Japanese in THE ゾルザル   作:連邦士官

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一人だけの戦争

男が案内された部屋は大きく豪奢で装飾品がきらびやかに、整列されていた。

 

成金趣味が目立つ部屋で、唯一地味なのは机ぐらいだった。

 

「何なんだよ……この部屋は。」

男が軽く部屋の装飾に顔をしかめると先ほどから違和感を覚えていた事が少しずつ明らかになった。

 

(もしかして、さっきのメイドとかは俺に対して頭を下げていたのか?)

豪奢過ぎる部屋に気押され居心地が悪かったが、比較的豪華ではない机に座っていた。

 

机の引き出しを何気なしに引いて見てみるとそこには古びた本(羊皮紙をまとめたもの)があった。

 

中身は見たこともない字だが、なぜか男には読めた。

 

弟と妹に対する不満が書きこまれてあった。

更に自分に対しての不満や悲惨さ、無能さを嘆いていた。

 

書き込まれていたのは、ほとんど自分の無能さについてである。

これの筆者はよっぽど自身を憎んでいたのだろう。

 

同時に悲しんでいたのだろう、字を通してその感情がありありと伝わってくるようだった。

 

世の中を悲観した憂鬱にふける詩なども大量に書き込まれていた。

書かれた内容は深く男を突き動かすものだった。

 

(まるで、痴漢疑惑をかけられた時の俺のようだ。)

世の中に絶望し、ただただ嘆いているだけだった時の自分を見ているようで何処かで共感と嫌悪感を懐いた。

 

ただ1つこの日記を読んでわかったのはこれを書いたのはこの体の真の持ち主と心で悟ったのである。

 

手が止まらずに次のページをめくる。

彼を突き動かすのは身体の記憶だった。

 

ある日、突然書いてある内容が変わっていた。

自身を認めない世界が間違っていると。

 

繰り返し、間違っているいう単語のみ書かれた日記は狂気に染まっていた。

間違っている、間違っている、間違っている繰り返し繰り返しインクが霞んでいてもひたすら書き込んであった。

 

心なしか机が叩かれていて歪んでいるように見えた。

辺りの調度品を見てみると部屋にあった甲冑などすら叩かれたあとがあった。

 

引き出しの奥を探ってみるとハンマーがあった。

所謂、中世の武器であるメイスと呼ばれるものだった。

 

それにはかなり使用感があった。

削れたり、潰れた部分がこれは使ってあると証明していた。

 

蝋燭の光が包む部屋では、不思議と男は落ち着いていた。

 

(これは天命かもしれないな。)

男にはもはや、日本に対しての未練は無かった。

 

なにより、マスコミの事が嫌いだったし正義感に駆られて冤罪だった痴漢事件を掘り返してくる人達も嫌いだったのだ。

 

良いと思って彼らは被害を与えてきた。

それは許されないものだった。

 

法は自身を守ってくれずに、警察も自分に恥をかかせたとばかりに男を無視した。

 

中には良識ある記者や警察官、弁護士も居たが大多数が自身の身勝手な正義感などを振りかざした。

 

男が両親と助けてくれた記者や弁護士以外に心を閉ざしたのは当然と言えた。

 

だからこそ、これは良い機会に思えたのだ。

 

新たな世界に昔の事をしる者は居ない。

うまくやる自信は無いが、日本に居たときの晴耕雨讀の毎日から得られた知識はあった。

 

男は歴史が科学が好きだった……漫画もなんでも読み、男は自身を誤魔化すためにひたすら本の世界にのめり込んでいた毎日が役に立つと考えたのだ。

 

日記に書いてあった名前〝ゾルザル〟は、突拍子もないことをやる男だった様で割りと自由に出来そうだと男は考えた。

 

今日ここに、男は日本の名前を捨てて〝ゾルザル〟となった。

 

まずは英気を養う為に寝ることにした。

入ったときは気になった成金趣味の居心地の悪さも不思議と無くなっていた。

 

何故か〝ゾルザル〟の心は晴れやかだった。

その晴れやかな気持ちのままにゾルザルは眠りの世界に旅立った。




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