問題児たちが異世界から来るようですよ? ~大地の寵愛者~   作:無名宴

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七話目 改

 

 

 

 

「生憎と店は閉めてしまったのでな。私の私室で勘弁してくれ」

 

 白夜叉は資質としてはやや広めの和室の上座に腰を下ろし、軽く背伸びをしてから十六夜たちに向き直る。

 

「もう一度自己紹介しておこうかの。私は四桁の門、3345外門に本拠地を構えている“サウザンドアイズ”幹部の白夜叉だ。この黒ウサギとは少々縁があってな。コミュニティが崩壊してからもちょくちょく手を貸してやっている器の大きな美少女と任してしておいてくれ」

 

「はいはい。お世話になっております本当に」

 

 投げやりな態度で受け流す黒ウサギ。その隣で耀が首を傾げて問う。

 

「その外門って何?」

 

「箱庭の階級を示す外壁にある門ですよ。数字が若いほど都市の中心部に近く、同時に強大な力を持つ者が住んでいるのです」

 

 そう言い上から見た地図を取り出す。

 

「…… 超巨大玉ねぎ?」

 

「いえ、巨大バームクーヘンではないかしら」

 

「そうだな。どちらかといえばバームクーヘンだ」

 

 身も蓋もない感想に黒ウサギはガクッと肩を落とし、白夜叉は愉快そうに眼を細める。

 

「うまいこと例える。その例えなら今いる七桁の外門はバームクーヘンの一番薄い皮にあたるな。さらに説明するなら、東西南北の四つの区切りの東側に当たる」

 

 自分たちがいる場所を軽く扇子で円を描く。

 

「さて、おんしらはどのような要件で来た?」

 

「フォレス・ガロとの明日のギフトゲームのために皆さんのギフトの鑑定を依頼しようと……」

 

 黒ウサギが答えるとばさりと扇子を開き口元を隠す。

 

「鑑定だと? 専門外どころか無関係もいいところだが…… ううむ」

 

 何かしら悩み始める白夜叉。

 

「そうだ。ならおんしら一つゲームを受ける気はあるか?」

 

「へぇ」

 

 面白そうに十六夜が獰猛な笑みを浮かべる。

 

「あんたに俺達を試す資格があるのか?」

 

「言うと思った」

 

「十六夜さん!?」

 

 明らかな挑発に皐月は小さく溜息をつき黒ウサギは慌てる。

 

「一応言っておくけど彼女かなり強いからね。もしかしたらこの辺…… 東側では敵はいないかもね」

 

 明らかに止めようとしていない皐月の言葉に飛鳥と耀の瞳にも物騒な光が宿る。

 

「皐月くんそれ本当?」

 

「ん。外見からはわからないだろうけど間違いなくね」

 

 その言葉を聞くと三人は立ち上がる。

 

「そう…… では貴女のゲームをクリアできれば私たちのコミュニティは東側最強ということになるのかしら?」

 

「無論そうなるの」

 

「そりゃ景気のいい話だ。探す手間が省けた」

 

 三人の剥き出しの闘争心を一身に受けてなお笑みを消さない白夜叉。

 

「え、ちょ、御三人様!?」

 

 その状況にあわてだす黒ウサギは立ち上がらなかった皐月に目を向ける。

 

「皐月さんも止めてください」

 

「必要無いよ」

 

「どうしてですか!」

 

「丁度いいし経験はしておくべきだよ。高すぎて届かない壁にぶつかるって奴をね」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ではおんしらがゲームを受ける…… でいいかの?」

 

「おいおい聞いてなかったのかよ。『あんたに俺達を試す資格があるのか』ってな」

 

「…… なるほど。ならこれではどうだ?」

 

 白夜叉の纏っていた空気が代わり、圧倒的な威圧感が四人を襲う。

 

 開いていた扇子をパンッと鳴らすと視界が廻り様々な情景が移り変わり、最後に現れたのは白い雪原と凍る湖畔、そして水平に太陽が廻る世界だった。

 

「なっ……!?」

 

 その異常さに十六夜たちは息を呑む。

 

 一つの世界を生み出す。それはまさに奇跡と呼べる所業。それはもう言葉で表せることができる御技ではない。

 

 この光景に立ちすくむ“三人”に再度白夜叉は問いかける。

 

「もう一度問おうかの。私は白き夜の魔王――太陽と白夜の星霊・白夜叉。おんしらに試練を与えられるか否か」

 

 少女とは思えぬ凄みに十六夜は背中に冷や汗を感じ取る。

 

「…… 水平に回る太陽と…… そうか、白夜と夜叉。あの水平に回る太陽やこの土地はお前を表現しているってことか」

 

「いかにも。この白夜と湖畔と雪原。永遠に世界を薄明かりに照らす太陽こそ、私が持つゲーム盤の一つだ」

 

 軽く手を広げると、地平線の彼方の雲海が瞬く間に裂け、薄明かりの太陽がさらされる。

 

「これだけ莫大な土地がただのゲーム盤!?」

 

「いかにも。して、おんしらの返答は?」

 

「…………」

 

 三人は即答できず、返事を躊躇った。

 

「…… それじゃあこっちの降参ということで」

 

 代わりに言ったのは皐月。彼は軽く片手を上にあげながら白夜叉を見る。

 

「これだけのモノを見せてくれたんだし、資格は十分だと思うけど?」

 

「……ああ。あんたには資格がある。今回は黙って試されてやるよ」

 

 皐月の言葉に同意しながらも吐き捨てるような物言いの十六夜に白夜叉は高々と笑い飛ばした。

 

「いざやんはこう言ったけど二人はどうする?」

 

「…… ええ、私も試されてあげてもいいわ」

 

「右に同じ」

 

 二人も苦虫を噛み潰したかのような表情で同意する。

 

「も、もう! お互いにもう少し相手を選んでください! フロアマスターに喧嘩を売る新人に、その喧嘩を買うフロアマスターなんて冗談でも寒すぎます! 大体、白夜叉様が魔王だったのはもう何千年も前のことじゃないですか!」

 

「なに? じゃあ、元・魔王ってことか?」

 

「はてさてどうだったかな?」

 

 ケラケラと悪戯っぽく笑う白夜叉に三人と黒ウサギが肩を落とす。

 

 

 

 

 

「道理で…… じゃ、やっぱりあの姿も本当という訳じゃないみたいだね」

 

 

 

 

 ぼそっと呟かれた声を聞いたのは三人に視線を向けながらも注意し続けていた白夜叉のみだった。

 

 

 

 

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