問題児たちが異世界から来るようですよ? ~大地の寵愛者~ 作:無名宴
「皐月さん以外はお帰りください」
いつもの女性店員に門前払いをうける一同。
「う~ん。相変わらずいざやんたちは嫌われてるねぇ~」
いまだに引きずられる体勢の皐月はそんな感想を呟く。ファーストコンタクトがあのような状況だったため、仕方ないといえば仕方ないが。
「私たちはそこそこの常連客なんだし、もう少し愛想を良くしてくれてもいいと思うのだけど」
「常連客というのは皐月さんのように店にお金を落としていくお客様のことを言うのです」
飛鳥と女性店員の間に僅かに火花が飛び散る。
「なら言ってみれば取引相手だね~ 実際取引してるし」
十六夜たちが参加したギフトゲームで手にした金品はこの店で捌いていたため納得の声を上げる。
ちなみに皐月は農作業の指揮などを中心に行動していたために、あまりギフトゲームに参加していなかったりする。
「どうやらきたようじゃのぅ! 小僧どもぉぉぉぉぉ!!」
飛鳥と女性店員とのにらみ合いが続く中、ズドン! と地響きと砂煙を舞い上がらせながら四人の目の前に着地する白夜叉。
「うん。きたよ~」
そんな光景を無視しのんきに返す皐月。
「こいつはぶっとんでこなきゃ気がすまねぇのか?」
「…………」
痛烈に頭が痛そうな女性店員は何も言えずに頭を抱えた。
「とりあえずあとで頭痛薬用意しておくから」
「…… ありがとうございます」
白夜叉の座敷に招かれた四人。
「おんしらがここを尋ねたということは“火龍誕生祭”のことじゃろ?」
「ええ。招待してくれるのでしょ?」
挑発的な笑みで白夜叉を見る飛鳥に、いまだに気絶しているジンとリリを寝かせてタオルをかけていた皐月が苦笑する。
そんな皐月を横目で見た白夜叉はふむと小さくつぶやき、口元を開いた扇子で隠す。
「それは構わぬが…… その前に一つ尋ねよう」
パシンッと音を立てて扇子を閉じ厳しい表情を浮かべると四人を見据え尋ねた。
「おんしらが魔王に関するトラブルを引き受けるとのことだが…… 真か?」
「ああ、その話? それなら本当よ」
その問いには飛鳥が答え、白夜叉は小さく頷く。
「それはコミュニティの方針か?」
「うん。ちょっと今いざやんたちが無茶やったせいで気を失っているけど、この子もそのことに関するリスクはしっかり理解しているよ」
「第一、無関係な魔王が出てきたら、そいつを倒して隷属させる。そしてより強力な魔王に挑むコミュニティ。どうだ? こんなに面白いコミュニティはないだろ?」
濡れたタオルをジンの赤くなった額に載せながら皐月が肯定し、十六夜が茶化したように笑う。だが、表情に反し眼は笑っていない。
「…………ふむ」
しばしの沈黙の後、白夜叉は呆れたように笑みを浮かべた。
「そこまで考えているなら、これ以上は老婆心というものだろう」
「そういうことだ。で? 本題はなんだ?」
「うむ。実はその“打倒魔王”を掲げたコミュニティに、東のフロアマスターから正式に頼みたいことがあるのだが……」
いまだに目覚めないジンを眺め苦笑する。
「肝心のリーダーが気を失っているとはのぅ」
「文句ならいざやんたちに言って。何やったら此処まで気絶させ続けられるのか聞きたいし」
ジト目で三人を見ると、十六夜以外少しばかり座りが悪そうにする。
「まぁ、そこは置いておこう。それよりもその頼みってのを聞きたいんだけど」
「……まぁよい。頼みの内容だが、北のフロアマスターの一角である“サラマンドラ”というコミュニティが世代交代をしたのは知っておるか」
「「「「いやまったく」」」」
四人がきっぱりと断言する。とはいえ、もとより知っているとは思っていなかった白夜叉は気にすることなく続ける。
「今回の大祭はそのフロアマスターの御披露目も兼ねておる」
「なるほど。だから火龍誕生祭という訳か」
「それで? 私たちに何をしてほしいの?」
十六夜が納得しそのあたりに全く関心のない耀が続きを促す。
「そう急かすな。その新しいフロアマスターなのじゃが、その幼さゆえに東のマスターである私に共同のホストを依頼してきたのだ」
「一角ということは他にも北側にはフロアマスターがいるみたいだけど、そいつらじゃなく態々遠くにある東側のフロアマスターに依頼を出すっていうのもおかしな話だよね~」
「……うむ。そうなのだがのぅ」
白夜叉は言いにくそうに歯切れが悪くなる。
「幼い権力者をよく思わない組織があるとかそのあたりだろ」
「ん~……ま、そんなところだ」
その言葉に飛鳥の表情が不愉快そうに歪む。
「……そう。神仏が集う箱庭の長達でも思考回路は人間並みなのね」
「手厳しいが、まったくもってその通りだ。今回の共同祭典の話を持ちかけてきたのも様々な事情があってのことだ」
ふと何かを思い出したかのような表情をした耀が軽く手を上げながら白夜叉に尋ねる。
「ねぇ。それって長くなる?」
「ん? 少なくとも一時間ほどはかかるかの?」
ハッとした表情になる十六夜と飛鳥はすぐに白夜叉に詰め寄る。
「白夜叉! すぐに北側に向かってくれ!」
「むぅ? 別にかまわんが、何か急用か? というか、内容を聞かずに受託してもいいのか?」
「かまわねぇからはやく!」
ふむと小さく呟き、パンパンと柏手を打つ。
「これでよし。これでお望み通り、北側に着いたぞ」
「みたいだねぇ」
「「「…………は?」」」
素っ頓狂な声を上げる三人をしりめに、白夜叉の言葉に皐月が同意する。どうやらこいつは何かを感じたらしい。
「とりあえず外に出ればすぐにわかるよ~」
そんなのんきな言葉を聞き、三人は期待を胸に店外へと走り出した。
その後ろ姿を見ながら白夜叉は隣で微笑ましそうに眺めている皐月に尋ねる。
「しかし、何故おんしらはそんなに急いでおる?」
「さぁ? 何も聞かされないままいざやんたちに引き摺られてきたからねぇ~」
二人はそんなことを話しながら外へと向かい歩き出した。