、姉の前の席に座る。

 

「神通お姉ちゃんおはよー」

 

「那珂ちゃんおはようございます。先程の間宮さんとの会話を聞かせていただきましたがあまり提督に迷惑をかけてはだめですよ」

 

「だって提督が悪いんじゃーん」

 

「ご飯がちゃんと食べれるだけ感謝しなきゃだめですよ。それに那珂ちゃんは鯖、好きでしょう?」

 

「まあ好きだけどさー」

 

「ほら、私のをあげるから少しは機嫌を直してください」

 

「うぅーありがとね」

 

「それと食べ終わったら訓練ですからね」

 

「はーい」

 

神通お姉ちゃんはそう言って食器を片付けに向かって食堂を出る。

 

「今日も那珂ちゃん頑張るよ!」

 

周りに聞こえないぐらいの声でそう言って小さくこぶしを握る。神通お姉ちゃんから貰った鯖をご飯と一緒に口の中に入れる。ほんとにちゃんとご飯が食べれることに感謝しなきゃだなぁ・・・。

 

 

 

 

 

ごはんも食べ終わり、練習の時に着るジャージに着替えて鎮守府にあるグラウンドにでる。グラウンドにはもう神通お姉ちゃんと一緒に訓練する駆逐艦の朝潮ちゃんと大潮ちゃんがいた。

 

「おはようございます!」

 

「おはよ~。朝潮ちゃんは今日も真面目だねぇ」

 

「那珂ちゃんも来ましたし始めますよ。まずはグラウンド二周します」

 

『はーい』

 

何をするかを神通お姉ちゃんから指示をもらって皆で走り出す。

 

「大潮ちゃん。少しペースが落ちてますよ」

 

「すみませ~ん」

 

神通お姉ちゃんにそう指摘された大潮ちゃんは落ちてたスピードをもとに戻して走る。

 

神通お姉ちゃんはいつも教官としてやっているので訓練してもらう側は反抗することはまずない。だが、反抗したりでもすると鬼のような気迫で怒られる。鎮守府の皆はこれが分かってるから逆らわず、しっかりと訓練をする。

 

「二周終わりました!」

 

「ご苦労様です。みんなが終わるまで休憩してて大丈夫ですよ。水分をしっかりとってくださいね」

 

私たちより早く走り終わった朝潮ちゃんが神通お姉ちゃんに水筒を受け取って休憩する。

 

「二人も終わりましたね。水分を取ったら次は実演です」

 

走り終わって休憩をとったら今度は海上にある訓練場に向かった。

ここでは主に砲撃の訓練などを行う。

 

「まずは大潮ちゃんからやっていきましょう。連続であそこの的を撃ってください。二回失敗したらもう一度です」

 

「わかりました!」

 

大潮ちゃんは練習用の艤装を装備して的を撃つ。

 

「ミスは一回だけですね。次はそのミスが無くせるよう頑張ってください。次は那珂ちゃんです」

 

「はーい」

 

私も艤装を装備して海上を滑る。

 

的はすべてで8つ。それ全てに当てて神通お姉ちゃんの所に戻る。

 

「今日は全部当たりましたね。次もこの調子で頑張ってください」

 

「頑張りまーす」

 

「では今日の訓練はこれで終わります。那珂ちゃん。この後出撃ですからシャワーを浴びて着替えて川内お姉ちゃんを起こして来てください。

 

「わかったよー」

 

海上訓練場で皆と別れて部屋に向かう。

 

「お姉ちゃん出撃だよー!起きてー!」

 

「ん~あと1時間・・・」

 

「だめー!起きないと今日の夜戦無しにするって!」

 

「さぁ行こうか那珂!」

 

私が夜戦無しと言ったら私にも見えない速度で着替えて部屋のドアの前に立つ。

 

「ほんと夜戦になると行動早いよね・・・」

 

「まあね!」

 

「まあいいよ・・・神通お姉ちゃん待ってるし早くいこ」

 

「おーう!」

 

私たちは部屋を出て執務室に向かう。

 

ーーーーーーーーーー

 

「失礼しまーす」

 

「お邪魔するよー」

 

執務室の扉を開けて中に入る。部屋の中は今日の秘書艦の夕張ちゃんがいてゲームやブルーレイで散らかった机を片付けている。きっと昨日の夜から徹夜で夕張ちゃんと遊んでたに違いない。

 

「提督、また徹夜して遊んでたの~?」

 

「いやぁ久しぶりにガンダムやりたくなってねw夕張と朝までぶっ通し」

 

「も~誘ってくれてもいいじゃん!」

 

「だってお前肌に悪いとかなんとか言って誘っても来ないじゃん」

 

「ゲームより肌ですぅ」

 

「また昼やるときに誘ってやるよ」

 

「忘れちゃ困るからね?」

 

「忘れねーよ。・・・で、そろそろ出撃の任務の説明していいか?」

 

「どーぞお願いしますぅ」

 

「じゃあ。今日はお前ら三人で軽く沖ノ島沖を見回ってきてほしい。最近沖ノ島沖でタ級じゃない深海棲艦を見かけたと小耳に挟んでな・・・。軽く一周してなんもなければ帰ってきてくれ。なんかあればすぐに通信を入れろ。すぐに支援を送る」

 

『了解』

 

「じゃあ安全に頼むぞ」

 

 

提督から出撃命令を受け、艤装を装備して2—5に向かう。

 

「ねぇ神通。なんだろうねタ級じゃないやつって」

 

「なんでしょう・・・。ここら辺ではタ級より強い深海棲艦を見たことはありません」

 

「だよねぇ~ただの噂かもしれないし早く見て帰ろ~」

 

「そうだね川内お姉ちゃん」

 

「!敵を発見しました。どうやら夜戦のようですね・・・。私が探照灯を使います。その間に川内お姉ちゃんと那珂ちゃんは敵を沈めてください」

 

「やったぁ!夜戦だぁ!」

 

「頑張るよぉ!」

 

「来ます!探照灯照射。続いてください!」

 

敵は駆逐二級が2、雷巡チ級が2、重巡リ級が1、戦艦ル級が1、いつも通りの敵だ。

 

「さぁ行くよ!」

 

川内お姉ちゃんはまず戦艦に向かって砲撃を打ち込む。そして明石と夕張に頼んで作ってもらった特注の日本刀で切り刻んでいく。ル級は沈み、それを確認すると今度は二級二隻をまとめて魚雷で吹き飛ばす。さすが夜戦の王と呼ばれてるだけはある。強さが尋常ではない。

 

「そんな魚雷など当たりません。もう一度魚雷の攻撃の仕方をやり直してからきなさい」

 

神通お姉ちゃんも探照灯を照射しながらチ級に砲撃をかます。残りはリ級のみ。

 

「那珂!そいつは任せたよ!」

 

「まっかせてよ!そりゃぁ!」

 

リ級に向かって砲撃、魚雷を放つ。リ級は避けることができず、そのまま海の底に沈んでいった。

 

「終わりましたね。けがはありませんか?」

 

「大丈夫!那珂は?」

 

「私も大丈夫だよ~」

 

「では次に行きましょう」

 

夜戦マスを抜けて他の戦闘海域を見て回る。

 

「特に異常はないようだね」

 

「そうですね。帰りましょうか」

 

「那珂ちゃんは早く帰ってライブしたーい!」

 

異常が見られず、問題もなかったので鎮守府に戻ろうとした。そしたら後ろから砲撃音がして振り返るとあと少しで私にあたるって距離で砲弾が飛んできていた。

 

「那珂あぶない!」

 

「え・・・?」

 

やられると思って閉じた目を開くと振り返った私の前には川内お姉ちゃんが私をかばう形で立ち尽くしている。

 

「川内お姉ちゃん大丈夫!?」

 

「背中に直撃・・・大破しちゃった・・・那珂けがは?」

 

「私より自分のことを心配して!神通お姉ちゃん!提督に連絡して!敵が・・・戦艦棲姫が出たって!」

 

「え・・・えぇ。こちら神通。緊急事態です!戦艦棲姫が出て川内お姉ちゃんが!」

 

「こちら提督。落ち着け神通。すぐに支援を送る。川内は大丈夫か?」

 

「大破しています!早く来て!」

 

「今支援が向かった。それまで回避しながら耐えてくれ!」

 

「わかりました!」

 

「神通お姉ちゃん!提督はなんて?」

 

「支援がすぐに来るからそれまで持ちこたえろ。と」

 

「わかった。まず川内お姉ちゃんを安全なところに・・・あそこの岩場なら安全そうだからあそこに寝かせてくる!それまで耐えていて!」

 

「わかりました!」

 

私は川内お姉ちゃんを抱えて岩場に向かう。

 

「川内お姉ちゃん・・・。助けがくるまでここにいてね」

 

「いてて・・・わかったわ。やられるんじゃないよ」

 

「うん・・・」

 

岩場の陰に川内お姉ちゃんを寝かせると私は神通お姉ちゃんのもとに向かう。

だが、そこには海面に膝をつく神通お姉ちゃんが・・・。

 

「神通お姉ちゃん!」

 

「那珂ちゃん・・・私は大丈夫です・・・」

 

「無茶いわないで!」

 

「ガハッ・・・大丈夫・・・大丈夫・・・」

 

神通お姉ちゃんは血を海面に吐き、そのまま気を失う。

 

「お姉ちゃん!神通お姉ちゃん!」

 

返事はなく、海面に横たわる。息はあるが傷がひどい・・・・。

 

「ツギハオマエダ・・・」

 

戦艦棲姫が私に砲を向ける。

だがそんなものにはひるまない。むしろ逆だ。いつもの私にはない怒りと殺気が私を包んでいる。まるで姉がやられたのを見て心の奥底にいた化け物が出てくるかのように。

 

「おい、お前・・・。殺すぞ」

 

髪を止めていたシュシュを外し、戦艦棲姫に向かってそう告げ、川内お姉ちゃんと同じに夕張と明石に作ってもらった鍔のない刀、一般的にはドスってところだろう。それを二本手に持ち、戦艦棲姫に切りかかる。

 

「まずはそのでかい艤装から切り落としてやる・・・」

 

「ナニヲイッテイルンダ。ソンナカンタンニワタシノギソウが・・・ワタシノギソウガァァ!」

 

「遅い。どこを見ているんだお前は。私はここだ」

 

戦艦棲姫が簡単には壊せないと言っていたがそんなことは関係ない。後ろに回って艤装を潰す、壊す、斬る、破壊する。それだけのことだ。

 

「ギャアアアア!」

 

「まだ沈まないよねぇ?」

 

艤装は海の藻屑となり、私は壊した時の返り血を雨のように浴びる。不思議と嫌悪感は無く、目の前の五月蠅い障害を片付けることに夢中になっていた。

 

「イタイイタイイタイイタイ!!」

 

両手を切り落とす。戦艦棲姫は血の涙を流しながら逃げようともがくがそんなこと私の前で許させるわけがない。

 

「逃げるんじゃねぇよ。まだ足りねぇんだからよぉ」

 

逃がさせないために今度は両足を切断する。足の根元から血が噴き出し、私の制服を血で汚す。

 

「ギャアアアアァァァァ!!」

 

手も足も艤装も無くなり、海の上で体を捩る虫がいる。まだ壊したりない。もっとその汚い悲鳴を聞かせろ。私の姉を・・・家族をあんな目に合わせたんだ。苦しんでから死ね。

 

「次は耳と目だ」

 

戦艦棲姫からはもう声も出ないのだろうか。ただただ血涙を流し私を睨みつけている。気に入らない。何様のつもりだお前は。そんな目二度と見たくもない。ドスの先端で目をくり抜き、海に捨て、耳を引きちぎる。

 

「アアアアアアア」

 

「五月蠅い。もうこれ以上私の服を汚すな。黙って沈め」

 

返事などいらない。首を切り落とし、首を海面にたたきつけ、顔が飛散する。

 

醜い体も海に沈め、私は刃に付いた血を海水で洗い、鞘に納める。

 

 

「おい!那珂!」

 

後ろから私を呼ぶ声がして見るとうちの最強の戦艦・長門と陸奥、空母加賀さんや赤城さん、応急処置をするために明石さんが支援として来てくれた。長門の手には川内が抱えられている。

 

「長門さん・・・川内お姉ちゃんと神通お姉ちゃんの傷を」

 

「わかっている。だけど那珂!お前は大丈夫なのか!?その血はどうしたんだ!戦艦棲姫は!?」

 

改めて私の服を見ると布のほとんどが戦艦棲姫の返り血で染まっている。

 

「あいつは私が殺したよ・・・おねえちゃん達を酷い目に合わせたんだから当たり前だよね・・・?」

 

私は血で汚れた顔で長門さんに向かって微笑みかける。

長門の顔に動揺、恐怖が見えたがそんなことはそうでもいい。今はおねえちゃん二人のけがの治療が優先だ。

 

「明石さん。おねえちゃんたちは・・・」

 

「安心して一応応急処置はすんだわ。貴女こそ大丈夫なの?いつもと違うわよ」

 

「大丈夫だよ・・・きっとこれが本当の私なんだから・・・」

 

こうして夜の鬼、訓練の鬼に続く、狂気の鬼が誕生した。




それなりに評価、感想、UA,お気に入り登録が来たら連載化してみようと思います。

Twitter→作者名・叢雲狛で調べれば出てきますので良ければフォローお願いします。
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