問題児たちが異世界から来るようですよ? ~大地の寵愛者~   作:無名宴

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二十話目

 

 

 

「ねぇ三毛猫くん。サポートいらなかったかな」

 

『せやなぁ。ま、お嬢なら当然や』

 

「だねぇ~」

 

 皐月たちがそんなのんきなことを言っているうちに耀が対戦相手である石垣の巨人の拳を軽々と避ける。

 

「この様子なら決勝戦行きは確実……かな?」

 

『もちろんや!』

 

 何故か胸をはる三毛猫に苦笑しながらも皐月は袋からサンドイッチを取り出す。

 

『ん? どうしたんや?』

 

「いや、なんだかんだでお昼食べ損ねたからね~ 今食べようかなって(まぁ数ヶ月くらいなら飲まず食わずでも平気だけど)」

 

 それを食べようとした時ふと視線を感じたため、その方向を見ると耀がジト目で皐月を見ていた。

 

(私も食べる)

 

(後でね。今は試合に集中しよう)

 

 アイコンタクトでやり取りするが、耀の機嫌はどんどん落ちていく。

 

 八つ当たりのように石垣の巨人の背後に飛翔し後頭部を蹴り崩す。そのままリングに崩れ落ちた巨人を一目し、皐月のところへと向かった。

 

 その背中に完成を浴びながら皐月に再びジト目を向ける。

 

「終わった」

 

「はいはい」

 

 一つは食べ終わっていたため残りのサンドイッチを全て渡す。

 

 耀がもきゅもきゅとサンドイッチを頬張っているとバルコニーから柏手が聞こえてきた。

 

 観衆の声が止む中、柏手を打った白夜叉が声を上げる。

 

「最後の勝者は“ノーネーム”の出身の春日部耀に決定した。これにて最後の決勝枠が用意されたかの。決勝のゲームは明日以降の日取りとなっておる。明日以降のゲームルールは…… ふむ。ルールはもう一人のホストにて、今回の祭典の主賓から説明願おう」

 

 白夜叉が振り返り場を開けると、僅かに緊張した面持ちの少女が前に出てくる。

 

 少女に白夜叉が少し言葉をかけると彼女は大きく深呼吸し、凛とした声音で挨拶を始める。

 

「ご紹介に与りました、北のフロアマスター・サンドラ=ドルドレイクです」

 

 挨拶の言葉が響く中、皐月はサンドラを観察する。

 

(まだ磨かれてない原石…… かな。磨き方によってはかなり輝くだろうけど、はたしてどんなふうに磨かれるのかね)

 

 サンドラの言葉を聞き流しながらそんなことを考えていると、ふとこちらを見ていた白夜叉と眼が合う。

 

 意味深な笑みを浮かべている白夜叉に首をかしげると愉快そうに扇子を開く。

 

(あ、あれなんか企んでるよなぁ~ 絶対に)

 

 おそらく被害にあうであろう黒ウサギの冥福を祈りつつ皐月は袋からおにぎりを取り出し食べていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 大会終了後皐月は白夜叉に連れられ運営本陣営の謁見の間へと来ていた。

 

 そこにはすでに黒ウサギと十六夜の姿があった。

 

「随分と派手にやったようじゃの、おんしら」

 

「ああ、ご要望通り祭りを盛り上げてやったぜ」

 

「胸張って言わないでくださいこのお馬鹿様!!」

 

 黒ウサギのハリセンが十六夜を勢いよく叩く。その光景を見たジンが痛そうに頭を抱える。

 

「いざやんたちが何やったかは大体予想がたつけど…… とりあえずそっちの人は誰?」

 

 ポンポンとジンの頭を軽く叩きながら皐月が尋ねると軍服姿の男が鋭い目つきのまま高圧的に見下す。

 

「ふん! “ノーネーム”の分際で我々のゲームに騒ぎを持ち込むとはな! 相応の厳罰は覚悟しているか!?」

 

「これマンドラ。それを決めるのはおんしらの頭首、サンドラであろ?」

 

 白夜叉がマンドラを窘めているとサンドラが声をかけてきた。

 

「“箱庭の貴族”とその盟友の方。此度は“火龍誕生祭”に足を運んでいただきありがとうございます。貴方達が破壊した建造物の一件ですが、白夜叉様のご厚意で修繕してくださいました。負傷者は奇跡的になかったようなので、この件に関しては私からは不問とさせていただきます」

 

 それに対し、小さく舌打ちするマンドラ。そして十六夜が意外そうに声を上げた。

 

「へぇ。太っ腹なことだな」

 

「ねぇいざやん。何壊したの?」

 

「ばかでかい時計台」

 

「あ、うん。修復手伝いに行ったほうがいいかなぁ」

 

 そう呟いているといつの間にか周りにいたサラマンドラの同士がこの場からいなくなっていた。

 

「ジン、久しぶり! コミュニティが襲われたと聞いて随分と心配していた!」

 

 人がいなくなったことでサンドラは硬い表情と口調を崩しジンに駆け寄る。

 

「ありがとう。サンドラも元気そうでよかった」

 

 ジンも笑顔でサンドラに話しかける。

 

 話が盛り上がる中皐月は苦虫をかみつぶしたような表情を浮かべているマンドラに目がとまる。

 

「いざやん」

 

「……ああ」

 

 視線を向けることなく十六夜は少し位置を変える。

 

「本当はすぐに会いに行きたかったけど、お父様の急病や継承式のことでずっと会いに行けなくて」

 

「それは仕方ないよ。だけどあのサンドラがフロアマスターになってたなんて―――」

 

「そのように気安く呼ぶな! 名無しの小僧!!」

 

 皐月たちの行動に気づかないジンとサンドラが親しく話していると、獰猛な牙をむき出しにしたマンドラが帯刀していた剣をジンに向かって抜く。その刃がジンの首筋に触れる寸前

 

「おい。止める気なかっただろオマエ」

 

 十六夜が足の裏で刃を止めた。

 

「当たり前だ! サンドラはもう北のフロアマスターになったのだぞ! 誕生祭も兼ねたこの共同祭典に“名無し”風情を招き入れ、恩情をかけた挙句、馴れ馴れしく接されたのでは“サラマンドラ”の威厳に関わるわ! この“名無し”のグズが!」

 

 言い放つマンドラに十六夜の目に僅かな怒りと隠しきれない呆れが入る。

 

「おいおい。気づいてないのか」

 

「なんだ小僧!」

 

「周りをみてみろよ」

 

「な! ……に……」

 

 マンドラの周囲には彼の急所を狙う無数の剣草が浮かんでいた。

 

 そしていつの間にかその一つを持ち、マンドラの首筋に添えている皐月の姿もある。

 

「もしあんたが御チビに傷を負わせてたらあんたも命はなかったぞ」

 

 十六夜がそう言い足を放す。マンドラは怒りを隠すことなく皐月を睨むが、感情のこもらない瞳で見られ、僅かに怯む。

 

「これ皐月よ、止めぬか」

 

 パンパンと柏手を打ちながら白夜叉が皐月を止める。

 

「喧嘩を売ってきたのはあっちだしねぇ。とりあえずその剣を戻したら止めるよ」

 

「…………」

 

 無言のままマンドラが納刀すると皐月も周囲の剣草を袋に戻す。

 

 

 

 

 

 

 そんな不穏な空気の中、話し合いは始まった。

 

 

 

 

 

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