問題児たちが異世界から来るようですよ? ~大地の寵愛者~   作:無名宴

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十三話目

 

 

 

「姿を見られたら失格、つまりゴーゴンの代わりがペルセウスということか」

 

 十六夜がギアスロールを眺めながら呟く。

 

「皐月くんの予想通りになったわね」

 

 飛鳥もエルフのマントを纏いながらギアスロールを見る。

 

「さすがに武具や防具を消す方法はあるけど、姿を消す道具は持ち合わせてないからなぁ」

 

 袋の中をゴソゴソあさりながら皐月が呟く。

 

「見つかった者はゲームマスターへの挑戦権を失ってしまう。同じく私たちのゲームマスター―――ジン君が最奥にたどり着けず失格の場合プレイヤー側の敗北。なら大きく分けて三つの役割分担が必要になるわ」

 

 飛鳥の言葉に耀が頷く。

 

「うん。まず、ジン君と一緒にゲームマスターを倒す役割。次に索敵、見えない敵を撃退する役割。最後に失格覚悟で御取りと露払いをする役割」

 

「春日部は鼻が利く。耳も眼もいい。不可視の敵は任せるぜ」

 

「わかった」

 

 十六夜の提案に耀が答える。

 

「黒ウサギは審判としてしかゲームに参加することができません。ですからゲームマスターを倒す役割は、十六夜さんにお願いします」

 

「あら、じゃあ私たちが囮と露払い役かしら」

 

 むっと少し不満そうな声を漏らす飛鳥。

 

「仕方ないよ。一対一より一対多に向いているギフトなんだから。適材適所、今回はいざやんに任せて」

 

「…… ふぅ。わかったわ。ただし負けたら承知しないから」

 

 飛鳥の言葉に十六夜は飄々と肩を竦める。だが、黒ウサギが神妙な顔で不安を口にする。

 

「残念ですが、必ず勝てるとは限りません。油断しているうちに倒せねば、非常に厳しい戦いになると思います」

 

 五人の目が一斉に黒ウサギに注がれる。

 

「…… あの外道そこまで強いの?」

 

「いえ。ルイオスさん自身はさほど。問題は彼が所持しているギフトなのです。もし黒ウサギの推測が外れていなければ、彼のギフトは」

 

 

「隷属させた元・魔王様」

 

「話に聞いていたゴーゴン…… だっけ? それ」

 

 

 十六夜と皐月の捕捉に眼を丸くしたまま固まる黒ウサギ。

 

「十六夜さんたち…… まさか、箱庭の星々の秘密に……?」

 

 十六夜が答えようとした時。

 

「はいストップ。なんか長くなりそうだからあとにしよう」

 

 かなり強引に皐月が止める。

 

「あ、そうだいざやんたち」

 

「ん?」

 

「ちょっと別口で動いていいかな?」

 

 突然の言葉に全員が首をかしげる。

 

「どういうことだ?」

 

「ただの嫌がらせだよ、ただの…… ね」

 

「よし。やれ」

 

「かまわないわ」

 

「頑張って」

 

 あくどい笑みを浮かべながら皐月が断言し、ほかの三人も怖い笑みを浮かべる。

 

「それじゃあ、全員にいろいろ渡すものがあるから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと。やっぱり開幕の合図は派手にいかないとね。はい、いざやん」

 

「おう」

 

 四人に道具を渡し終えた皐月が笑顔で袋からギガントハンマー改を渡すとさらにいい笑顔で振りかぶる。

 

「予定はちゃんと実行しないとな」

 

 ギフトゲームの開幕はそんな問題児たちの嫌がらせを兼ねた轟音で告げられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 正面の階段前広場は飛鳥により大混戦になっていた。

 

「ええい、小娘一人に何を手間取っている!」

 

「不可視のギフトを持つ者は残りのメンバーを探しに行け! 此処は我々が押さえるぞ!」

 

 そんな声を聞きながら彼女が操る水樹が白亜の神殿を破壊しながらペルセウスの騎士たちを翻弄し続けている。

 

 当然ながら彼女は逃げ回る性分ではない。故に逃さぬように破壊することを選んだが、それが功を称している。

 

「ふふ…… 不可視の人間を除けば、あらかた集まったかしら」

 

 軽く周囲を見渡し笑みを浮かべる。

 

「皐月くんからもらったこれ…… 試してみようかしら」

 

 水樹を操りながら飛鳥はあるものを取り出し床にまく。

 

「何のつもりだ!」

 

 その行為を襲いかかる水に耐えながらも近づこうとしているペルセウスの騎士たちが怒鳴る。

 

「見ていればわかるわ」

 

 それが床に触れると床を砕き地面に到達しそこから勢いよく何かが飛び出す。

 

「なっ……」

 

 それは宙を舞いながらペルセウスの騎士たちに襲いかかる。

 

「くっ! それが貴様のギフトか!?」

 

「さぁ?」

 

 飛鳥はクスクスと笑うと腕を勢い良く振る。

 

 

 

 

 

 

 

「君にはこれだね」

 

 そう言って皐月が渡したのは数個の種。

 

「水場草の種に見えるけどこれは?」

 

「個人的によく使う種。ルーンは込めてあるから後は地面に落とすだけ。たぶん相性がいいと思うから使って」

 

 そういうと指をピンと立てる。

 

「ちなみにこういうものは意外な使い道があったりするからいろいろ試してみるのも吉だね」

 

 

 

 

 

 

 

「意外な使い道…… というのはわからないけど今は『敵を蹴散らしなさい! 水樹! 剣草!』」

 

 彼らは暴れまわる大樹とその隙間を縫うように鋭く舞う草でできた剣に翻弄されるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 不可視のギフトで身を隠しながら残りのメンバーを探していた一人の騎士は不意から放たれた強烈な一撃にあっさりと失神した。

 

「この兜が不可視のギフトで間違いなさそうだ。御チビ、かぶっとけ」

 

「わっ」

 

 倒れた騎士から外れた兜をジンにかぶせると姿が瞬く間に消える。

 

「やっぱり不可視のギフトがゲーム攻略のカギになってる。どんなに気をつけたところで見られる可能性は排除できないもの。最奥に続く階段に何人も護衛をつければどうやってもクリアできない」

 

「連中が不可視のギフトを使っているのを限定しているのは安易に奪われないためだろうな。 ……なら最低でも一つ。贅沢言えば二つ欲しいところだが……」

 

 珍しく言い淀む十六夜。

 

「不可視の敵は私が何とかする。十六夜も隠れてて」

 

 勝算などを考えていた十六夜に耀が言う。

 

「…… 悪いな。いいとこ取りみたいで」

 

「気にしなくていい。埋め合わせは必ずしてもらうから」

 

 平淡な声で取り立てを断言する耀に哄笑を上げそうになったがすぐに表情を戻す。

 

「わかった。御チビ、隠れるぞ」

 

「はい」

 

 十六夜たちが隠れると耀は物陰から飛び出し白亜の宮殿を駆け回り始めた。

 

 

 

 

「いたぞ! 名無しの娘た!」

 

「その娘を捕えろ! 人質にして残りを炙り出せ!」

 

 騎士たちは耀に襲いかかるが、耀の生み出す突風に吹き飛ばされる。

 

「…… 隠れている人はいな……わっ!」

 

 前触れもなく耀の体が吹き飛ばされ、壁に打ち付けられる。

 

「つぅ……」

 

 起き上がろうとするがまたしても吹き飛ばされる。

 

 彼女の五感をもってしても接近に気付けなかった。

 

「何も感じない…… 本物を使ってる……? なら」

 

 耀は皐月から預かった袋からあるものを取り出した。

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、姿が見えない存在との戦いって経験ある?」

 

 道具を渡す前に皐月が耀に尋ねた。

 

「? ないけど」

 

「ですよね~。まぁ、普通じゃあそんな面倒な相手とは戦いになることなんてないし」

 

 どうやら確認だったらしく、皐月もうんうんと頷いている。

 

「さっきもいざやんが言ったけど五感をフルに使いこなせれば十分に戦えるから。あと君の友達の力をしっかり理解すること。人間にできなくても君にはできるってことはたくさんあるんだから」

 

 そう言いながらごつごつとした何かが入った袋を渡す。

 

「第一どんなに完璧に姿を隠しても隠しきれないものがあるから。それを狙うべきだね」

 

「隠しきれないもの……?」

 

「うん。だからそれはきっとヒントになると思うよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

(なっ!)

 

 突然暗くなる周囲にわずかに足を止める。

 

 そして突然背中からの突風により吹き飛ばされた。

 

「がっ!!」

 

 その強力な風の流れにあらがえず柱を砕き、壁へと打ちつけられる。

 

 そして闇が薄まると立っていたのは遮光石を袋に戻した耀だけだった。

 

「『どんなに完璧に姿を隠しても、そこにいるという事実は変わらない』……だっけ?」

 

 皐月がこぼした言葉を呟く。

 

「これで二つ目」

 

 倒れた男の近くに転がっていた兜を手に耀はすぐに十六夜たちのもとへと急ぐのだった。

 

 

 

 

 

 

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