問題児たちが異世界から来るようですよ? ~大地の寵愛者~   作:無名宴

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十九話目

 

 

 サウザンドアイズの支店は街の一帯が展望できる高台に移動していた。

 

「凄いわ……」

 

 眼下に広がる光景に飛鳥が大きく息を呑み、胸を躍らせながら感嘆の声を上げた。

 

「へぇ。980000km離れてるだけあって東とは随分と文化様式が違うんだな」

 

 十六夜も同様に喜びの声を上げる。

 

「今すぐ降りましょ! あのガラスの歩廊に行ってみたいわ」

 

「うん。行こう」

 

 耀も無表情ながら楽しそうな雰囲気を醸し出している。

 

「うわぁ、凄いね」

 

 そんな中、三人に追いついた皐月が小さくつぶやく。

 

「ま、あれくらいは当然じゃな」

 

 歩幅を合わせ隣を歩いていた白夜叉も呟く。

 

 二人が見ているのは問題児三人が見下ろしている街ではなく。

 

 

 

 

 

「見ィつけた―――のですよぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

 

 

 

 そんな声を上げながらすさまじい勢いで飛び跳ねてくる黒ウサギの姿だった。

 

「やばっ! 逃げるぞ!」

 

「えっ、きゃ……」

 

 そんな二人の様子に真っ先に気がついた十六夜が飛鳥を抱きかかえ、展望台から飛び降りる。

 

 耀も旋風を巻き上げて空に逃げようとしたがわずかに遅く、黒ウサギにブーツを掴まれる。

 

「わ、わわっ……」

 

「耀・サ・ン・逃・ガ・シ・マ・セ・ン・ヨ」

 

 どうやらよっぽど切れているらしく、そのまま躊躇うそぶりを見せずに彼女を地面へと投げつける。

 

「よっと」

 

 すぐに皐月が耀を受け止める。受け止めた際少しばかり足が地面に埋まっているのを見ると、どれだけ彼女が怒っているのかがよくわかる。

 

「耀サンノコトハオ願イシマス! 私ハ他ノ問題児様ヲ捕マエニ参リマスノデ!」

 

 皐月を見ることすらせずに展望台から飛び降りる。

 

「やっちゃんいつものセクハラなかったね」

 

「いや、いまのあ奴にするほど愚かではない」

 

 耀を抱きかかえたまま皐月が白夜叉を見ると、愉快そうにすでに見えなくなった黒ウサギを眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 白夜叉の私室で白夜叉は耀に話を聞いていた。

 

 

『黒ウサギへ。

 

 北側の4000000外門と東側の3999999外門で開催される祭典に参加してきます。

 

 貴女も後から必ず来ること。あ、あとレティシアもね。

 

 私たちに祭りのことを意図的に黙っていた罰として、今日中に私たちを捕まえられなかった場合三人ともコミュニティを脱退します。その際皐月くんは強制的に持って行くから死ぬ気で探してね。応援しているわ。

 

                       P/S ジン君とリリは連れていきます』

 

 

 これが黒ウサギをあそこまで怒らせた手紙の内容だった。

 

「ふむ…… おんしららしい悪戯といってもいいかもしれぬが、脱退とは少しばかり悪質じゃのう」

 

「それは私も少し思った。でも、黒ウサギだって悪い。隠さずにお金が無いってちゃんと説明してくれればこんな強硬手段に出たりしないもの」

 

「普段の行いが裏目に出た。とは思わんかの」

 

「それは、そうだけど…… それも含めて信頼のない証拠。少しは焦ればいい」

 

 珍しく拗ねたように言う耀に、含み笑いで返す白夜叉。

 

「それでいい加減おんしも落ち込むのはやめんか」

 

 そう言いながら目を向けるのは遠い目をしながら獅子脅しを眺めている皐月。

 

「いやさぁ…… 落ち込むなって方が無理だと思うんだけど」

 

 事情を聞き、皐月が口を開く。

 

「『連れていく』ではなくて『持っていく』って…… 当然の如くものあつかいだからねぇ」

 

「う……」

 

 ジト目になりながら耀を見ると、さすがに悪いと思ったのか眼をそらす。

 

「ま、四の五の言っても仕方ないか。後は黒ウサギがいざやんたちを捕まえればいいだけだし」

 

 気を取り戻し、皐月は耀に尋ねた。

 

「で、これからどうするの? さすがにここにずっといるのは暇なんだけど」

 

「どうしよう」

 

 ふたりが考えていると白夜叉が着物の袖から一枚のチラシを取り出して二人の前に出す。

 

「これは?」

 

「暇なのだろ? なら、おんしらこれに出てみぬか?」

 

「ギフトゲームだね」

 

 チラシを見た耀が呟き、皐月が内容を読む。

 

 

 

『ギフトゲーム名“創造主たちの決闘”

 

  ・参加資格、及び概要

       ・参加者は創作系のギフトを所持。

       ・サポートとして、一人までの同伴を許可。

       ・決闘内容はその都度変化。

       ・ギフト所持者は創作系のギフト以外の使用を一部禁ず。

 

 ・授与される恩恵に関して

       ・“階層支配者”の火龍にプレイヤーが希望する恩恵を進言できる。

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、両コミュニティはギフトゲームを開催します。

                            “サウザンドアイズ”印

                              “サラマンドラ”印』

 

 

 

「おんしらなら力試しくらいにはなるだろ」

 

「ねぇやっちゃん」

 

「ん?」

 

「これ、彼女しか参加できない」

 

 突然の言葉に、二人が首をかしげる。

 

「これを見ると参加資格に創作系のギフトを所持ってあるけどそんなギフト持ってない」

 

 それに…… と呟きながら皐月は袋を出すと中身を全部出す。

 

「農作業中に連れてこられたから、農具や種くらいしか持ってきてない。悪いけど戦力になれる自信なし」

 

 皐月の言うとおり、袋の中から出てきたのはクワやカマ、じょうろ等の農作業用の道具や種が数種類ほどあるだけだった。

 

「一応素材と時間があるなら簡単な武器くらいなら作れるけど、これって受付もうすぐ閉め切りだから作ってる時間もない」

 

 出られない理由を上げていき、白夜叉はバサッと扇子で口元を隠す。

 

「ふむ……」

 

「ね、二人とも」

 

「「ん?」」

 

 黙って皐月の言葉を聞いていた耀がふと二人に尋ねた。

 

「このギフトゲームの恩恵で…… 黒ウサギと仲直りできるかな?」

 

 首をかしげながら問う耀に少しばかり驚きの表情を浮かべた後、二人は暖かく優しい笑みを浮かべた。

 

「できるとも。おんしにそのつもりがあるならのぅ」

 

「だね。そういう事なら全力で手助けするよ」

 

「そっか。それなら、出場してみる」

 

 耀が頷き、彼女のギフトゲーム参加が決まった。

 

 

 

 

 

 

 

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