問題児たちが異世界から来るようですよ? ~大地の寵愛者~   作:無名宴

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六話目 改

 

 

 

 

 商店へと向かうペリベット通りは石造で整備されており、割りを埋める街路樹は桃色の花を散らせて新芽と青菜が生え始めている。

 

 日が暮れて月と街頭ランプに照らされている並木道を興味深そうに眺める。

 

「へぇ。花弁が違うけど『あの大樹』に似てる……かな。ま、春になったばっかだからか咲いてるのは当然か」

 

「え? 真夏だったはずよ」

 

「いや、まだ初夏になったばかりだぞ。気合の入った桜が残っていてもおかしくないだろ」

 

「……? 今は秋だったと思うけど」

 

 話が噛み合わない四人は首をかしげ、黒ウサギが笑いながら説明をした。

 

「ああ、皆さんはそれぞれ違う世界から召喚されているのです。元いた時間軸以外にも歴史や文化、生態系など所々違う個所があるはずですよ」

 

「へぇ? パラレルワールドって奴か?」

 

「近しいですね。正しくは立体交差並行世界論というものなのですが、これを今から説明しますと一日二日では説明しきれないので、またの機会ということに」

 

 曖昧に言葉を濁し、黒ウサギは振り返る。どうやら店に着いたらしい。

 

 その店には青い生地に互いが向かい合う二人の女神が記されている旗が立っている。どうやらそれが“サウザンドアイズ”の旗印なのだろう。

 

 そこで看板を下げている割烹着の女性店員を指さし皐月が言う。

 

「見た限り閉店直前といったとこだな」

 

「まっ―――」

 

「待ったなしですお客様。うちは時間外営業をやってません」

 

 ストップをかけることもできずに断られる。黒ウサギは悔しそうに店員をにらみつける。

 

「なんて商売っ気のない店なのかしら」

 

「ま、全くです! 閉店時間の五分前に客を締め出すなんて!」

 

「文句があるならどうぞ他所へ。あなた方は今後一切の出入りを禁じます。出禁です」

 

「出禁!? これだけで出禁とかお客様舐めすぎでございますよ!?」

 

 わめく黒ウサギに店員は冷めた眼と侮蔑を込めた声で対応する。

 

「なるほど、箱庭の貴族である兎の御客様を無下にするのは失礼ですね。中で入店許可を伺いますので、コミュニティの名前をよろしいでしょうか?」

 

「……う」

 

 一転し言葉が詰まる。だが、十六夜が躊躇いなく答える。

 

「俺達は“ノーネーム”ってコミュニティなんだが」

 

「ほほう。ではどこの“ノーネーム”様でしょうか。よろしかったら旗印を確認させていただいてもよろしいでしょうか?」

 

「…………」

 

 黒ウサギが黙りこむ。

 

(なるほど。“名”と“旗印”がないがゆえに信用できない。ま、力ある商店だから仕方ないか)

 

 皐月は納得し黒ウサギを見る。ほかの三人や店員も視線を集中させる。

 

 ふと店員は何かを思い出したかのように皐月に頭を下げる。

 

「如月皐月様ですね?」

 

「? なんぞ?」

 

 初対面のはずだよね? と尋ねると肯定が返される。

 

「白夜叉様からお話を伺っています。尋ねることがあればお通しするように……とも」

 

「へぇ…… なら一緒に彼女たちもお願いできるかな?」

 

「すみませんがそれは……」

 

 皐月の言葉に店員は苦虫をかみつぶしたような表情になる。それに少しばかりトントンと自分のこめかみを指で軽く叩くとあさっての方向を見た。

 

「なら本人に聞いてみるのはどう? たぶん彼女がそうだと思うけど?」

 

「え……」

 

 皐月が見ていた場所を見ると口元を扇子で隠しているが見えている眼もとから判断して笑いをこらえている着物風の服を着た白い髪の少女がいた。

 

「ふむ。どうやら気づかれておったようだな」

 

 どうやら笑いが収まったのか愉快そうに言う少女に黒ウサギは驚きの声を上げる。

 

「白夜叉様!? どうしてこんな下層に!?」

 

「なに。白雪から面白い話をきいての」

 

 パシンッと扇子を閉じると皐月へと近づく。

 

「おんし。いつから気づいていた?」

 

 笑みを浮かべているが、その瞳は鋭く誤魔化しは通用しないと物語っている。

 

「ここに着いた時には既にいたでしょ? みんな気にして無かったからそんなもんだなって思ってたし」

 

 とくに隠すことではなかったためあっさりというと白夜叉は笑みを深め、黒ウサギたちは驚きを露わにする。

 

「この反応を見ると気づいてなかったみたいだね。それ系列の能力か何か使ってたの?」

 

「いや只気配を消していただけだ。まぁ使えるがな。おんしも探知系の能力でも?」

 

「気配を消し過ぎ。空間にぽっかりと穴が空いてればそれは気になるよ」

 

「ふむ…… そういうことにしておこうかの」

 

 嘘は言っていないが真実も言っていない。白夜叉はそう感じたがこれ以上尋ねても答えそうにないためクルリと店へと四人を招く。

 

「いつまでも店先で話す必要もなかろう。部屋に案内しよう」

 

「白夜叉様よろしいのですか? 彼らは旗も持たない“ノーネーム”のはず。規定では」

 

「かまわんよ。先ほども言ったようにこ奴らは私の客人だ。ボスに睨まれても私が責任を取る」

 

 そう言われ、少し拗ねたような表情をする店員。

 

 ふとわなわなと振るえている黒ウサギが眼にとまる。

 

「どうしたの?」

 

「白夜叉様がセクハラもせずにそんなまじめなことを……」

 

 彼女は白夜叉をどんな目で見ていたのだろうか。そんなことを考えていると白夜叉も今気づいたかのように眼を見開く。

 

「そういえば今はそんな気にならんな」

 

 そう言いジト目で皐月を見る。

 

「おんし、私になにをした?」

 

「さぁ? 簡単に知ったら面白くないでしょ」

 

 完全に自白しているがとくに解決方法も浮かばない。

 

「まぁいい。それでは行くぞ」

 

 

 

 

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