Japanese in THE ゾルザル   作:連邦士官

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白い結果

学者が来る前に元老は、会議室の飾りに置いてあった鎧を見て、ゾルザルに興奮した様子で質問をした。

 

「殿下、あの鎧は!」

ゾルザルはその勢いに答えた。

 

「あれは、私の考えで作った鎧です。」

学者のドワーフ達と錬金術師を動員して、ゾルザルの作った鎧は当世具足を真似た鎧だった。

 

籠手と兜は当世具足を再現した様なものだったが違う部分があった。

 

鎧の胴は当世具足とラメラーアーマーとチェインメイルを組み合わせた様なものだった。

 

当世具足の胴の板金の端に穴を作り、竜鱗をラメラーアーマーの小片の様に使い前面に取り付けてあった。

草摺や佩楯等も竜鱗を使っていたが、予算の関係で金属の小片も使われていた。

 

関節部や稼働部にレザーを使ったり、チェインメイルを使っていた。

 

更にすね当ては、胴の様に板金に竜鱗や金属の小片を組み合わせたものだった。

 

予想よりは軽く出来上がった。

竜鱗は金属よりは軽く、動くのはと言うと当世具足とチェインメイルを合わせたものなので動きやすくなっていた。

 

「新しい鎧ですか。」

次に元老が見たのは壁に飾っていた武器だった。

 

サーベル、カットラス、シミターは元老の注目を集めなかったが、ロンパイアやグレイブや十文字槍などが元老の興味をそそったようだった。

 

「あれは試作の武器ですよ。」

ゾルザルがそう言うと元老は深く考え込んでから「なるほど。」と言った。

 

学者がやって来た。

その手には、算盤と火薬があった。

 

元老は何を始めるかと訝しげな表情を浮かべ、学者はゾルザルに算盤を渡した。

 

「これは算盤と言います。では、元老好きなように足し算と引き算を言ってください。」

ゾルザルは算盤を片手に話すとぎこちなく笑いかけた。

 

「わかりました。1580-280+690-2000+15-68+1369-152+563は?」

元老は勝ち誇った顔をしたが、ゾルザルは直ぐに

 

「1717ですね。」

と言うとゾルザルに対して対抗心を燃やしたのか、元老は次々に数字の式を言ったがそれを全てゾルザルは答えた。

 

「これは……。」

元老が黙った所で当初の予定よりも時間が過ぎていたので学者は、グラス(木の板に厚いガラスを嵌め込んだもの)を元老とゾルザルが目に当てたことを確認してから、黒色火薬の導火線に火を付けた。

 

「何がこれから起こるんですか?」

元老はグラスを目に当てながらゾルザルに聞いた。

 

「それはですね。」

とゾルザルが言いかけた所で火薬が爆発した。

 

「何だ!魔法か!誰だ、誰だ!殿下、早くこちらへ!」

元老は直ぐ様、窓から離れて机の下に潜り込んだ。

 

だが、ゾルザルと学者は動かなかった。

 

「殿下、早く!早く!何者かが狙っています。」

机の下で元老は、動かないゾルザルに自分の近くに避難してくれと急かしたが

 

「大丈夫だ。先ほどの爆発はこの〝火薬〟と呼ばれるものを使ったからだ。」

ゾルザルはもう一度と言って、学者がもう一度火薬を爆発させた。

 

「これは……。」

元老は固まり、ゾルザルを見つめた。

 

「それでだ。今までのものを見た結果、私に協力をするか?」

ゾルザルはただ一言だけ告げた。

 

「……。わかりました。このモンテ・エム・カルロが貴方にこの一生を捧げましょう。死と断罪と狂気と戦いを司る神エムロイに誓って!」

モンテは先ほどまでとの態度とは変わった。

 

「殿下もお人が悪い。思えばあの馬車内での机上演習から始まってたのではないか……そして、寄生虫の様なものに対する研究やあの車輪付き担架に携帯が簡単な石鹸、保存が出来る様々なガルムを作り、新たな武器や鎧と算盤、極めて有用な新兵器の火薬……。」

モンテは口元を吊り上げながら話を続けた。

 

「つまりは机上演習は自らの指揮能力を。医学研究は戦争の一番の敵である疫病対策。新たな保存食は言わずもがな。新たな武器や鎧と新兵器の火薬……これは戦争をする為の布石。算盤は戦争とその後の占領に伴う計算増加の対策。これらにより、皇太子としての箔を付ける為の遠征をすると言うことですね。」

モンテの余りの勢いにゾルザルは頷いた。

 

「さあ、死と断罪と狂気と戦いを司る神エムロイの為に戦争を!」

そう言ってるモンテをゾルザルと学者は冷たい視線を向けていた。

 

(キールの情報では豪商から元老に成り上がった一族と聞いていたのに何で戦いが好きなんだ!?)ゾルザルは前世での経験を忘れていた。

実物と評判は違うと言う事を……。

 

 

 

 

 

イバラの園の廊下……ここにも実物と評判が違うと言う事を知らない者が居た。

 

「何だ!魔法か!誰だ、誰だ!殿下、早くこちらへ!」

 

「殿下、早く!早く!……。」

 

「大丈夫だ。先ほどの爆発はこの……と呼ばれるものを使ったからだ。」

 

「これは……。」

 

「……だ。今まで……、私に……をするか?」

 

「……。このモンテ・エム・カルロが貴方にこの一生を捧げましょう。死と断罪と狂気と戦いを司る神エムロイに誓って!」

 

 

「所々聞き取れなかったが、これは騎士団に報告しなければ!」

見張りの兵士の振りをしていた若い女性騎士は帰っていった。

 

後日、美少年と美青年しか無理派と筋肉が付いている厳つい男同士もいける派と、むしろだるだるの中年が好物派と全てがいける派に分かれて激論が薔薇騎士団で勃発した。

姉妹関係を結んだ者達ですら、自らの好みによって分かれていた。

 

そんな趣味論争により訓練でも変な事になっていたが、老兵達が本気で立ち上がれないほどの厳しい訓練を開始してその対立は消えた。

 

対立後の姉妹関係はより強固になっていた。

怪しい関係すら匂わせるくらいに。

 

今回の一番の被害者はゾルザルではなく、訓練のとばっちりを食らった若い男の団員だった。




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