問題児たちが異世界から来るようですよ? ~大地の寵愛者~ 作:無名宴
「まずは私の話を聞け」
柏手を打ち視線を集めると一枚の封書を取り出す。
「この封書に、おんしらを呼びだした理由が書かれておる」
それを神妙な表情で皐月に渡す。
「本当にただ事じゃないみたいだね」
どうやらよほどのことがあると判断した皐月がその手紙に眼を通す。
「やっちゃん。これは本当?」
皐月が表情を消して尋ねる。横から覗き込むように内容を確認した十六夜も軽薄な笑みを消している。
「十六夜さん? 皐月さん? 何が書かれているのです?」
「自分で確かめな」
皐月の手から手紙を取ると、黒ウサギに渡す。
そこには只一文、こう書かれていた。
『火龍誕生祭にて“魔王襲来”の兆しあり』
「……なっ」
黒ウサギは絶句した後、うめき声のような声を漏らす。次に確認したジンも同様の反応だ。
「正直意外だったぜ。てっきりマスターの跡目争いとか、そんな問題だと思ったんだがな?」
「なに!?」
「とりあえずあんたは黙って。やっちゃん話を続けて」
十六夜の言葉にマンドラが牙を剥くが皐月がバッサリと話を切り捨てて白夜叉に続きを促す。
「謝りはせんぞ。内容も聞かずに引き受けたのはおんしらだからな」
「違いねぇ」
十六夜が肩を軽くすくめながら肯定する。
「で、俺たちに何をさせたいんだ? 魔王の首を取れってんなら喜んでやるぜ」
獰猛な笑みを浮かべて尋ねる十六夜に愉快そうに眼を細める白夜叉。
(これも計算のうちか。やっぱり油断ならないね~)
そう思ったが口には出さず白夜叉の言葉を聞く。
「まずはこの封書だが、これは“サウザンドアイズ”の幹部の一人が未来を予知した代物での」
「未来予知ねぇ。で、その信憑性は?」
「上に投げれば下に落ちる、という程度だな」
少しばかり疑わしそうな表情の十六夜の問いに答えると皐月は盛大に噴き出す。
「必然の域にまで行ってるって…… あ、でもそれじゃあもうすでに犯人も犯行も動機も全部わかってるんじゃないの?」
皐月の言葉に全員の視線が向き、すぐに白夜叉へと向けられる。白夜叉は何も答えず只口元を扇子で隠すだけだ。
「……なるほど。そいつは口に出すことが出来ない立場の相手ってことか」
理解した十六夜の言葉にジンがハッとしてサンドラを見た。どうやら何かしら嫌な予想が立ったらしい。それを聞きながら皐月は白夜叉を見た。
「ボスからの直接の指示でな。内容は預言者の胸の内一つに留めておくように厳命が下っておる」
予想していたのか白夜叉は皐月が聞きたかったことを答える。
「サウザンドアイズも中々に油断できないねぇ」
考え込むが、まだ情報が足りずそう呟く。
「ま、そう緊張せんでもよい。魔王はこの最強のフロアマスター白夜叉様が相手をする故
な! おんしらとサンドラは露払いをしてくれればそれでよい。大船に乗った気でおれ!」
呵々大笑する白夜叉に少しの不安が皐月の胸に宿る。
(魔王からしてみれば一番相手をしちゃいけないのはやっちゃんだし、絶対に何か封じる方法を考えてくるだろうけど、その対策くらいしてるよね)
そんなことを考えていると、十六夜が不機嫌そうな表情を浮かべる。
「やはり露払いは気に食わんか小僧?」
「いいや。魔王がどの程度だか知るのに丁度いいしな。だが、『どこかの誰かが偶然に』魔王を倒しても問題ないよな」
「かまわん。隙あらば魔王の首を狙え、私が許す」
どうやら二人の間で何かが成立したらしい。心底楽しそうな表情を浮かべる十六夜に皐月は小さくため息をついた。
「あ、そうだ。えっと北のフロアマスターさん?」
「あ。はい!」
突然話しかけられたサンドラが皐月を見る。
「ちょっと工房を借りたいんだけどいいかな?」
「何を言っている!! 貴様らノーネームに……」
「はいはい黙ろうか」
フーインイカを袋から取り出しマンドラの口に押入れ強制的に咀嚼させる。
「! ……!!!」
じゃべれなくなったマンドラが怒りの表情のまま剣を抜こうとするが十六夜がどこからか取り出した縄で縛りつける。
「あ、いざやん助かった~。ま、彼はさておき工房を貸してもらえれば嬉しいんだけど」
「それは構いませんが……」
サンドラが不思議そうにマンドラを見ながら言う。
「うん、ありがと。それじゃあ鉱石やら木材を買いたいんだけどいい? やっちゃん」
「かまわぬ。すぐに用意しよう」
しゃべれなくなったマンドラを興味深そうに見ていた白夜叉が肯定する。
「えっと皐月さん? どうしたんですか」
突然のことにジンが皐月に尋ねた。
「まずは武具を揃えたい。今のままじゃ何もできないし」
「え?」
「えって…… 連れてこられたのは農作業中だったから武器なんて持ってきてないの。一応農具も武器として使えるけど、それじゃあ心もとない」
「「あ」」
どうやらジンと黒ウサギも思い出したらしい。
(まぁプラチナムや名工カマイタチとかは並みの武器よりは強いんだけどね~)
そう心の中で呟きながら皐月はサラマンドラの工房へと向かった。