傭兵の見事な指揮によりイバラ軍は崩れかけたていた。
「総攻撃開始。急ぐなよ。」
総攻撃により、イバラ軍は完全に崩れた様に見えた。
「続け!続け!」
奴隷兵が急ぐなと言う言葉を無視して突撃を開始した。
「今だ!崩れた中心部に突撃!」
スプリッツァの秘策とは崩れた振りをして反転して正面突破だった。
奴隷兵は次々に敗れていった。
「予想通りだな。よし、突撃開始。」
傭兵達が突撃しているイバラ軍の横腹に突撃をして見事なまでに叩き潰しにかかった。
両者共に敵味方が判断が出来ないほどの激しいぶつかり合いのさなかその乱戦の合間に体の小ささを利用してキールは奴隷商に食いついたのだ。
「君の敗けだから早くそれを引け!」
奴隷商は勝ち誇ったが
「戦いは指揮官を倒した方が勝ちでしょう?」
キールのロンパイアの横薙ぎが決まりかけた時に
「あぁそうだな。」
指揮官として動いていた筈の傭兵の姿があった。
「なっ!?」
振り向き様に見えたのは振りふりかぶった槍。
「君の敗けだ。」
そう言うと傭兵は槍を下に叩きつけたがキールは転がり避けた。
「急ぎすぎると失敗しますよ。今みたくね。」
キールが苦笑いしながら言うと
「事を急ぎすぎたのは君たちの方だよ。」
槍で突きの動きをすると避けたキールに合わせて無理矢理、体を動かし横を薙いだ。
「大きすぎる。」
キールが前転をするように低く鋭く前に転がり傭兵の槍の間合いから逃げたと思ったが
「それが甘いんだよ。」
槍を手放した傭兵がキールの首を脇で捕まえるとそのまま投げ飛ばした。
拍子にキールのロンパイアが何処かに飛んでいった。
「戦いは綺麗じゃないんだよ。」
薄れてゆく意識の中でキールが広場で聞いた最後の言葉だった同時に旗が取り換えられていた。
それから時間は日本で言うと数時間の後にゾルザルに対して登城命令が出ていた。
「行くか。」
どの事で呼び出されたかわからないゾルザルだったが呼び出されたなら城に行かないといけなかった。
リーフ式サスペンションに切り変えたが乗り心地は大きくは改善しない馬車に乗り、前回よりは多少は良くなった程度で尻を城に着く頃にはまた痛めていた。
「殿下、こちらへ。」
ゾルザルを案内したのはパナシュだった。
「あぁ。」
余りの事態に混乱していたゾルザルはパナシュに案内されるままに謁見の間の前にゾルザルは連れていかれた。
「ゾルザル殿下、ご到着。」と言うと目の前の豪華で大きな門が開かれゾルザルは中に入ったがどういった姿勢をとったら良いか分からず、小説や絵で見たことあるような片膝をついて頭を下げる姿勢をした。
「面をあげよ。ゾルザル。」
皇帝……モルトは少し機嫌の悪そうな声が響いた。
ゾルザルは緊張で頭を上げれなかったが
「その覚悟で今回の出来事に向かったのか。」
とモルトの機嫌が良くなった。
「陛下、申し訳ありませんでした。」
会社人時代と冤罪により培われたゾルザルの謝罪は完璧だった。
それが何か分からなくともゾルザルにはお手のものだった。
〝ゾルザル〟は元来謝罪をしない傲慢な男であったからして、モルトはゾルザルの完璧な謝罪を見て感心し、同時に警戒した。
「事を話す前にお前に問いたい。お前が目指すものは? 」
モルトに問われるままにゾルザルは淀みなく答えた
「水です。」
経験上、何を問われてるかわからない質問には抽象的な答えがよいとゾルザルは知っていた。
「水とはなんだ?」
モルトがゾルザルの抽象的な発言に食いついてきたのだった。
「水は、生き物ならば誰もが使っております。しかし、水が無いところには生き物はいません。」
そして、ゾルザル「そういうことです。」と告げた。
「なるほどな。」
皇帝はゆっくりと噛み締めるようにそう言うと
「水ならば器にあわせて形を変えるだろう。それはそなたもか?」
と言いゾルザルに探りを入れた。
「それは器次第でしょう。」
ゾルザルがそう言うと皇帝は
「そうかそうか。ならば、此度の戯れ無罪放免だ。」
皇帝がそう言った。
不思議な雰囲気が場を占拠した。
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